「友達ってどこから?」で始まった公開収録
この回は公開収録です。冒頭、すがけんさんはいつもの自己紹介で肩書きを言い間違えかけ、川原卓巳さんに「1年やってるのにタイトルコールがあやふや」とツッコまれます。
もうかれこれ1年やってるのにタイトルコールあやふやなの本当にやめて。
ゲストは、「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコムの代表、青木耕平さんです。青木さんの記憶では、すがけんさんとちゃんと話すようになったのは2017〜2018年頃だそうです。すがけんさんがスマートニュース ── ニュースアプリ「SmartNews」を運営する日本の企業。すがけんさんは現職の前にここで働いていましたにいた頃、ある大手企業のパーティーで見かけたのが最初だといいます。
その後、明石さんの紹介で親しくなり、仕事と関係ない場で付き合いが続いてきました。
すがけんさんは、青木さんのポッドキャスト「考えすぎフラグメンツ」の最新回が「友達の定義」をテーマにしていたことを持ち出します。その回で出てきた定義が、すがけんさんには気になったようです。
(その回の結論は)何もない時、「飯行きましょうよ」って言えるのが友達っていう定義だったんで。青木さん、僕のこと友達と思ってくれてんのかなって。
青木さんは、すがけんさんのことは明確に友達だと思っていると答えます。そのうえで、付き合いが長いのに距離が縮まらないと言われることが若い頃からよくある、と打ち明けました。脱線気味の話題は「フラグメンツの方で続きを」という流れになり、本題へ移ります。
28歳まで実家の子供部屋。クラシコムはどう始まった?
川原さんが最初に聞いたのは、クラシコムという会社がなぜできたのかです。青木さんは、自身の経歴を「あまりにひどすぎて」と振り返ります。
青木さんは高校卒業後の約10年、毎日は働いておらず、28歳まで実家の子供部屋にいたといいます。30歳になる直前に結婚したときも無職で、どこかに入社して生きていくのはほぼ不可能だと感じていたそうです。
起業を意識したきっかけは『金持ち父さん貧乏父さん ── ロバート・キヨサキによるお金と資産形成についてのベストセラー。投資家やビジネスオーナーになることの価値を説いた本として知られています』でした。青木さんは、本にあった「いい投資家になるには、まずビジネスオーナーになりなさい」という一節を素直に受け取ったといいます。
クラシコムを作ったのは34歳のときです。最初に取り組んだのは、賃貸不動産のCtoCのマーケットプレイスでした。青木さん本人も「ベタにスタートアップをやろうとしていた」と話しています。
しかしその事業は不調に終わり、3か月後にはキャッシュアウトする見通しになります。会社に残っていたのは100万円ほどでした。青木さんは、手伝ってくれていた妹さんへの償いとして、妹さんが行きたがっていた北欧へ連れていくことにします。これが「北欧、暮らしの道具店」の始まりでした。
いや、だってラスト100万円のキャッシュを何か償い旅に使っちゃダメですからね。本来は。
青木さんによると、当時は完全な自己資金でやっていたそうです。起業した年には子どもも生まれていましたが、本人はそれほど心配せず、楽しくやっていたと振り返っています。
ここまでの青木さんの歩みを、年齢と出来事で並べると次のようになります。
旅費を取り返すはずの北欧食器は、半分割れていた
スウェーデンへの旅は、1週間から10日ほどの観光のつもりでした。それでも青木さんは「お金だけ使って帰ってくるのは癪に障る」と感じ、ヤフオクで売って旅費を取り返せるものはないかと妹さんに聞きます。
妹さんの答えは、北欧のヴィンテージ食器は日本で人気がある、というものでした。青木さんはサラリーマン時代に作ったクレジットカード3枚を使い、限度額まで買い付けます。旅費に約100万円、仕入れにおそらく約120万円を使ったそうです。
(クレジットカードの限度額は)最初に付与される与信額です。
ところが、持ち帰った食器はかなり割れていました。青木さんによると、現地の郵便局に持ち込んだ時点で、「こちらが上」の矢印もFRAGILEの表示も無視され、箱を縦にして積み込まれてしまったそうです。
