山添不在の2人回とお便り紹介
今回も前回に引き続き、山添が不在の2人回です。エビヤがお便りフォームからいただいた質問を紹介します。
ポッドキャストネームは「アサンポミニ」さん。3人がどこで知り合い、何がきっかけで繋がったのか、その関係が気になったという内容です。
年齢性別が違い、エンタメ好きではあるものの、好きなジャンルは少しずつ違うように思います。それでも、それぞれがすごく上手に日常やエンタメの紹介をされていること、お互いの話にも関心を持って質問やリアクションを返して会話されている関係性がとても羨ましいと思い、そんな3人の出会いが気になりました。
アサンポミニさんは、ウイの書籍を発売当初に本屋で見つけて読んで以来のリスナーだと言います。『PERFECT DAYS』やMIDNIGHT PIZZA CLUBが好きな点にも共感しているそうです。
エビヤについても、エピソード1で挙げた映画がご自身の好きな作品と丸かぶりだったと驚いていました。
九十年代のラブコメも好きですが、キュンキュンしたいわけではなくて、恋愛を上手に面白く新しい切り口で見せてくれる作品だと嬉しい気持ちになります。
山添については、合コン好きと深夜ラジオ好きが同居しているところに一番共感したとのこと。合コンの帰り道に伊集院光やハライチ、オードリーのラジオを聞いていたそうです。
さらに、40代でまだ婚活を続けている身として、ウイの意見を聞きたいという相談も添えられていました。ラジオ好き同士がYouTubeやSNSで通じ合うように、ニッチな趣味からの共通点で相手を見つける難しさを感じているといいます。
2人とも、こうして丁寧なお便りをもらえることをとても喜んでいました。
僕らラジオ好きじゃないですか。パーソナリティが「おはがきいっぱいいただいてます、本当ありがとうございます」って言うじゃないですか。あれ多分、本当嬉しいんですよね。
3人はどこで出会ったのか
質問への答えとして、2人は出会いの経緯を語り始めます。3人が知り合ったのはおよそ8年ほど前、10年弱前のことです。
きっかけは、ウイが会社員をしながら書いていたブログでした。当初は「はてなブックマーク」に匿名で投稿し、星を集めて承認欲求を満たしていたといいます。
その後、ウイは実名寄りの匿名アカウント「ウイ」名義ではてなブログを始めます。これが運良くバズることが多く、著名人に紹介されることもありました。
エビヤは、その頃からウイのブログの読者だったといいます。恋愛系のブログが特に印象に残っていたそうです。
バズをきっかけに会社を辞めたウイのもとには、女性誌やファッション誌などから執筆依頼が舞い込むようになりました。
ほぼ同じタイミングで、朝日新聞からオンラインサロンの打診も受けます。当時オンラインサロンは出始めで、ウイは二つ返事で引き受けました。
オンラインサロンって言っても、ただ有料ブログなんですよね、ただの。そこに入っていただいてる方々に対して、月に1回ぐらいのペースで飲み会しましょうっていうことを僕が言い出したんですよ。
この飲み会が、エビヤと山添との出会いの場になりました。
1回目のオフ会は30〜40人規模の大人数でした。人見知りだというエビヤは、彼女や友達が欲しい気持ちから、勇気を出して参加したと振り返ります。
もう20代後半とかにもなってきてるし、その友達ってなかなかできないじゃないですか。別に彼女だけじゃなくてもそういうのがあったらいいなみたいなことも思って、ちょっと自分を変えるじゃないですけど、行ってみようと思って行ったんですよ。
エビヤはブログの文体から「シュッとした人」を想像していましたが、実際のウイは怖いアイコンとは裏腹に「ひょうきんおじさん」で驚いたそうです。
山添はこの1回目のオフ会にはいませんでした。エビヤが1回目で仲良くなった人たちに誘われた別の飲み会で、後から出会ったといいます。
