台風とノイキャン、二人のライフハック談義
この回は、岡島さんが台風の間も家にこもっていたという雑談から始まります。玉置さんは台風の後に外へ出て、風で体が動いた拍子に枝が引っかかり、ズボンを破いてしまったと話します。
吹き飛ばされてズボン破りました
怪我はなく、2、30センチほど動いた程度だったそうです。話題は、二人が愛用するイヤホンやライフハックへと移ります。
岡島さんはAirPods Proのノイズキャンセリングがないと落ち着かないタイプで、正月に故障した際、AppleCareが休みの3日間に耐えられず、もう一台買い足したというエピソードを明かします。
一方の玉置さんは、音声入力を使うようになってから骨伝導イヤホンに切り替えたと話します。音楽を聴きながら音声入力もしたいためで、ノイキャンの静寂は得られないものの快適だといいます。
岡島さんは、こうしたライフハックに唯一の正解はなく、人によってライフハックがある点が面白いとまとめます。
ワイン一升瓶で激詰めされた社長
本題は、玉置さんがスタッフから受けた「激詰め」の話から始まります。前回の収録で、こき使って大変だと分かりつつ肉でなんとかしようとしている、という話をしていた流れの続きです。
その「肉を食わせる会」で、玉置さんはスタッフからガンギレされたといいます。
見たこともない一升瓶のワインを片手に、進みがおかしいスピードで進むんですよ。一升瓶2本とかなくなるんですよ
すごい激詰めをされて、「お前一人でやれ」ぐらいまで怒られました
岡島さんは、社長にそこまで言える関係性を面白いと感じたと話します。玉置さんは、文句だけを言う人たちではないと補足します。
普段は自立して自走し、自分の問題は自分で解決してしまう人たちだからこそ、解決できないことが出てきたときには、解決策と一緒に提案したいと考える。その我慢が、酒が入ってガーッと出たのだと説明します。
そこまで言わせてしまったのは、もう私の不徳の致すところなんですよね
怒られたことをきっかけに「どうすれば良かったのか」と自分の関わり方を見直すなかで、多くの気づきがあったといいます。それがこの回の本題です。
事業立ち上げで「早く安定軌道に乗せたい」焦り
玉置さんはまず、自分が置かれている状況を説明します。事業の立ち上げ期はルーチンや想定内のことがほとんどなく、人手も十分ではありません。
過去に人員整理をしなければならない局面を経験しているため、最初から大量に人を揃えて必要に応じて解雇するようなやり方は取りたくない、と話します。
立ち上げ期はピボットの可能性もあり、どんなスペックの人が必要かも固まっていません。だからこそ、確実にずっと一緒にやっていける少人数だけで進めているといいます。
その分、現場は慣れない仕事や専門外の仕事も請け負い、仕事量も多い状況にあります。玉置さんは、この状況を飛行機の離陸にたとえます。
機長としては一刻も早くそのシートベルトが外せる安定軌道に乗せたいんですよ
揺れて落ちる可能性も高いカオスな離陸期を早く乗り切りたい。だからこそ急ぎたくなる。早く安定軌道に乗せたいという焦りが、後の問題の背景にあったと振り返ります。
タスクは足りるはずなのに、なぜキャパオーバー?
