沼津帰りのイカの塩辛と、熱海の古着屋「美味」
番組冒頭、todayは旅行から帰ってきたそのままの荷物姿でスタジオに現れます。今年から聞き始めた人のために、todayが横山でToday、相方が明石ガクトでGACKTと自己紹介から始まります。
今回のtodayは、沼津の実家に帰った後、一人で熱海の網代に2泊してきたといいます。母親から「もっと帰ってきてほしい」と言われ、ワーケーション先になるような自分のくつろげる場所を探しに行ったそうです。
なんかそういうゆっくりの仕方に少しちょっと飽きてしまって。だったら近場の素敵な場所で。
todayのお土産は、網代のローカルなお魚屋さんで作られているイカの塩辛でした。着色料でピンク色に染めた市販品と違い、リアルな色をしているとガクトも興味を示します。
あの色がさ、リアルだよね。あれだもんね。これマジの塩辛の色してんな。
todayは熱海の商店街で見つけた古着屋「美味」の話もします。美しい海と書いて「美味」と読ませる店で、若い女性が営んでいたそうです。
不思議な感じだなと思って入ったら、サンタフェジャケット置いてました。カーハートのジャケットが2着ドンドンって目玉みたいな感じで置いてあって。
リサイクルショップと古着屋が混ざったような店で、todayは2分で出たといいます。ただ、後述の初売りの文脈では、この「美味」がとんでもない名店でなかったことが、todayが煩悩を回避できた理由になっていきます。
カーハートアクティブジャケットと、ガクトの2026年のテーマ「フェード」
ここからは二人が今日着ている服の紹介です。ガクトが着ているのは、カーハート ── アメリカのワークウェアブランド。丈夫なダック地の作業着で知られ、近年ファッション業界で古着・ヴィンテージが高騰していますのアクティブジャケット。ダークネイビーのL、USA製のデッドストックです。
ガクトによれば、カーハートのデトロイトジャケットやチョアコートが各ブランドにサンプリングされブームになった後、残された最後の砦がこのアクティブジャケットだといいます。フルジップでフードが付き、硬いダック地で作られたジップアップパーカーです。
これ買っときゃよかったな思って。安かったんだから。2000年初期とかね。
このジャケットは、年末にtodayと2025年最後のジムに行った後、恵比寿で売っていると聞きつけ、ジムから早足で買いに行ったものです。イレギュラー品で謎の白い線が入っているものの、着れば気にならないとガクトは話します。
ガクトは、この日の下半身にグラミチとのコラボパンツ、上にカニエ・ウェストのブランドYEEZYの初期のものを着ています。どちらもフェード(色落ち)が進んでおり、これが2026年のテーマにつながります。
ガクトは、このアクティブジャケットも自分で着込んでフェードさせていきたいという気持ちを、この日のコーディネートで表現したといいます。
todayの「クロムハーツ半袖ジャケット×化繊」という挑戦
一方のtodayは、真冬に着るのが難しいクロムハーツの半袖ジャケットを、この日あえて着てきました。下にカシミヤシルクのニット、その上にモンクレールの薄いダウン、一番上に半袖ジャケットという重ね着です。
todayは、この格好で行くかどうか、家を出る直前まで鏡の前で迷ったといいます。ガクトから合っていないと言われそうだと思いつつ、新しいスタイルへの挑戦として選んだそうです。
ガクトの忌憚のない意見は、下はスウェットのほうがいい、というものでした。問題は、モンクレールのジッパーもクロムハーツのジッパーもシャイニー(光沢がある)で、キラキラした線が重なって見える点です。
今俺からね、4本のキラキラした線がね。
さらにガクトが気にしたのは静電気です。カシミヤシルクの上に化繊、一番上がほぼ100%ナイロンという構成で、動物繊維と化繊が重なっていることに触れます。
つまりナイロン、ナイロン、動物繊維と。触りたくないもんだって。電気系能力者だよ。
