なぜサッカーは「見方」で面白さが変わるのか
収録時はちょうどW杯シーズン。小学校入学前からずっとサッカーを続けてきたという木原さんが、どうしてもこのテーマを話したいと切り出します。目指したのは戦術のビジネス論的な解説ではなく、「サッカーはこう見た方がいい」という視点と、それが美意識やビジネスにつながるという話です。
木原さんが指摘するのは、サッカーを楽しめない人が多いという現実です。90分やっても1対0や0対0で終わることも珍しくなく、見方を知らないと派手に点が入る瞬間しか面白みを感じられない、と分析します。小笠原さんも、バスケは人工的に作られたわかりやすいスポーツだが、サッカーやラグビーはわかりにくいと同意します。
見方を知らない人がテレビでサッカーを見ても、まず点が入らない。それ以外に何が面白いのか、というのは単純にサッカーファンでも思っています。
ポゼッションとカウンター、二つの美学
木原さんは、サッカーには「勝つ戦略」と「美しいサッカー」があると整理します。美しいサッカーの代表がポゼッション、つまりボールをいかに長く持ち、パスを綺麗に回して相手を崩すスタイルです。攻めているように見える側が有利に思えますが、現代サッカーではむしろ相手にあえて攻めさせ、ボールを奪って手薄な守備を突くカウンターの方が効率的に得点できる、と解説します。
ボールを長く支配し、パスで相手を崩す。木原さんが「美しい」と感じるスタイル。ただし勝ちきれないことも。
あえて攻めさせ、奪って手薄な守備を突く。個の力が劣っても効率的に得点しやすい。
さらに木原さんが感動したのが「疑似カウンター」というハックです。自陣のゴール前でゴールキーパーや近くの味方とあえてパスを回すことで、相手のハイプレッシャーを誘い出し、そこから一気にカウンターに転じる仕組みです。取られたら即失点というリスクを取れるのは、選手一人一人の足元の技術が上がり、確実にボールを保持できる戦術が確立されたからだ、と説明します。
今からでもこういう戦術が生まれるんだ、この何百年もやっているサッカーに、と感動しました。
木原さんが特に惹かれるのは、個の力で劣ってもポゼッションを貫こうとするチームです。結果的に負けてしまうことが多いとしても、そこにロマンを感じると語ります。バルセロナやスペイン代表がその代表格で、「勝てば何でもいい」ではなく、観客を魅了し、信念と思想を持ってプレーする姿に美学を見ています。
アンチを恐れず結果を出す森保ジャパンの策
日本代表はポゼッションとカウンターの中間、いわば「中途半端」だと木原さんは評します。そして森保ジャパンについては、かつては超アンチ派だったと明かします。サッカーは流れのスポーツで、選手交代や戦術変更で一気にムードが変わる。上手い監督はそこで流れを変えられるが、森保監督はそれが得意ではないと思っていた、というのが理由でした。
ところが今回のW杯を見て、「この人は策士なのだな」と評価が変わり始めた、と木原さんは言います。これに対し小笠原さんは、「そう思わせておく」ことまで含めた戦略かもしれないと指摘。さらに、アンチが生まれることを気にしない姿勢そのものが美学だと語ります。多くの人はアンチを恐れて日和ってしまうが、それが一番しょうもない、というのが小笠原さんの見立てです。
結果を出したらアンチの人が変わるのは、みんな本当は知ってるでしょっていう。でもアンチがいるところで日和るんですよね。それが一番しょうもない。
フィジカル軍団か、ポゼッションか
話は組織づくりへと移ります。現代サッカーではフィジカルが強くスピードのある選手がカウンターに向いていますが、木原さんは自分の体格も踏まえ、大きな相手をいなして足元でボールを回すスタイルに美学を感じると語ります。そして大学やクロステック・マネジメントという会社をどうしていきたいかを考えたとき、フィジカル軍団よりも「美しくポゼッションを持つ」チームでありたい、という思いを重ねます。
これに対し小笠原さんは、現実的な視点を投げかけます。締め切りギリギリになれば、結局ゴリゴリに力押しできる人が欲しくなる。だから「早くやれ」という話でしかなく、ポゼッションをやりたいならちゃんと準備とトレーニングが必要だ、というわけです。負けそうになったら「勝てばいい」に切り替える思考は、美学でやっているチームには難しい、とも指摘します。
小笠原さんが強調するのは、負けをきちんと受け入れ、そこから学びを得るループができているチームはいつか勝てるし、期待も背負える、ということです。逆に、途中まで美学を掲げていたのに、最後だけ「勝つためなら何でもやる」とズルズル切り替わっていく姿は醜悪だ、と厳しく評します。木原さんは、クロステックの活動は短期的なフィジカルで成し遂げようとはしていないと応じ、「いつまでもスペイン、バルセロナでいこう」と締めくくりました。
まとめ
サッカーの見方から始まった雑談回は、ポゼッションとカウンターという二つのスタイルを通して、「美しく勝つ」とはどういうことかという組織論にたどり着きました。木原さんはポゼッションに象徴される信念や美学を大切にしたいと語り、小笠原さんはそれを実現するには準備とトレーニング、そして負けから学ぶループが欠かせないと現実的に補いました。
美学を掲げるなら中途半端に力押しへ流れず、負けを受け入れて学び続ける。それがサッカーでも仕事でも、いつか勝てるチームの条件なのかもしれません。
- サッカーはチームの特性や意図を理解して見ると面白さが変わる。攻めているように見えて実はカウンターを狙う、といった駆け引きに味わいがある。
- ポゼッションは「美しいサッカー」、カウンターは効率的な戦い方。木原さんは信念を貫くポゼッション型に美学を感じている。
- アンチを恐れて日和るのが一番しょうもない。結果を出せば評価は変わる、というのが小笠原さんの見方。
- 美学を貫くには準備とトレーニングが不可欠。負けを受け入れて学び続けるループができたチームはいつか勝てる。
- 中途半端に力押しへズルズル流れる姿勢は醜悪。「いつまでもスペイン、バルセロナでいこう」という美意識で組織を作りたい。