皆さん聞いてる皆さんね、これね、後に上場企業になる会社のスタートの話です。お間違いないように、本当に。
川原さんは、このスタートと比べれば「自分のスタートはまだ大丈夫」と思える人は多いはずだと笑います。後に上場する会社の創業期が、計画どおりではない出来事の連続だったことが伝わる場面です。
なぜ通販だったのか。お客様リストと「1か所で働ける」構造
食器の半分ほどが割れたため、利益はもう出ません。それでも、仕入れた120万円分のうち約60万円分の在庫は残っていました。青木さんは、この在庫を使って何かやれないかと考えます。
青木さんは以前から、通販というビジネスを真剣に研究していました。自分に向いていると感じていた理由の一つが、通販の命は「お客様のリスト」だという点です。
リストを蓄積するほど、こちらから案内できるお客様が増えていきます。青木さんは、真面目にやっていれば時間をかけるほど事業環境が良くなる構造だと説明し、短期集中で頑張るのが得意ではない自分でもコツコツやればやれそうだと感じたといいます。
リストを蓄積する
通販の命はお客様のリスト
案内できる人が増える
こちらから案内できるお客様が時間とともに増える
事業環境が良くなる
真面目にやっていれば、続けるほど基盤が強くなる
もう一つの理由は、通販なら1か所で仕事ができることです。青木さんはテレビで、九州にある再春館製薬所の巨大な平屋のオフィスでみんなが働く様子を見て、1か所に集まって働けるなら自分でもマネジメントできるかもしれないと思ったそうです。
当時の青木さんは本のせどりで家族が食べられる程度は稼げるようになっており、時間に余裕がありました。そこで、残った食器を売る場所としてECサイトを作ります。2007年に開業したこのサイトが「北欧、暮らしの道具店」で、屋号は当初から今と同じでした。
才覚あった。そこに才覚あっちゃった。
自分用に作った車を運転している
すがけんさんは、多くの経営者に共通するのは、自分に向いているビジネスが何かをなんとなくわかっていることだと話します。青木さんも、クラシコム以外の会社を経営できる気はしないと答えます。
青木さんはクラシコムの経営を、自分用に作った車にたとえます。アクセルがハンドルのところにあるような、自分にとってだけ使いやすい車です。ほかの人がそのコックピットに座れば戸惑うし、青木さん自身も普通の車を運転すればすごく下手だろう、と話しています。
すがけんさんは、シリコンバレーで伸びている会社にも、ほかと違う仕組みやルールがあると続けます。
Googleだって[[20%ルール]]があるとかも、あれも全然普通の会社じゃないわけだし。
すがけんさんの話す20%ルールは、Googleで知られる、勤務時間の一部を本来の業務以外の取り組みに使ってよいとする仕組みのことです。すがけんさんは、従来どおりにやるのは自分たちには無理だと前提に置くこと自体が良いことだと考えています。
すがけんさんと青木さんが似ているのは、難しいことや頑張ることをあまりやりたくない点だといいます。難しいことはたくさん頑張らなければならず、うまくいく確率が下がりそうだからです。
青木さんは、競争に勝てる自信がないと話します。競争環境で白兵戦になれば負けることが確定しているので、相手が近づいてこないうちに何とかしなければならない、という感覚です。
青木さんは自分を、会社を離れれば「モビルスーツを降りたアムロ」のような存在だとも表現します。自分の弱さやダメさをカバーするための変わった仕組みとして、会社を作っている感覚があるのかもしれない、と語りました。
プロ経営者みたいな人を連れてきて、Googleを会社化しようみたいな時期ももちろんあったわけじゃないですか。でもあれが全くワークしなくて、やっぱりGoogleはGoogleでしか存在できなかった。
アンラーンのコストより、元お客さんを採るという選択
すがけんさんは、プロ経営者がクラシコムに入ったらどうなるかを青木さんに聞きます。青木さんは、やってみたことがないので何とも言えないとしたうえで、クラシコムの採用の特徴を話し始めました。
