未来の自分への贈り物。10年後にありがとうと言える買い物術と、コメント鬼レス回
明石ガクトと横山昴が、ファッションへの向き合い方を深掘りするポッドキャストFashion Victim。今回は韓国出張で見えた「自分自身があるかどうか」という問い、藤原ヒロシ氏の「寝かす」哲学から生まれたフューチャーサンクスプロジェクト10年後の自分が「あの時買っておいてくれてありがとう」と思える買い物をしようという、この回で提唱された新しい消費スタイル。、そして溜まりに溜まったリスナーコメントへの鬼レスまで。買い物の指針が揺らぐ40代ビクティマーに向けた、深く濃い回の内容をまとめます。
三茶の生チョコと神戸ワープの真相
収録の冒頭は、横山が三茶の老舗洋菓子屋で買ってきた生チョコの話題から始まります。スイスで30年前に生チョコを学んだオーナーが4年かけて「小枝」型に仕上げたものですが、森永の小枝に商標を奪われ、現在は「とろける生チョコ」という名前で売られているという背景があります。マイナス30度で保管される本格派で、明石も「コンビニのお菓子と比べちゃいけないけど、断然うまい」と絶賛しました。
前回の配信で気になっていたリスナーが多かった「神戸のクロムハーツから大阪へワープした件」についても明かされました。実はリンチシルバースミス訪問後、マイクが一人分しか録れておらず、矢野さんおすすめの中華「別館牡丹園」での会話がすっぽり抜けてしまったとのこと。やわらか焼きそば、チャーハン、スペアリブの唐揚げなど、二人とも「オフィス近くなら週2で行く」レベルで気に入ったそうです。
韓国で買えた限定アイテムと「自分自身」という問い
明石はVERDY日本人グラフィックデザイナー。「Girls Don't Cry」「Wasted Youth」などのブランドを手がけ、ナイキやヒューマンメイドとのコラボでも知られる。名前の由来はサッカーチームのヴェルディ川崎。さんの大規模展覧会とHUMAN MADENIGOが手がけるブランド。ヴィンテージとモダンを融合したデザインで世界的に人気。代表の松沼氏は元ユニクロ。韓国新店オープンに合わせて韓国・ロッテワールドへ。前日のパーティーにはBLACK PINKのリサ、BTSのJ-HOPE、SEVENTEENなど錚々たるK-POPアイドルが参加し、翌朝の限定アイテム抽選には約1,200人が並んだそうです。
明石は無事に抽選に当たり、ヴェルディ×ヒューマンメイドのジャケットとTシャツ、そしてピッツァスライス×THIS IS NEVER THAT韓国発のストリートブランド。日本の若者を中心にトレンドとなっており、2024年〜2025年にかけて急速に支持を集めている。のアイテムも入手。しかしここで明石は立ち止まります。「これ、自分自身があるのか?」と。
俺が四十五歳がJ-HOPE着を着たら、それもうJ-HOPE着なのよ。
J-HOPEが着用しているアイテムを、40代の自分が同じように着ても「あの人J-HOPEのジャケット着てる」と思われるだけではないか。20代が着ればトレンディな魅力が出るが、自分が着ても勝てない——。これが今回の核心となる問いです。
フューチャーサンクスプロジェクトという新しい買い物観
「自分自身があるか」という問いへの答えとして明石が辿り着いたのが、藤原ヒロシ氏の「寝かす」という哲学です。誰もが着なくなって忘れた頃に、デッドストック状態のアイテムをひょいと取り出して使う。これは未来の自分のための買い物だ、と。
十年後ぐらい、ヴェルディさんがもっとすごいアーティストになって、ヒューマンメイドも世界帝国になってる。その時にふと新品状態のそれを引っ張り出して着てたら、「よく持ってますね、それ」みたいな。これがおもろい。
象徴的なエピソードとして語られたのが、藤原ヒロシ氏のロレックス「セレブレーション」とルイヴィトンのスティーブン・スプラウス時代のポシェット。後者はバージル・アブロー元ルイヴィトン メンズアーティスティックディレクター。OFF-WHITEの創設者でもあり、2021年に逝去。タイポグラフィックなデザインが特徴。がルイヴィトンを席巻していた時期に、あえてタギング調のスプラウス時代のアイテムを使うことで、強烈な意味を持たせていたそうです。
今このアイテムを買う
限定品・話題のコラボ・有名人が着ているもの
あえて着ずに寝かせる
市場から消え、誰も着なくなるまで待つ
5〜10年後にデッドストック状態で着る
「よく持ってましたね」と一目置かれる存在に