todayの2026年のテーマは「ラグジュアリー」
ガクトがフェードをテーマに掲げたのに対し、todayの2026年のテーマは「ラグジュアリー」です。もともとラグジュアリー好きのtodayが、どう変化させるのかをガクトが問います。
todayの答えは、細かく買い物をするこれまでのスタイルから、その人でしか買えないような一点に寄せていく、というものです。以前番組で話した「スイカゲーム」の例えを引き、今年は大きいものを狙うと話します。
つまりは誰でも買えるとかいうものではなく、よりそういうラグジュアリーがこの人でしか買えないこの1点とか、そういうものに私は寄せていこうかなと。
その背景には、todayの懐事情もあります。去年ウォッチベルトという巨大な買い物をした代償で資金がショートし、今年の初売りでは何も買えなかったといいます。
初売り何も買ってない。正確に言うと何も買えなかった。資金がショートしすぎてて何も買えなかった。
ガクトは、todayがこれまで買いすぎ、ごちゃついていたと見ていたため、今回の軌道修正を前向きに受け止めます。何着るコーナーが過去のアイテムに周回する可能性も出てきました。
テーマは「フェード」。カーハートなどを自分で着込んで色落ちさせ、味わいを育てる方向
テーマは「ラグジュアリー」。細かい買い物をやめ、その人でしか買えない一点に絞る方向
古着屋の「初売り」とは何か
この日のトークテーマは「初売り狂騒曲」。ガクトによれば、この言葉には人に取られまいとする競争、みんなで作り上げる狂騒、狂って騒ぐという3つの意味が込められています。
ビクティム界における初売りとは、古着屋の初売りを指します。todayが解説するには、古着屋には定期的な入荷日と、初売りという儀式があります。
初売りは、店が1年間しこたま集めた、圧倒的にレア度が高く人気のあるアイテムを放出する日です。店はInstagramやブログでティザー(予告)を出し、客はそのために貯めたお金やボーナスを握りしめて買いに行きます。
1年間、それこそ初売りのために貯めたお金とかボーナス、そういうものを握りしめて買いに行く儀式があるわけなんですよね。
ガクトは、現行のブランドと古着屋の違いを整理します。現行ブランドはシーズンごとにデリバリーの周期があるが、古着屋は基本的にアーカイブ(過去の在庫)を売るため、盛り上がるタイミングを自分たちでプロデュースする必要がある、という構造です。
古着屋っていうのは基本的にアーカイブを売るんで、新作って概念が別にないんですよね。だから自分たちで盛り上がるタイミングをプロデュースしていかなきゃいけない。
入荷日は店によってリズムが違い、常連が盛り上がる場です。それに対して、初売りだけはみんなが一斉に狂うお祭りだとガクトは言います。
店ごとにリズムが違う定常的な放出日。その店の常連が盛り上がる場で、全員共通のお祭りではない
1年間集めた最上級のアイテムを一斉に放出する年に一度の祭り。業界全体が一斉に狂うタイミング
初売りが人を狂わせる仕組みと、YouTuberのあおり
12月になると、初売りのティザーがInstagramに投稿され始めます。todayはガクトに毎日のようにメルマガのごとく「これ出ますよ」と送りつけたといいます。
ティザーが出た瞬間、古着系のYouTubeクリエイターが「今年何買う」というコンテンツをアップしてあおってくる、とtodayは説明します。ガクトはこれをエコシステムと呼びます。
まるでワンピースの最新話が公開されたらドロピザが考察をするみたいなノリで、いろんな店舗の目玉アイテムを見て、古着界隈のインフルエンサーたちが騒ぎ出す。
さらに初売りには、あえて隠されている情報があるとtodayは言います。一つはスペック、つまりサイズです。客は画像をスクショし、過去の写真と見比べて何インチか、LかXLかを推測します。
もう一つは値段です。値段が伏せられているため、初売り当日にどこでいくらで出たかがニュースになり、それが以降の相場の基準になっていきます。
