なぜ今「オンチェーン」という言葉が出てきたのか
この回のテーマは、最近アメリカなどでよく聞かれるようになった「オンチェーン」という言葉です。大塚さんは、去年ブロックチェーンコーリアに行った際、会場のキーワードがオンチェーンだったと振り返ります。
大塚さんによれば、この分野には言葉の波があります。最初にクリプト、次にWeb3、そして今はオンチェーンという流れです。
大塚さんは、ビットコインで大きな波が来た後、投資的な使い方が広がり、技術の発展とともにWeb3という言葉が使われ始めたと説明します。
最初は、まあクリプト、もうちょっと言うとビットコインで大きな波があって。ビットコインが非常にこう、まあ金融的な使い方、投資的な使い方になってきて。
ただ、Web3は非常に概念的な言葉でした。西山さんも分かりづらいと感じていたと話します。
(Web3は)分かりづらいなと思ってましたよ。
Web3の時代に一緒に流行ったのがNFTでした。画像などが大量に売られてバブルになり、それがなくなっていく中で、本質的にはオンチェーンなのではないかと最近言われ始めたと大塚さんは語ります。
最近では特に金融の中で、証券のオンチェーン化など、既存の金融をオンチェーン化していこうという話が新聞にも載るようになってきたといいます。
オンチェーンとブロックチェーンは何が違うのか
西山さんは、ブロックチェーンや仮想通貨のままでよかったのに、と率直な疑問を口にします。クリプトだけでも分かりにくかったのに、オンチェーンは具体的に何が違うのかと尋ねます。
クリプトだけでも結構、ああもうわかんねえやって感じだったのに、具体的にどう違うというか、何なんですか?
大塚さんの答えは明快で、技術が何か違うわけではなく、名称を変えているだけだといいます。
大塚さんは言葉の関係を整理します。ビットコインはホワイトペーパーのルールに基づいてやりとりするもので、そのデータのやりとりの部分を指してブロックチェーンと呼び始めた、と説明します。
ブロックチェーンをもうちょっと今っぽく言うと、オンチェーンっていう言葉になってるってこと。
つまりブロックチェーンを今っぽく言い換えたのがオンチェーンだ、という整理です。西山さんは「今っぽいな」「やばい、終わってしまう」と反応し、言葉の言い換えである点に驚いていました。
銀行のシステムはなぜ高コストなのか
大塚さんは、オンチェーンが何をしているかを理解するために、まず今の銀行の仕組みを説明します。銀行は自前のサーバーの中でお金を管理し、取引履歴を書いているといいます。
例えば西山さんの口座に10万円あり、大塚さんに3万円送ると、西山さんの口座は7万円、大塚さんの口座は3万円になる。この履歴はメガ銀行ならそのシステムの中に書かれ、システムが閉じている、という説明です。
なんかみんなの通帳をまとめてくれてる存在みたいな。
さらに大塚さんは、銀行はミスがあってはいけないため、同じシステムのバックアップを作っておくと指摘します。これを各銀行がそれぞれ持っているため、非常に非効率でコストも大きいといいます。
コスト(が)すごそうですね。
国内だけでなく、海外送金にはSwiftという仕組みがあり、アメリカにはアメリカの銀行ごとのシステムがあります。こうした構造が、今の金融を高コストで支えていると大塚さんは語ります。
書き換えできないことがなぜ金融に向くのか
大塚さんは、ブロックチェーンを使うと、誰がどこに送ったかを全部オンチェーン化できると説明します。そうなればリアルタイムかつ低コストでお金をやりとりできるようになるといいます。
ここで西山さんは、それは今までのIT企業が使っているデータベースでもできそうではないか、と疑問を投げます。MongoDBのようなクラウドのデータベースサービスで書き換えていくのと何が違うのか、というものです。
なんかそういうクラウドのこのデータベースサービスとかを使うんですけど、なんかそれを使ってできないのかなって思うんですが。
大塚さんは、通常のクラウドだと運営会社がスーパー権限を持っている点を挙げます。仮に3万円送っても、会社側でその金額を1万円に書き換えたり、送金元から余分に取ったりすることがシステム上できてしまう、という指摘です。
しないでほしいです。
大塚さんによれば、ブロックチェーンは一度置くと書き換えができない点が優れており、だからこそお金として金融に向いているといいます。