明石が実例として挙げたのが、OAMCの「Peace Maker」シリーズのジャケット。ルーク・メイヤー元Supremeのデザイナー。妻のルーシー・メイヤーと共にOAMCをデザインしていたが、2024年に退任。Supreme時代の作風を継承するアイテムを最後に手がけた。夫妻が退任直前にデザインしたとされるオレンジ迷彩のM65。買った当時は「着ないだろうな」と思っていたものが、痩せて筋肉がつき、時を経た今、急に「かっこいい」と感じられるようになったといいます。
キャピタル「カントリー」第2日曜の争奪戦
明石が韓国出張を最終便で切り上げてまで日本に戻ってきた理由——それがキャピタル岡山発の日本ブランド。デザイナーは平田和宏氏。手仕事の風合いを大切にしたアイテムで世界中にファンを持つ。「カントリー」は特に手の込んだプレミアムライン。のカントリーラインです。5月から第2日曜日にだけ、特別なボロアイテムが店舗に並ぶ仕組みが始まったとのこと。どの店舗に何が入るかは内緒、各色一着のみという完全争奪戦です。
明石が狙ったのは「ボロジョーツ」。ジョーツ膝下まで届く太いショートパンツのこと。LAのスケーターが好んで履くシルエットで、ショーツより長く、パンツより短い独特のバランス。のボロバージョンで、バンダナが幾層にも折り重なった作りになっています。
問題は、サイズが一着のみで明石のウエスト(36インチ前後)には少しタイト。お腹を引っ込めないと締まらない状態でした。これにより、明石は「ジョーツを履くために腹を引っ込める」という未来の自分への買い物が確定。チェーンや重いウォレットを下げても支えられる、本当の意味での逆三角形ボディを目指すと宣言しました。
ジョーツ履きたいから痩せる。だからこれもう未来の自分のための買い物になっちゃってるわけですね。
ステューシー×アワーレガシーに見る手仕事の価値
明石が今シーズン特に注目したのが、ステューシー1980年代にカリフォルニアでスタートしたストリートブランドの始祖。創業者ショーン・ステューシーのサインロゴが象徴的。とアワーレガシースウェーデン発のブランド。ヴィンテージライクな質感と現代的なシルエットを融合させたアイテムで欧米のセレクトショップでも人気。の毎年恒例のコラボ。2025年版は日本での販売がなく、海外通販で入手したそうです。
このコラボの肝は「Notwo pieces are the same(二つとして同じものはない)」という一点モノの思想。ステューシーやアワーレガシーがデッドストックで持っていた生地を、リワークしたり、オーバーダイ&プリントを重ねたりして生まれるアイテム群です。
同じ生地・同じプリント・同じシルエットで量産。誰が買っても同じ仕上がり。
デッドストック生地で製作 → 黒くオーバーダイ → シルクスクリーンプリント。1着ずつ表情が異なる。
明石が選んだのは、ポルトガル製サーマルをアップサイクルしたトップスと、イタリア製デッドストックポプリンのシャツ。どちらも黒オーバーダイの上に同色プリントが重ねられた、凝った作りです。横山も「これは自分自身がある」と即座に同意しました。
この流れで話題になったのが、スレッズで揶揄される「ヴィンテージデニム+シェーヌダンクル+ロレックス」のおじさんスタイル。ベルベルジン原宿のヴィンテージ古着の名店。代表の藤原裕氏は古着業界で絶大な影響力を持ち、LDH系のスタイル形成にも大きな影響を与えた。の藤原氏が作ったスタイルが量産化してしまった現在、クロムハーツも含めて「量産型に見えない着こなし」を作るのが難しくなっていると二人は語ります。
コメント鬼レス:筋トレ・買う基準・誤配の哲学
筋トレ回への熱いリアクション
視聴注意としていた筋トレ回が予想外の好評を受け、リスナーから複数の推薦本が寄せられました。HSKさんからは鈴木雅さんの『筋トレの常識を変えるトータルボディメイク』、はっぺさんからはガブリエレ・ライオン著『筋肉が全て』を推薦され、明石はその場で両方とも購入したそうです。
Shogoさんは、ラットプル25kg→55kg、懸垂3回まで成長したという報告と共に、自宅に置く器具のこだわりを披露。スウェーデンのRey Wood Storeに無理を言って取り寄せたウォールナット製の腹筋ローラー(約36,000円)とプッシュアップバーで、機能は安価なものと同じでも「空間様になる美しい道具がトレーニングのテンションを上げる」と語りました。
中川亮氏の「買う買わない基準」
