読書感想文、得意だった? あざとい派と苦手派
本の紹介の前に、ナビゲーターの内藤さんが夏休みの定番、読書感想文の話題を振ります。
栗下さんは「かなり得意だった」と即答します。しかも自分のものより、友達や弟のものを書くのが上手かったといいます。
僕、かなり得意でしたね。友達のとか弟のを書いてて。なんか自分を書くより、人の方が上手く書けたんです。
コツは、先生を喜ばせることだそうです。喜怒哀楽の「哀」に共感してみせると、コンクールに選ばれたりしたと話します。
一方、内藤さんは感想文が本当に嫌いだったと明かします。マスを埋めるのに必死で、わざと同じことを二回書いたりしていたそうです。
中野さんも苦手派です。好きなことを正直に書いてしまうので、ウケが悪かったと振り返ります。
忘れられないのが、高校の課題図書だった三島由紀夫の『金閣寺』です。ギリギリの8月30日に読んだものの、まったく意味がわからなかったといいます。
主人公もすごい美意識に囚われてるらしくて、友達も全員冷笑的で。マジで何を書いてるかわからないなって。最後、金閣寺が燃えるんですよ。「やっぱ燃えちゃったよ」って思って終わったんです。
栗下さんは、今ならその「意味がわからない」という正直な感想の方が良いのでは、と返します。AIで先生好みの感想が量産される時代だからこそ、と考えているようです。
栗下直也『世界の破滅を信じた人たちのとんでもない世界史』
前半のペアは栗下さんと中野さんです。まずは栗下さんが、トム・フィリップスの一冊を紹介します。
正直まだちゃんとは読んでいないと前置きしつつ、栗下さんはタイトルの面白さに惹かれたと話します。
この本の面白い点は、人類が3000年ほど「世界はもう終わる」と言い続けているのに、一度も当たっていないことだといいます。
ずっと人類って、この3000年ぐらい世界はもう終わるって言い続けてるのに、一回も当たってないんですよ。しかも外れた言い訳も同じで、「終わるとは言ってない」って。
内藤さんは、悲観論が勝ったことは一度もない、という趣旨の話を思い出します。
さらに本の締めが挑発的だと栗下さんは続けます。世界の終わりを信じるのは、実は反社会的な行動だというのです。
終わると思い込むと、多くの努力を放棄してしまうから、というのが著者の主張だそうです。その一文が気になって読んでみようと思ったと話します。
中野亜海『脱力偉人伝──人生サボるが勝ち』
続いて中野さんが本を出すと、内藤さんが「被った」と声を上げます。実は内藤さんも同じ本を用意していたのです。
うわ、被ったよ。俺も。
紹介する本は栗下直也さんの『脱力偉人伝』です。著者と番組の栗下さんは別人ですが、偶然の一致で場が沸きます。
本田宗一郎や石川啄木、レオナルド・ダ・ヴィンチといった偉人たちが、みんなサボっていたという内容です。
中野さんが気に入っているのは、高橋是清のエピソードです。少年時代にアメリカへ留学したら奴隷になり、帰国後は芸者のヒモになり、職を転々とした末に大蔵大臣になったといいます。
ただし中野さんは、「高橋是清はサボってないんじゃないか」とツッコミます。「サボる」の定義は少し曖昧だと内藤さんも認めます。
話は本の中身から、著者・栗下直也さんの文章そのものへ移ります。内藤さんは、その「地の文」が好きだと語ります。
目的のない文章を書くのがうまいよね。大概の文章には目的があるから、最後に慌てて三行ぐらいで目的を達成する人がいるんだけど、それがすごく好きで。
首藤淳哉『台湾&沖縄 チュラネシアへの旅』
後半は首藤さんと刀根さんのペアです。読書感想文の話では、首藤さんも「得意だった」と胸を張ります。
首藤さんは、先生にどうウケるかを考えて書いていたと明かします。コツは本選びで、ヒューマニズム系の共感を呼ぶ作品を選んでいたそうです。
小学6年生のときに書いた三浦綾子『塩狩峠』の感想文が印象に残っているといいます。他人のために身を投げ出した実在の人物を描いた小説です。
最後が「僕は誰かのために犠牲になれるだろうか」みたいな。本当に子供なのに、いいんですよみたいな。
刀根さんは、記憶に残る一冊が『ハリー・ポッター』だといいます。その感想文が学内で選ばれたそうです。
なぜ選ばれたのかと問われ、刀根さんは「純粋な気持ちが溢れ出ていた」からではないかと笑います。狙わずに愛されるタイプだと自称します。
さて、首藤さんが紹介するのは三枝克之さんの『台湾&沖縄 チュラネシアへの旅』です。リトルモアから出ています。
「チュラネシア」は、沖縄と台湾を一括りにする著者の造語だと首藤さんは説明します。
この本を読むと、沖縄と台湾がありとあらゆる面で驚くほど似ていることがわかるといいます。
食べ物では、沖縄そばに付く炊き込みご飯「ジューシー」に対して、台湾には「油飯」があります。豚モツを使う沖縄の「中身汁」に対応するものもあるそうです。
シャーマン文化も共通しています。沖縄には「ユタ」がいて、台湾には「タンキ」がいます。
台湾のタンキは、痛みなんて感じないよっていうことで、釘を刺した金の棒や刃物で自らを傷つけて、流血しながら霊の言葉を伝えるんですよ。
これほど似ているのは、気候風土の共通性に加え、昔から活発な交流があったからだろうと首藤さんは考えます。
そして本を読んで強く感じたのは、沖縄を日本の一部と見る「ヤマトンチュ」の感覚と、「ウチナーンチュ」の実感は違うのではないか、ということだったと話します。
刀根明日香『鳥は飛びながら眠る』
刀根さんが紹介するのは、渡辺佑基さんの『鳥は飛びながら眠る』です。中公新書から出ています。
サブタイトルは「超小型センサーで覗く野生動物の私生活」です。刀根さんは、動物の視点を取り入れたくなる気分があると語りますが、内藤さんや首藤さんはいまいちピンとこない様子です。
要は何、野生の本能みたいなものを呼び覚ましたい的な?
