セブンのスムージー半額キャンペーンは「失敗」だったのか
冒頭の雑談は、玉置さんが直前まで調べていたというセブンイレブンのスムージー半額キャンペーンの話から始まります。
10日の「スムージーの日」に合わせて、1日限定で全品が半額になったそうです。
10日に「スムージーの日」があって、その日に合わせて1日限定で全部半額になったんですよ、スムージーが。
ところが、スムージーのマシンは1杯作るのに洗浄まで含めて3分ほどかかるといいます。半額を目当てに人が押し寄せ、店舗によっては120分待ちの行列ができたそうです。
さらに、待っている間に溶けてしまうスムージーを、名前を書いて冷凍庫に戻すといった対応まで現れたと玉置さんは話します。
衛生的にというか、なんだろう。普通に不安になりますね。
一見するとトラブルだらけで、評判を落としそうなキャンペーンに見えます。玉置さんも当初は「なぜこんなことをやったのか」と疑問に思ったそうです。
天下のセブンが「わかってて」やった可能性
そこで玉置さんは、このキャンペーンが本当に失敗だったのかを掘り下げていきます。
調べてみると、その1週間前には揚げ物の半額キャンペーンがあり、売り切れ店舗が続出して公式が謝罪を出していたといいます。
半額セールのキャパっていうのを、わかってるんですよね。上でまずやってますと。
マシンが1杯3分かかることも、事前の取材で「安定供給は可能な限り頑張っている」とコメントしていたことも踏まえ、玉置さんは会社側がトラブルを予期していたはずだと見ます。
そのうえで、SNSでは「セブンイレブンのスムージー」というワードが大量に流れ、インプレッションは伸びたと指摘します。
一方で、しわ寄せは加盟店と一部の客に集中しました。オペレーションコストや客からの苦情は、フランチャイズの店舗が引き受けることになります。
なぜ「わかっててやる」が成功になるのか
玉置さんは、セブンイレブンの利用者の約50%がシニア層である一方、若年層、とくに若い女性を取り込みたいという方針にも触れます。
スムージーはそのイメージに合い、狙う層は「時間があって安く買いたい層」だと分析します。
時間があって安く買いたい層にとっては、何分待ちとかになってたとしても全然マイナスじゃないんですよね。
つまり、本来取り込みたいターゲットには待ち時間はマイナスにならず、インプレッションも伸びたという点で、マイナスを承知のうえなら成功したプロモーションだ、というのが玉置さんの見立てです。
さらに、「分かっててやってるの?」と冷めた目で見る人は、そもそも欲しい客層ではないため、ブランド毀損も最小限で済んでいると続けます。
岡島さんは、こうした計算に「操られているんだろうな」と感じて不安になる側だと打ち明けます。
簡単に乗せられてる気がするんで。
店舗側では、スムージー半額と同時に3個買うと6月中に使えるクーポンが配られ、リピーターを育てる動機にもなっていたと玉置さんは補足します。
インプットは「原材料」にすぎない
ここから本題に入ります。テーマは「インプットを使える武器に変える錬金術」です。
玉置さんは、キャリアアップを目指す受講生の多くが熱心にインプットしている一方で、それが原材料のままだと指摘します。
このインプットっていうのって、こう原材料なんですよ。仕入れただけだと、倉庫に積んでるのと同じなんですよね。
鉄などの素材を持っていても戦えないRPGにたとえ、鋳造や錬金というプロセスを経なければ武器にはならない、と2人はやり取りします。
そのうえで、最も価値のあるインプットは本やポッドキャストよりも自分の体験だと玉置さんは言います。
ただし体験も原材料であり、放っておけば腐って捨てることになると釘を刺します。
行列店のバイトで「怒られた経験」を武器に変える
玉置さんは、体験を抽象化する具体例として、ある人の飲食店バイトの話を挙げます。
行列ができる人気店で、2人席が空いたときに、先に並んでいた3人組より後ろの2人組を先に案内するオペレーションだったそうです。
当然、先に並んでいた3人組は怒ります。その場では「2人席が空いたので次の方を先に案内していいですか」と一言添えればよい、という学びが得られます。
しかし玉置さんは、ここで止まると「そのお店でしか使えない具体」で終わってしまうと言います。
