泳ぐ小笠原、リフティングの木原
収録冒頭、小笠原さんは移動したてで暑いと言いながら、泳いできたと切り出します。55歳になり、最近は泳いでいるそうです。
木原さんは体を動かすのが好きで、家でリフティングをしていると話します。庭が広いのかと聞かれると、狭い場所だからこそ工夫する技術力が高まると返します。
ない中、技術力が高まっていくんですよ、だから。狭いところでどうやって工夫をするかっていう。
一方で木原さんは、泳ぐのは全くダメだと打ち明けます。クロールで25メートルが限界で、それもほぼ息継ぎなしだといいます。
練習してもうまく息が入らず、克服できないままやめたそうです。小笠原さんは教えようかと申し出ますが、二人でプールに入る絵面は嫌だと笑い合います。
コーディングが苦手、という感覚
話題は苦手なツールに移ります。大学のコーディングの授業でも「コーディングはできない」という声があると小笠原さんは言います。
木原さんは、CLIのインターフェイスに慣れない気持ちはよくわかると応じます。
小笠原さんは「ほぼチャットだし、コマンドを覚えればいいだけ」と言いますが、木原さんはチャットとは違う感覚があると返します。自分のコマンドで予期せぬ動きが起きる可能性が不安だといいます。
すぐ、勝手に消えたとか言うんですよ、みんな。いや、それRMとかを自分で押してるからなって思いながら。
木原さんは、Notionのようにユーザーに優しいアプリなら安心できるし、難しくても慣れていける気がすると話します。
難易度が高いと言われるものについては、多分慣れていく耐性は僕あると思うんですけど、ちょっとCLIとかになると、そっちに僕食いついちゃうんですよ。
クラウドコードのように、コード操作がアプリ化されインターフェイスが変わったものなら、そちらのほうが楽だと感じるといいます。
みんなのために作らない、という発想
CLIをExcel風にしたら使う人が増えるのでは、というやり取りから、話は「みんなが使うものとして作る前提」への問いへと展開します。
そのUI、UXをみんなが使うものとして作ってる今本当にいいの?それでみたいな。
小笠原さんは、GoogleスプレッドシートやGoogleスプレッドシートのようなツールも、木原さんが使う機能だけでいいはずだと言います。
必要なときに他の機能を教えてくれて、数回使えばよく使う場所に出てきてくれる。そうやって一人ひとりに合わせて磨かれていくほうがいいという考えです。
デザインシステムさえしっかりしていれば、そうしても破綻しないはずだと小笠原さんは続けます。
さらに、みんなが同じ場所にデータを置くからセキュリティが大変になるとも指摘します。本来は自分の情報は自分のところに置き、自分で守ればいいという見方です。
木原さんは、そんなことを想像したこともなかったが、そうかもしれないと受け止めます。
食事記録アプリを自分で作る
ここから小笠原さんは、自分で作っている食事記録アプリの話に入ります。きっかけは体重を落とすことと、血圧が高めだと感じたことでした。
体重計はWithings体組成計などのヘルスケア機器を手がけるメーカー。データを取得できるAPIが提供されている、血圧計はオムロンと、機器はそのまま使いますが、複数のアプリを連携させて使うのは嫌だったといいます。
結局大事なのは何を食べたかだと考え、食べたものを全部残すアプリを自分で作ることにしました。
仕様書はClaudeなどのAIと一緒に作ります。悩みと作りたいものを伝え、そこにある一言を加えるのがポイントでした。
UIとかUXとかセキュリティは俺専用やから、そんなスケールすることを考えなくていいよっていうと、割とこう仕様がシンプルになってくるわけですよ。
自分専用なので、テストケースもシンプルになります。違う使い方をして落ちても自分のせい、自分のツールだからだといいます。
だって、違う使い方して落ちたら僕のせいなんで。僕のツールなんで。すっげえ楽なんですよ、これ。
自分専用だから割り切れること
小笠原さんは、記録の手間まで自分好みに削っていきます。ウィジェットを押して2秒でシャッターが下り、押しっぱなしの間は音声メモが残せる設計です。
大皿料理なら「3分の1」と声で残し、成分表から八宝菜のタンパク質やカリウムをざっくり計算する。精度も自分基準でいいと割り切ります。
なんかもうざっくりでいいじゃないですか。95パーとかの精度いらんし。85とか80の精度で全然俺いいので。
みんなに使ってもらうアプリなら95%や99%を求められる。その数字を出すために、ねじくり回した嘘が混ざるのが嫌だったといいます。
