思い出のゲームはドラクエかファイナルファンタジーか
今回の番外編は、樋口さんが「ずっと皆さんと喋りたかった」というゲームの話です。最初の問いは、子どものころに衝撃を受けたり泣いたりした「思い出のゲーム」でした。
真っ先に挙がったのは『ドラゴンクエストIII』です。「ベタすぎる」と前置きしつつ、何回遊んだかわからないほど繰り返したゲームとして名前が出ました。
一方で深井さんは、ドラクエは『VI』しか遊んだことがなく、ファイナルファンタジーは『IV』から入った世代だと話します。何作目から入ったかで世代がわかる、という話で盛り上がりました。
意外だったのは樋口さんで、ドラクエを一度も遊んだことがないといいます。理由は世代ではなく、そもそもRPGをほとんどやってこなかったからだそうです。
RPGじゃなくても何でもいい。結構僕ゲームしますんで。
侍とモンゴルを描いた『Ghost of Tsushima』の魅力とは
最近遊んだよいゲームを聞かれた深井さんは、最初「バトルオブ対馬」と言い間違え、樋口さんに正されて『Ghost of Tsushima ── 鎌倉時代の元寇を題材に、対馬で戦う侍を主人公にしたアクションゲーム。海外のスタジオが開発し、2020年に発売されました』の名前を挙げます。
深井さんが評価したのは、侍の姿だけでなく、言葉や音楽まで日本らしく再現されている点です。
言葉とか音楽とかも侍っぽいんですよね。すごく純日本ぽくて。日本人が作ったゲームより日本っぽいですね。
深井さんによると、モンゴルが対馬に攻めてきたこと自体は史実です。ゲームの中の出来事は史実では起きていないものの、日本人として「侍がモンゴル相手に頑張っている」構図に感情移入しやすいと話します。
The Last of Usは何が「天才的」だったのか
深井さんは洋ゲーが好きだといい、その年いちばん衝撃を受けた作品として『The Last of Us Part II』を挙げました。キノコの胞子に感染した人間が怪物化した終末世界で生き延びる、ゾンビものに近いゲームです。
本当に映画を、すごくいい映画を見たかのような感覚になるんですよ。
『Part II』の話をする前に、深井さんはネタバレ込みで前作『The Last of Us』のあらすじを説明します。前作はプレイステーション3の最高傑作と言われていて、深井さんは『Part II』をプレイステーション4の最高傑作だと考えています。
前作のあらすじは、感染しない体質の少女と、物語の冒頭で娘を亡くした中年男性ジョエルの旅です。少女から抗体を取り出すために医療施設を目指す道のりで、心を閉ざしていたジョエルと少女のあいだに親子のような愛情が育っていきます。
喪失
ジョエルが冒頭で娘を失い、心を閉ざす
出会い
感染しない少女と旅をし、親子のような愛情が芽生える
選択
抗体を取り出すには少女を殺すしかないと知る
結末
ジョエルは世界より少女を選び、医者たちを殺して少女に嘘をつく
深井さんは、ジョエルが自分を守るために閉ざした心を開いてしまい、最後に非合理な選択をするまでの心理描写を高く評価しています。ホラーが苦手でもYouTubeのプレイ動画を見て泣いた、と話しました。
続編の『Part II』は、成長した少女が父親役のジョエルに反抗しているところから始まります。後半ではもう1人の主人公が登場し、前半で憎むことになる相手の視点から、同じ時間軸をもう一度遊ぶ構成になっています。
1作目からの少女。ひどい仕打ちを受け、相手を殺しに向かう
殺しに行かれる側。同じ時間軸を反対側の視点から描く
どっちにも正義があって、どっちにも悪があることを理解しながら、どっちにも死んで欲しくもないし、勝っても欲しくないという凄まじい心境になって最後を迎える
無法者の葛藤を描く『Red Dead Redemption 2』
深井さんが歴代2位に挙げたのが、アメリカ開拓時代を再現した『Red Dead Redemption 2』です。深井さんは、登場人物の一人ひとりに良いところも悪いところもあり、本当に存在しそうな人間として描かれている点を魅力に挙げます。
舞台は、コテンラジオのアメリカ史の回でも触れた、無法者が集まっていた時代の終わりごろです。略奪をしながら生きる主人公が、警察組織が整っていくなかで追い詰められていきます。
主人公は犯罪者の境遇から抜け出したいと思っています。ところが、仲間は全員犯罪者で、ほかに生きる術もありません。抜け出せないまま巻き込まれていく心境を、プレイヤーは追体験することになります。
ここで樋口さんが「ゾンビ出てくるんですか?」「バラモス出てくるんですね」とボケを挟み、深井さんが「バラモス出たら台無し」と返す場面もありました。
最近のゲームのトレンドは「追体験」?
