クリプトを学ぶと行き着く「お金って何だろう」
大塚さんは、クリプトの話を続けるうちに、結局は「お金って何だろう」という問いに行き着くと切り出します。
そこから浮かぶのが、今の世界の基軸通貨がなぜアメリカ一国のドルなのか、という素朴な疑問です。
なんで一国アメリカのお金が世界の基軸通貨なの?っていう疑問があって。
まあでもみんなが使ってるからなんじゃないですか。
大塚さんは、みんなが使っているという事実の裏には因果関係があると話し、その歴史をたどることがこの回のテーマだと位置づけます。
第二次大戦の勝者アメリカと、ブレトンウッズ体制
大塚さんは、今の世界の仕組みは第二次世界大戦以降に作られたと説明します。ヨーロッパや日本は戦争に巻き込まれ、戦費で国も国民も疲弊していきました。
そんな中、最後に参戦して勝利し、鉄鋼などの重工業で力を持ったのがアメリカでした。
戦後の金融システムをどう作るか、という局面で、経済学者ケインズは世界共通の通貨を作る案を出したと大塚さんは紹介します。
そう思いますよね。はい。誰も損しないというか。
しかし現実は理論通りには進まず、栄華を極めたアメリカのドルを基軸通貨にする方向へ進んだと大塚さんは話します。
その決め手が、ドルだけは金と交換する保証をする、というルールでした。アメリカが大量の金を保有していたことが根拠です。
このドルだけは金と交換する保証をします。
えー、ずる。
大塚さんは、これがブレトンウッズ体制であり、戦争の決着を見据えた戦後秩序として各国が合意したものだと説明します。
アメリカが戦勝国に
最後に参戦して勝利し、重工業で経済力を持つ
金と交換を保証
大量の金を裏付けに、ドルだけ金と交換できるルールに
各国が合意
ブレトンウッズ体制として戦後秩序に組み込まれる
ドルを持ってりゃいつでも金と交換できるから、絶対価値があるっていう。
ベトナム戦争と双子の赤字が生んだジレンマ
ドルが基軸通貨になった後、アメリカは黄金期を迎え、フォードの車のように工業製品を作り、経済成長を続けたと大塚さんは語ります。
その後、時代は米ソの冷戦に移り、社会主義国ベトナムをめぐるベトナム戦争が起きます。
大塚さんによれば、アメリカは戦力もお金もあるためベトナムをすぐ制圧できると考えていましたが、ゲリラ戦で泥沼化し、国債を発行して戦費をつぎ込むことになります。
どこで借りるんですか?それは。
国債発行して買ってくっていう感じになっていきますと。
一方で、敗戦国だった日本と西ドイツが戦後復興を遂げ、ソニーやホンダのような工業製品が台頭します。
大塚さんは、これによりアメリカが物を売る側から日本などの製品を買う側に回り、貿易赤字を抱えたと説明します。
戦費による赤字と貿易赤字が重なり、アメリカは双子の赤字に陥ります。
問題は、アメリカが持つ金の分しかドルを発行できないというルールでした。ドルの需要が増える一方で発行に上限があり、身動きが取れなくなっていったと大塚さんは話します。
突然すべてをひっくり返したニクソンショック
行き詰まったアメリカで、ニクソン大統領が世界を驚かせる決定を下します。ニクソンショックです。
今まではドルと交換するって言ったのをしません。
え?