ウイが山添に抱いた第一印象は「めちゃくちゃいい香りがする面白い女」でした。店員や他の客からも香りを尋ねられるほどだといいます。
とにかくいい香りがして、なおかつとにかく口が立つ。キャラも立ってるし、面白い女性だなっていう印象があったのが出会いなんで、まあどっちみちもう10年近く前ですよね。
その後7〜8年ほど、3人はちょいちょい飲み友達として会い続けます。そして去年の年末、山添から「ラジオしませんか」と誘われ、2人が二つ返事でOKしたことで、この番組が始まりました。
このポッドキャストは山添さんが始めた物語なんですよ。
3人の中では、今回不在の山添が主役という位置づけなのだそうです。
ライターから結婚相談所所長になったいきさつ
続いて、ウイがなぜ結婚相談所所長になったのかが語られます。ウイの書籍は独身や恋愛に関するものが多く、長く人の恋愛に携わることを生業にしてきました。
もう常人なら致死量の恋愛相談を乗ってきましたからね。
メンヘラやモラハラの被害者の相談に乗り、警察沙汰の立ち会いにまで行ったこともあるといいます。
名古屋に住んでいた頃、サラリーマンを辞めてライター業を始めた時期に、知り合いが結婚相談所を運営していました。暇なら手伝ってほしいと言われ、手伝ううちに考えが変わったそうです。
結婚相談所ってなんか最終手段みたいになってるけど、全然そんなことなくて、早い段階で結婚を真剣に考えて、若ければ若い人ほど有利なんですよ。ものすごい売り手市場で、性別関係なく婚活を進められるツールなんです。
自分の仕事で「結婚相談所に入った方がいい」と言う人の一歩先まで手伝えると考え、開設に至ったといいます。
一方で、向き不向きもあるため「入らない方がいい」「マッチングアプリの方がいい」と言うこともあるそうです。
テレビのノンフィクション番組などで、常識のない利用者がフィーチャーされがちなことも指摘します。そのせいで「とんでもない巣窟」のようなイメージがついてしまうといいます。
しかしウイは、本気で結婚したい男女が結婚するツールとしては最強だと考えています。
間違いなく独身だし、マッチングアプリと違ってプロフィールに書いてある年収とか資格とか資産も全部証明が必要だし、子供をどうしたいとか避けては通れないものも、初めから意思確認が全部できるんですよ。
それなのに最終手段として捉える人が多い現状を、もっとカジュアルな選択肢として広げたいと話しています。
40代の出会い相談への回答
ここでお便りの後半、40代の出会い相談に戻ります。ペアーズは40歳になると年齢層が合わず、他のアプリは母数が少なく、ニッチな趣味で相手を見つけにくいという悩みでした。
ウイは、40代のマッチングアプリが難しいという印象はないと言います。ただし、住んでいるエリアによって難易度は大きく変わるとのことです。
首都圏にいると40代だろうが50代だろうが、マッチングアプリってファーストチョイスにすべきなんですよ。っていうのはやっぱり分母が桁違い。
恋愛に必要なのは、多くの人にとって「分母でぶん殴る」ことだとウイは言います。好きになる条件がはっきりしている人は、その人がいる場所へ一本釣りしに行けます。
しかし、ほとんどの人は条件をふわっとしか決められません。だからこそ分母の多いマッチングアプリが有効だと考えられます。
40代が難しいと感じる背景には、CMなどでアプリのターゲットが20代に見えることがあると指摘します。ただ実際は、40代や50代でも分母が一番多いのはマッチングアプリだと話します。
そのうえでウイは、自己分析から始めることを勧めます。まず自分が「瞬間湯沸かし器」なのか「ホットプレート」なのかを考えてほしいといいます。
瞬間湯沸かし器は出会った瞬間に恋愛の可否をジャッジできるタイプ、ホットプレートは恋愛になるまでに時間がかかるタイプです。デートを6回、7回重ねないと付き合えない人は後者だといいます。