それがどこでいくらで出たっていうのが、その初売りになった日にニュースになって、それが基準になるんですよね。
古着の並びには猛者が多いとtodayは言います。一点物を狙うため、ある店では前日、雪の中を8時間並んだ客もいたそうです。1月2日の初売りに向けて、1月1日の夜から並ぶことになります。
ガクトの初参戦。ロストアロー20万円にビビる
ここからは、初売りに初参戦したガクトの体験談です。渋谷・原宿にある、ミリタリー系のデッドストックを中心に扱う店に、Instagramを見て初めて行ったといいます。
開店が遅い店だったため午後3時ごろに行くと、店内はごった返し、普段は接点のないジャンルの客が興奮していました。
見て。おお、これラムレザーで、この感じで。え、これですか?すごいヤバいみたいな。本当にこいつ服でイっちゃうんじゃない?ぐらいな。
ガクトが好きなパタゴニアのPCU ── Protective Combat Uniformの略。米軍向けにレイヤリング(重ね着)を前提に開発された近代ミリタリーの被服システム。レベル1〜7の階層で構成されますやロストアロー ── パタゴニアが軍・法執行機関向けに展開していた別ラインの通称。市販のパタゴニアとは別のスペシャルな作りとされますが揃っていました。気になっていたグレーのロストアローの値段を聞くと、20万円でした。
いくらですかと聞いたんですよ。そしたら20万円です。
ガクトは、コモリのような品質・原価の高いブランドと比べても、パタゴニアのレギュラー品なら原宿の店で3万ほどで買える同種のものであることを指摘します。スペシャルな作りとはいえ、大差はないのに20万か、とビビってしまったといいます。
店内には初売り用の別アイテムもありました。イギリス軍のベンタイル素材のスモックの現代版を作るためのテストサンプルは24万円。ユニークピースでかっこいいものの、ガクトは踏み込めませんでした。
かっこいい、かっこいいんだけど、これ俺はかっこいいと思っちゃう。モテるかモテないかは全然別の話。
13万円のゴアテックス。デッドストックの誘惑
店内を見回すガクトの目に留まったのが、ロイヤルネイビーに納品されたとされるゴアテックスのシェルジャケット、PCUで言えばレベル6にあたるものでした。
ガクトが好きなアークテリックスのリーフラインのアルファジェンワンとほぼ同じ規格・デザインで、いい時代のゴアテックスで作られているとされる一着です。長年ユーズドしか出なかったこの商品に、初売りで一点だけデッドストックが入ったと店員が言いました。
長年やってきた中で初めてデッドが入りましたと。おお、マジかって。もう競争曲スイッチが入ってたからテンション上がっちゃって。
ユーズドの綺麗な状態(「ピンピン」)のものが約7万円。ガクトはサイズがMだったにもかかわらず、この初めてのデッドストックを買ってしまいます。
そのデッドストックの値段は13万円。ユーズドのほぼ倍でした。todayは「いい商売してますな」と反応します。
帰宅後、ガクトは後悔に襲われます。サイズがジャストすぎること、13万出すならビビって見送ったロストアローが買えたこと、そもそも自分がこれを着るのか、という思いです。
これ俺着る?これ着ない?着ない?デッドストック。
店内で起きる「競争」と「共鳴」
ガクトは、自分が狂った理由を「競争曲」だと分析します。入店時点では冷静だったが、店内の祭りのような空気感に飲まれたといいます。
ガクトがアイテムを見ている間、他の客がめちゃくちゃ見てくる。ここに人に取られまいとするコンペティション(競争)が発生します。
そこにやっぱ競争、コンペティションの競争が発生し。
同時に、店内全体で「マジにやってますよ」という空気を共に作り上げる共鳴(コクリエーション)も起きていた、とガクトは言います。todayは、おしゃれな人が手に取ったものは自分も買った方がいいのではという心理が働くと分析します。
おしゃれな人がこれ持ってるんだったら、もしかしたら俺も買った方がいいんじゃないかみたいな。