玉置さんは長年の経営経験から、キャパオーバーをしてはいけないことは念頭にあり、根性論も違うと考えていました。だからタスクのボリューム管理はしてきたつもりだったといいます。
ところが実際には、みんなが「キャパオーバーに耐えている」状態にありました。
タスクの量でいうとこなせるはずだ、長く付き合ってる人たちなので思っていたんですけども、本人たちにとってはキャパをオーバーしているっていう認識の違いがあったんですよね
なぜこのギャップが生じたのか。玉置さんはこの問いをAIと一緒に整理し、本来あるキャパを削っている「キャパ泥棒」の存在にたどり着いたといいます。しかも犯人は複数いました。
犯人その1・2、クオリティゴールと切り替えコスト
1人目の犯人は「クオリティゴールの不在」です。新しいサービスの立ち上げでは、達成すべき外面的なゴールは決めていても、「このクオリティまでやればOK」という基準が存在していませんでした。
すると、一緒にやっている玉置さん自身のクオリティが、いつのまにかゴールのように見えてしまいます。玉置さんは同じ水準を求めていないのに、他に基準がないため、そこが目標になってしまうのです。
その結果、スタッフは「自分はここまでできていない」という認識になり、物理的な負荷だけでなく心理的なプレッシャーを抱えます。玉置さんは、プレッシャーってキャパを削るんですよと表現します。
キャパ泥棒、つまりMP泥棒でもあるというか、キャパがあった上で、その中のMPがよりスリップダメージみたいに入ってるというか
2人目の犯人は「切り替えコスト」です。玉置さん自身は多動症で、没入していない作業なら切り替えのコストが安く、テーマの違うミーティングを次々にこなすことに慣れているといいます。
今サービスの話したと思ったら、いきなり財務の話をして、じゃあ次開発の話をしてとか、別に普通にあるので慣れてるんですよ、切り替えコストに
しかし、普通はそこまで切り替えコストを安くできません。タスクリスト上は余裕に見えても、タスクとタスクの間にある切り替えコストはどこにも載っていない。玉置さんはここを見積もり間違いしていたと話します。
多動症で切り替えの儀式や手順を持ち、テーマの違う作業を次々こなすことに慣れている。切り替えコストが安い
そこまで切り替えコストを安くできない。タスク管理に載らない負荷が積み重なる
AIが共犯?速すぎる判断が飛ばしたもの
3人目の犯人は「省かれた判断プロセス」で、玉置さんはこれをAIとの共犯だと言います。AIを使い出してから仕事の速度が上がり、判断も結論もどんどん早くなりました。
問題は、AIとの数十分のセッションで結論が出るため、途中のプロセスが残らないことです。手元にはAIのチャット履歴しかありません。
AI以前だったら、今こうこうこう考えてるんだけどっていうのを、考えてる最中にスタッフと壁打ちをしたりするんですよね
以前は人と壁打ちしながら進めることで、思考の経緯やプロセスが自然に共有されていました。ところがAIで速く進めるようになった分、判断プロセスの共有が雑になっていたのです。
すると、なぜこれをやるのかが浸透しないまま走り出すことになります。玉置さんは、腹落ちしないゴールに向かって走ってる時って、余計な認知負荷かかっちゃうんですよと話します。
なんでこれをやるんだっけ?みたいなまま、ちょっとやらされてる感が出ちゃうみたいな
さらにAIで判断が速いため、PDCAの回転も速くなります。回転が速いのに理由が分からない状態が、スタッフの負荷を増やしていました。玉置さんはこれを音楽のBPMにたとえます。
AIを使い出してからBPMがすごい上がってるんですよ、私
自分だけBPMが上がっていることに気づかないと、同じ話をしても伝わらない。ここはコミュニケーションとして工夫すべきところだと玉置さんは指摘します。速くなった分の時間を、理由やプロセスの共有に充てる必要があるという学びです。
4人目の犯人・マネジメントコストの申告漏れ
最後の4人目の犯人は「マネジメントコストの申告漏れ」です。部下をケアしたりコミュニケーションしたりするエネルギーのことで、玉置さんからは見えにくい部分です。
玉置さんから直接見えるのは、その先にいる人まで。さらにその先の部下のマネジメントにどれくらいコストがかかっているかは、言われない限り分かりません。
部下思いの人ほど、申告しないんですよね
岡島さんは、タスク管理表に「こいつのマネジメント」と載っていたら、部下からの圧力がすごすぎると指摘します。だからこそ、このコストは表に出てこないのです。
玉置さんは、ここまで挙げた4人の犯人に共通する特徴をまとめます。
犯人を追い出す方法と、働く側にできること
気づければ改善できる、と玉置さんは言います。クオリティゴールの不在には、どこまでやればいいのかを言語化して伝える。減っていたコミュニケーションには、より丁寧に接する。
一度パツンパツンになっているなら、扱える量までタスクを減らし、キャパ泥棒を追い出してから構築し直せばいい。マネジメントコストも、見えないなら定期的にチェックする仕組みを作ればいいだけだといいます。
