現場に降りてくる社長への相談、その事実はどこにある?
今回はリスナーのアンコさんからのお便り回です。読み上げられた質問は2つでした。
玉置さんや岡島さんは、自分より目上(役職が上)の人が自分の考えとは異なる動きをしている場合、どのようにコミュニケーションを取りますか?
また、自分自身が考えている方針や考えが、そもそも間違っているのではないかというメタ認知をどのように行っていますか?
背景として、関わっている案件で社長がずっと現場に降りてくるため、二番手を採用して意思決定に集中してほしいとアプローチしたものの、なかなか伝わっていない、という状況が添えられていました。
玉置さんはまず「事実は何か」から考えるべきだと切り出します。ただ、この相談で事実に見える「社長が現場に降りてくる」という言葉自体が、実は事実ではないと指摘します。
すごく現場に降りてこられるっていうのって、感覚的というか主観的な言葉で、具体的に社長が自分の担当の仕事に口を出してくるのか、具体的なその事実があると思うんですよ。
玉置さんの見立てでは、本来は自分がやり方や手順、スケジュールを決めて推進すべき仕事に、社長が侵食してきている、という状態です。事実はそこだけで、それ以外は自分の推測から積み上げたものだと整理します。
二番手採用という提案は、なぜ社長に届かないのか
玉置さんは、相談の中に推測が混ざっている点に注目します。困りごとから「二番手を採用した方がいい」という提案までは、距離があるというのです。
割と飛んでるっていうか、いきなり二番手を採用した方がいいとか、一点集中してほしいとかって、社長が私に、いいと思っているやり方ではないやり方をやりなさいって言ってきてるのかもしれないですけど、そこから二番手の採用で割と遠いような気がしていて。
さらに「フリーランス歴が長く、雇われ社長二年目なので致し方ない」という部分も推測だと指摘します。主語が大きく、フリーランス歴の長い社長はみんなそうなのか、という決めつけになっているというわけです。
玉置さんは、アンコさんが文面から頭の回転が速い人だと感じています。だからこそ、不確かな事実に推測を重ねて仕事を進める癖があるのだろうと見ます。
その進め方が奏効する場面もある一方で、人間関係では別だと話します。
こと人間関係に関しては、その頭の使い方はちょっとやめた方がいいかもしれないですね。その推測が当てはまらないケースっていうのが多々あるんですよ。
抽象化せず、事実に足場を置いて話す
解決策として玉置さんが勧めるのは、事実に足場を置いた一つ一つのコミュニケーションです。社長もアンコさんも、同じ会社ならゴールは同じはず。違うのは、そこへ至る最善のやり方だと言います。
だから、方法論をすり合わせるのが本筋になります。
私はこの方が効率よくミスなく成果を最大限にできるやり方だと思っているので、このやり方でやりたいです。でもこれ私が担当の仕事なので、このやり方でやらせてほしいっていうような会話をする。
逆に、抽象論にしてしまうと伝わらないと釘を刺します。「現場に口出ししたい癖がある人だから二番手を採用した方がいい」という提案は、社長には余計なお世話だと受け取られかねません。
そのうえで玉置さんは、アンコさんが本当に解決したいのは別のことではないかと踏み込みます。
岡島さんが根拠を尋ねると、玉置さんは言葉の選び方から社長への敬意が感じられないのだと答えました。
目上・目下は関係ない。コミュニケーションの本質
1つ目の「目上の人にどう伝えるか」という問いに対して、玉置さんはコミュニケーションのやり方は目上も目下も関係ないと言い切ります。
コミュニケーションって目上とか目下とか関係ないんですよ、実は。要は相手が気分よく合意してくれたらいいわけじゃないですか。
玉置さんは、コミュニケーションのゴールを、100%自分の思い通りにすることではなく、お互いが納得して変わっていくことだと定義します。
目下の相手だと楽に見えても、実際は「社長が言うから」と納得しないまま「わかりました」と答えているケースも多い、と指摘します。丁寧な合意形成をしているなら、相手が目上でも同じやり方で通じるはずだというのです。
違いが出るのは、相手がこちらを下に見て、意見を取るに足らないものと決めつけている場合です。それでも打つ手はあると言います。
自分が言ってもダメだったら、その人が意見を聞く人に説得して、その人から言ってもらうとかもアリだと思うんですよ。
役職に関係なく、丁寧に自分の伝えたいことを伝えていくしかないというのが、この問いへの答えでした。
「正しい・間違い」ではなく、立場ごとの「最善」で考える
2つ目の「自分が間違っているのではないか」というメタ認知の問いに、玉置さんは「正しい・正しくないではないかもしれない」と応じます。
立場が違えば最善は変わる、というのがその理由です。同じゴールを共有していても、持っているKPIが違えば最善の方法は変わります。
成果や効率を優先した方法論になりやすい
丁寧さや満足度を優先した方法論になりやすい
