「お金より信用」14カ国を渡り歩いた男の資産形成が常識と真逆だった
尾原和啓さん、けんすう、田中渓が、限界突破ライフハックで語るのは「信用」という資産の複利効果。マッキンゼー、Google、楽天など15回の転職を経て、現在はバリ・シンガポールを拠点に年間100フライト。尾原さんが辿り着いたのは、お金をかけずに信用を積む生き方でした。その内容をまとめます。
複利が最も効く資産は「信用」
資産形成で最も大事なのは、複利効果元本だけでなく、利息にも利息がつく仕組み。時間が経つほど加速度的に増える。例えば1.01を365回掛けると約40倍になる。が効くかどうか——尾原さんはそう語り始めました。
「1%でも365日続けると40倍になる。この掛ければ掛けるほど増え方が伸びていくものが一番資産効率がいい。お金がお金を稼ぐ複利効果よりいいものが、今の時代にはあるんです」
それが社会資本(信用)人と人との繋がりや信頼関係のこと。金銭資本・人的資本と並ぶ資産の一つ。社会学では「ソーシャル・キャピタル」と呼ばれ、近年その経済的価値が注目されている。です。インターネットは遠くのものを繋ぐ革命をもたらしました。昔は胡椒一粒が金一粒と言われるほど、遠くの物を運ぶ貿易が価値を持ちましたが、今は「遠くの人を繋ぐ信用の貿易」が最も価値を持つと尾原さんは言います。
物の貿易
遠くのモノを運ぶことに価値
例:胡椒一粒=金一粒
信用の貿易
遠くの人を繋ぐことに価値
信頼の仲介+価値観の翻訳
遠くになると相手が分からなくなるから信用できなくなる。この人経由だったら信頼できるよねっていう「信頼の仲介価値」と、価値観を翻訳してあげる「価値観の翻訳価値」がでかくなる
けんすうが「ブラジルの知らない人とビジネスするのは不安だけど、尾原さんの知り合いで翻訳してくれるなら安心」と言うように、遠くの人を繋ぐハブになることで、信用は複利で回り始めます。
信用は金銭に変わるが、逆は難しい
尾原さんは「金銭価値は信用価値に変換しにくいけど、信用価値は金銭価値に変換しやすい」と続けます。フォロワーはお金で買えるかもしれませんが、それが本当の繋がりになるかは別の話です。
一方、信用価値が貯まっている人が困った時や本当にやりたいことが生まれた瞬間、周囲が応援してくれる——結果として信用は必要な時にお金に変わりやすいのです。
田中渓は自身のフォロワーの付き方を振り返り、「アテンションだけを取るフォロワーのつけ方をしても、いざという時に応援してもらえない。困った時にサポートしてもらえるのは、西野亮廣さんのやり方そのものだ」と共感しました。
稼ぐより「生きるコストを下げる」
「日々の生活があるから信用を切り売りせざるを得ない」——そんな悩みに対し、尾原さんは「稼ぐ力を強くするんじゃなくて、稼がなくても生きていけるようにチューニングする」と答えました。
その極端な例として挙げたのがホームレス小谷小谷真理。1日を50円で売る「レンタルなんもしない人」として知られる。泊まる家も食事も、50円で買った人の好意で賄い、ロンドンや韓国など世界を飛び回る生活を続けている。さん。1日を50円で売り、買った人が「申し訳ない」と家に泊めてくれたりご飯を食べさせてくれる。遅刻はするけれど真剣に仕事をこなし、何よりも相手の話を心から楽しんで笑う。
ホームレスって本来一番未来が予測しにくい不安な職業なんだけれども、多分彼はずっとホームレスでいろんな国を飛び回りながら、いろんな人にご飯をおごってもらいながら、ますますふくよかに笑えるようになってくる
尾原さん自身も「期待値マネジメント」を家族と共有しています。旅行サイトで温泉の魅力的な写真を撮りすぎると、行ってみて失望されて二度と来なくなる——だから期待値はギリギリ以上に上げない。娘には「この年を超えたらびた一銭もやるつもりはない」と伝え、奥様も元ヒッピーで親が自営業という条件で選び、カプセルホテルのタダ酒を楽しむ写真を送ってくるような人です。
けんすうも「収入増やすには才能がいるけど、生活コスト下げるのは比較的誰でも実践できる」と頷きました。モーニングの『お小遣い1万円生活』やオードリー春日のような極端な例もありますが、そういう生活を楽しもうという姿勢が大事だと尾原さんは語ります。
生き銭と死に銭を見極める
ただし、尾原さんは全身ユニクロですが、ジャケットだけは大島紬の泥染鹿児島県奄美大島の伝統工芸。泥田で染める独特の製法で、深みのある黒褐色に仕上がる。手間と時間がかかるため高価だが、職人の減少が課題となっている。の龍胆紋のものを着ています。職人を応援する意味もありますが、海外で「お前それ龍胆紋やないか」と分かる人が反応してくれると一瞬で友達になれる——これが「プロトコール」、つまり分かる人同士の合言葉だと言います。
大阪商人の基本の心得として「生き銭を惜しむな、死に金一銭も使うな」という言葉があります。生かすことができる(活発の活)お金はバンバン使え、でも死に銭——本当に使う意味があるのか?という金については一銭も使うなという教えです。
京セラ系の会社ではトイレットペーパーの適正な長さがトイレに書かれていたり、お茶の値段が明記されてチームの経費に計上されます。この人にはキリマンジャロを出すべきだという時は出すし、一円一銭を削ってる同士のパートナーには7円のお水で楽しんで飲む——そういうメリハリが大事だと尾原さんは言います。
- 職人を応援するジャケット