実際、ガクトが買った後、デッドではない他のゴアテックスをみんなが買っていったといいます。todayはこれを、さらば青春の光の「卵焼き」のネタになぞらえ、撒き餌状態になると表現します。
ガクトはこれを、以前二人で行った古着イベントVCM(ヴィンテージ・クロージング・マーケット)と比較します。VCMではティザーがなく、会場も広かった。それに対し初売りは、12月の1ヶ月かけてマインドがセッティングされ、店というコンパクトな空間でみんなが作り上げる感じが色濃い、と言います。
十二月の一ヶ月かけて俺たちはそういうふうにセッティングされてる状態。
結局ガクトは、ゴアテックスのタグを切らずに丁寧にしまいました。去年、番組で散々「デッドストックを作るな、すぐタグを切れ」と言っていた自分が、新年最初の買い物でデッドストックをデッドストックにしてしまったことに、自己嫌悪を感じているといいます。
去年、デッドストックを作るなと、すぐにタグを切れと言ってんのに、新年明けて最初の買い物で早速デッドストックにしてるじゃん。
todayの「煩悩を解き放つ旅」と、名店を避けた沼津
一方のtodayは、毎年初売りに8時間並ぶほど狂っていたにもかかわらず、今年は鉄の意思で何も買いませんでした。しかも、あえて何も買えない状況を作るために動きます。
あえて何も自分。だからこれ最初言えなかったですけど、煩悩を解き放つ旅だったんですよ。
熱海に行けば古着屋があるという誘惑もありましたが、寄った「美味」の目玉が子供用のアクティブジャケットとサンタフェジャケットだったため耐えられた、とtodayは言います。
美味じゃなくてとんでもない名店があったら俺ら狂ってました。
実は沼津でも、todayは古着屋に行っていました。全国からファンが訪れる名店「上々家(ジュジュカ)」です。しかし、外で父親が「早く出てこい」と目で合図してくれたおかげで抜けられたといいます。
お父さんが外で待ってたんです。目で合図をしてくれたので抜けれました。それ抜けれなかったら多分やられてました。
沼津のラズマタズという店では、カーハートのデトロイトジャケットのデッドストックにも遭遇します。ただし色は茶、サイズは40と小さく、todayの好みから外れていたため耐えられました。逆に、44や46で黒だったら買っていた、とtodayは認めます。
盛り上がる近代ミリタリーと「化繊に味わいはあるのか」問題
ここから話題は、初売り全体の傾向へ発展します。ガクトは、今年の初売りで近代ミリタリーが盛り上がっていると感じています。VCMの振り返りで「ここからは近代ミリタリーだ」と話していたため、そういう店ばかり目についた可能性にも触れます。
todayによれば、どの店でもパタゴニアのマーズが目玉として取り上げられ、パタゴニアの値段の高騰がすごかったといいます。
ガクトは、本当に軍に納品されたマーズは非常に少なく、多くはカタログに載っていない色の余り布で作られたスペシャル品だと説明します。パタゴニアは資材を無駄にしないため、緩急品の余り布を流用しているという文脈です。
そのうえでガクトが投げかけるのが、この回の核心となる問いです。コットンやデニム、ダック地は時間が経つほど味わいが出るが、化繊はどうなのか、という点です。
todayは、ガクトの知人ヨーキングさんが昔のパタゴニアのフーディニを着込み、リペアしまくってロゴもカスカスになっていたのを見た記憶を持ち出します。あれは味わいだが、あの領域に至るには相当リアルに着込む必要がある、という話です。
パタゴニアの修理文化と、化繊ヴィンテージの見極め
ガクトは、パタゴニアが企業理念として修理してくれる点に注目します。スナップTのスナップボタン交換が1個120円、焚き火で穴が開いたシェルの修理が千円ほどだった経験を挙げます。
一個百二十円らしい。めちゃくちゃ安いんだよ。
リペアによって自分だけのスペシャル感が出る、とガクトは言います。ヨーキングさんのフーディニにも、その着込んだ味わいがありました。
