そもそもアナログ規制とは何か
今回のテーマは「アナログ規制って何なの?」という素朴な疑問です。
川崎さんによると、アナログ規制とは、法律や条例の中に残っている「昔ながらのやり方でなければダメ」というルールのことです。
例えば、必ず職員が現地に行って目で確認する、紙の書類を窓口に持っていく、掲示板に張り出す、といったルールが、これまで何千件、何万件も残っていたと話されています。
ルールが制定された当時は合理的だったものの、今の技術水準ならデジタルでもっと正確に、もっと早くできることが多いといいます。それでもルールが昔のままだから使えない。これがアナログ規制だと説明されています。
コロナ禍で、ハンコを押すためだけに出社していたような例もあったと振り返られています。
国は98%、自治体はこれから
国では、目視や押印、常駐・専任、対面といったやり方を縛った法律や条例、約1万条項を一気に見直しにかけたそうです。
その完了率は、今では98%くらいまで進んでいるといいます。ほぼ100%に近い状況です。
一方で、地方自治体は独自の条例や規則を持っているため、見直しは各自治体でやってもらう必要があると話されています。
ただ、自治体には見直しに割ける人数がいない、今までの業務が変わってしまう、といった事情があり、なかなか勇気が出ない状況だと考えられています。
そこでデジタル庁は、うまくいった成功事例をデジタル庁ニュースで発信しているといいます。今回はその中から3つが紹介されました。
郡山市:介護認定の確認を40分から5分へ
1つ目は福島県郡山市の事例です。テーマは要介護認定事務の効率化です。
家族に介護が必要になったとき、まず市役所に申請し、介護度の認定を受けます。この認定手続きの裏側では、膨大な事務作業が発生していました。
郡山市の申請件数は年間1万7千件以上。74項目にわたる認定調査票を、職員が1件ずつ目視で確認していたそうです。
1件あたり平均40分。チェック項目が多い上に手書きの癖もあり、読み取りに時間がかかったり、見落としのリスクがあったりしたといいます。職員の残業時間は月平均43時間で、市全体の平均の約4倍にまで膨らんでいました。
そこで郡山市は、AIの自然言語処理技術を活用した新しいシステムを導入しました。
基本調査のチェック項目と特記事項の記述内容に矛盾がないかをAIが自動でチェックし、不整合があれば疑義マークをつけます。職員はそこを初めて目で確認する、という仕組みです。
その結果、1件あたりの確認時間は40分から5分になりました。残業時間も月43時間から13時間へと、約3分の1になったといいます。
さらに、要介護認定審査会もオンライン化しました。以前は年間380回の審議会のたびに大量の紙資料を印刷・製本・郵送していましたが、タブレットでペーパーレスにしたそうです。
これにより、委員も移動せずその場で参加できるようになりました。
担当者のコメントが印象的だったと川崎さんは話します。
AIに100パーセントの精度を求めがちなんだけれども、AIが80パーセントを担って、残りの20パーセントを人間が担保すれば十分に業務効率化ができますよと。なので、アナログとデジタル、人とAIというものの、両方の力を合わせることが大切ですと。
1件40分の目視確認、残業月43時間、審議会は紙資料を印刷・製本・郵送
AIが疑義を検出し1件5分、残業月13時間、審議会はタブレットでオンライン参加
秋田市:1人が2ヶ月で858件を点検
2つ目は秋田市の事例です。市長直轄のデジタル化推進本部が9名体制で構築されています。
アナログ規制の見直しは、2025年5月に着任した主査が主担当として進めていますが、この主査は着任するまで「アナログ規制とは何ぞや」という状態だったそうです。
そんな状態にもかかわらず、2ヶ月で858件の条例や規則を点検し、約4ヶ月で2千件の要綱・要領の点検まで完了させたといいます。
どうやったのか。ポイントは3つあると紹介されました。
担当部署に渡す前に、余計なものをそぎ落とす「枝払い」を行い、本当にチェックしてほしいものだけをパスさせたといいます。
使えるものは何でも使うという姿勢が、作業の効率化につながりましたと。
築上町:人口1.6万人の町、係長1人の危機感
最後は福岡県築上町の事例です。人口約1万6千人の小さな町です。
この町では、とある係長が1人でアナログ規制の見直しをやっているそうです。職員の数も少なく、200人くらいだといいます。
なかなかDXの推進が進まなかった中で、この係長が見直しに踏み切った動機は「危機感」だったと話されています。
アナログ規制の代表である押印の見直しへの着手が、他の自治体より3年、4年遅れてしまった。その反省から、アナログ規制も後回しにするとまた遅れると考えたそうです。
やるなら今やるしかない。そう決断し、デジタル庁の個別支援に応募してくれたといいます。
デジタル庁と一緒に見直しを進め、何が何でもやり遂げるという強い思いを持って取り組んでくれたと紹介されました。
なぜ「今」やらなければいけないのか
川崎さんは、こうした「今やらなきゃ間に合わない」という意識がとても重要だと強調します。
各市役所は日頃の業務でもうパンパンで、DXへの転換は明らかに日頃の業務のプラスアルファになるため、それだけでもきついといいます。
ただ、今やらないと、市役所は今後さらに人口減少で人が減っていきます。
DXを後回しにすると、もっと少ない人数でこの過渡期を迎えなければならず、本当に辛い思いをしてしまうと考えられています。
デジタル庁はしっかり伴走型支援をするので、各自治体はぜひ頼ってほしいと呼びかけて、この回は締めくくられました。
まとめ
アナログ規制とは、目視や押印など昔ながらの手段を義務づける古いルールのことです。国はほぼ見直しを終え、次は自治体の番です。郡山市、秋田市、築上町の事例は、AIと人の役割分担や現場の危機感が行政を動かすことを示しています。
- アナログ規制は目視・押印・対面などを縛る古いルールで、国の見直し完了率は約98%まで進んでいる
- 郡山市はAIの矛盾チェック導入で介護認定の確認を1件40分から5分に、残業を月43時間から13時間に短縮した
- AIに100%を求めず、8割をAI、2割を人が担う役割分担が効率化の鍵だと語られた
- 秋田市はAI活用・RPA・仮判定の3つの工夫で、1人が短期間に大量の条例・規則を点検した
- 人口減少が進む前の「今」こそ着手すべきで、デジタル庁が伴走支援すると呼びかけられている

