初のZOOM収録、2時間のセッティングで何が起きた?
今回のコテンラジオは、これまでの樋口さんの施設のスタジオに3人で集まる形ではなく、ZOOMを使った番組初の遠隔収録で行われました。
遠隔収録では、出演者3人と作家の計4人がそれぞれ別の場所から参加しました。樋口さんによると、機材のセッティングだけで2時間ほどかかったといいます。
最初の1時間、マイクがオンになってないっていう。
樋口さんが画面のスクリーンショットでソフトやインターフェイスの設定を細かく指示したにもかかわらず、深井さんのマイクの音が届かない状態が続きました。原因は、マイクのスイッチが入っていなかったことでした。
スイッチが入ってなかった。そういえばスイッチがあったなと思ってね。
YouTube版では、3人のZOOM画面を見ながら収録の様子を視聴できるようになっています。
Podcast Awardsダブル受賞と、凝りに凝ったトロフィー
収録冒頭の嬉しい発表として、樋口さんは第1回JAPAN PODCAST AWARDS ── 日本のPodcast番組を対象にした賞。2019年が第1回で、リスナーや関係者の投票・選考を経て各賞が決まりました2019で、コテンラジオが大賞とSpotify賞をダブル受賞したことを報告しました。
深井さんの自宅には2つのトロフィーが届いていました。Podcast大賞のトロフィーにはPodcastのロゴ、Spotify賞のトロフィーにはSpotifyのロゴが付いていて、樋口さんは「金印みたい」と表現しています。
(トロフィーのこの部分は)点々ポツポツしてるでしょ。ここはツルツルなの。めちゃくちゃめちゃくちゃ凝ってますよ、これ。
トロフィーは大きなメタルケースに入って届いたそうで、深井さんは「スナイパーがスナイパーライフル入れるみたいな」ケースだったと笑います。
俺もっとびっくりしたのは、深井くんがこれだけ何かを褒める、美しいと褒めるのはなかなか久しぶりだよね。
受賞の発表後、番組の再生数は一気に伸びました。樋口さんがプレッシャーを口にすると、深井さんは「気楽にやっていきたい」と返し、好きなことを楽しく続ける姿勢を確認しています。
アメリカ開拓史はどこからどこまでを語るのか
今回から始まるテーマは「激動のアメリカ開拓史 超大国ができるまで」です。Twitterでリスナーに聞いた際にリクエストが多かったテーマだといいます。
アメリカ全体では大きすぎるため、範囲は開拓史に絞られています。深井さんは、ヨーロッパ人がアメリカ大陸へ渡り、植民地を作って独立し、南北戦争 ── 1861〜1865年にアメリカの北部諸州と南部諸州の間で戦われた内戦。奴隷制などをめぐる対立が背景にありましたが終わるところまでを話す予定だと説明しました。
時期は1500年代後半から明治維新頃の1860年代までで、200数十年分にあたります。深井さんは、日本の江戸時代とほぼ重なると整理しています。
アメリカが出来上がるところから、そのペリーが来るまでがちょうど江戸時代なんですよ。
君主も貴族もいない国はなぜ特殊なのか
深井さんがアメリカを取り上げた理由は、アメリカが世界一の存在感を持つ一方で、形成過程が極めて特殊な国だからです。
多くの国は、王様がいて、その王様を倒して共和制へ移るといった構図をたどります。深井さんによると、アメリカは最初から共和制、民主主義的な形で始まり、君主も貴族にあたる人もいませんでした。
その新大陸に渡って来ようって思ったやつだけで作られてるから、そのいる人たちの傾向もすごいバイアスかかってるんですよ。
深井さんは、その特殊性がアメリカを世界一にしていると語ります。経済面でも軍事面でも、成り立ちの特殊さが今の強さにつながっているという見方です。
樋口さんが「文化ができた状態から国を作り始めた」とまとめると、深井さんはゲームにたとえて、強い状態から始めたものの、手本のない国づくりは難しかったと補足しました。
昔から住む人々が自然に国を作り、王などの君主の統治から共和制へ移るケースが多い
文化と技術を持った移住者が、君主も貴族もいない状態から新しいスタイルで国を作り始めた
この当時って、ほら、他の国はみんな君主国なわけだから、モデルケースがない状態ですよね。
アメリカは「ベンチャー」のような社会実験国家?