問題は、今高騰しているPCUをパタゴニアが修理してくれるのか、という点です。パタゴニアにとって軍関係は黒歴史となっており、すでに手を引いているためです。
これはパタゴニアは果たして修理してくれるのかな。もうすでに軍関係のものから手を引いてるから。
ガクトの整理では、マーズなど表にパタゴニアタグが付くものは修理してもらえそうだが、PCUは微妙で、ロストアローは境目でわからない。誰かが持ち込んで確かめてほしいと話します。
さらにガクトは、化繊特有の劣化にも触れます。厚手のコットン系はデッドの価値がわかるが、化繊は買った状態が最高値という説がある一方、経年で加水分解する可能性もある、と言います。
時間が経つほど味わい(経年変化)が出る。ヴィンテージとしての価値がわかりやすい。カーハートのアクティブジャケットはフェードしたほうが高い場合もある
買った状態(デッドストック)が最高値という説がある。ポリウレタンコーティングは経年で加水分解する劣化のリスクがある
ただし化繊でも劣化するのはポリウレタンで、ナイロン自体は分解しないとガクトは補足します。ストーンアイランドのヴィンテージのように、古いナイロンには古いナイロンの味わいが生まれ、そこにデザイン性や誰が作ったかが掛け合わされて価値が出ると、二人は整理します。
結論はカーハート。安心して買える天然素材の強さ
ガクトの結論は、パタゴニアがリペアしてくれる対象の化繊なら価値が上がっていくのではないか、というものです。アークテリックスのリバードプロジェクト ── アークテリックスが行う、使用済み製品の修理・アップサイクル・買い取りの取り組み。ニューヨークなどでは展開されているが、日本には未展開と話者は述べていますも同種の動きとして挙がります。
そのうえで二人が立ち返るのが、カーハートやリーバイスといった厚手のコットン系です。朽ちず、安心して買えるとガクトは言います。
カーハートはいいよね。安心して買える。朽ちないもん。
ここでtodayが、ガクトに送った古着業界の裏側の動画を持ち出します。ボロボロにフェードしたカーハートが、どう流通しているかという話です。
ガクトの説明では、アメリカでボロ布(ウエス)扱いにすると関税が0になるため、ボロボロのカーハートはボロ布としてパッキングされ輸入されているといいます。
アメリカでボロ布扱いにして、機械の油を拭き取るようなボロ布って関税0なんだと。
さらにその状態を作るため、半端なユーズドを1年間現場作業員に支給してボロボロにさせ、仕上がったらまた別のものを支給する、というビジネスがあるとガクトは語ります。
なぜ「その人のもの」になった服はかっこいいのか
todayは、自分で愛情を持って着込んだ服にこそ価値があるという話につなげます。3年前に買ったチョアコートを毎日着ることで、味も愛情も出てくると実感しているそうです。
そのうえでtodayは、なぜ野村訓一が着るデトロイトジャケットがかっこいいのかを問います。答えは、取ってつけたように着るのではなく、まずその人があり、服がその人のものになっているから、というものです。
ここでガクトが危惧を口にします。アクティブジャケットと同じ形のジャケットが、今ユニクロで大量に売られていることです。
ガクトは映画『プラダを着た悪魔』の名シーンを引き、トレンドが上流から下流へ降りてくる構造を語ります。カーハートをカニエ・ウェストらが着て、プラダがチョアを作り、ロエベが続き、ついにユニクロまで降りてきた、という流れです。
まるでイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、そしてラガードまで。
トレンドがラガード(最も遅い層)まで降りたとき、元ネタの価値はどうなるのか。todayは、ある業界の友人の見立てを紹介します。ユニクロでさえ買えるようになると、限られた人しか買えないデッドストックのアイテムに、より価値が出てくるのではないか、という考えです。