出会った瞬間や1日話しただけで恋愛の可否を判断できるタイプ。刺しに行く戦略が向いています。
恋愛になるまで時間がかかるタイプ。デートを何度も重ねる必要があり、戦略が異なります。
さらに「こんな人が好き」という条件を固められるかどうか。この2つの軸で向いている出会い方が変わるといいます。
もし半日かけて一人二人と出会いに行くかける毎週のようにっていうモチベーションがなければ、まあどこに住んでてもマッチングアプリはファーストチョイスになります。分母強いから、やっぱ。
本気で出会いに行きたい場合は、結婚相談所やサロンで個別相談にも乗ると案内していました。
おすすめ漫画短編集①『春と盆暗』
後半は今週のエンタメです。今回はウイ向けに、1冊で完結する漫画短編集を3つ紹介します。1冊目は熊倉献の『春と盆暗』です。
2017年にアフタヌーンに掲載されたものがまとめられ、2年前に1話追加された新装版が出ています。エビヤの好みにどんぴしゃな作品だといいます。
現代が舞台の片思い短編集で、登場人物は各話バラバラの連作短編です。しっとりしすぎず、テンションが終始低めのリアルなトーンが特徴だと話します。
1話「月と眼窩」は、接客以外のバイトを探す後藤くんが、製麺所直売店の店先で佐山さんに微笑まれ、接客のバイトに応募してしまう話です。
佐山さんはモヤモヤした時、頭の中で月面に道路標識を突き刺すイメージを思い浮かべるといいます。この少し変わった一面に後藤くんは惹かれていきます。
最終日にやらかしてしまった後藤くんが後日改めて謝り、「まだ怒ってますよね」と聞くと、佐山さんが「当然です」と初めて怒った表情を見せる。その表情にグッとくる展開だといいます。
エビヤはこの作品を、単なるサブカル的な恋愛短編集ではなく、漫画的表現の技術が詰まった作品だと評価します。特に紙を読む前提で作られたコマ割りと「めくり」の演出のうまさを挙げます。
やっぱいい漫画って二ページ見開きでの画面構成とめくりっていうのをちゃんと計算されてるんですよ。左下の最後のコマがあった上で、次のページをめくった時に、右ページの一コマ目に何を置くのか。ここのテンポ感の出し方が抜群にうまくて。
さらにエビヤは、この作品に「マジックリアリズム」的な表現があると指摘します。
『春と盆暗』では、商店街の路上に立つ二人の背景が突然月面になったり、駅のホームでの会話が水中の描写に切り替わったりします。これが漫画では違和感なく成立します。
その理由をエビヤは、漫画がコマとコマの間で時間と空間を断絶しているからだと説明します。映像では時間的な連続性があるため、同じ表現は違和感が出るといいます。
話自体は恋愛短編集として楽しめるうえ、その裏にある技術の高さがおすすめの理由だとまとめます。
おすすめ漫画短編集②『ひきだしにテラリウム』
2冊目は、ウイもすでに持っている九井諒子の『ひきだしにテラリウム』です。『ダンジョン飯』の作者による、2013年刊行の短編集です。
1冊に33編が収録された「小編集」で、星新一のショートショートのように短い話が並びます。作画もジャンルも各話でまったく異なります。
SFはもちろんあるけど、ファンタジーもおとぎ話もラブコメも、コメディー、ギャグ、シリアス、ブラックジョーク、メタフィクションみたいな多岐にわたる上に、それぞれの話に合わせた絵柄で展開していく。一人の脳内から生み出されたものとは思えない発想の洪水なんですよ。
寓話や民話、ノアの箱舟、親殺しのパラドックスといった哲学、宗教とSFの掛け合わせまで、圧倒的な幅広さで33編が詰め込まれているといいます。
九井諒子は『竜の学校は山の上』でデビューし、『竜のかわいい七つの子』を経て本作を発表しました。エビヤはこの流れを追ってきた読者だといいます。
本作には竜を食べる話が収録されており、その後の『ダンジョン飯』につながる要素がすでにあると指摘します。