深井さんは、アメリカを社会実験的な国だと表現します。新しいことを次々に試し、失敗も成功も重ね、大きな自己矛盾を抱えながら挑戦を続ける国だという見立てです。
樋口さんは、強い権力者が治めるのが当たり前だった時代に、ネイティブアメリカンや黒人奴隷、さまざまな国の人々を含む多様な社会を最初から抱えていた点を指摘しました。
みんなで統治、平等に統治していくっていう世界初のシステムを、それを最初からやろうとしたので、だから本当にすごい実験的なんですよね。
単純に見えるアメリカが「一番複雑」な理由
アメリカには、ハリウッド映画や「USA、USA、イエーイ」のような単純なイメージを持たれがちです。深井さんも、その単純さを確かに持っている国だと認めています。
僕が今まで勉強してきた国の歴史の中で普通に一番複雑だった。日本とかよりも複雑。普通に。
深井さんは、建前と本音の違いはよく日本について言われるものの、アメリカのほうがその差が大きいと語ります。楊さんは「全然そんなイメージない」と驚きました。
多様な言語や出身国の人々がいながら国として続いている点について、深井さんは最大の危機が南北戦争であり、リンカーンが登場して事態を収めていく流れがあったと触れました。
深井さんは、独立宣言で人権の大切さをうたいながら、ネイティブアメリカンへの虐殺も行っていたという二面性も挙げています。
トマトもジャガイモも新大陸から来た?世界史への影響
深井さんは、アメリカの出現が世界史に与えた影響は国単位で見て最大の因子だと語ります。たとえばフランス革命 ── 1789年に始まったフランスの市民革命。絶対王政を倒し、人権宣言を発表しましたも、アメリカの独立革命から影響を受けています。
食文化への影響の例として、深井さんはイタリア料理のトマト、ドイツ料理のジャガイモ、そしてタバコを挙げました。いずれも新大陸がヨーロッパ人に発見されるまで、ヨーロッパにはなかったものです。
ジャガイモも新大陸発見されるまでドイツ人はジャガイモ食ってないですからね。
深井さんは、食文化だけでなく経済、宗教、戦争にまで影響が及んだと続け、楊さんはアメリカがグローバル化の大きな因子になっていると応じました。
月に国を作るとしたら?新大陸のたとえ
深井さんは、アメリカの誕生を、人類が月に移住して新しい国を作る状況にたとえました。月のコロニーの人々と地球側が関わり合い、地球側も変わっていくイメージです。
宇宙に初めて国を作るから、その地球に作る時と国の作り方変えないといけないですよねと。
楊さんは、このたとえを「相当わかりやすかった」と評価しました。深井さんは、文化の違う人々が集まって国を作るものの、実際には同等な関係ではなかったとも付け加えています。
新しい国は、ネイティブアメリカンとの関係、本国イギリスやヨーロッパとの関係を抱えながら形づくられていきます。深井さんは、これがとても複雑な国の作り方だったと説明しました。
南北戦争はなぜ「不可避」だったのか
深井さんによると、北部と南部は、たまたま別のイデオロギーでそれぞれ国の作り方を進めていました。その違いが内部の確執として積み重なり、最終的に南北戦争として爆発していきます。
別々の国づくり
北部と南部が異なるイデオロギーで社会を形成する
内部の確執
作り方の違いが対立として蓄積する
南北戦争
確執が爆発し、一つの国家にまとまるための不可避の戦争になる
樋口さんが「アメリカを学べば国の概念が深く理解できるかもしれない」と話すと、深井さんは、むしろアメリカだけ国の概念が違うことがわかると答えました。
一枚岩になりきれない国が理想を手放さない理由
アメリカは現在も黒人差別などの問題を抱え、一枚岩にはなりきれていません。それでも深井さんは、アメリカが一枚岩になろうとし続け、その努力を放棄していない点を面白いと語ります。
他の国だったら多分その理想と現実の乖離に絶望して早々に諦めるようなことを、比較的にアメリカはそういうのを諦めないタイプの人たちが集まってるなって思う。
樋口さんは、理想と現実をすり合わせ続ける姿勢を、テストと検証を繰り返すベンチャー起業家のマインドに重ねました。国としての歴史が比較的若いことも、その印象を強めています。
深井さんは、ヨーロッパ人のアメリカの歴史は江戸時代以降に始まる一方、ネイティブアメリカンはずっと長い歴史を持っていると補足しました。次回は、そのネイティブアメリカンの話から始まる予定です。
まとめ
アメリカ開拓史シリーズの初回は、君主も貴族もいない状態から手本なしで国を作った「ベンチャー実験国家」としてのアメリカの特殊性を概観する回でした。多様性と自己矛盾を抱えながら理想を手放さない姿が、次回以降の具体的な歴史につながっていきます。
- シリーズは1500年代後半から南北戦争が終わる1860年代までを扱い、日本の江戸時代とほぼ重なる
- アメリカは君主も貴族もいない状態から始まり、その特殊性が世界一の国につながったと深井さんは語る
- 単純なイメージとは裏腹に、建前と本音の差や人権とネイティブアメリカン虐殺の二面性を持つ複雑な国
- トマト、ジャガイモ、タバコをはじめ、新大陸は食文化から戦争まで世界史に大きな影響を与えた
- 北部と南部の国づくりの違いが、一つの国家にまとまるための不可避の南北戦争を生んだ