クラシコムでは、エンジニアや会計、法務などの専門職を除くと、経験者の採用がすごく少ないそうです。コンテンツを作る人も、もとは建築の仕事やメーカーの営業だった人が転職してきたり、新卒から育てたりしているといいます。
青木さんは、他社で身につけたやり方も素晴らしい力だとしたうえで、クラシコムではそれをアンラーン ── 一度身につけた知識や習慣を意識的に手放し、学び直すこと。新しい環境に適応するために古いやり方を捨てる過程を指しますしてもらうコストが大きすぎると話します。ラーニングのコストよりアンラーンのコストのほうが大きい、という見方です。
すがけんさんは、クラシコムの人材の最大の共通点は「元お客さん」であることだと指摘します。青木さんは、その理由を「素敵」のイメージの違いから説明しました。
青木さんによると、頭の中にあるビジュアルを写真やデザインにする技術は教えられます。一方で、クラシコムにフィットしない「素敵」のイメージを持つ人に、イメージ自体を持たせるのはほぼ不可能だといいます。例として挙がったのは、青木さん自身も好きだというハードコアパンクの世界観でした。
だって(センスの合わない人に)イケてると思う感覚自体をうちに合わせろって言ってる話になるから。
青木さんはさらに、人に一番強制できないのは「恥ずかしいこと」だと話します。マスコミや出版の世界で「お前の感想はいらない」と教えられてきた人は、自分の主観を出すことを気恥ずかしく感じます。クラシコムでは自分がどう思うかを表現することが求められるため、その気恥ずかしさを越えるのは頭の良さや技術とは別の難しさがあるそうです。
そこでクラシコムは、もともとお客さんとして関わってくれていた人を採用します。素人に近い人を戦力化する仕組みや道具も作り込んできた結果、今では社員の8割5分ほどが元ユーザーだといいます。
SKUを絞り、1つずつ当てにいく
すがけんさんは、元ユーザーどころか現ユーザーでもあるため、新商品が出ると社員が欲しがってしまうという話を紹介します。青木さんによると、人気商品がすぐ売り切れることがないよう、社員は発売後しばらく注文できないルールがあるそうです。
(お客さんだった社員が)自分たちがいいなと思って企画して作って、欲しくて我慢してるって、それは売れますよ。
青木さんは、こうした人の打率が高くなるように開発数を絞っていると話します。クラシコムのSKU ── Stock Keeping Unitの略で、在庫管理上の最小単位。色やサイズ違いも別に数えるため、実質的な商品の種類数を表しますは現在2000ちょっとです。今期のガイダンスで約100億円の事業規模なら、1万や2万あっても不思議ではないといいます。
SKUが少ないと、年間に開発する数も少なくなり、1つあたりにかけるコストや手間をしっかりかけられます。青木さんは、数打ちゃ当たるのロングテール型ではなく、1つずつ大ヒットを狙うブロックバスター ── 大ヒットを前提に1作品・1商品へ資源を集中させる戦略。映画業界の大作主義などで使われる言葉です型でやっていると説明します。
たくさん作り、どれかが売れればよい。売れなかったものはセールで売り切る
SKUを絞り、1つあたりに手間をかける。お客様の感性を持つ人たちで当たる幅を見極める
ただし、絞った勝負ができるのは、少なくとも「この幅のものを作ればいける」とわかる人たちがいるからです。青木さんは、ほとんど全ての職種をお客様としての感性を持つ人で構成していると話します。
すがけんさんは、ここに採用の「負の法則」があると補足します。企業は人に困り、求職者はお金に困っているため、どんな人でもいいから採る会社と、どんな会社でもいいから働きたい人のマッチングになりがちだという見方です。
(クラシコムの採用は)もう全然そのミスマッチ度合いがない法則で採用ができてるっていうのがやっぱすごいと思うんですよ。
外れたときの「後工程」がプロパー消化率95%を支える
青木さんは、元ユーザーでも魔法使いのようにお客さんのインサイトを言い当てられるわけではないと続けます。予想どおりにいかないことは多くあるそうです。
そこで効いてくるのが、SKUを絞っていることです。投入する型の数が少ないため、うまくいかなかったときに、コンテンツを全部作り直したり別の切り口で伝え直したりといった後工程に手間をかけられます。