一方ウイは、自分の持っている『テラリウム』と『ダンジョン飯』が同じ作者だと数年間気づけなかったと打ち明けます。
『ダンジョン飯』と自分が持ってる『引き出しにテラリウム』が同じ作者っていうのを数年間気づけなかったんですよ。
作画も話のトーンも全く違うため、読むと「これ本当に一人の作者だよね」と確認したくなる、短編集・小編集としての傑作だと2人は評価します。
おすすめ漫画短編集③『センチメンタル無反応』
3冊目は真造圭伍の『センチメンタル無反応』です。『ひらやすみ』の作者による、2022年刊行の短編集です。
まずエビヤは装丁の良さを挙げます。キラキラした立体感やザラザラした肉厚の質感など、紙で買う価値があると話します。
収録作は8編ほど。イケてない主人公たちの家出、高校生の甘酸っぱい話、ゴミ屋敷の家族の話などが並びます。
最も話したいのは、最後に収録された実話のエッセイ漫画です。2020年、コロナ禍に入院した真造の闘病記だといいます。
耳の下のしこりが悪性リンパ腫、血液の癌だと判明します。33歳、次の連載に悩んでいた時期でした。ステージ1で、半年後に寛解しています。
しんどいはずのこの状況で、真造は「不幸をくれてありがとう」と思ってしまったといいます。
今までやっぱ全然次の連載が書けなかったけど、この不幸があれば次の連載ができるんじゃないかって思うんですよ。
そして癌の入院中にネームを書き始めたのが『ひらやすみ』でした。本作『センチメンタル無反応』は、そのスランプ期の作品を集めたもので、反応がなかった=無反応がタイトルの由来だといいます。
エビヤは、短編すべてが傑作というわけではないと正直に語ります。ただ、スランプ期の作品やあとがき、エッセイを踏まえて『ひらやすみ』を考えると、その価値がより深く見えると話します。
『ひらやすみ』ってコロナ禍とか病気、癌みたいな非日常の中にあって、日常の尊さっていうものがより輝いて見えるっていう中から生まれたんだって思うと納得感がすごい。
ウイも、この背景を知ると『ひらやすみ』への見方が変わると反応しました。こうの史代『この世界の片隅に』が戦争という非日常の中で日常を描くのと似た構造があると語られます。
なお余談として、真造の妻は『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の作者・谷口菜津子で、漫画家夫婦だといいます。昨年、TBSで『じゃあ、あんたが作ってみろよ』、NHKで『ひらやすみ』が同時期にドラマ化されました。
一方は高円寺、一方は阿佐ヶ谷が舞台で、中央線に住むエビヤは「中央線祭りみたいな感じ」だったと振り返ります。
最後に、短編集は1冊で完結するため買いやすく読みやすいと3作をまとめます。
ワンピース読んでくれって言っても、やっぱ114巻読めはちょっとしんどいなってわかるから、短編集ぜひっていうのをちょっと今回趣向を変えての紹介です。
まとめ
3人の出会いは、ウイの有料ブログとオンラインサロンの飲み会がきっかけでした。結婚相談所所長の視点からは、多くの人にとって出会いは分母で勝負するものであり、自己分析から始めることが勧められます。エンタメでは、それぞれ違う角度から光る漫画短編集3作が紹介されました。
- 3人はウイのブログとオンラインサロンのオフ会・飲み会をきっかけに知り合い、7〜8年の飲み友達を経て番組を始めた
- 結婚相談所は最終手段ではなく、独身・年収・資産などが証明され意思確認もできる強力なツールだとウイは考えている
- 首都圏なら年齢を問わずマッチングアプリが第一候補で、恋愛は多くの人にとって分母で勝負するものだと語られた
- 『春と盆暗』はコマ割りとめくり、マジックリアリズム的表現など漫画独自の技術が詰まった片思い短編集
- 『ひきだしにテラリウム』は発想と作風の幅が圧倒的な傑作小編集、『センチメンタル無反応』は闘病記から『ひらやすみ』誕生を読み解ける一冊
