コバホークらと訪れたキオクシア四日市工場
川崎さんは、自民党の小林鷹之政調会長や数名の国会議員とともに、8月22日の土曜日にキオクシアの四日市工場を視察しました。
何度か足を運んでいる場所ながら、改めて「とんでもない場所だ」と感じたといいます。
半導体はニュースで毎日出てくるのに、実際に何がどうすごいのかは伝わりにくい、と川崎さんは指摘します。
この世界の3割を作っている工場がなぜ三重県にあるのかというお話を、できるだけ噛み砕いてお届けしたいと思います。
キオクシアとNANDフラッシュメモリの歩み
キオクシアが作るのは、パソコンやスマートフォンで使われるNANDフラッシュメモリという記憶装置です。
スマホの写真もパソコンのデータもここに記憶され、電源を切ってもデータが消えないのが特徴だと説明されました。
この技術は1987年に日本で発明され、当時は東芝の時代でした。1991年には世界で初めて4メガビットの製品として世に出た、世界初の商品だといいます。
四日市の拠点が立ち上がったのは1992年で、技術の登場とほぼ同じタイミングでした。
2000年からはアメリカのサンディスクと合弁会社の形で開発も量産も一緒に進め、この座組みは四半世紀続く珍しい成功例だと川崎さんは話します。
2019年には東芝グループから独立し、キオクシアという社名になりました。今年で7年目にあたります。
その後、岩手県北上市の工場を拡張し、今回視察した四日市の第七棟が完成。世界最先端の第10世代NANDフラッシュメモリが発表されました。
世界の3割、3枚に1枚が日本製
NANDフラッシュメモリの生産量は、世界全体の約3割をキオクシアが占めているといいます。
つまりフラッシュメモリの3枚に1枚が日本製で、それが三重県四日市市で作られていることを、川崎さんは誇らしげな数字だと語ります。
工場の敷地面積は69万4000平方メートル。ディズニーランドがすっぽり入る大きさだと言われています。
この敷地に製造棟が7棟建ち、約9000人が働いているということです。
天井を走る無人搬送車と400キロの搬送距離
9000人が働く一方で、川崎さんは工場の仕組みそのものにも改めて感激したといいます。
半導体は、自動車工場のようにベルトコンベアで一直線に流れるものではありません。同じ工程を何百回も繰り返すのが特徴です。
製造してコーティングして、という工程を何百回も繰り返すため、製品は工場の中を行ったり来たりし、動線がとても複雑になります。
そこで採用されているのが、地面ではなく天井を走るレールです。シリコンウェーハを25枚まとめて密閉したケースが、天井のレールを伝って運ばれます。
無人搬送車が天井を走り、次の装置の真上まで来るとアームが伸びて自動で下ろし、次の工程へ運びます。これを人の手を介さず全自動でおこなっているといいます。
なお、この搬送車を製造しているメーカーについて、川崎さんは伊勢市の村田製作所だとうろ覚えで言及しています。{要確認: 搬送車の製造メーカー名}
さらに、この仕組みは棟ごとに完結していません。7つの棟の間に搬送路がかかり、有機的につながっています。
全体をITシステムで統合管理する「総合生産」という形だといいます。1棟あたりの建屋は中国や韓国のメーカーより小さいかもしれないものの、全部がつながっているため世界最大級と呼ばれるそうです。
7棟すべてで製作工程をおこなうと、搬送距離は400キロに上るといいます。
400キロってなると、この三重県から東京くらいまでですね。それが四日市のあの工場の中で全部行われているっていうのは、めちゃくちゃすげえなと思いました。
何百回の繰り返し
同じ工程を繰り返すため動線が複雑になる
天井のレール
シリコンウェーハを25枚密閉して天井で搬送
無人搬送車が自動化
アームで下ろし次工程へ人の手を介さず運ぶ
7棟を有機的に連結
搬送路でつなぎITシステムで統合管理
平面から積み上げる三次元フラッシュメモリへ
続いて、どんなフラッシュメモリを作っているのかという技術的な話が語られます。
昔のフラッシュメモリは平面で、データを記憶する部分をびっしり敷き詰めていました。容量を増やすには一つ一つを小さくするしかなく、毎年小型化を進めていたといいます。
しかし平面で小さくしすぎると、半導体同士の距離が近づき、電気的に干渉してうまく動かなくなってしまいます。
そこで、タワーマンションのように上へ上へと積み上げる方式が始まりました。これが三次元フラッシュメモリです。
キオクシアはこれをBiCS FLASHと呼び、画期的な三次元フラッシュメモリを世界で初めて量産化したといいます。
規模のイメージとして、髪の毛の太さがおよそ60ミクロン、そのさらに6分の1ほどの厚みの中に200層以上が積み上がっていると説明されました。
肉眼で見えるものではなく、川崎さん自身も工場では拡大した図で説明を受けたといい、聴くだけではピンとこないかもしれないと率直に話しています。
平面に記憶部を敷き詰め、小型化で容量を増やす。近づきすぎると電気的に干渉する限界があった
上へ積み上げる三次元フラッシュメモリ。薄い厚みの中に200層以上を積層する
AIが変えたシリコンサイクルと電力・水・人材の課題
ここからが一番面白い話だと川崎さんは前置きします。半導体には昔から「シリコンサイクル」という言葉があります。
需要と供給がずれ、好調と不況が波のように繰り返す現象で、谷が来ると各社が苦しくなります。キオクシアも数年前まで相当厳しい時期があったといいます。
では、AI時代にこの波はどうなるのか。渡辺副社長は、波はなくならないものの、谷が浅くなり位置そのものが一段上がったのではないかと話したといいます。
理由はAI用のデータセンターです。生成AIから推論向けの需要が一気に立ち上がり、膨大なデータを読み込み吐き出すフェーズに入っています。
それをいかに早く、省エネでやれるかが大きなポイントとなり、それを実現するためにフラッシュメモリが不可欠になったと説明されました。
一方で、高性能メモリの研究開発を進めるには、広い場所と、電力・水が大量に必要になります。
電力については、四日市は中部電力の協力でかなりの電気を仕入れられるものの、岩手県は弱く、東北電力への協力をお願いしたいと語られました。
水の使用量も膨大で、電気よりはるかに使うほどだといいます。垂れ流していては持たないため、いかにリサイクルするかが最も重要になっているとのことです。
最後に川崎さんは人材育成にも触れます。工場で働く人を増やすには人材を育てる必要があると話します。
学校が東京に集中している現状に対し、三重大学に情報工学を学ぶ場を作ってキオクシアと連携したり、鈴鹿高専が人材を供給できる仕組みがあるとよいのではないか、という考えを示しました。
まとめ
世界のNANDフラッシュメモリの約3割を担うキオクシア四日市工場の現場から、技術の歴史、全自動の搬送システム、そしてAI時代の展望と課題が報告されました。
- NANDフラッシュメモリの世界シェア約3割を担う工場が三重県四日市にあり、3枚に1枚が日本製
- 同じ工程を何百回も繰り返すため、天井を走る無人搬送車で全自動化し、7棟の搬送距離は400キロに上る
- 平面から三次元へと構造が進化し、キオクシアは三次元フラッシュメモリを世界で初めて量産化した
- AIの推論需要でシリコンサイクルの谷が浅くなり、フラッシュメモリが不可欠な存在になった
- 今後の課題は電力・水の確保とリサイクル、そして地方大学・高専と連携した人材育成