この人はさらに一段抽象化し、客が怒った理由を「自分がないがしろにされたと感じたから」だととらえました。
この抽象化された学びは、あちこちで使えると玉置さんは続けます。
たとえば、ある人が欠席した会議でその人に関わる決定が出たとき、あとで聞いてないがしろにされたと感じないよう先に伝えておく、といった行動につながります。
あるいは、ほとんど使われていない機能を廃止するとき、いきなり決定として伝えれば長年の利用者は怒ると予測し、まずアンケートから始める、という設計もできます。
同じ体験をしても、「次は声をかけよう」で終わった人は何の武器も持たない、という違いを玉置さんは強調します。
不快な経験こそ「伸びしろ」のサイン
玉置さんは、武器になるインプットは心地よいものではないと言います。褒められた経験より、怒られたり否定されたりした経験のほうが武器になりやすいというのです。
自分がこう不快に思うっていうことは、無自覚に大事なこととか、自分の核心に近いところなんですよね。
どうでもいい指摘は痛くないという例として、「髪が黒い」と言われてもへこまない、というやり取りが交わされます。
続けて玉置さんは、嫌な上司の実例を挙げます。徹夜で作った企画書をパラパラ見て机に投げ、「結局何が言いたいの?」と言うような上司です。
その人は長らく上司が悪いと思っていました。しかしある先輩から、企画書には「話したいこと、伝えたいことしか書いていない」と指摘されます。
だったら、相手が知りたい順番に書くべきじゃないの?って言われたんですって。
そこで本人は、自分の問題点が「私が伝えたい、私が売りたい」と、すべて主語が自分だったことに気づきます。相手がどう考えYESと言うかという視点が欠けていたのです。
きっかけは性格の悪い上司の「何が言いたいの?」でした。それを企画書の書き方で終わらせず、「相手がどう受け取るかを考えないと話が前に進まない」と抽象化すれば、あらゆる場面で活きると玉置さんは言います。
武器は「入れ替える」ものではなく「増やす」魔法
岡島さんは、この「武器」のイメージに引っかかりを覚えると話します。武器は強いものを一つ得ると入れ替えていくものだが、この話はむしろ魔法に近いのではないか、というのです。
この属性が弱点のやつにこの魔法を使えるみたいなものが増えていく。抽象化されると、ストックされていくような感じがしました。
玉置さんもこれに同意し、たくさん怒られたり失敗したりした人ほど、使える魔法が増えていくと応じます。岡島さんは、失敗のたびに素材がドロップするようだ、とたとえます。
具体的な体験
行列店で客に怒られる、上司に企画書を投げられるなど、快くない経験も含む
抽象化
「何が起こったのか」「なぜか」を、個別の状況を取り払って考える
汎用的な武器
会議、サービス設計、営業など別の場面にも当てはめられる知恵になる
自分のテーマと違う本ほど、思わぬヒントになる
玉置さんは、抽象化する力があれば、明確なテーマがなくても学びを得られると言います。
一方で、自分が課題感を持っているからこそ気づけるヒントもあるとも指摘します。本やポッドキャストから他人の知性が吸収されるのは、課題を意識して読み聞きしているときだというのです。
そのうえで、マーケティングの課題にはマーケティングの本、と決めてしまうと、かえって答えが見つかりにくいと話します。
全然その自分のテーマとは違うような別分野のところから、答えとかヒントを得られることってすごく多いんですよ。
例として玉置さんは、文化人類学者の磯野真穂さんの著書『他者と生きる』に出てくる抗血栓薬の話を挙げます。
将来のリスクに備えて薬を飲むことにはなかなか腰が上がらないものですが、状況を大きく変えたのが「血液サラサラ」という言葉の登場だったといいます。
さらに、心房細動による脳梗塞は「長嶋茂雄さんがなられた病気」という枕言葉がつくと、一気にリアリティが増して治療が進んだと続けます。
技術の進歩ではなく、言葉の表現だけで行動が変わったという事例です。
抽象化を自分のビジネスに当てはめる
玉置さんは、この一節を抽象化して自分のビジネスに当てはめると何が見えるかを問いかけます。
つまり、自分のビジネスにおける「長嶋茂雄さん」に当たる身近な人物や事象は何か、「血液サラサラ」のように誰もが瞬時にイメージできる表現は何か、というヒントになるというのです。