しかも事前の調整もなく、全世界に対して突然の宣言だったと大塚さんは説明します。
それやばくないですか?ドルが価値なくなるかもみたいな。
これまでドルは、持ち運びの大変な金の代替として、金の裏付け証書のように安心して使われていました。その裏付けをある日やめると言い出したわけです。
石油とドルを結んだペトロダラー・システム
ドルの価値が失われれば世界経済は混乱し、アメリカの立場も揺らぎます。そこで大塚さんが挙げるのが、金に代わる新たな裏付けです。
じゃあ金じゃなくて、これからは石油の時代だと。
プラスチックやガソリン車の普及で、石油こそが新しい金だという発想が生まれます。そして石油の主な埋蔵地は中東でした。
当時の中東では、石油の利権を持つ王族が民衆や他国からの攻撃に悩まされていたと大塚さんは説明します。
ここに目をつけたのが、国務長官キッシンジャーとニクソン大統領でした。彼らはサウジアラビアの王族に取引を持ちかけます。
あなたたちをアメリカで持っている国力で助けます。その分、あなたたちの国で出る石油はドルでしか売らないでください。
みかじめみたいな感じじゃないですか。
王族としての地位を守りたいサウジアラビアはこの約束をのみ、石油はドルでしか売らないというルールが生まれます。
大塚さんは、これによりドルが金ではなく石油に依存する形で価値を持ち直したと説明します。石油が欲しい世界中の国が、そのためにドルを必要とするからです。
安全保障を提供
アメリカがサウジ王族の地位を守ると約束
石油をドルで売る
サウジは石油をドルでしか売らない
ドル需要が生まれる
石油が欲しい国はドルを必要とする
アメリカへ再投資
得たドルで米国債や株式を買い、金融市場が活性化
さらに大塚さんは、サウジが石油で得たドルをアメリカの国債や株式に投資する流れまで作られたと指摘します。お金がアメリカに戻る循環です。
またアメリカにお金が戻ってる。
この石油をドルで売買する仕組みがペトロダラーであり、大塚さんはキッシンジャーとニクソンの手腕を高く評価します。
なぜアメリカは他国に口を出すのか
大塚さんは、中東の話にアメリカが口を出す理由が子供の頃から不思議だったと振り返り、その背景に石油の利権があると語ります。
アメリカは石油の利権、ドル、そして軍事力による安全保障を通じて、世界をアメリカナイズしてきたと大塚さんは説明します。
その中心にあるのが、人間には自由と尊厳があり、民衆が国のリーダーを選ぶという民主主義の価値観です。大塚さんは、これが文明の形として押し付けられてきた側面があると話します。
西洋的な価値観。
大塚さんは、日本人がこの価値観を当たり前と感じるのは、日米同盟のもとでアメリカの影響を強く受けた教育を受けているからだと述べます。良し悪しの話ではないと補足しています。
パリのタクシー喧嘩と、民主主義はマイノリティという事実
大塚さんは3年前にパリを訪れた時の体験を紹介します。タクシーの運転手同士が客を乗せたまま激しく喧嘩したというのです。
え?嫌だな。めっちゃ嫌だ。
日本では信じられない光景に驚いた大塚さんは、その背景にフランスの歴史があると調べます。フランスでは自分の主張をすることが正しいという教育がなされているというのです。
その源流には、絶対王政に対して民衆が奮起し、王族を倒したフランス革命があると大塚さんは説明します。
フランス革命で人権を得たみたいな。
大塚さんは、フランス人は人権や自己主張を正しいとするアイデンティティを、経験則として強く持っていると語ります。
そのうえで大塚さんは、自分が調べた範囲では、民主主義で成り立つ国のほうが地球上ではマイノリティだと明かします。
え、普通なんじゃないですか?民主主義。
日本やアメリカ、ヨーロッパに住んでいると民主主義が普通に思えますが、実際にはそうでない国のほうが多いと大塚さんは指摘します。数年前に調べた情報であり、今は変わっている可能性もあると補足しています。
大塚さんは、民主主義が絶対的に正しいわけではなく、最悪の状態を避けるためのものだと捉えています。それでもアメリカは自国の価値観を他国に押し付け、口を出しに行くと語ります。
口を出される国にはそれぞれの歴史と文化があり、そこに横から要求すれば衝突が起きる。大塚さんは、これがイスラム諸国や中国をめぐる今の対立や戦争につながっていると見ています。
じゃあそれの象徴が通貨みたいなことなんですか。
石油のトランプ、電力の中国。次の通貨戦争
大塚さんは、話を通貨の主導権争いに戻します。ドルによる支配、安全保障、石油という3つの要素で強さを保ってきた構図です。
自国の通貨を世界に流通させられれば、それだけ国は強くなります。日本も日本円を流通させようと努力していると大塚さんは述べます。
そして今、アメリカに対抗しようとしているのが習近平率いる中国だと大塚さんは指摘します。中国は西洋的な合理性ではなく、自分たちの歴史に立つ発想を持っています。
大塚さんによれば、中国は石油ではなく電力の時代だと打ち出し、風力や太陽光などの新エネルギーを国家プロジェクトで拡大しています。広大な土地を生かし、電力を押さえに行く戦略です。
折しもAIの時代が到来し、電力の取り合いが起きています。
