三宮スタート、空腹の朝散歩
朝、神戸・三宮の中心からLYNCH SILVERSMITHまで徒歩約1時間で向かおうという計画からこの回はスタートします。胃の中はほぼ空っぽ、空腹状態での朝の散歩。観光名所を見ながら歩こうという企画でしたが、序盤から早くも「お腹すいてきた」とぼやくふたり。
前日は六甲牛で腹を満たした後、街を六周もして1万6千歩を歩いたという猛者ぶり。それでもまだ歩く意欲が衰えないのは、これから訪れるLYNCH SILVERSMITHへの期待感ゆえでしょう。
前夜の振り返り、バー「室積」での一期一会
散歩しながら前夜のエピソードを振り返ります。こいしさん前回の収録で登場した、神戸でふたりに食事をふるまった人物。のおすすめで訪れたバー「室積」での出会いが、今回のオーダーに繋がる大きな伏線になっていました。
30年続く神戸のオーセンティックなバー。スキンヘッドで一見いかついマスターは、実はとても気さくな方。ふたりがウイスキーを片手にファッション談義をしていると、マスターから「ファッション関係のお仕事ですか?」と声がかかります。会話はやがてシルバーアクセサリーの話題へ。マスターがウォレットチェーンを欲しがっているという話から、ふたりは熱弁を振るいます。
クロムハーツじゃなくて、神戸には素晴らしいシルバーがあるんですよ。室積さんは三十年お店をやられてて、リンチも同じく神戸で三十年。同士なんだから絶対リンチシルバースミスを買うべきだ。
さらに「服で酒を飲む」というマスターの一言にふたりは強く反応。ライトニングエイ出版社が刊行するアメカジ・ヴィンテージ系ファッション雑誌。マニアックな特集が多い。のヴィンテージスウェット特集本を肴に夜な夜な酒を飲むという話に「これはビクティム(犠牲者)だ」と意気投合し、その場でAppleポッドキャストにFashion Victimを登録してもらうという布教活動に成功しました。
神戸ブランド街を抜けて中華街へ
散歩は神戸の高級ブランド街へ。エルメス、ルイ・ヴィトン、バレンシアガ、セリーヌ、ブルネロクチネリ、ミュウミュウ、コムデギャルソンが並ぶ一角で、ふたりは神戸の「銀座の交差点」のような風景に感心します。
聖地巡礼としてクロムハーツ神戸店にも立ち寄りますが、開店前で店内は商品が下げられている状態。ワンフロアの店内を3分で見終わるという経験を、ふたりは古畑任三郎風に再現してみせます。
私の推理では裏の倉庫にあるように思えますが、本当にないんでしょうか? ...そう、何もないんです。これがクロムハーツ。
その後、海に向かって中華街(南京町)へ。朝8時台の中華街はほとんどの店が閉まっており、漂う匂いに足早に通り過ぎることに。「朝の中華街は絶対通らない方がいい」というのが、ふたりが導き出した教訓でした。
結局あと40分歩く予定だった行程は、空腹と疲労に負けてタクシーに切り替え。神戸の港エリアにあるLYNCH SILVERSMITHへと向かいます。
ついにLYNCH SILVERSMITHへ
到着したのは「近畿運輸倉庫」というミントグリーンの倉庫ビル。階段を上がり屋外通路を通ってエントランスへ、という独特の動線。「地面師たちのアジトみたい」と例えるほど、知らなければ絶対にたどり着けない隠れ家的なロケーションでした。
三宮スタート
胃は空っぽ、徒歩で挑戦
高級ブランド街を散策
中華街で匂いに撃沈
タクシーに切り替え
港の倉庫ビルに到着
隠れ家的なアトリエ
店内に入ると、オールバックの店主・矢野氏が出迎えてくれます。バッファローの頭部の剥製、ミリタリーアイテム、贅沢に使われたワンフロア。圧倒的な唯一無二感が漂う空間でした。
オーダーしたもの、その魅力
不可避なオーダーが始まりました。横山昴はベルトのコブラバックルと、ツイスト・チェーンブレスレットをオーダー。明石ガクトはDカフスというD型シルバーキーホルダーをオーダーしました。
横山昴のコブラバックルベルト
コブラバックルの作り方を矢野氏から聞いたところ、銀の板を加熱し、タガネを打ち込んでウロコを手作業で作るという驚きの製法。一つひとつ柄が異なる完全な一点物です。さらに「激痩せして革の交換が必要になっても作り直せる」という嬉しい情報も。
ツイスト・チェーンブレスレット
当初はキャストリンク鋳造(キャスト)で作られた重厚なチェーンタイプのブレスレット。LYNCHの定番モデルの一つ。を狙っていた横山氏ですが、試着した瞬間にツイストタイプに惹かれます。チェーンが90度ずつねじれていることで、見た目はボリュームがあるのに着け心地は驚くほど軽い。
このツイスト形状には、「フランスで見つけた、イタリアの囚人を繋ぐチェーンの形」というモチーフがあるとのこと。工業金具、ハードウェアをモチーフにするLYNCHらしさが凝縮された一品です。十コマでシンデレラフィット、長く人生に寄り添ってくれそうなアイテムとして選ばれました。
鋳造で重厚感あり。ゴリゴリな雰囲気が魅力だが、コーディネートに「ガチな印象」を与える。
90度ずつねじれた構造。見た目はボリュームがあるが軽量。コモリなどの上品なスタイルにも合う。
明石ガクトのDカフス
明石ガクトが選んだのはDカフスという、D型のキーホルダー兼カラビナ。同様の形状の製品は他ブランドにもあるものの、シルバー製で作っているのはLYNCHだけ。Googleレンズで画像検索しても他に出てこない唯一無二の存在です。