深井さんは、ふつうに生きていたら味わわない心境を味わわせることこそ、最近のアメリカの大作ゲームのすごさだと話します。
シナリオライターの最高のプロが作ってる。だから本当に。のっぴきならない感情にさせられる。
樋口さんが「文学作品みたいだね」と言うと、深井さんは『The Last of Us Part II』と『Red Dead Redemption 2』は完全に芸術のレベルに達していると応じました。
深井さんによれば、制作者は感情移入を戦略的に操作しています。たとえば、さっき助けてくれた好感の持てる人物が、あっけなく死んでしまう場面があります。そうした仕掛けを、無理のない人間ドラマのなかに盛り込んでいるといいます。
楊さんは、昔のゲームでよく語られていたドラクエとファイナルファンタジーの対比を紹介します。そのうえで、今のゲームは2つの要素が合わさっていると指摘しました。
主人公が喋らないので、プレイヤーが自分自身になりきる
主人公たちが喋り、別の世界の話を映画のように見る
楊さんの見方では、今のゲームは「入り込んでいるし、映画も見ている」状態です。樋口さんは、グラフィックやVRなどの技術にはやがて慣れてしまうため、ゲーム会社が違いを出せるのは中身の作り込みの部分だろうと付け加えました。
主人公が3人とも「汚いおっさん」の『GTA V』
深井さんはプロの仕事の例として、『Red Dead Redemption 2』と同じ会社が手がけた『Grand Theft Auto V ── 街を丸ごと再現した舞台で、犯罪に手を染めながらのし上がっていく人気シリーズの第5作。2013年に発売されました』も挙げます。
100億円かけてなんかこれでこけたら多分あの会社潰れるんだよ。その潰れる、その運命をかけたゲームの主人公3人とも汚いおっさんですよ。
深井さんによると、『GTA V』は街が1つ再現されていて、その中で犯罪を犯しながら栄達していくゲームです。ギャングや元マフィアなど、イケメンでもない3人が別々に登場し、途中で出会って絡み合っていくストーリーがあるといいます。
楊さんは説明を聞いても「全然わからんな、マジで」と首をひねり、深井さんが「やってみて一回」と勧めていました。
成果を求めない「3分切れ負け」の将棋
ここで話題は、番組内で「将棋専門ゲーマー」と呼ばれる樋口さんに移ります。最近は将棋しか指していないそうで、持ち時間が1人3分の「3分切れ負け」で遊んでいるといいます。
1局は長くても6分で終わるので、トイレのついでに指せます。時間がないときは飛車や角で特攻して終わらせることもあるそうです。
何を得ようとしているのかと聞かれると、何も抽出していないという答えでした。錆取りやお風呂と同じで成果は求めておらず、強くなりたいとも思っていないため、ずっと2級のままだといいます。深井さんも、木にオイルを延々と塗るのが好きだと共感していました。
初めてのRPG『ポポロクロイス物語』と3Dマップの迷子
楊さんの思い出のゲームは『ポポロクロイス物語 ── かわいらしいキャラクターデザインと温かい物語で知られる日本のRPG。プレイステーション版が人気を集めました』です。大学生のときに初めて遊んだRPGだったそうです。
最初はキャラクターデザインが好きではなかったものの、遊ぶうちに「ちんちくりん」な登場人物たちを応援したくなっていったといいます。ラスボスを倒して大団円を迎えたとき、RPGの魅力はこれなのかもしれないと感じたそうです。
それでも、その後はRPGをほとんど遊んでいません。時間がかかるうえ、すぐ結果が出るアクションが好きだからで、物語とアクションを両方楽しめるアクションRPGが性に合っているといいます。
一方で、RPGはエンディングを見れば終われるのに、アクションには終わりがない気がする、という反対の感覚も語られました。
さらに、3Dで視点が動くゲームでは方向がわからなくなるという悩みも出ます。『ドラゴンクエストVIII』で気持ち悪くなってしまい、現実の世界でも道に迷いやすいことが、3Dのゲームを遠ざけた理由の1つかもしれないと話されました。
『ストリートファイターII』で学んだ空虚と、休憩としてのゲーム
