AIに倦怠期が来た人と、目をキラキラさせ始めた人
雑談の入り口を抜けて、この回の本題は最近のAIの使い方でした。きっかけは、二人の温度差です。
岡島さんはこの1〜2ヶ月、AIにのめり込んでいました。ある日は1日10時間、AIと話し続けて終わったと振り返ります。
一方の玉置さんは、新しいAI情報を追う意欲がかなり落ちたと言います。かつてはあれほど夢中だったのに、興味が薄れてしまったそうです。
昔のその、ときめきがないって大変なんですけど。倦怠期が来ちゃったのかなと思って。
玉置さんは早い時期からAIを前のめりに使ってきた人でした。海外旅行の手配をすべてAIの言う通りにやってみた時期もあったといいます。
一番安くていい方法でチケット取ってくれと言ったら、イタリアのローカルサイトで予約されて、変更もできなくて。全部イタリア語しかないとか、死ぬ思いしましたね。
岡島さんは、この温度差そのものを面白がります。玉置さんが飽きてきた頃に、自分が目を輝かせている。
わかりやすくイノベーターとアーリーアダプターの差ですよね。
AIは外部のツールから「脳の臓器」になった
玉置さんは、興味が薄れた理由を意欲の低下ではなく、関わり方の変化として捉え直します。AIが外部のツールではなくなったという感覚です。
もうツールという意識がなく、うまくいかない部分も含めて許容できている。長く使い続けたことで、かなり文脈が溜まってきたのが大きいと話します。
毎日何時間も年単位で使うと、自分をわかってくれる存在に近づく。自分が忘れていることまで覚えていてくれる、と玉置さんは言います。
一方で、最近のフィードバックは雑になっているとも自覚していました。「なんか違う」「何が違うか考えてみて」と、まるで嫌な上司のような絡み方をしている、と。
「なんか違う」がAIには一番伝わる、という発見
玉置さんは、その雑な絡み方が本当に不快でないか、AI本人に聞いてみたそうです。返ってきたのは意外な答えでした。
「なんか違う」みたいなのが、一番フィードバックとしてはやりやすいみたいな感じだったんですよ。
理由はこうです。判断軸が明確にある人の「なんか違う」は、言語化が難しいけれど確実に違うという、AIから見れば密度の高い情報だといいます。
だから人間が無理にまとめず、なぜ違うと感じたのかの推測はAIに任せたほうがいい。「これで合ってますか」と確認するやり取りがベストだと言われたそうです。
ただし、これには条件があります。玉置さんはその条件を2点にまとめました。
AIとのやり取りが積み重なり、判断の背景を共有できている状態
自分の中に明確な基準があり、その基準に照らして違うと言えている状態
逆に、文脈がない状態や、自分に明確な判断軸がない状態でこれをやると、AIは的外れな答えを出す。そこで「AIは使えない」となってしまう、というわけです。
記憶を失うAIと、書き散らされたメモの整理
玉置さんの「文脈の蓄積」という話を、岡島さんは自分の具体的な失敗に引きつけます。1ヶ月で猛烈に話しすぎた結果、文脈をあちこちに書き散らしてしまったのです。
岡島さんは、AIを映画『メメント』にたとえました。
新しい会話が始まるたびに記憶を失ってる。だけど、AIが書き残したメモを読んで、記憶を取り戻しながら働いてくれるんですよ。
問題は、そのメモが全身のヘボタトゥーのように散らばっていたことでした。「やったよね」と聞くと「まだ終わってない」、確認させると「本当にそうでした」となる。
同じ案件のステータスが7箇所にバラバラに書かれていたこともあったといいます。そこで岡島さんは、AI用のタスクボードを作って人間のものと一体化させました。
もうタスクはお前絶対ここを見る、ここしか書くなって言ったら、めっちゃそこは良くなって。
玉置さんは、これを技術の問題ではなくマネジメントの問題として受け止めます。
