なぜ音声で伝えるのか
伊藤慎吾さんは、カービングターンを中心にレッスン活動を展開している指導者です。
第一回目の収録のきっかけは、自身が車の運転中や空いた時間に音声メディアをよく聴いていたことでした。
ぜひ皆さんにも、雪山に向かう運転中とかですね、暇つぶし、イメトレ、知識の共有というところで使っていただけたらなと思い、今、話しているところです。
リスナーが雪山へ向かう移動時間に、イメージトレーニングや知識の共有として使えることを想定して始められています。
そもそも上下動とは何か
第一回のテーマは「上下動」です。
上下動とは、切り替えの時に立ち上がり、ターンに入っていく時にだんだん沈み込んでいく、この一連の動きを指します。
かかとからつま先、つま先からかかとへとターンを切り替える局面で立ち上がり、ターンへ入る過程で沈み込んでいく、という縦方向の動作です。
「立ち上がりで抜重、沈み込みで荷重」への疑問
一般的な教本では、上下動はある決まった説明のされ方をしていると伊藤さんは指摘します。
たとえばJSBAの教本などでは、立ち上がることで抜重、沈み込むことで荷重を行う、という書かれ方をしています。
しかし伊藤さんは、この説明に疑問を投げかけます。根拠として持ち出すのが、身近な体重計です。
立ち上がった時の抜重というところでいうと、皆さん体重計に乗って立ったりしゃがんだりするとわかると思うんですけれども、基本的に体重計が指す数値は変わらないですよね。立ってもしゃがんでも。
立っても座っても体重計の数値は変わらない。だから「立ち上がったから抜重」とは単純には言えないのではないか、という考えです。
同じく、沈み込んだ時の荷重という表現も、この説明の仕方ではよくわからないと話されています。
立ち上がりの本質は重心をフラットに戻すこと
では実際に何が起きているのか。伊藤さんが上下動で最も大事だと感じているのは、重心の移動です。
重心とは、簡単に言えば自分の体の重さの中心のことです。
この重心移動が、初心者や中級者のうちは自分ではうまくコントロールしにくい。そこで立ち上がる動作が効率的に働くと考えられています。
具体例として、かかと側のヒールサイドターンを考えます。
ターンが終わりに差し掛かると、重心は板に対してかかと側へ移動しています。
このままでは、次のつま先側のターンに向けて重心を移せません。切り替えには、かかとからつま先への重心移動が必要になります。
ところが、この移動が初中級者にはなかなか難しい。そこで役立つのが立ち上がりです。
ターン中にしゃがんでかかと側に寄っていた重心が、立ち上がることで板の真上、つまりフラットな位置に戻ってきます。
立ち上がるとどうなるかっていうと、かかと側に重心が移動していたものが、立ち上がるとフラットになる、つまり板の真上に重心が戻ってくるんですね。
重心がいったん真ん中に戻ることで、次のつま先側へ重さを乗せやすくなる。これが切り替え時の立ち上がりの本質的な意味だと語られています。
一方で、つま先側からかかと側への切り替えは事情が違います。
スノーボードは横乗りのため、動きに非対称性があります。かかと側へは体の構造的に重心が移りやすく、立ち上がらなくてもターンに入れると言います。
つま先から踵への切り替えの時の立ち上がりというのはあんまり意味がなくてですね、そこは分けてちょっと考えた方がいいのかなと思ってます。
つまり立ち上がりが効くのは、主にかかとからつま先への切り替え。方向によって意味が変わる点は分けて考えるべきだと整理されています。
かかと側に寄った重心を立ち上がりでフラットに戻し、つま先側へ移しやすくする。立ち上がりが効く。
体の構造的にかかと側へ重心が移りやすく、立ち上がらなくてもターンに入れるため立ち上がりの意味は薄い。
沈み込みの本質は外力を板に伝えること
続いて、沈み込みによる荷重の話です。荷重とは、板に圧がかかるかどうかということだと説明されます。
体重計の話に戻れば、立っても沈み込んでも実際の体重は変わりません。ではなぜ沈み込むのか。ここでカギになるのが外力です。
ターン中、特にターンピークと呼ばれる時期には、遠心力や重力といった外力が強くかかってきます。
この外力が体を通して板にどう伝わるか。伊藤さんは、沈み込んだ時の方が伝わりやすいと考えています。
たとえに使うのがバネです。バネが伸びたままだとサスペンションのように力が逃げてしまいますが、最大まで縮むと力がダイレクトに両端へ伝わります。
ターンピークで沈み込んだ時って、体自体の遊びがどんどんバネが縮んで遊びがなくなるようなイメージですね。
体をギュッと縮めることで遊びがなくなり、外力の逃げ場がなくなる。その結果、外力が体を通して板に伝わりやすくなるという考え方です。
この点については、JSBAなどが言う沈み込み荷重も、あながち間違っていないと伊藤さんは評価しています。
ターンピーク
遠心力などの外力が強くかかる
沈み込み
体の遊びがなくなりバネが縮んだ状態になる
荷重
外力の逃げ場がなくなり板に力が伝わりやすくなる
まとめ
上下動は単なる抜重と荷重の動作ではなく、立ち上がりは重心をフラットに戻す動き、沈み込みは外力を板に伝える動き、という2つの本質に分けて捉えられると整理された第一回でした。
- 立ち上がっても沈み込んでも体重計の数値は変わらないため、抜重・荷重という説明だけでは足りない。
- 立ち上がりの本質は、かかと側に寄った重心を板の真上に戻し、次のターンへ重心を移しやすくすること。
- 立ち上がりが効くのは主にかかと→つま先の切り替えで、つま先→かかとは構造的に立ち上がらなくても入りやすい。
- 沈み込みの本質は、体の遊びをなくしてターンピークの外力を板へ伝わりやすくすること。
- 重心移動と外力の伝わり方という視点で見ると、上下動の意味がより明確になる。