物自体を変えるじゃなくて、伝え方や届け方や訴求ポイント変えたりとかっていう後工程。
型が多い会社では、外れた商品一つひとつに手をかけられず、セールやクーポンで値段を下げるしかなくなります。青木さんによると、クラシコムは値段以外に取り組めることが多いため、プロパーの消化率95%ほどを創業以来続けてきたそうです。
商品のリリースは平日の朝が多く、数時間で初動から結果が見えてくるといいます。まずいとなれば午後には関係者が集まり、夕方までに課題をまとめ、翌日からフォローの活動を始めます。
すがけんさんは、こうした動きができるのはクラシコムが1つのオフィスでやれているからだと指摘します。青木さんによると、実際にはリモート中心でオフィスにいる社員は2割もいないそうですが、コミュニケーションは非常に円滑だといいます。
青木さんがもう一つ挙げたのは、担当者が「ダメかもしれない」と思う商品は出さないことです。今シーズン何型と決めていても、ふわっとしたものはドロップできるため、担当者は「いける」と思った商品だけを出し、後工程のモチベーションが途切れません。
青木さんは、企画能力以上に後工程の力が結果に効いているのではないかと話しています。時間ごとの予算と実績の乖離を見て、来月出す予定だった商品を急遽リリースするなど、現場で細かく手を打っているそうです。
世界の法則に逆らわず、世界から「カンニング」する
すがけんさんは、青木さんがほかの人には不都合に見えるやり方を快適にこなせているのは、法則に従っているからだと話します。青木さんも、世界を変えようという感覚はなく、どういう力学が働いているかにしか興味がないと答えます。
青木さんにとって、SKUの話も法則の一つです。正解が全くわからないなら型を増やして確率論でやるしかありません。一方で、正解がある程度の幅でわかる状況を作れれば、絞った勝負ができます。
青木さんは、失敗したほうがいいという考え方もあるなかで、自分は何回か失敗すると元気がなくなって続けられないと話します。リスクを取ったり社運をかけたりしたことはあまりないそうです。
だからこそ、逆に言うと考えすぎると言われてるぐらい、思考の中で多分あれやこれやしてるんでしょうね。世の中出す前に。
青木さんの理想のイメージは、映画『マトリックス』で主人公のネオが世界をコードとして見るようになる場面です。真理の一端が見えれば、他人には非現実的に見えることも大した労力なくできるのではないか、という考えです。
青木さんは、東大受験で横に解答を置いて書き写せば自分でも受かる、というたとえで「世界からカンニングしよう」と話します。答えがわかることにリソースを振り向ければ、人からは超能力に見えることも、ただ書き写している感覚でやれるというわけです。
青木さんは自分を「素人のプロ」とも呼びます。何の専門家にもなっていないからこそ、裸の王様を見た子どものように、誰も観察し直していない思い込みに気づけることがあるといいます。
すがけんさんは、この話を会社の現場に引き寄せます。答えを書き写すくらい当たり前の法則として「いいもの以外は売らない」ことがあるのに、多くの会社は部長の指示や原材料の都合を理由に、会社のルールで社会のルールをねじ曲げてしまうという指摘です。
青木さんは、商品開発担当者に「今年は何型」というKPIが課されていれば、いいものを少ししか思いつかなくても数をひねり出してしまうと話します。思いつかないときに「やめていいですか」と言え、それに紐づく評価やマーチャンダイジングまで仕組みとしてつながっていることが大切だといいます。
メルマガは毎日でもいい? 嫌われる理由は「嘘と退屈」
青木さんは、メルマガの配信頻度の話を例に出します。クラシコムはほぼ毎日メルマガを送っており、鬱陶しいと思う人がすぐ止められるようにしているそうです。
初期に社員から「嫌がられるのでは」と言われたとき、青木さんは「何が嫌なのか」を問い直しました。まだ付き合っていない好きな相手から毎日LINEが来ても嫌ではなく、むしろ来ない日は寂しく感じるはずだ、というたとえです。