横山昴はエビスウエスト大阪を拠点とするデニムブランド。デザイナーの唐沢氏も愛用するLYNCHのカラビナが象徴的。の唐沢氏が愛用する旧モデルではなく、新モデルのカラビナをオーダー。二段階のロック機構、開閉のスムーズさ、すべてがシルバーで作られている精緻さに感動。スプリング部分まで矢野氏が自作の機械で巻いているという徹底ぶりに、ふたりは絶句しました。
大阪・布施のWesco Japan表敬訪問
LYNCH SILVERSMITHを後にしたふたりは、神戸からそのまま大阪・布施へ。Wesco米国オレゴン州創業のワークブーツブランド。1918年創業の老舗で、Boss、Jobmaster、Mr.Lou(ロメオ)などのモデルが代表的。日本ではWesco Japanが大阪・布施に拠点を構える。のジャパン本社・大阪店を訪れます。
近鉄線の布施駅から徒歩約8分。住宅街のど真ん中、目印もなく「ここに本当にあるのか?」と不安になる立地。しかし角を曲がった瞬間、突如としてWescoの看板とガレージが現れます。「いきなりザッバーン」とふたりが表現する、唯一無二の登場感です。
店内には限定モデルや希少なカラーリングのブーツが多数。ブルーベリーカラーのバッファローレザーモデル、ホワイトソールとシングルステッチの組み合わせ、モリソンと呼ばれるウェスタンカット風の7インチショートブーツなど、ふたりの物欲を刺激する品々が並びます。
7月からの値上げと「数珠つなぎ」問題
Wescoは7月1日からの値上げを控えており、本体価格が約1万円アップ、カスタム工賃も千〜2千円程度上がる予定。アメリカ側の値上げに伴うもので、抑え目の改定とのことです。
ここで明石ガクトが語ったのが、YouTuberクッキー氏が言うところの「数珠つなぎ」問題。オーダーしたブーツを取りに行った日に、また新たなオーダーをしてしまう連鎖。煩悩を断ち切るための数珠が、逆に欲望を繋いでしまっている現象です。
明石ガクトの判断は「次の限定レザー・限定パーツの発表を待つ」。今オーダーするのではなく、本当に欲しいものが出るまで履き込みに専念するという賢明な選択です。
本町でのティータイムと旅の総括
大阪・本町に戻ってきたふたりは、「カカオTA五冠」のチョコレート専門店でティータイム。あと5本しか残っていない限定エクレアと、店の一番人気のチョコレートムースケーキを堪能します。
こんなにチョコ尽くしなのに、食感のテクスチャーの違いが口の中でめっちゃ感じる。柔らかい、溶ける、サクサクみたいな。
チョコの伊勢丹。いや、チョコのドーバーストリートマーケットだ。周りをコムデギャルソンという殻が覆ってる。
3週にわたってお送りしてきた神戸・大阪編がここで完結。締めくくりに、横山昴がリスナーに投げかけたのが今回のテーマです。
ファッションアイテムをオーダーしたことがある経験、もしくはオーダーしてみたいアイテムを教えてください。靴、ジャケット、バッグ、シャツ──自分のために誂えたものへの愛着、作り手の顔が見えることで価値観が変わる瞬間について、ぜひ聞かせてほしいです。
新品でしか為し得ないオーダーという楽しみ。自分の意思決定によって作られ、他者には譲りようのない一点物。シルバーに翻弄され、ブーツに引き寄せられるふたりの旅は、ものづくりの現場と顔の見える職人との関係性に価値を見出していく旅でもありました。納品予定は11月。次は受け取りのためにまた神戸を訪れることになりそうです。
まとめ
今回の神戸・大阪編は、Fashion Victimにとって大きな転機となった旅でした。LYNCH SILVERSMITHでのオーダーは、単なる買い物ではなく、職人と直接対話し、その世界観と歴史を肌で感じる体験。そしてWesco Japan表敬訪問は、ブーツに対する愛着をさらに深める時間となりました。
オーダーメイドという行為が持つ意味──それは、自分のためだけに作られた一点物を待つ時間の豊かさ、作り手の顔が見える安心感、そして既成品にはない物語性。ふたりが「ビクティマーの終着駅」と呼ぶこの世界に、リスナー自身もぜひ足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
- 神戸のLYNCH SILVERSMITHは30年続く隠れ家的アトリエ。職人・矢野氏が一人で手作業ですべて仕上げる、知る人ぞ知るシルバーブランド。
- 横山昴はコブラバックルベルトとツイスト・チェーンブレスレットを、明石ガクトはDカフス(D型シルバーキーホルダー)をオーダー。納品は11月。
- ツイスト・チェーンはフランスでイタリアの囚人を繋ぐチェーンの形をモチーフにした、ハードウェアらしいデザイン。
- 大阪・布施のWesco Japanは7月1日から本体価格が約1万円値上げ。カスタム工賃の上昇は抑え目で、限定パーツ待ちが賢明な選択肢。
- 「数珠つなぎ」(納品時にまた新規オーダー)の誘惑を断ち切るには、ストックを買い足さず、今あるものをまず履き込むことが大切。
- オーダーメイドの本質は、自分の意思決定で作られる一点物と、職人の顔が見える関係性。これがビクティマーの終着駅。