この本のテーマは「バイオロギング」です。動物の体に超小型センサーをつけて生態を記録する研究手法だと刀根さんは説明します。
1980年代に始まったこの手法は、今まさに黄金期を迎えているといいます。著者の渡辺さんはその第一人者です。
章立ては「怠ける」「食べる」「眠る」「育てる」という動物の基本的な生活で構成されています。第一章の「怠ける」は、栗下さんの本ともテーマが重なります。
動物にとって「怠ける」ことは、生きる上でエネルギーを節約する大切な行動だそうです。
たとえばサメは斜め60度に傾いて泳ぎ、鳥は寝ているときに体温を下げてエネルギーを節約するといいます。
体温が40度ある鳥が、寝てる時に体温を10度以下に下げたりして調節してるんですね。怠ける、全て大事だなって。人間じゃなくて生物的な観点から見ても。
内藤順『麻婆放浪記』
最後は内藤さんの紹介です。嵐洋一さんの『麻婆放浪記』で、産業編集センターの旅ブックスシリーズの一冊です。
タイトルは阿佐田哲也の『麻雀放浪記』とかけているのがおしゃれだと内藤さんは言います。何より自身が麻婆豆腐が大好きなのだそうです。
個人的に一番好きなのは、港区大門にある店の麻婆豆腐だといいます。豆腐が形を保たないほど崩れた独特のテクスチャーが魅力だと語ります。
著者の嵐洋一さんは、ウクライナや未承認国家など危険な地域を巡る旅行作家です。過酷な取材先でローカル料理に飽きたとき、駆け込むのが中華料理だといいます。
中華料理に行けば、大きく外すことはないっていう手堅い、サバイブの一環として、そういう手法をとってると。
この本の真骨頂は、世界中に伝播した中華料理が、その土地ごとに驚くほど柔軟に姿を変えている様子です。マダガスカルやホンジュラスの中華まで登場します。
麻婆豆腐も例外ではありません。インドのムンバイでは、肉も野菜も一切入っていない「具なし麻婆」が出てきたそうです。
ミャンマーでは、揚げ出し豆腐で作られた麻婆豆腐が出てきたといいます。もはや別料理ではないか、とツッコミたくなるカオスな世界が広がっています。
だからもう別の料理なんじゃないの?みたいなツッコミを入れたくなるカオスな世界が広がってて。読んでいて、世界に飛び出して変な麻婆豆腐を食べてみたいなって思わせてくれるんです。
笑えて、食文化の広がりも実感できる面白いノンフィクションだと内藤さんはまとめます。
まとめ
夏休みの読書感想文トークから始まり、終末論、サボりの偉人、チュラネシア、バイオロギング、麻婆豆腐と、5人がそれぞれの一冊を紹介した回でした。内藤さんは「家で本ばっかり読んでてはダメですよ」と、旅や外の世界へ誘うようにこの回を締めくくっています。
- 『世界の破滅を信じた人たちのとんでもない世界史』は、3000年当たらない終末論の歴史を扱い、終末を信じるのは反社会的だと問いかける
- 『脱力偉人伝』は偉人たちの「サボり」の系譜を描き、著者の目的のない文章の妙も味わえる
- 『台湾&沖縄 チュラネシアへの旅』は、食やシャーマン文化に見る沖縄と台湾の驚くべき共通点を紐解く
- 『鳥は飛びながら眠る』は、バイオロギングを通じて動物が「怠ける」ことの生物学的な意味を明かす
- 『麻婆放浪記』は、世界各地でカオスに変化する麻婆豆腐を追い、中華料理の懐の深さを描くルポ
