厚利少売脳には、いつ切り替わるのか
この回のテーマは、川原卓巳さんが投げかけた「厚利少売脳に変わる瞬間」です。番組と書籍を通じて二人が目指しているのは、聞き手に厚利少売脳になってもらい、実際の行動と成果につなげてもらうことだといいます。
僕らはこの厚利少売ラジオをやっていて、厚利少売の本を出していて、したいことというのは、その人が厚利少売脳になってもらい、厚利少売行動をする、厚利少売を実現してほしいってことじゃないですか。
すがけんさんは、企業の10倍成長を支援する仕事のかたわら、少数の個人にも半年間のコミットでアドバイスをしています。相談に来る人の多くは、厚利少売を目指しながらも出発点は薄利多売 ── 利益の幅を小さくする代わりに、たくさん売って全体の利益を確保する商売のやり方。価格競争に巻き込まれやすい面がありますの状態です。
すがけんさんによると、言われた作業をこなすだけでは厚利少売脳にはならないそうです。値上げしてくださいと言われて値上げしても、それだけでは根本的な考え方は変わっていないといいます。
上げましょう。上げてみました。えー、どうしたらいいんですか?みたいになるみたいな。
川原さんはこの状態を「素直脳」と表現しました。すがけんさんが求めているのは、自分でハンドルを握り、アクセルとブレーキを踏めるように「運転できる感覚」に切り替わる瞬間です。
値段を上げたときではなく、お客さんが変わったとき
お題を受けて考えたすがけんさんの答えは、厚利少売脳に変わるのは値段を上げた時ではなく、お客さんに喜んでもらえた時というものでした。
すがけんさんが挙げたのは、マッサージのような仕事をしている方の例です。1時間1万円のところ、お客さんがとても喜んで2万円を置いて帰ったといいます。
すがけんさん自身にも似た経験があります。企業へのアドバイスは30万円×4時間で月120万円ですが、責任者から「今月めっちゃ良かったんで200万円で請求してください」というDMが届いたことがあるそうです。
(200万円で請求してと)言わなくてもいいのに、なんか言いたくなっちゃうぐらいきっと喜んでくれたんだなってこっちも思うじゃないですか。
すがけんさんの見立てでは、こうしたときはお客さん側が先に厚利少売脳になっています。売り手が自分の価値をネチネチと説明したわけではなく、お客さんが自然な行為として「もっと払うのが普通だ」と感じて動いているのです。
お客さんがもう厚利少売脳になっちゃって、お客さんの変化を見て皆さんが変わるってことの方が結構多いのかもしれない。
すがけんさんによると、自分が変わろうとすると値上げなどのタスクになりがちです。一方で「お客さんが喜ぶまで頑張りましょう」と取り組むと、本人は夢中でどれが正解かもわからないうちに、ある日お客さんがパーンと変わるといいます。
すがけんさんが語った、厚利少売脳に切り替わるまでの流れは次のように整理できます。
夢中で取り組む
お客さんに喜んでもらうことを、正解がわからないまま一生懸命やる
お客さんが変わる
「安すぎるからもっと高くていい」と言う人や、倍額を置いていく人が現れる
自分が気づく
お客さんの変化を見て、ふと「こういうことなんだ」と振り返る
川原さんは、この話を書籍で語ってきた「価値は相手の変化量」という考え方につなげます。相手のリアクションが変わったことで、自分の提供しているものが価値だと気づいた、という整理です。
すがけんさんは、自分が変わったと思っても、お客さんが変わっていなければ本当にできたことにはならないと続けます。お客さんがリピートしたり、値上げしても来てくれたりすることが「卒業の条件」だという考えです。
川原さんは「本当に思いも寄らない答え」と驚き、すがけんさん本人も、最初は値上げの瞬間が変化の瞬間だと想像していたと明かしています。
値上げの前に、今のお客さんを満足させる
すがけんさんが店舗などで実際に勧めている順番は、いきなり値段を2倍にすることではありません。2倍にするとお客さんが減ってしまうため、その前にやることがあるといいます。
すがけんさんは、今日からできるのは値上げではなく、今日来ているお客さんを今日まで以上に満足させることだと話します。