正しい正しくないじゃなくて、その人がそのポジションとか、その立場で最善だと言っているものだっていう前提でコミュニケーションを取った方がいいと思うんですよ。
玉置さんは、これはメタ認知というより、いろんなポジションの視点で「その立場なら最善は何だろう」と考えてみることだと言い換えます。
そして、人は変えられないという前提に立ち戻ります。
相手を理解しようとするところからでないと言葉は伝わらない、と玉置さんは話します。自分を理解しようとしてくれる人の言葉なら聞こうと思える一方、頭から否定する空気で来られると聞く耳を持ってもらえない、というわけです。
自分の中だけで消化しない。苦しめるのは具体的な言動
岡島さんは、頭で分かっていても個別のケースで変なことをしてしまう覚えがあると打ち明けます。玉置さんも、とうとうと話しながらもカチンと来た瞬間は全部飛んでいると笑って認めました。
今ね、とうとうと話してますけど、カチンと来た瞬間とか全部飛んでますからね。ムカつくって言っても飛びますよ。ふざけんなって思ってますよ。
そのうえで玉置さんは、頭が良くて真面目な人ほど陥りがちな癖を挙げます。それは、自分の中だけで全部消化しようとすることです。
「人は変われない」「彼もこういう経験をしてきたので致し方ない」といった語尾に、無理に納得しようとする姿勢が表れていると指摘します。
自分で解釈したものとかストーリーを整えて、消化しようとしてるんですよ、一生懸命。自分の中だけで。それはやめた方がいいですね。
本当に自分を苦しめているのは、他者の具体的な言葉や行動だと玉置さんは言います。その具体的なものに対して、具体的な解決策を求めていくべきだ、というのが一貫した主張です。
好き嫌いの白黒ではなく、グラデーションで人を見る
玉置さんは、同じ職場で働く人は尊敬できたり好きになれたりした方が幸せだと認めつつ、そんなパラダイスはなかなかないと現実的に語ります。
大事なのは、人を解像度粗く見ないことです。どんな人にも、共感できる部分、理解できる部分があるはずだと言います。
仕事の人間関係に限らず、100%共感でき愛せる他者はそもそも存在しない、というのが玉置さんの見方です。恋人や結婚相手であっても、全肯定できる存在ではないと言います。
だから、嫌いだ・尊敬できないと思ったら、その人の好きになれる部分や自分と同じ部分を探し、そこを糸口に理解しようとすればいい、と勧めます。考えや価値観が同じにならなくてもいい、違うねと理解して付き合っていけばいい、というわけです。
さらに、基本的に人は好かれたいし相手にも気分よくいてほしいものだと言います。相手も良い人間関係を築きたがっている人として扱えば、相手の関わり方も少しずつ変わってくると話します。
どっか自分のことを小馬鹿にしている社員の言葉とかって、聞いてくれる人格者なかなかいないですよ。
玉置さんは、短い文面からでも社長を尊敬していないと感じ取れたのだから、相手にも漏れているのではないかと指摘しました。世界は歪でもいい、人としてクソだと思う部分があっても社長として付き合えばいい、と付け加えます。
三木谷さんなら届く提案が、社員だと届かない理由
話は最初の「二番手を採用した方がいい」という提案に戻ります。玉置さんは、これは社長からすると言われたくない類の提案だろうと見ます。
玉置さんは、同じ提案でも誰が言うかで届き方が変わると例えます。
例えば楽天の三木谷さんが「君、二番手採用した方がいいよ」って言ったら、「そうですかね」と思うと思うんですよ。
たくさん経験し失敗もしてきた人の言葉なら受け止められる一方、そのポジションを経験したことのない社員が空想でアドバイスをしても届かない、という理屈です。
一般論として、社長が現場に降りてくるよりは二番手採用した方がいいみたいに知っているだけだと思うので、それはなかなか届かないと思いますね。
岡島さんは、モヤモヤの表出の形が社長への直アドバイスになってしまっているのではないか、と受け止めました。
玉置さんは、まず事実ベースで現実的な問題を解決すること、社長を解像度高く見て信頼できる部分を探すこと、関係を構築しながらコミュニケーションしていくことを、この回答のまとめとして示しました。
もっとも、社長にそうされたら「めっちゃめんどくさい」と本音も漏らします。それでも自分が楽になる方法は伝えた通りだ、と締めくくりました。
まとめ
玉置さんの回答は、主観的な「困った」を事実に分解し、相手の立場での最善を想像しながら、丁寧に伝えていくという一貫したものでした。相手を白黒で裁かず、グラデーションで見ることが、目上の相手を動かす対話の入り口になります。
- 「現場に降りてくる」のような主観的な言葉から、口を出される具体的な事実を切り出す
- 推測や抽象論ではなく、事実に足場を置いて方法論をすり合わせる
- コミュニケーションのやり方は目上・目下で変わらず、相手が納得して合意できるかが本質
- 正しい・間違いではなく、立場やKPーによって最善は変わるという前提で考える
- 苦しめるのは具体的な言動。自分の中で消化せず、共感できる部分を糸口に相手を理解する