経営経験のある人が今頃AIを使いこなす例があるのは、AIの知識ではなくマネジメントの経験値があるからだ、と玉置さんは言います。岡島さんは、熟練者が刀を渡されればスパッと切るようなものだ、とたとえました。
AIも人も、パフォーマンスは一定しない
岡島さんは、最近のClaudeがアホになっている気がすると打ち明けます。計算資源が足りていないのかもしれない、という話をネットで見たそうです。
ここでも玉置さんの答えは一貫していました。人のマネジメントと同じだ、と。
それも、もう人のマネジメントと一緒ですよ。パフォーマンスが一定しない。
SNSでは、AIがバカになりすぎたと怒っている人もいると岡島さんは言います。ただ、人間なら体調でもっとブレがあるはずだ、とも思ったそうです。
失恋しただけでしばらく機能しないっていう人もいますからね。
それに比べればAIは十分頑張ってくれている。岡島さんは、AIの体調スコアをSlackに顔つきで表示させることも考えていると話します。目がぐるぐるで働いていたら、少し優しくできる気がするから、と。
AIを使う人と使えない人を分ける「ステップゼロ」
話は、AIを使いこなせる人とそうでない人の差へ移ります。玉置さんは、その差は最初の入り口、いわば「ステップゼロ」にあると考えていました。
岡島さんは、詳しくない友人にClaude Codeを導入させた経験を挙げます。最初にエラーが出るとフリーズし、どうすればいいのか全部人に聞いてしまう。
俺も別に詳しくなくて、俺もわかんないから、目の前にいるClaudeに聞いた方が早くない?って言うと、えーみたいなこと言うんですよね。
その壁を越えると、多くの人が自分でAIに聞き始める。玉置さんは、この認知の書き換えに加えて、もう一つの壁があると言います。
音声入力できてる人とできてない人で使いこなしがすごい分かれるんですよ。
質問しなくていい。モヤモヤをそのまま投げる
玉置さんが最も強調したのが、この点でした。使いこなしたいなら、質問がどうしていいかわからなくても、音声入力で投げ続ければいいと言います。
多くの人はAIを検索の代わりから使い始めます。その延長で、質問しなければならないという強迫観念を抱えてしまう、というのが玉置さんの見立てです。
何も聞かなくていい。状況やモヤモヤだけを投げればいい。まとまっていなくても、何を聞きたいか決まっていなくても構わない、と玉置さんは言い切ります。
岡島さんも、言語化しきれないモヤモヤをそのまま音声で投げ、とりあえず送信する使い方に手応えを感じていました。検索キーワードすらわからなかったことも、状況を説明すれば答えにたどり着けると言います。
玉置さんは、質問でも指示でもない状況の投げ込みこそ、良い蓄積になると説明します。
モヤモヤしていることをとりあえず音声入力で投げちゃう。そこには思考プロセスや思考の癖、いろんなものが入ってるんですよね。
これを毎日1ヶ月ほど続けると、AITが自分の思考を手伝ってくれる存在としてこなれてくる、というのが玉置さんの実感です。
蓄積があってこそ、作業を任せられる部下になる
思考を手伝う段階を越えると、次は作業を任せる段階に入ります。ここで初めて、関わり方がマネジメント型に変わると玉置さんは言います。
ポイントは、その時点でAIが文脈を理解した部下になっていることです。これより前に作業を任せると、トンチンカンな結果が出てしまうといいます。
玉置さんは、文脈のない作業と文脈のいる作業を対比します。領収書の写真を読み取って整理する程度なら蓄積は不要でも、プロジェクトごとに費用を整理させるような仕事は蓄積がないとできない、と。
だからこそ、修正に時間をかけるより、先に徹底的にインプットしたほうがいいと言います。
岡島さんも、この1ヶ月はひたすら修正を出し続けたと振り返ります。前回の収録で玉置さんから期限を決めた方がいいと言われ、期限を切って一旦やり切ったそうです。