さらに玉置さんは、これはマネジメントする側だけの話ではないと続けます。いつもキャパいっぱいになりがちな人も、同じ見落としをしているといいます。
わからなかったら、自分が腹落ちするまで聞くっていうことをすればいいんですよね
「仕事だからやりましょう」というマインドセットだと認知負荷がかかりキャパを減らす。だからゴールは何か、何のためにするのかを、腹落ちするまでインプットすることが必要だと話します。
岡島さんは、人と話すこと自体は時間を取れば「できてしまう」ため、後から疲れに気づきにくいと共感します。玉置さんは、しんどい話を1時間聞かされるだけでも消耗すると具体例を挙げます。
しんどい話を1時間聞かされるみたいなのって、普通にいろんなもの消耗して終わるんですよね
改善に向かう前向きな話ならまだしも、担当者がルーズという程度の、目くじらを立てるほどでもない愚痴だと対処のしようがありません。それでも1時間聞けば、自分の1時間は削られます。
玉置さんは、物理的な負荷だけでなく、心理的・認知的な負荷も織り込まないとキャパオーバーになると結論づけます。岡島さんは、それを含めて上司に相談できれば自分のタスク量をコントロールできると受けます。
切り替えの「チリン」と、探し続ける自分のスイッチ
玉置さんは、自分の思考や仕事のスタイルが変化していることが、必ず周りにプラスにもマイナスにも影響を与えているのだと自覚しておく必要がある、と振り返ります。金曜に怒られたら月曜に改善するタイプだといいます。
話は切り替えのコツに移ります。岡島さんは、コンテンツを作る仕事に集中し始めると他の仕事に手がつかず、逆に他の仕事から戻ってくるのが大変だと打ち明けます。
玉置さんは、パブロフの犬のように「チリン」という音を鳴らしたら作業を終える、という条件反射で自分を訓練していると話します。
大丈夫、それチリンっていうのがあったら切り替えられるようになるからって言ったら、火に油注いでめっちゃ怒られました
岡島さんは、自分の「チリン」を7、8年探し続けているものの、まだ見つかっていないと明かします。一度スイッチが入ると気づけば深夜まで作業してしまい、寝るべき時間だと分かっていても抜け出せないといいます。
アプリの利用制限で強制的にシャットダウンする方法も試したものの、やりすぎると今度は集中時間を確保できなくなる、というジレンマも語られます。切り替えを減らすタスク設計や、人を雇って代わりにやってもらうといった対処を模索しているといいます。
ポッドキャストから仲間を募集する
最後に、玉置さんは人を増やしたい職種が見えてきたと話します。少人数で進めたいと言いつつも、絶対に必要だと分かった役割については採用を進めるといいます。
まず募集するのは、キャリア逆転塾「ヒトハタ」の伴走カウンセラーです。学習期間中ずっと伴走し、週に一度ミーティングをして、終了まで一緒にやり遂げる仕事だと説明します。
学習を終了させることと同時に、学ぶことって楽しいっていう経験を一緒に3ヶ月積んでほしいんですよ
転職をサポートするキャリアコンサルタントのような仕事も含みますが、経験は必須ではないといいます。転職して終わりではなく、キャリアプランを一定期間考えた上でのネクストステップとして転職を捉えるため、ゼロから発想できる人でも大丈夫だと話します。
働き方はオンラインのリモートで、副業も可能です。伴走サービスの利用者は働いている人がほとんどのため、夜の時間帯にできる人が求められています。
さらに、玉置さんは「どうせ言うなら」とバックオフィスの募集も追加します。他のメンバーが走ることに集中できるよう、あらゆることをこなす何でも屋のような役割です。
人がやんなくていい仕事を全部AIにしていくっていう仕事もちょっと今滞ってるので
経理だけは経験があった方がよいものの、幅広くバックオフィス業務を担える人を求めているといいます。連絡は玉置さんへのDMではなく、ヒトハタのホームページのお問い合わせから、と案内されました。
まとめ
タスクの量は多くないのにキャパオーバーになるとき、そこにはタスク管理に載らない「キャパ泥棒」が潜んでいます。玉置さんはスタッフに激詰めされた経験をAIと整理し、4つの隠れた負荷を言語化しました。マネジメントする側にも、働く側にも共通する視点です。
- キャパオーバーの正体は、タスク量ではなくタスク管理に載らない隠れた負荷にあることがある
- 4人のキャパ泥棒は、クオリティゴールの不在、切り替えコスト、省かれた判断プロセス、マネジメントコストの申告漏れ
- AIで仕事が速くなると、判断プロセスの共有が雑になり、なぜやるのかが伝わらず認知負荷が増える
- 働く側は、腹落ちするまで理由を聞き、心理的・認知的な負荷も見積もることでキャパオーバーを防げる
- 気づけば改善できる。タスクを扱える量まで減らし、見えない負荷を定期的にチェックする仕組みが有効