- 参加費450万のカンファレンス(かけがえのないコミュニティ)
- 新しいデバイス(土地勘を得るため)
- 友達が困った時に駆けつける時間と旅費
- すぐ消耗する靴(足をずって歩くから)
- 腕時計(多動症でなくすから)
- 見栄のためのブランドもの
- 本当に意味があるのか分からない支出
尾原さんは参加費450万円のシンギュラリティ系カンファレンスにも迷わず払います。「450万払う覚悟があるやつしか入ってこないから、中のコミュニティがかけがえのないものになる。しかも日本人が少ないから、日本人ってだけで価値を感じてもらえる」——これもまた生き銭です。
新しいデバイスも思考停止で買います。「こういうものって着けてみないと自分がどう拡張するか分からない。ボタンの配置がここにあったら無意識で動くようになるのになとか、そういう感覚が得られる。土地勘が持てないものにはバンバン金払う」と語りました。
マクロ投資と「汚れない」判断
田中渓が「最先端のものが見えてるんだから、本気で株式投資やったら結構稼げるのでは?」と聞くと、尾原さんは「マクロ投資だけ」と答えました。
NVIDIAをずっと買うか迷っていたけれど、「NVIDIA買っちゃったらライバルが出てきた時に目が曇る。こっちの方が怖いから、個別株投資はやってない」——つまり、自分が汚れてしまう(判断が歪む)リスクを避けるために、個別株は持たないのです。
取締役させていただいてるところも株持たないし、ストックオプション持ってくださいって言われても、こういう人間だからごめんね、応援はしてるけれども、汚れてしまう、勝手に俺が汚れるって思ってしまうから持たない
一方、銀のようなマクロ投資では「しこたま儲けさせていただいた」と言います。マクロ投資の良さは、自分が買ったり売ったりしても市場への影響がほとんどないため、親しい友達にも自己責任でアドバイスできること。ポストしても問題ないと尾原さんは言います。
「頭と尻尾はくれてやれ」という投資の基本に従い、よくわかってない人がレバレッジして買ってくる「イナゴの大軍」が来る指標を見て、逃げ時を判断します。これは尾原さんの転職の原理と同じで、「業界のこと好きじゃなくても儲けたいから起業し始めたらその業界から逃げる」というルールと一致します。
それ以上に大事なのは「相場表を見てる時間があったら情報や論文を読んで、これ読んだら絶対おもろいでって友達に言う方が時間使いたい」という優先順位です。お金で成り上がりたいフェーズの人は相場にベタ付けで張り付くべきだけれど、今の尾原さんにとっては「友達に情報をギブすることで信用を回していく方が、AIという変化のフェーズでは楽しい」のです。
声をかけてきた人は信用しない
けんすうが「尾原さんに声かけられたりするじゃないですか。どうやって繋がりを作るんですか?」と聞くと、尾原さんは「バックパッカーの基本なんですけど、自分から声をかけた人しか信用しない」と答えました。
尾原さんは毎年、けんすうに「今年誰が良かった?」と聞いて、言ってくれた人全員に会いに行きます。ノトフさんのように、そうして出会った人の多くが5年10年の友達になっています。声をかけてくれた人には「ネットで漂流してるので、なんかあったらコメントください」と伝えますが、自分から時間を使うことはありません。
田中渓も「真理な気がする」と頷きます。けんすうは「尾原さんの目に留まるようなことをやってる方がいい」と補足しました。目に入ったら尾原さんは動くし、実際にリクルート社内でもけんすうが転職してくると聞いて待ち伏せしていたと言います。
田中渓が「部長レベルの人が新卒に声をかけに行くのは狂気」と言うと、けんすうは「いや、本当にすごいんですよ」と肯定しました。尾原さんは「リクルートからお前みたいな奴は一人いると便利だけど、二人いると迷惑だって言われてました」と笑います。
まとめ
尾原和啓さんの資産形成は、お金を増やすことよりも「信用」という社会資本に投資することでした。インターネット時代は遠くの人を繋ぐ信用の貿易が最も複利効果を持ち、信用は金銭に変わりやすいけれど逆は難しい。だからこそ、稼ぐ力を上げるよりも生きるコストを下げ、期待値マネジメントで家族と低コスト生活を楽しむ。
「生き銭を惜しむな、死に金一銭も使うな」——職人を応援するジャケットや450万円のカンファレンス、新しいデバイスには迷わず投資し、意味のない支出は徹底的に削る。個別株は「目が曇る」から持たず、マクロ投資にとどめる。そして、声をかけてきた人ではなく、自分から声をかけた人にだけ時間を使う——そうして信用を複利で回し続けているのです。
好きと好きが続くから得意になり、得意があるから人に信用されて呼ばれる存在になる。その連鎖をどう作っていくかが、尾原さんなりの資産形成でした。
- 複利が最も効く資産は「信用」という社会資本。インターネット時代は遠くの人を繋ぐ信用の貿易が価値を持つ
- 信用価値は金銭価値に変換しやすいが、逆は難しい。フォロワーはお金で買えない
- 稼ぐ力を上げるより「生きるコストを下げる」。期待値マネジメントで家族と低コスト生活を楽しむ
- 「生き銭を惜しむな、死に金一銭も使うな」——信用を生むものには投資し、意味のない支出は削る
- 個別株は「目が曇る」から持たない。マクロ投資にとどめ、相場を見る時間を情報収集に使う
- 声をかけてきた人ではなく、自分から声をかけた人にだけ時間を使う——バックパッカー流の信用構築