青木さんの結論は、嫌われる理由は頻度そのものではなく、嘘と退屈が嫌われているということでした。つまらない内容と、ごまかしや誇張です。
退屈な内容、ごまかしや誇張が入った内容
本当で面白い内容。有料メルマガが毎日届くなら、むしろ歓迎される
青木さんは、これは「毎日送ればいい」という意味ではないと断ります。広告も同じで、広告が嫌われるのではなく嘘と退屈が嫌われているのであり、面白くて本当の広告なら普通に面白いコンテンツとして受け取られる、という考えです。
嫌われないようにするにはどうしたらいいかとか、退屈にならないようにするにはどうしたらいいかで議論しなきゃいけないのに、嫌われてるものを何回にすれば嫌われなくなるんだっけって。
青木さんは、見ればわかることを誰も見ないまま意見を出し合い、よくわからない意思決定を重ねていることが多いと話します。特にBtoCでは「それ、自分だったらどうなの?」という一言で気づけることがよくあるそうです。
この二人はやっぱりその曇りなき眼のトップツーなんだよな。
厚利少売の本質は「適利適売」かもしれない
青木さんは、番組名の「厚利少売」についても自分の見方を話します。世の中に薄利多売という常識があるからこそ、その反対側を言うことで、間にあるいろいろな選択肢に気づかせようとしているのではないか、という読みです。
同時に青木さんは、素直な目で聞かないと「利益をいっぱい取ればいいのか」と受け取って事故を起こしそうだとも話します。例に出したのは、チケットぴあの経営者がMBAの場で「なぜもっと粗利を上げないのか」と問われたエピソードでした。経営者は、これほど薄い利益でやれるからこそ市場を独占できたと答えたそうです。
青木さんはさらに、ジェフ・ベゾスが「自分ならスマートフォンをほとんどマージンを取らずに売った。Appleはマージンを取ったことでAndroidに付け入る隙を与えた」と語ったという話も紹介します。そのうえで、二人が本当に言いたいのは相手を見て決める「適利適売」なのではないかと話しました。
でもおっしゃる通り、現代が(薄利多売)だから逆に振って(適利に)したいっていうだけなんですよ。
青木さんによれば、相手がとてもお腹を空かせているならたくさん作る必要があり、その結果として安くなる薄利多売が、その瞬間の適利適売になることもあります。問題は、一度それで成功した人が、相手を見ずに薄利多売だけを持ち帰ってしまうことだといいます。
相手の需要を見てたくさん作った結果、安くなった。その時点では適利適売といえる
過去の成功体験から、相手を見ずに「安く大量に売ればいい」と考える
コメント欄には「厚利少売は富裕層ビジネスではない」という声も寄せられ、青木さんはとてもいいコメントだと受け止めました。お客様が富裕層なら富裕層ビジネスをすればよく、そうでない相手にまで当てはめるのが正解とは限らない、という話です。
満足させすぎてみる、高くつけすぎてみる
すがけんさんは、最近の自分の言い方の変化を紹介します。値段をいくらにするかより先に、今いるお客さんに存分に満足してもらうことから始めよう、という考え方です。
今いるお客さんにより満足してもらって、帰ってもらってれば、勝手にお客さんは1万円のところ2万円置いて帰ってくれるから。
だからそのいくらにするかってことよりも、今のお客さんが存分に満足するほどやってあげてみてくださいなんですよ。お金取る前に。
青木さんは、「何が欲しいですか」「いくらならいいですか」と直接聞いても本当のところはわからないと続けます。需要が1万あるのに毎回1000個しか用意せず完売していては、本当の需要に気づけません。気づくには、少なくとも1万以上を発注してみる必要があります。
値段も同じで、青木さんは高くつけすぎてみないとわからないと話します。原価から考えると3000円は必要なのに、高いと思って2500円で売ってしまうことはよくありますが、一度3000円で売ってみて、ダメならすぐ謝って訂正すればいいという考えです。
青木さんは、対話を「自分の考えを変えることを留保した状態でコミュニケーションの場に出ること」と定義します。自分の考えを相手に飲ませるのではなく、事と次第によっては自分も考えを変える前提で臨むものだ、という意味です。