西山さんはこれを「透明性が担保されている」と受け止めます。一方で、信頼できる銀行なら書き換えはしないから大丈夫ではないか、とも尋ねます。
貸金庫事件が示す「人が介在する限界」
銀行の権限で書き換えできても信頼できるのでは、という西山さんの問いに、大塚さんは貸金庫のお金がなくなった事件を例に挙げます。
それをやってしまって、貸金庫のお金がなくなってしまったみたいな話があるじゃないですか。
大塚さんは、銀行は信用を貯め続けてやってきたものの、人が介在して目の前に何億円、何百億円とあると、出来心が起きてしまい、しかも気づけないことがあると語ります。
やっぱり人が介在して、その目の前に何億円、100億円あると、そういうことを起きてしまう人の出来心というのが起きてしまって、しかも気づけなかったみたいな。
大塚さんは、鍵の管理や報告体制など、人が仕組みを回すことには限界があると指摘します。であればシステムで組んだ方が安心でき、夜中に送金するようなこともできるようになるといいます。
証券もオンチェーンへ、AI同士がお金をやりとりする未来
大塚さんは、話を銀行だけでなく証券や株式にも広げます。ナスダックがオンチェーン化を進めようとしており、コストが下がれば小さな単位での売買ができるようになるといいます。
さらに、お金を小さな単位で送れるようになると、今後はAI同士がお金をやりとりする世界が来ると大塚さんは語ります。仕事を10円で依頼するといった細かいトランザクションを大量に送ることも、オンチェーンならやりやすいという見立てです。
確かに。ステーブルコインでできるって言ってたやつですよね。
大塚さんは、AIとオンチェーンの進化がクロスすると、銀行の振込作業のイメージも変わると話します。今は画面で振込をしているものが、AIに「西山くんに3万円振り込んでおいて」と頼み、承認するだけで送れるようになるという未来像です。
もう画面で多分やらないで、AI上で、じゃあナオヤくんに3万円振り込んどいてってやると、いつものあのAIがビビビビ出てきて、依頼して完了しました。
大塚さんは、プログラムに依頼できる点にも触れます。毎月27日に決まった額を振り込むといったルーティンを組んでおけば自動で処理され、残高が足りない場合は事前に知らせるといった設定もできると説明します。
じゃあ銀行さんとかは今までだったらそれがめっちゃ大変で対応できなかったけど、オンチェーンになってくれたら対応しやすいというか。
Web3は何がダメだったのか、READ・WRITE・OWNの整理
西山さんは、では「Web3は何がダメだったのか」と尋ねます。大塚さんは、ダメというより概念的な話だったと答えます。
大塚さんは、Web1・Web2・Web3の違いを整理します。Web1は個人が読むだけの時代、Web2は個人が書けるようになった時代だといいます。
Web1(READ)
メディアや会社が公開した情報を、個人は読むだけ
Web2(WRITE)
ブログやSNSで個人が発信・投稿できるようになる
Web3(OWN)
自分のコンテンツや資産を、自分自身で所有・コントロールできる
大塚さんは、Web2で個人が発信できるようになった結果、情報の量も質も変わり、GAFAやTwitterのような存在が大きな力を持つことになったと語ります。
そのうえでWeb3では、自分が発信した内容を書き換えられないようにし、自分が所有していることをブロックチェーンで示せるようになったといいます。大塚さんはこれをREAD・WRITE・OWNとして整理します。
NFTでアートを所有できコピーできない、という話もこの流れの一例です。ただし大塚さんは、当時それがバブルになりすぎてしまったと振り返ります。
同じ技術でも、金融をやる人はNFTの人とは違う
大塚さんは、同じ技術を金融に使っていく話や、不動産を分割して所有する話に触れます。2000万円の不動産を1人で買えなくても、所有権を分割すれば100万円で多くの人が買えるかもしれない、という例です。
西山さんは、Web3的なことはやっていたが今のオンチェーンはやっていない人も多いのか、と尋ねます。大塚さんは、やっている人はだいぶ違う人たちだと答えます。