格闘ゲームの話題では、小学生のころに『ストリートファイターII ── 1991年に登場した対戦格闘ゲーム。ターボ、スーパーなど派生版が次々に出て、ブームを巻き起こしました』をやり込んだ経験が語られます。
『スト2』から『ターボ』『スーパー』と頑張って多くのキャラを使えるようになっても、シリーズが変わればハメ技も使えなくなり、同じキャラでも別物になります。積み上げたものが消える感覚が空虚で、だから変わらない将棋を指し続けているといいます。
シリーズが変わると技も性能も変わり、培ったものが消える
70歳になっても80歳になっても同じルールで遊べる
深井さんは、自分がゲームをする本来の理由は「頭を使いたくないから」だと明かします。放っておくと思考が止まらないタイプなので、思考を止める休憩としてゲームを使っているそうです。
将棋を指す側もこれに「全く一緒」と応じます。仕事や経営、編集作業、家族のことなど、頭の中で同時に立ち上がっている心配ごとを止めるため、将棋で頭の処理を100%埋めるのだといいます。
ゲーム100パーにすることによって、他のこと考えなくていい時間ができるから。その時間が僕にとってすごい大事なんで。
指5本まで認識するVRで何ができる?
深井さんはゲームとガジェットが好きで、本格的なVRセット『Valve Index ── ゲームプラットフォームSteamを運営するValve社のVR機器。頭に装着するディスプレイと、指の動きを読み取るコントローラーで構成されています』を購入しました。
深井さんによれば、コントローラーは握っているか離しているかを指ごとに認識するので、VRの中で5本の指を動かせます。対応ゲーム『Half-Life: Alyx』では、落ちている缶を握りつぶして投げることもできるそうです。
マガジンを落としたら、自分の体でしゃがんで拾わなければなりません。それでも深井さんは、ゲームとして面白いのは最初の感動だけだと正直に話します。
深井さんがVRにこだわった背景には、中国の深圳で体験したVRシューティングがあります。走る動きまで認識され、本物のようなマシンガン型の銃を撃つ体験が忘れられなかったそうです。
VRの先にあるのは、体を捨てる世界か
仮想世界で暮らす日も遠くないのでは、という樋口さんの言葉に、深井さんは物理的な問題を挙げます。至近距離の画面で目が充血し、目の周りが押しつけられる不快感がつらいといいます。
「脳に直接ケーブルを挿せばいい」という話から、体をなくしたいという話題に進みます。深井さんは、身体性を失うと精神がおかしくなるのではないかと慎重な見方を示しつつも、自分も体が嫌いだと共感しました。
こんなに勉強したいって思ってるのに、勉強したら頭痛くなるから、体としては勉強できない体なわけだよね、あんまり。
深井さんは、OSMAの勉強中も受験勉強のときも、長時間勉強すると体を壊してしまったといいます。そのため、効率を極めるしかなかったと振り返ります。周りが速い車に乗るなか、自分だけポンコツに乗っているようだ、というたとえも出ました。
最後は、電脳空間で生きるなら『ポポロクロイス』の世界で、という話になります。楊さんのキャラは「丸を描いたら終わり」と冗談が飛び、コテンの3DCGメンバーにマッチョな楊さんを作ってもらおうという話で締めくくられました。
まとめ
ゲームの思い出話から始まった今回の雑談は、物語を追体験させる最近の大作の話、成果を求めない将棋、思考を止める休憩としての遊び、そしてVRと身体の話へと広がりました。3人それぞれが、ゲームに違うものを求めていることが見えてきます。
- 深井さんは『The Last of Us Part II』と『Red Dead Redemption 2』を、プロのシナリオで感情を追体験させる芸術レベルの作品と評価した
- ドラクエの「なりきる」とFFの「映画を見る」が、今のゲームでは1つに合わさっているという見方が示された
- 変わらないルールの将棋や、頭を100%埋めて休むためのゲームなど、成果を求めない遊び方も語られた
- 最新のVRは指の動きまで再現できる一方、目の疲れや身体性の問題が残ると深井さんは話した