毎日違うコーディネートを自撮りでアップする「自撮り修行」を続けるアーティストの中川亮ヒューマンメイドのステートメントを描いたことで知られるアーティスト。プラダ風カーハートのジャケットを2着、クロムハーツのウォッチベルトなど名作を所有する筋金入りのコレクター。氏から、買い物の2つの基準が寄せられました。
横山は実例として、オーランド・ブルームが着ていた「プラダのカーハート風ジャケット」(約40万円)を諦め、代替で大きめのロングコートを購入&加工した結果、シルエットが野暮ったく10万円ほどを無駄にした体験を告白。「あと30万出せば本物が買えてた」と振り返りました。
素に見えて密、そして誤配の哲学
ペニーさんからは「小森前回までの放送で語られた、ファッションがわかる人だけにわかる秘めた密度の高い装い。「素に見えて密」という言葉で表現されている。は素に見えて密」というテーマに対し、日本の茶道や庭園の「余白」「見立て」の美学に通じるという考察が寄せられました。意図が込められた何気なさこそが洒脱な装いを生む——という洞察です。
これを受けて横山は哲学的な視点を展開。谷川嘉浩哲学者。『スマホ時代の哲学』などの著書で知られ、現代の生活と哲学を接続する論考で注目される研究者。氏の議論を引きながら、ファッション編集者・長畑宏明氏の「全部自分で決めたコーディネートより、プレゼントや友達のブランドが一つ入っている方が洒脱に見える」という投稿を紹介しました。
つまり、コーディネートに偶然性や他者性が入ることで「誤配」が生まれ、それが洒脱に見える。スタイリスト私物文化や「父からもらった」アイテムが愛される理由はここにあるのではないか、という議論につながりました。
10月のリアルイベント開催決定
収録の終盤、ついにリアルイベントの日程が固まりました。2026年10月10日・11日・12日の三連休のいずれかで開催予定。遠方のリスナーも参加しやすいよう、三連休に設定したとのことです。
注目はヘインズボディ(ドミニカ共和国製)の「自分自身タンクトップ」。Supremeが使っているのと同じヘインズボディに、リスナーの名前を手書きで入れるアイデアも検討中。秋のリリースで「来年夏のための寝かし買い」を体現するアイテムになる予定です。横山は「ファングッズにはしたくない」としつつ、希望者にはイベント当日に名前を書く案を提案しました。
今回のコメントテーマは「フューチャーサンクスプロジェクト=未来の自分のための買い物」。Spotifyの番組評価が現在37件しかないことにも触れ、二人は「2時間も聞いている人なら評価してほしい」とリスナーに呼びかけました。
まとめ
韓国・ロッテワールドでの限定アイテムをきっかけに、「自分自身があるか」「J-HOPE着にならないか」という40代特有の問いに突き当たった明石。その答えとして辿り着いたのが、藤原ヒロシ氏の「寝かす」哲学を発展させたフューチャーサンクスプロジェクトでした。
キャピタルのボロジョーツを履くために腹を引っ込めるという未来契約、ステューシー×アワーレガシーに見る手仕事の一点モノへの傾倒、中川亮氏の「買う理由が値段なら買わない」という金言、そして「誤配」の哲学まで——買い物との向き合い方を考え直す材料が詰まった2時間半でした。
10月の三連休にはリアルイベント開催も決定。私物オークション、公開収録、そして「自分自身タンクトップ」というフューチャーサンクスを体現するアイテムも登場予定です。今のうちから日程を確保しておきましょう。
- 「J-HOPE着」になってしまう40代の悩みから、明石は「自分自身があるか」を判断軸に据え始めた
- 藤原ヒロシ氏の「寝かす」哲学を発展させたフューチャーサンクスプロジェクト=今買って数年後にデッドストック状態で着る買い物術
- キャピタルの第2日曜カントリーラインは各色一着のみの完全争奪戦。明石はオリーブのボロジョーツを入手し、痩せる契約も同時に締結
- ステューシー×アワーレガシーは「Notwo pieces are the same」をうたう一点モノコラボ。手仕事への回帰がトレンドの軸に
- 中川亮氏の名言「買う理由が値段なら買わない、買わない理由が値段なら買う」は買い物の指針となる
- 哲学の「誤配」概念から、コーディネートに偶然性や他者性を入れる重要性が浮かび上がった
- 10月10〜12日の三連休にリアルイベント開催決定。公開収録・私物オークション・自分自身タンクトップを予定