限られた人間でしか買えないというふうに、ユニクロでさえそういうふうに買えるんだったら、GAKUさんが着てるアクティブジャケットの、そういうのに価値がより出てくる。
ピカソはなぜ高いのか。価値と数量の関係
todayの見立てに対し、ガクトはディズニーのAI生成の例えで応じます。誰でも生成できるようになると、本物のキャラクターに価値が宿る、という理屈です。
そのうえでガクトが持ち出すのが、ピカソの価格の話です。ピカソが高いのは、作品数がめちゃくちゃ多いからだといいます。
点数が少ない作家ってそんな値段がつかないんだって。「いいな」と思った時に買えないから誰も。みんなが買えてみんなが欲しい状態が一番値段が上がるんだって。
オートクチュールの一点物はヴィンテージでもそこまで値が上がらず、リーバイスのヴィンテージが高いのは玉数が多いからだ、とガクトは整理します。この視点は、今年の初売りやヴィンテージ市場の動向を追ううえでの一つの物差しになります。
上流が着る
カニエ・ウェストらがカーハートを着る。イノベーター・アーリーアダプター層
ブランドが模倣
プラダがチョアを、ロエベが続く。ハイブランドがサンプリングして広がる
大衆化する
ユニクロで同型が大量に売られる。ラガード層まで降りてくる
元ネタが希少化
限られた人しか買えないデッドストックの元ネタに、より価値が集まる可能性
ヴィクティムのベストバイ紹介。生地から自作する猛者たち
ここからはコメント返しコーナー。リスナー(ヴィクティム)の2025年ベストバイを紹介していきます。
今年のベストバイは既製服でもギアでもなく、ダイニーマの生地そのものです。ダイニーマが個人でもメートル単位で購入可能だと知ったのが事の始まりです。これ自分で作れるのではと思い立つと、巷のガレージブランドの製品が過剰なギミックを足しているのが見えてきました。そこで母に頼んで生地を縫ってもらい、理想のULナップサックを自作。物の価値を正しく見定める審美眼が養われたことが今年一番の収穫だったのかもしれません。
ガクトは、質実剛健なハードボイルドな文面に急に「母に頼んで縫ってもらい」というくだりが入る展開に大笑いします。
ここまではすごいハードボイルドな、かっこいい世界観だったのに、急におかん出てきた。裁縫が得意なおかん出てきた。
PARANTEのミニジョイを使ってますか?同じくオーバースペックなザックより、ナップザックのような作りのものが最適解だなと共感しました。生地購入で作っちゃうのは素晴らしいですね。
ガクト自身も、DCF生地を使ったリュックをカンヌ行きで使い、軽さと丈夫さを実感したといいます。TUMIのバリスティックナイロンの重さと対比し、今の防弾ベストの表地もDCFになっていると話します。
ダービージャケットからGoro'sまで。思い入れの一着
2025年ベストバイは、山着に街着のデザインを落とし込むブランド、万年牢のダービージャケットです。防風加工のあるナイロンの内側にオクタという保温性のあるポリエステル起毛繊維が張られていて、見た目はダービージャケットですが、0度ぐらいなら中にTシャツ一枚で行動できる優れものです。カミデ良平さんがニューヨークでオープンするアウトドアショップでも取り扱われるとのこと。いつかカミデ良平さんゲスト回やってください。
todayは、ダービージャケットが1960年代に発売されたサンタフェジャケットと同型であること、近年ヴィンテージでも注目されていることを解説します。それを万年牢がナイロンで作り、オクタで保温性を持たせた再解釈系のアイテムだ、と二人は整理します。
2025年一番印象に残っているのはSupreme×GOOD ENOUGHのMA-1です。90年代に中学から高校生だった当時、地元にGOOD ENOUGHを取り扱うディーラーがあり、十代はほぼ毎日そのお店に入り浸っていました。今回のコラボは思い入れが強く、あらゆるコネクションをフル稼働して相当数のアイテムを購入しました。レザージャケットが第二の皮膚なので着用率は低めですが、大切にしつつ着込んでいこうと思っています。
