
2020sバラク・オバマが評価し、J・D・ヴァンスにも影響を与えた政治学者、パトリック・J・デニーンが初めて来日しました。彼は「リベラリズム」の追求こそが、個人と国家の間の中間共同体を壊し、かえって個人を国家に依存させたと説きます。今回は、ニューライト、暗黒啓蒙、共通善保守主義──2020年代アメリカの思想的地殻変動を読み解きました。(岡田)
パトリック・J・デニーンの初来日/バラク・オバマが評価し、J・D・ヴァンスにも影響を与えた政治学者/2020年代米国の思想的新潮流──ニューライト、暗黒啓蒙(ダーク・エンライトメント)、テックライト/トランプは「乗り物」に過ぎない/民主主義を重視しながらリベラリズムを批判するニューライト、国家を株式会社のように捉える暗黒啓蒙/『Regime Change』におけるエリート批判とアリストポピュリズム/日本は、リベラリズムなしに民主主義が成立している?/ローカルな民主主義の練習場としての、神奈川県の真鶴町/真鶴町まちづくり条例「美の基準」が、土地や風景とのつながりを守る/自然、場所、時間から個人が切り離され、文化を創造する能力を失ってしまった/「共通善」を取り巻く4つの立場/リベラリズムの追求によって、個人と国家の間にある中間共同体が壊れてしまった/「私たち性(we-ness)」の不在とその希求/宗教社会学者ロバート・ベラー『心の習慣』に見る、アメリカ個人主義の系譜/文化史家クリストファー・ラッシュによる『ナルシシズムの時代』が予見した、セラピー文化の流行と民主主義の危機/多様な人々が集まる場所をつくりたいという理想と、似た価値観の人たちと安全に過ごしたいという欲求/消費や趣味によってアイデンティティをつくる「表現的個人主義」/「世界中の脳がつながるアイデア」に着想を得たSNSが行き着いたのは、差異や独自性を表現する対立の場/強力だが制御された国家と社会のバランスが生む「狭い回廊」/伝統的・地域的な社会規範が、個人の暴力や暴走を抑え込む一方、個人の自由や多様性を強力に抑圧してしまう「規範の檻」を抜け出せるか?/「テクノロジー企業」と「国家主権」の対立・融合が、今後のテーマのひとつに
▼「2020s-twenty-twenties-」とは
2020年代を形づくる思想やアイデアとは何か?
テックから哲学、カルチャーまでを横断し、「思想がリアルポリティクスを動かす時代」に迫っていくPodcast番組。AIや防衛産業が立ち上がる米国テクノロジー業界の世界観や価値観を検証し、その戦略に「巻き込まれざるを得ない私たち」にはどのような選択肢や可能性があるのか? 哲学者の柳澤田実と、デサイロ代表の岡田弘太郎が、時にはゲストを招きつつ率直に話し合います。
▼出演
柳澤田実
1973年ニューヨーク生まれ。関西学院大学神学部准教授。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)、宗教を中心に文化的背景とマインドセットについて研究している。最近の関心テーマは米国テックの右傾化、若者のキリスト教回帰と少子化の関係。
岡田弘太郎
1994年東京生まれ。人文・社会科学分野の研究者と協働し、イノベーション創出や新たなる社会制度の提案を行う一般社団法人デサイロ代表理事。最近の関心は、エディターとしては「いま最も重要なテーマを提示すること」。デサイロ代表としては「持続可能な知のエコシステムを構築すること」。個人的には「東京という都市をもっと面白くすること」。
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▼参考文献
パトリック・J・デニーン(角敦子訳)『リベラリズムはなぜ失敗したのか』原書房、2019年11月
パトリック・J・デニーン(角敦子訳/会田弘継解説)『リベラリズムからの体制転換』東洋経済新報社、2026年9月
井上弘貴『アメリカの新右翼──トランプを生み出した思想家たち』新潮社、2025年6月
ソーラブ・アマーリ(田中洋子訳)『暴政株式会社──私的権力はいかにして自由を破壊したのか』東洋経済新報社、2026年3月
アレクシ・ド・トクヴィル(松本礼二訳)『アメリカのデモクラシー 第一巻(上)』岩波書店、2005年11月
ロバート・N・ベラーほか(島薗進・中村圭志訳)『心の習慣──アメリカ個人主義のゆくえ』みすず書房、1991年5月
クリストファー・ラッシュ(石川弘義訳)『ナルシシズムの時代』ナツメ社、1981年2月
ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン(稲葉振一郎ほか訳)『自由の命運 上──国家、社会、そして狭い回廊』早川書房、2020年1月
▼参考URL
「(インタビュー)米国、思想の地殻変動 政治学者、パトリック・デニーンさん」朝日新聞、2026年7月4日
https://www.asahi.com/articles/DA3S16495837.html
「米国の自由主義は失敗した ポスト・リベラルの支柱が語る保守の行方」朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASV6Z0FYXV6ZUPQJ00FM.html
「(帝国の幻影 壊れゆく世界秩序)第1章 パトリック・デニーン・米ノートルダム大学教授に聞く」朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/DA3S16217358.html
「トランプ氏はただの『乗り物』 政治思想学者パトリック・デニーン氏」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN260KQ0W5A420C2000000/
パトリック・デニーン「米国では民主党が長い冬眠期間に入る可能性がある」クーリエ・ジャポン、2025年4月
https://courrier.jp/news/archives/399691/
「『トランプ2.0』(17) パトリック・デニーン ノートルダム大学教授」Youtube、2026年6月4日
https://www.youtube.com/watch?v=ih2eD6Skf8U
馬田隆明「共通善保守主義 - Common Goodを求める米国保守派の潮流」Substack
https://takaumada.substack.com/p/common-good-conservatism
中央公論編集部「リベラリズムは終わり『共通善』が台頭した ヴァンス副大統領が象徴するアメリカ思想の変動」中央公論.jp、2025年10月
https://chuokoron.jp/international/127473.html
「美の町真鶴~真鶴町まちづくり条例『美の基準』~」真鶴町
https://www.town.manazuru.kanagawa.jp/soshiki/toshikeikaku/toshikeikaku/973.html
Daron Acemoglu, David Autor, Keelan Beirne, Andrew Scott「Baby Busts and Growth Booms: Demographic Change and the Macroeconomy」NBER Working Paper No. 35401、2026年
https://www.nber.org/papers/w35401
▼クレジット
イラスト:髙橋あゆみ
ロゴデザイン:畑ユリエ
企画・制作:一般社団法人デサイロ
└プロデュース:栗村智弘
└リサーチ:古島海
収録:Unknown Unknown
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