自分専用だから、写真のEXIF撮影日時や位置情報などが記録される、写真データに付随するメタデータから位置を推測し、店を尋ねたり、撮っておいたメニューから料理を推測したりもできます。データがどこにあるかは誰も知らないからです。
木原さんは、要件だけを聞かせてアプリにしていけること自体がすごい時代だと驚きます。気に入らなければすぐ変えられ、回すのも早いといいます。
2秒の2秒とか、「いやなんで2秒やねん」って思うユーザーのことを気にしなくていい。
小笠原さんは、人のためのデザインの話ばかりの中で、自分のためのデザインを考える授業をやりたいと語ります。木原さんは、それをやるからこそ標準的な人のこともわかると応じます。
自分専用アプリはいくらかかるか
話はコストへと進みます。自分専用アプリを本当に作るといくらかかるのか。小笠原さんの構成では、月額でそこそこかかるといいます。
さくらのアプリ実行環境に、セキュリティを考えて閉じた場所にPostgreSQLのデータベースを置く。そうした構成で月2万2000円ほどになるそうです。
このコンピューティングパワーは10人でも使えるため、10人なら1人2200円。100人なら1人220円になります。
ただし100人だと負荷が上がるので少し上げて月5万円かかるとしても、1人500円で済む。周りの100人から500円ずつ集める、といった発想も成り立つと語ります。
木原さんは、この試算を授業でやると面白いと反応しつつ、自分はインフラやセキュリティを考えたことがないと打ち明けます。
大学でも一般企業でも、成り立っている製品を導入するのが当たり前だからです。これに対し小笠原さんは、それは成り立っているという期待値にすぎないと返します。
成り立ってるという期待値だけですよって話なんですよ。だって自分で確かめてないんだから。
Googleでも情報漏洩は起きているし、データセンターの事故も原因はさまざまだと小笠原さんは指摘します。多くはSLAで9割ほどの保証がされているにすぎません。
だからこそ消費者はどんどん我儘になる、と小笠原さんはいいます。消費するだけの立場だからです。
作る体験が視野を広げる
小笠原さんは、小中学生のうちに自分で作る体験をしてほしいと語ります。作ることで想像の範囲が広がるからです。
木原さんは、自分専用アプリを作っても楽しんでいるだけで、インフラや拡張のステップまで進まないと振り返ります。小笠原さんは、それは考えるきっかけがなかっただけではないかと返します。
例として小笠原さんは、レアアースが中国に集まる理由を挙げます。希少な物質が固まっているのではなく、使えるように精製する過程で公害が出るため、その工程を中国に頼ってきたのだといいます。
世界の不都合な真実の一つとして、中国頼りになってるのは中国に汚いものを全部お願いしてたっていう。
木原さんは、レアアースが重要だとは10年、20年前から理解していたが、それが何なのかは希少価値が高いものだと思っていたと語ります。一歩先を学ぼうとする姿勢は、機会があっても自然には育まれないのかもしれないと話します。
小笠原さんは、学ぶかどうかは自分の仕事や生活とのくっつき度によると言います。自分にとって重要なことなら「そもそもなぜこうなっているのか」を考えるからです。
その例として、雇用と会社の関係を挙げます。報酬格差に本気で憤るなら、いっそ会社を作ったほうが早いというのが小笠原さんの考えです。
それをちゃんと考えようと思うと、会社作った方が早いと思うんですよね、僕。
入金サイクルと給与のサイクルを合わせないと最初は死ぬ、といった仕組みは、小笠原さんにとってはプログラムのコードと同じだといいます。だから作ってみればいいという発想です。
会社は仕組みをわかっていて、雇用される側はわかっていない。その差から会社が搾取しているように見えることを、小笠原さんはアンフェアだと指摘します。
売上1億でも粗利や人件費、諸経費を差し引けば赤字になりうる。その構造を理解せずに文句を言うと損だと語り、だからこそ自分で作ってみたほうが早いと締めくくります。次回に続きます。
まとめ
AIで自分専用アプリを作る体験を軸に、みんなのために作らない割り切りの楽さと、自分で作ることで仕組みへの想像が広がることが語られた回でした。
- AIに「自分専用だからスケールは考えなくていい」と伝えると、仕様もテストもシンプルになり、作るのが楽になる。
- 精度やUIを自分基準で決められるため、みんな向けなら求められる高い数字や設定の複雑さから解放される。
- 自分専用アプリの月額コストは、同じ環境を何人で分けるかで1人あたりの負担が大きく変わる。
- 導入している製品が「成り立っている」のは期待値にすぎず、消費するだけでは我儘になりやすい。
- 自分で作る体験は、レアアースの精製や会社の仕組みなど、身近でない事柄への想像力も広げる。