お客さんのリアクションちゃんと見ればいいし、効果を実感してもらうトークをすればいいし、もっといい変化を促せるような気づきを与える話をすればいい。
これを続けていくと、ある瞬間にお客さんが変わり、その変化に驚きながら自分の変化も実感できるといいます。すがけんさんは自分の話に「健全ですね」と納得した様子でした。
こんまりの片づけが仕事になった瞬間
川原さんは、この話を聞いて近藤麻理恵さんの片づけが仕事になった瞬間を思い出したといいます。麻理恵さんはもともと自分の片づけを終わらせたくてメソッドを生み出し、片づける場所を求めて友達の家を片づけていました。
当初はお金をもらわず、ランチやお茶と引き換えでした。それがやがて「お金を払ってでもやってくれ」と頼まれる仕事になり、人々が変化して感動し、口コミで広がって6ヶ月待ちになったそうです。
本来僕がここでプロデューサーとして関与してたら(料金を)値上げしてるはずなんですよ。
実際には、麻理恵さんは本を書いてより多くの人に届ける戦略をとりました。川原さんは、当時厚利少売を知っていれば、値段を倍にして本人の稼働を減らし、空いた時間で本を作っただろうと振り返ります。
麻理恵さんは1日3件のレッスンをこなしながら夜中に執筆し、買い物に行く余裕もなく冷蔵庫のイチゴジャムを舐めながら書いていたといいます。
すがけんさんは、その姿を「気合」と呼びつつも、そこまでしてでもやりたくなる仕事があることは幸せだと語ります。そして、効率より使命感で没頭している人にこそお金を払いたくなるといいます。
もっと頑張ってほしいし、もっとその人自身も変化してほしいから、なんか応援の意味も込めてなんかお支払いしたくなりますよね。
すがけんさんは「消費は投票行為」という言葉も引き、世の中に残ってほしいものにお金を使う良いお客さんは、儲けたいからではなく、良くしたいからやっている人を好むと話します。
さらにすがけんさんは、番組でたびたび名前が挙がるクラシコム ── 「北欧、暮らしの道具店」を運営する会社。代表の青木耕平さんは、次回の厚利少売ラジオのライブにゲストとして登場予定ですの青木耕平さんが「動機がいいか悪いかで決めます」と話していることにも触れました。お金を払うお客さんには全部見えてしまうので、自分の動機がきれいかどうかが重要だという考えです。
仕事とは、感謝が溢れてお金になること
川原さんの「仕事はピュアな動機でやった方がうまくいく」という言葉を受けて、すがけんさんは仕事の定義を語ります。
すがけんさんによると、困っていない人に物やサービスを売っても感謝されません。だから、売り物ややりたいことから始めるのは難しく、まず困っている人を探すことが仕事の出発点になるといいます。
すがけんさんは、マッサージなら揉んでいる最中や家に帰った後にお客さんがどんな気持ちになるのか、やる前より幸せになっているのかまで思いを馳せられる人が、商売の上手な人だと話しています。
川原さんが「本人の人生も幸せになる効果が大きい」と添えると、すがけんさんは毎日誰かから感謝の連絡が届いて嬉しいと答えました。すがけんさんは、仕事がそもそも感謝とともにお金をいただくものなら、感謝されないほうが変だと言います。
すがけんさんは、感謝とお金の順番を次のように対比しています。
感謝が先にあり、それが溢れて支払いや「またやってほしい」につながる健全な形
感謝より先にお金が存在してしまう、だいぶ不健全な形
すがけんさんは、最初からお金儲けを考えなくても、誰が困っていて、何に困っていて、自分に何ができるかを問い続ければ、商売はきっとうまくいく気がすると話しています。
生きがいは見つけるものではなく作れる
ここまでの話を聞きながら、川原さんの頭に浮かんだのは「生きがい」の図でした。好き、得意、人に求められる、お金になる、という4つの円が重なる真ん中に生きがいがある、という考え方です。
すがけんさんは「お金も入るんだ」と驚きつつ、続けられるかどうかという意味ではサステナブルで、ボランティアだけでは人は生きていけないと納得します。