ガクトは、同じMA-1をStockXで買ったと明かし、そうまと同じような青春だと共感します。さらに、Supreme×GOOD ENOUGHのケーブルニットパーカーの袖を、MA-1に移植する袖裏カスタムの解釈を熱く語ります。
袖裏カスタムMA-1って言ったら、その辺にいる四十代のおじさんたち全員「うお」って言っちゃう。
2025年のベストバイは、ONE HUNDRED ATHLETICの柔術着です。ワンハンドレッドアスレチックはMMAファイター宇野薫選手が創設し、実際の試合でも使われる本格派です。僕はスタジオでも試合会場でも格好つけたい、おしゃれでいたいと思っているので、柔術着も立派なファッションアイテムの1つです。この柔術着を着て秋の大会に出場し、優勝こそ逃しましたが、その後に帯の昇格が決まる忘れられない良い買い物になりました。
私のベストバイは、トーマスメイスンのリネンで作ったダブルカフスシャツです。今年祖母が老人ホームに入る際、家を整理し、昔使っていたカフリンクスを譲ってもらいました。カフリンクスをつけるシャツを持っていなかったのですが、祖母につけているところを見たかったのでオーダーしました。初めて自分のためではなく、人のために服を買ったので、一番思い入れのある一着です。
ガクトは、todayがラップバトルでスーツを着ていた頃、ラッパーのエローンにジャケットをオーダーかと褒められたエピソードにも触れ、盛り上がります。そのエローンが今は三田製麺所の営業マネージャーとして活躍していることも紹介されます。
Goro'sの並びと、クロムハーツをめぐる縁
2025年ベストバイはGoro'sのメディスンホイールです。それまでは基本チェーン組でしたが、今年のゴールデンウィーク初日の早番でメディスンホイールを購入してから革紐組に完全にシフトしました。ただし9月は全12連敗、しっかりペナルティ調整入りました。またGoro'sのおかげでガクトさんとtodayさんとコミュニケーション取れたことも良い思い出です。年明け1月8日の並びでお会いしましょう。
コメントの朗読中、ガクトのもとに、遠隔で発売りをお願いしたアイテムが届いた電話がかかってきます。何を買ったかは言えないものの、革ものの最高峰だといいます。
遠隔発売りお願いしたやつがさっき届いて。ちょっと俺が現地に行けなかったんだけど、お友達に並んで買ってきてもらったやつ。
ガクトは、メディスンホイールがGoro'sのチェーンに付くパーツで、革紐を髭のように出せるアイテムであること、単体で買えるチャンスが非常に少ないことを解説します。
週刊ウエスコという話を聞いて、これはどこかで買わないといけないなと思ったものの、グイディのお話も聞くとそれもいいよなとブレブレです。今年のベストバイは、このファッションビクティムを聞き出してから購入したカーハートのダブルニーブラックです。カーハートは良さを理解していても今まで通ってこなかったのですが、お二人が楽しそうに話されているのを聞いて買ってみようと思ったのがきっかけでした。今では自分の生活リズムに刻まれました。
ブルックのブーツ選びに、ガクトはさらに選択肢を投げ込みます。マーカの石川さんの投稿をきっかけに、オールデンのタンカーブーツの魅力を再発見したというのです。特殊なモカ縫いを縫える職人がもう一人しかおらず、その人も引退するため、市場にあるものが全てだといいます。
あのタンカーブーツのモカ縫いのやつはもう今市場にあるのが全てっていうことを言ってて。で、俺持ってんのよ。
リーバイスに宿る「継承」。父の生まれ年のデニム