玉置さんは、インプットの内容を人間が取捨選択しないことも大切だと付け加えます。
自分がちょっとでも思考とか選択とか判断とかしようものなら、全部AIに入れてしまう。
「なんか違う」で通じる、理想の部下へ
蓄積が進むと、自分より何倍も頭のいい存在として任せて大丈夫だという信頼感が生まれます。ただし、それは全幅の信頼ではないと玉置さんは釘を刺します。
得意なことも不得意なこともあり、計算結果が必ず正しいとも限らない。だから自分で検証できる仕事だけを投げることが前提になります。
岡島さんは、より初歩的な壁として、まず有料プランを試すことを勧めます。無課金モデルと上位モデルでは体験が大きく違うからです。
三千円ぐらい払って一ヶ月やってみるとかは、割とあるんだろうなって思ったりもしますね。
検証できる仕事だけを投げ、AIを信頼できる部分を十分わかった段階になって、ようやく「なんか違う」が通じるようになる、と玉置さんは話をつなげます。
「なんか違う」と言うと「つまりこっちですよね」と代替案が出てくる。それは、社員でいたら理想の社員だと玉置さんは言います。
音声入力の本当の意味と、失われる筋力
玉置さんは、自身の成長プロセスを振り返り、音声入力以降で大きく変わったと語ります。理由は、下手な選別や言語化の工程が挟まらないからです。
ここで玉置さんは、音声入力の勘違いを指摘します。タイピングする文章を口で言っているだけでは、音声入力の意味がないというのです。
整った文章を作ろうとして、音声入力のボタンを押したまま固まってしまう人を、岡島さんは何度か見たと言います。玉置さんも、それは非常にもったいないと応じます。
一方で、この使い方には副作用もありました。
ただやっぱりこれやってるとね、言語化とか構想化の筋力落ちますね。
もう一つの課題が、AIが賢すぎるがゆえのオーバーキルです。そこまでの分量や精度がいらない場面でも、過剰なアウトプットを出してしまうといいます。
岡島さんも、人に渡すものが「ちょっとAIすぎる」と感じて手を入れたことがあると共感します。二人とも、最後の匙加減は人間が担うべきだという実感を共有していました。
怖がらなくていい。エージェント機能への一歩
最後に岡島さんは、実際に始める人向けの注意点を挙げます。チャット窓ではなく、エージェント機能を使う必要があるという点です。
ただ、この設定がハードルになりがちです。英語のエンジニア向けらしき画面が出てきて、怖くなって終わってしまう人が多いのです。
岡島さんは、その画面をスクショしてチャットに投げ、どうすればいいか聞くことを繰り返せば越えられると言います。玉置さんも、あまり肩肘張らなくていいと後押しします。
謎の英語が出てきたら、これイエスって言ったら最悪何が起こるの?って聞いちゃえばいいんですよ、全部。
取り返しのつかないことにならないなら、やっていいと伝えておけばいい。そんなにビビらなくても、大変なことにはそこまでならない、というのが玉置さんの結論でした。
怖がらず、最新情報を知らなくてもいいから、まず使ってみる。それが一番の近道になる、と二人は口をそろえて締めくくりました。
まとめ
この回の核心は、AIに良い質問をしようとする強迫観念を手放すことにあります。まとまらないモヤモヤを音声入力で投げ続けて文脈を蓄積し、段階を踏んで作業を任せられる部下に育てていく、という道筋が語られました。
- AIには良い質問より、状況やモヤモヤをそのまま投げ続けるほうが文脈が溜まる
- 音声入力の本質は、タイピング用に整える思考を挟まず、考えたスピードで入力すること
- 蓄積とぶれない判断軸があって初めて、「なんか違う」というフィードバックが通じる
- AIを使いこなす鍵は技術知識よりマネジメントの視点で、扱い方は人と共通する
- まず上位モデルに課金し、怖がらずエージェント機能を触ってみるのが最短ルート