青木さんは、訂正できる対話も法則の一つだとしたうえで、こだわらずに法則をつかみ、つかんだら「訂正します」と変えていく、と話しました。
1日に1日だけ進むタイムマシンで10年後へ
川原さんは、法則やお客さんの本当を知ることに素直でい続けた結果として、10年で10倍という現象が起きたのだとまとめます。青木さんは、10倍になるとは思っていなかったし、目指してもいなかったと答えます。
青木さんは、自分の感覚を「1日に1日だけ進むタイムマシン」にたとえました。10年後へ行くのに10年かかる、身体というタイムマシンに乗っている感覚です。今も何の見通しも目指すものもなく、3年後に滅びているかもしれないし、どうなっているのかと思う、と話しています。
(青木さんの)小利小売って言わなくていい未来が作れてたら嬉しい。
まとめを振られたすがけんさんは、青木さんの話には嘘や見栄がなく、周りの人を普通の人でいさせてくれるところが大事だと語ります。
こんなポンコツたちが、そのとある法則に何か見栄や何かで抗ってなく、ちゃんとやってみたらうまくいくっていうことも、なんか生き証人だと思ってるんですよ。
すがけんさんは、自分たちは嘘をつく必要も売りつける必要もなく、定期縛りもせず、友達のような関係でお客さんと付き合っていると話します。青木さんは、昔は伝えにくかった雰囲気やキャラクターも、今は技術によって伝えられるようになり、強みになり得ると応じました。
好きになれるお客さんを知ることが、いい取引の条件
終盤、青木さんは、自分が自然と好きになれるお客様がどういう人たちなのかを自己理解することの大切さを語ります。好きになれない人のために一生懸命やるのは無理で、「お金をくれるからいいか」という発想にならざるを得なくなる、という理由です。
青木さんは、すがけんさんや川原さんも、支援したい会社やプロデュースしたい人がわかっているからこそ、適切に厚利少売でやれているのだろうと話します。すがけんさんは、自分もほとんどの依頼を断っていると答えました。
そういう意味では、やっぱお客さんをよく見るし、お客さんをちゃんと選ぶ。お互いに不幸がないために。
人間だから、やっぱりね、本当に頑張れるためには、やっぱり相手との相性が良くないと、ほんとの意味で頑張るのはちょっと難しいからね。
川原さんは、一人ひとりの命や時間、エネルギーには限りがあり、誰に使うかは本来選んでいいはずだと話し、ゲストトークを締めくくりました。
楽屋トーク:当たり前を貫けることが奇跡に見える
青木さんとの収録を終えた楽屋トークで、すがけんさんは、変な会社のルールを引きずらずに、世の中やお客さんの気持ちだけで考えている点が面白かったと振り返ります。
どれも全くもって本質だし、トリッキーじゃないし、当たり前なんだけど、それを突き詰めきれて会社がやれてるという違和感がとてつもなく強い。
すがけんさんは、会社に入れば別のことを教わり、起業すれば投資家から逆のことを言われ、人を雇えば変なルールを覚えた人が入ってくると指摘します。そのなかで当たり前を貫けているのは奇跡的な状態だという見方です。
すがけんさんは、『金持ち父さん貧乏父さん』を読んで起業した青木さんのように、この回を聴いて新しい法則でビジネスを始める人が出てきたらいいと話します。
最後に川原さんから、今後は音声のみでの配信に戻ることが告知されました。川原さんは、青木さんの話で厚利少売を打ち立てた初心を思い出したとし、薄利多売とのバランスを取り戻すためにもっと広げていきたいと語っています。
まとめ
クラシコムの成長は、壮大な戦略ではなく、お客様の感性を持つ人で組織を作り、SKUを絞り、嘘と退屈を避け、対話のなかで訂正し続けるという「法則」に逆らわない積み重ねから生まれたと語られています。
- 専門職以外は元ユーザー中心に採用し、アンラーンのコストを避けている
- SKUを約2000に絞ったブロックバスター型で、外れても後工程で立て直せる
- メルマガや広告が嫌われる理由は頻度ではなく「嘘と退屈」だという見方
- 厚利少売の本質は、相手を見て決める「適利適売」だと青木さんは捉えている
- 好きになれるお客さんを知り、相性のよい相手と取引することが頑張れる条件になる