川原さんは、自分が好きで得意で役に立てることで、相手が困っていてお金を払いたいほどのことなら生きがいになる、と整理しました。すがけんさんも、感謝とお金を分断せず、お金を払うことを「感謝の百倍」のような感覚で捉えれば生きがいになると応じています。
すがけんさんは、生きがいになる仕事を「見つける」と考えると、自分がわからないという話になって面倒になると指摘します。今の仕事を使って、お客さんを見つめながら生きがいになる仕事に変えていけばよい、という考えです。
新しいことを一切やんなくていいから、日々の活動をちょっと真面目にというよりかは、ちょっと真剣に、ちょっと集中して向き合ってやるで、だいぶ生きがいになると思いますよ。
会社員でも使える「たった一つの質問」
川原さんは、会社員のリスナーには難しく感じられるかもしれないと問いかけます。すがけんさんの答えは、会社員か自営業か社長かで分けなくてもいい方法でした。最近Xにも書いたという、お金を払ってくれる人に最大限喜んでもらう、という考え方です。
すがけんさんによると、立場ごとに「お金を払ってくれる人」に満足度を聞けばよいといいます。
| 立場 | 聞く相手 | 聞くこと |
|---|---|---|
| 会社員 | 給料を払ってくれる社長 | 今月はお役に立ちましたか |
| 企業の社長 | 商品を買ったお客さん | この商品であなたの人生が変わるほどお役に立てましたか |
| BtoBの企業 | 相手の会社の社長 | お役に立てましたか |
| 自営業 | お金を払ってくれる相手 | お役に立てましたか |
すがけんさんは、感謝は待っていてももらえないので聞きに行くべきだと話します。特に日本人や、すがけんさんの地元である東北の人はシャイで、自分からは感想を言わないからです。
今月はお役に立ちましたか?とか、この前やったあれどうでした?とかって聞いて、良かったか、グッドバッドどっちですか?とか、普通ぐらいなのか、すごく良かったのか、どっちなんですかって具体的に聞いて。
川原さんは、もらった以上に役に立てているかを確認し続ければいいと整理します。すがけんさんによると、評価がダメでも「来月頑張ります」と言え、どう変えればいいかの答えもわかるので、努力の方向を間違えずに済むといいます。
(答えが見えなくてみんな困ってるのに)答えわかったらもうできちゃうよ絶対。
川原さんは、すがけんさんが100万円の商品を10億円にして販売できた過去の回にも触れ、思考の根っこはこれと全く同じだと話しました。すがけんさんも、どれだけ役に立つかが100万円分か10億円分かの違いだけで、誰にでもできると応じています。
すがけんさんは、自分が何をしたいかより、お金を払う人を主人公にして「どうでした?」と聞くことを勧めます。感謝された瞬間は自分が主人公になり、それを喜びにして頑張れば、より高い金額に見合う自分になれるという考えです。
番組の最後には、書籍『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』の紹介や、反応次第で開催時期を決める経営者合宿の案内がありました。川原さんの新刊『人生は捨て自由に生きるための40の秘訣』の紹介と、クラシコムの青木耕平さんをゲストに迎えるYouTubeライブの告知もされています。
まとめ
この回では、厚利少売脳に変わるのは値段を上げた瞬間ではなく、お客さんが変わったことに自分が気づいた瞬間だという発見が語られました。そこから、仕事は感謝とともにお金をいただく活動であり、お金を払ってくれる人に満足度を聞き続けることが、誰にでもできる第一歩だという話へとつながっています。
- 厚利少売脳への切り替わりは、お客さんが倍額を払うなどの変化を見て気づくもの
- 値上げの前に、今のお客さんを満足させ、紹介で満席にしてから値段を上げる
- 仕事とは困っている人を助け、感謝とともにお金をいただく活動で、お金は感謝の後に来る
- 生きがいは見つけるものではなく、今の仕事に真剣に向き合うことで作れる
- 立場を問わず、お金を払ってくれる人に「お役に立ちましたか」と聞きに行く