昔のそのNFTアートみたいなのを作った人たちは、いきなりその技術があるからって、じゃあ金融をこう同じ技術で変えにいこうってなると、そうはいかなくて。
大塚さんによれば、金融を変えるには金融の知識と、金融の世界での信頼が必要です。だからNFTを作っていた人たちと、金融をオンチェーン化する人たちは違う顔ぶれになっているといいます。
金融以外にオンチェーン化される領域として、大塚さんは不動産や証券など金融に近い領域を挙げます。西山さんは以前話に出たノッタホテルを例に出しました。
大塚さんは、今までデジタル化できていなかったものがオンチェーン化しやすくなる中で、どの領域でどう実現するかを見つけることが起業家にとってのチャンスだと語ります。
日本もオンチェーン化へ、変化には5年10年かかる
大塚さんは、アメリカが中心のこの動きについて、日本でも片山さつき大臣がオンチェーン化を推進していると紹介します。
日本もオンチェーン化をしなきゃいけないみたいなことをかなり推進してくれてる。
大塚さんは、金融庁など行政が動き出すと、既存の金融の人もやる動機になると説明します。メガ銀行がいきなり進めるのは難しくても、少しずつ研究が始まれば世の中が変わり始める、という見立てです。
西山さんが「もうそっち側に行くのは確定なのか」と問うと、大塚さんは確定だと答えます。あとは誰が早く、事故なくミスなく行くかだといいます。
ただし大塚さんは、インパクトが大きい分ミスできないため、1年で急に変わるものではなく、5年から10年かけて進むと補足します。それでもやる価値があるほどのインパクトがある領域だと語ります。
クリプトはどうなる?言葉が変わっても本質は変わらない
西山さんは、番組名がクリプトークであることに触れ、「クリプトはどうなったのか」と尋ねます。大塚さんは、クリプトはクリプトのまま残ると答えます。
大塚さんは、クリプトには2つの意味があると整理します。国によらないお金を自分たちで持てるという思想としてのクリプトと、投資的な意味でのクリプトです。どちらの意味でもクリプトという言葉は残っていくといいます。
一方でブロックチェーンという言葉は基幹技術のため、最近はあまり使われなくなってきたと大塚さんは語ります。西山さんはこれをインターネットのプロトコルの話にたとえます。
今更ね、TCPとか言わないもん。
大塚さんは、オンチェーンという言葉も結局は言い換えに近く、今っぽいから使われている面があるといいます。そのうえで、ナスダックのオンチェーン化など金融と一緒に語られることが多いため、閉じた金融の世界が開かれていくフレーバーを帯びた言葉だと分析します。
西山さんは、一過性のトレンドではなくちゃんと普及していると受け止めます。大塚さんも、クリプトやオンチェーン、Web3など時々のトレンドはあっても、一貫して使われているものはそれほど違わないと語ります。
なぜ「今」という言葉のコンテキストを知ることが重要なのか
大塚さんは、今なぜオンチェーンという言葉が使われているのか、そのコンテキストを知ることがとても重要だと語ります。起業家をしていると、タイミングがきわめて重要だと最近強く感じるといいます。
大塚さんによれば、そのタイミングはポッと出でその領域に入っても分からないものです。だからこそ、同じ領域で長く続けることが重要だと話します。
西山さんは「起きて待つ」ようなものかと受け、いろいろなことが始まると手を出したくなる、と付け加えます。大塚さんは、10年同じ領域でやるのは簡単ではないと認めつつ、長く続けることの意味を語りました。
まとめ
今回は、クリプトからWeb3、そしてオンチェーンへと変わってきた言葉の意味と、その背景にある金融の変化を大塚さんが解説しました。技術そのものが大きく変わったというより、金融の文脈で語られる言葉として整理されてきた点がポイントです。
- オンチェーンはブロックチェーンを今っぽく言い換えた言葉で、技術が根本から違うわけではない
- ブロックチェーンは一度置くと書き換えできないため、人が介在する限界を補い、金融に向いている
- 証券や不動産のオンチェーン化、AI同士の少額のやりとりなど、応用範囲が広がりつつある
- Web1・2・3はREAD・WRITE・OWNの流れで整理でき、個人にパワーが移ってきた
- 金融のオンチェーン化は5年10年かける大きな変化で、日本でも行政が推進し始めている