家庭がある中でバジェットコントロールしながらファッションを楽しむことが、自分なりのスタイルを見つめ直すきっかけになりました。2025年のベストバイは、リーバイス・ヴィンテージ・クロージングの501XX、1955モデルです。久しぶりにゼロからデニムを育てようと思い購入しました。1955を選んだ理由は、シルエットが好みだったこともありますが、1955年が自分の父の生まれ年だからです。このデニムを時間をかけて育てて、いつか5歳の息子に「これはお前のおじいちゃんが生まれた年のデニムなんだ」と言って渡したいです。服ってただ着るものじゃなくて、思いや時間ごと継承できるものなんだなと改めて感じました。
todayは、LVCの中でも1955年モデルが特にファンの多い特別なモデルであることを解説します。ガクトは、父の生まれ年という選び方に「エモい」と反応します。
家庭がある中でバジェットコントロールしながらのファッションを楽しむというのは、自分なりのスタイルを見つめ直すきっかけになりました。
ガクトは、リスナーからのコメントを読むうちに、初売りで落ち込んでいた気分がどんどん元気になっていくと話します。
なんかやっぱみんなに元気、ファッションの元気をもらってる。どんだけ俺初売りで食らったんだろうな。
ベストコメントは「死ぬまで添い遂げる」エルメス
イタリアで購入したエルメスのウールブルゾンが最近のベストバイです。エルメスの洋服はヨーロッパで買うと日本より3割から4割ほどお得です。本来のマイサイズは48なのですが在庫が50のみで、袖が長くなると諦めていたところ、スタッフが滞在中に無料で仕立て直してくれると。ところが帰国前に受け取りに行くとまだ未完成で、するとさすがエルメス、日本の自宅まで無料で、関税まで含めて全て対応してくれ、無事に届きました。やっぱり洋服エピソードがあると愛着が違いますね。
このエルメスのエピソードが、この回のベストコメントに選ばれます。ガクトは、こういう服に囲まれて死にたい、最後はこれを着たまま送り出してほしい、と語ります。
この一着をめぐって、二人は化繊の扱いに立ち返ります。todayは、ガクトが挑戦するデニムのフレアを色落ちさせた先に、まさにこういう「手放さない俺だけの服」が生まれるのではないかと問いかけます。
ガクトは「じゃあ化繊はいらないのか」と揺れますが、todayは化繊の機能美とロマンの両立を説きます。人と被らない一点物にこそ、縁が縁を生む価値があるという結論に着地します。
言うことが毎回変わる。それこそがビクティム
最後にガクトは、2026年の抱負を語ります。台本を作る回や、出張ビクティムなど、いろんなトライをしていくといいます。原動力はリスナーのコメントとリアクションだと話します。
ガクトは、去年言っていたことと今年で意見が変わることを繰り返すのがビクティムの醍醐味だと宣言します。そして「私は化繊を卒業します」と締めますが、この回全体を通して、その結論すら揺れ続けていたのがこの番組らしさでした。
まとめ
新年一発目のFashion Victimは、古着屋の初売りに狂わされたガクトと、実家に帰ることで狂気を回避したtodayの対比を軸に、化繊ヴィンテージの価値という問いへと発展しました。トレンドの大衆化、修理文化、そして「その人のものになった服」の強さまで、二人の雑談は蛇行しながらも一つのテーマに戻っていきます。
- 古着屋の初売りは、店が1年間集めた最上級品を放出する祭り。ティザーとYouTuberのあおり、競争と共鳴が客を狂わせる
- ガクトは初売りで13万円のゴアテックスのデッドストックを衝動買いし、サイズと値段の後悔に襲われた。todayは実家に帰ることで物理的に距離を取り、購買を回避した
- コットン系は経年変化で味わいが出るが、化繊はデッドが最高値という説もあり劣化リスクもある。パタゴニアの修理対象になる化繊なら価値が上がるのでは、というのが一つの見立て
- ユニクロまで降りたトレンドの元ネタは、限られた人しか買えないデッドストックにより価値が集まる可能性がある。ピカソが高いのは玉数が多いから、という価格の物差しも共有された
- ベストコメントはエルメスのウールブルゾン。取ってつけた服ではなく「その人のものになった服」「思いや時間ごと継承できる服」に価値があるという結論に着地した