それで核融合がどうなるんだみたいなこと。
大塚さんは、この構図がわかるとニュースが面白く見えると語ります。トランプ大統領は石油を掘りまくれと主張しますが、これはアメリカが石油の世紀に生きているからだと説明します。
一方の中国は一帯一路を通じ、資金の乏しい国にインフラ整備の資金を貸し込みます。大塚さんは、融資を通じて発言力を強め、電力も流し込んでいく構図だと解説します。
さらに支払いはドルではなく元で、という流れも進んでいると大塚さんは指摘します。
石油を増産し、石油の世紀の中でドルの強さを保とうとする
新エネルギーで電力を押さえ、一帯一路で影響力と元での決済を広げる
ペトロダラー崩壊の兆しと元の台頭
大塚さんは、中国の経済的な台頭が通貨の力関係を揺さぶり始めていると語ります。
これまでサウジアラビアの石油はほとんどアメリカが買っていましたが、経済成長した中国が大きな顧客になってきたと大塚さんは説明します。
それはなりますわな。
大口顧客である中国が、ドルではなく元で売ってほしいと求めれば、サウジは無視できません。従来はアメリカが安全保障で守るという約束があったからこそ、ドルで売ってきたのです。
ところが、トランプ大統領が最近、もう守らないという趣旨の発言を繰り返すようになったと大塚さんは指摘します。
守ってくれないじゃん。じゃあ元も受け付けるよって。
守ってくれないなら元も受け付ける。こうしてドル以外での取引が広がると、ペトロダラーの仕組み自体が崩れていくと大塚さんは見ています。
その結果、中国の影響力が強まり、元のパワーが増していく流れになっていると大塚さんはまとめます。
国に依らない第三の選択肢としてのクリプト
西山さんは、この通貨をめぐる争いの中でクリプトが影響力を持つにはどうすればよいのかと問いかけます。
クリプトがそこ(国家通貨の争い)に並ぶために、影響力をつけていくにはどうすればいいのか。
大塚さんは、ここまでの話はすべて国が発行するお金だという点に注目します。ドルも元も、その国の状況を信じられるかどうかにかかっているのです。
大塚さんは、アメリカも中国もどちらも信じられないという人がいる以上、第三の方法が出てくるのは良いことだと語ります。
国力じゃなくても、テクノロジーがその信じられるもののベースとしてあるから。
大塚さんは、国に依らず価値を持つものとして、混沌とした時代にビットコインの真の価値が現れてきていると話します。
具体例として大塚さんは、南米でビットコインが普及している理由を挙げます。南米はアメリカの影響が強く、経済もドルに基づいて運営されています。
大塚さんによれば、通貨の弱い国は自国通貨を直接ユーロなどに交換できず、一度ドルを経由する必要があります。日本円のように強い通貨なら直接交換できますが、弱い国はそうはいきません。
できないんですか?
そんだけの流通量がないから誰も受け付けてくれない。
自国通貨がドルとしか交換できない状況で、アメリカがドルとの交換をやめると言えば、貿易が突然止まってしまいます。だからこそ、ハイパーインフレが起きるような国ではビットコインが第三の選択肢として求められると大塚さんは語ります。
大塚さんは、日本に住んでいると円が強く経済も伸びてきたため、こうした切実さを感じにくいと補足します。良い意味でのことだと述べています。
技術と地政学が交差するビットコイン
大塚さんは、ビットコインの技術的進化と、戦争のような世界情勢が、本来無関係なはずなのにここに来て交差していると語ります。
もともとビットコインは、それまで解けなかった数学的な問題が解けたという技術的なイノベーションとして評価されていました。
その技術が、世界情勢の文脈で新たな意義を帯びてきている。大塚さんは、これを時代用の妖精のようだと表現します。1年では変わらないが、数年をかけて技術の可能性が立ち現れてきたと見ています。
なんかその時代用の妖精なんだなってなんか思ってたりはするけどね。
こうした文脈がわかると、単に儲かった損したという話を超えて、世の中の理解が進むと大塚さんは語ります。
いいですね、なんか通貨で見る世界史みたいな。
大塚さんは、こうした通貨で読む世界史を学校の授業でやれば、世の中を自分事として見られるのではないかと締めくくります。
まとめ
戦後のブレトンウッズ体制からニクソンショック、ペトロダラー、そして中国の台頭まで、通貨の歴史をたどることで、なぜドルが基軸通貨なのかという素朴な疑問に因果関係が見えてきます。その延長線上に、国に依らない価値としてのクリプトの意義が浮かび上がる回でした。
- ドルの基軸通貨性は、戦勝国アメリカが金との交換を保証したブレトンウッズ体制から始まった
- 双子の赤字とベトナム戦争で行き詰まり、ニクソンショックでドルと金の交換が突然停止された
- キッシンジャーらは石油をドルでしか売らせないペトロダラーの仕組みで、ドルの価値を石油に結び直した
- トランプの安全保障をめぐる姿勢と中国の台頭で、元での決済が広がり、ペトロダラーは崩れ始めている
- どの国も信じきれない時代に、国家に依らない第三の選択肢としてビットコインの真価が現れつつある