続けて玉置さんは、本のもう一つの価値として、言葉にできないもやもやに定義を与えてくれる点を挙げます。
例として、パスカルが『パンセ』に書いた「ウサギ狩りに行く人はウサギが欲しいわけではない」という一節を紹介します。
「この人はウサギが欲しいのか?」という問い
ウサギ狩りに行く人にウサギを差し出しても喜ばれない、という現象は、身のまわりに数多くあると玉置さんは言います。狙っているのは結果ではなく、夢中になれるプロセスだからです。
その結果よりも、その夢中になってる時間が欲しい。
玉置さんはこれを抽象化し、いくつもの場面に当てはめます。不良品に怒る客にすぐ返金すると余計に怒るのは、本当に欲しかったのが心からの謝罪だからだ、といった具合です。
「いつか起業したい」と言う人も、今すぐ起業させても喜ばれず、「起業準備中」というステータスでいたいのだ、と続けます。
岡島さんは、相手が言葉通りのものを欲しているとは限らない、という視点を受け取ります。
本当にこの人が欲しいものってウサギなんだっけ?っていうのを考える、なんか癖というか。それはもう魔法になっているというか。
たかが本の一節でも、頭のなかで自分なりのイメージに整理できれば、非常に役立つ武器になると玉置さんは締めくくります。
インプット中毒から抜け出す
玉置さんは、多くの人が「自分はインプットが足りないのではないか」と感じている状況を指摘します。
もっとインプットしなきゃいけない、置いてかれる、足りないみたいに感じてらっしゃる方が多い。でもそんなことはない。
どれだけ少なくても、一行だけでも、自分で抽象化して自分のものにできれば十分だ、というのが玉置さんの主張です。
むしろ本を一冊も読まなくても、日々起こることすべてを抽象化して武器にすれば、行動が苦手な人でも日常のなかで武器を蓄えられると言います。
岡島さんは、たくさん読んでも読んだそばから記憶が劣化していく実感を語ります。玉置さんは、原材料はやがて忘れられて腐っていくと応じます。
倉庫っていうと長持ちしそうなんだけど、もう冷蔵庫ぐらいの感じだと思った方がいいと思うんですよ。
3か月経てば食べられなくなる冷蔵庫のように考え、少ないインプットでも先に料理してしまうほうがよい、というのが玉置さんの考えです。
たくさん読んでも抽象化しないまま放置し、記憶が薄れて忘れていく
少なくても抽象化して自分の武器にすれば、あらゆる場面で使える
未経験でも「学習の速さ」で選ばれる
玉置さんは、この能力があれば職務経験が少なくても評価されると言います。先ほどの行列店の店員の話は、実は面接での話だったと明かします。
バイトの経験しかなくても、自分はこういうことを学んで仕事でこういうふうに生かしていますって言われたら、採用したくなる人なんですよね。
いろいろな経験から学習して応用できる人だと伝われば、未経験の職種でも採用したい人になる可能性が高い、というわけです。
岡島さんがまとめに入ろうとしつつ、日常で怒られたときこそアイテムがドロップするチャンスだと確認します。
個別の事象とか具体性をなくしたら、「何が起こったんだろう」「何が原因なんだろう」「どういう仕組みなんだろう」みたいなことを考えることですね。
玉置さんは最後に、幅広いジャンルの本や小説、映画に触れることの意味にも触れます。すぐ仕事に役立たなくても、抽象化して理解すれば人を理解する助けになると話します。
まとめ
この回は、インプットは原材料にすぎず、抽象化という錬金術を経て初めて使える武器になる、という玉置さんの考えを軸に進みました。セブンの半額キャンペーンから飲食店のバイト、パスカルの一節まで、身近な事例を抽象化して別の場面に当てはめる思考が繰り返し示されました。
- インプットは仕入れただけの原材料で、抽象化して初めて汎用的な武器になる
- 最も価値あるインプットは自分の体験。とくに怒られた・否定された経験は伸びしろのサイン
- 「何が起こったのか」「なぜか」を具体を外して考えるのが抽象化の基本ステップ
- 自分のテーマと違う分野の本ほど、思わぬヒントが得られることが多い
- 原材料は冷蔵庫のように腐るもの。量を追うより、少なくてもフレッシュなうちに料理する



