「もうオワコンでは?」から始まる番組初回
番組冒頭、西山さんは自身が4、5年前にビットコインを買った経験を打ち明けます。当時は「絶対ビットコインの時代だ」と感じていたそうです。
ところが今は世の中の話題がAIばかりで、Web3の話は自分のタイムラインから消えてしまった、と西山さんは率直に語ります。
もうオワコンなんじゃないかと思ってんですけど。オワコンじゃないですか?
これに対し大塚さんは、Web3という言葉については一時的なムーブだった側面を認めます。みんなが過剰に期待し、期待したアプリケーションとは違う方向だった、という見方です。
確かにWeb3はオワコンっていうか、一時的なムーブだったねっていうのがある
一方で大塚さんは、話はそこで終わらないと続けます。アプリケーションが花開く前の、その土台となる基幹技術の部分が今すごく盛り上がっている、という現在地を示します。
さらにアメリカで法律が変わり、これまでアメリカでは難しかったオンチェーンの事業がだいぶできるようになってきた、と補足します。オンチェーン ── ブロックチェーン上で取引や処理を直接記録・実行する仕組みや事業のこと。取引所を介さずデータが台帳に刻まれる領域を指す。
むしろ今、まあ僕ら目線からすると盛り上がってきてるっていうのが現在地かなと
西山さんは、外から見ているとそうは見えない、と食い下がります。この番組はまさにその感覚のズレを埋めるために始めた、と大塚さんは番組の趣旨を説明します。
10年やってきた人と、普通の人の「見えている世界」の違い
西山さんは自分の理解度について、技術的にすごいらしいとはわかるが、本当に普及するのかというくらいの温度感だと正直に話します。
大塚さんは、それが一般的で普通の感覚だと受け止めます。自身が暗号資産に関わり始めたのは2014年で、10年ほどの蓄積があると語ります。
十年培ってきた中で、今見えてる目線感とかをぜひなんか伝えてもらって、まだ面白いじゃんみたいな感じで思ってもらえたらいいかな
西山さんは、コインチェックが日本の暗号資産取引所として大きな存在であり、大塚さんはこのテーマを語るのに適任だと持ち上げます。かつて街を走っていたトラック広告も話題に上りました。
「業界は進んでいるのか」という問いに、大塚さんは「進んでいる」という言葉自体がファジーだと前置きしつつ、事業者もユーザーも増え、法律も整ってきたと答えます。10年という単位で見れば、緩やかでも確実に進んだという見立てです。
なぜ暗号資産を考えることは「お金そのもの」を考えることなのか
西山さんが「未来のお金というイメージで合っているか」と尋ねると、大塚さんはその理解は正しいと答えます。ここから話は「お金の進化」というテーマに広がります。
大塚さんは、お金の進化は1年では起こらないと言います。1年でお金が変わったら社会がついていけない、というのがその理由です。
進化の射程はビットコインだけではない、とも指摘します。ドルの進化、さらにその前の貝殻のような貨幣以前のものまで含めて、人類の歴史ではお金は確実に進化してきた、という見取り図を示します。
ただし、個人が生きる30年ほどのスパンでは大きくは変わらない、とも認めます。日本人にとっては、お札の肖像が福沢諭吉から変わったり、最近少しキャッシュレスになった、という程度の変化しか実感できない、というわけです。
大塚さん自身、暗号資産に関わる前は、お金とはコインやお札で、銀行から下ろすものだと当たり前に思っていたと振り返ります。ビットコインに触れたことで、そもそもお金とは何かを考えるきっかけになったと語ります。
結局、ビットコインが普及すると何が嬉しいのか
西山さんは早めに核心を聞きたいと切り出します。Web3やビットコインが普及すると、何が嬉しいのかという問いです。将来これを使うと言われても便利さがふわふわしている、という不満が背景にあります。
何が便利になるんですか。
大塚さんは、これは日本にいるとまずわかりにくい、と答えます。日本円は最近安定していないとはいえ一応安定しており、ドルやユーロも同様だからです。
一方で、ドル・ユーロ・円以外の国の人にとっては事情が違うと説明します。自国通貨がある日から4分の1になってしまうような社会で生きている人もいる、という例です。西山さんはトルコリラを例に挙げます。
そうした環境では、自国通貨に代わるものが求められます。大塚さんは、これまではドルがその役割を担ってきたが、ドルに依拠すればアメリカの意向に従わざるを得ない、と指摘します。中国の通貨でも同じことだと言います。
どっかの国にやっぱ依存してると、その国の言う通りにしなくちゃいけないので、それは困っちゃうところがある
ここでどの国にも依存しないビットコインで資産を担保できれば、それは自由を手に入れることと同じになる、と大塚さんは話をつなげます。西山さんはこれを「非中央集権」という言葉で受け止めます。非中央集権 ── 特定の国家や中央機関が管理・支配する構造を持たず、参加者全体で運用する仕組みのこと。ビットコインが持つ思想的な特徴とされる。
大塚さんは、この話が思想と結びつくためにわかりにくくなる、と認めます。だからこそ、もう少し柔らかく理解してもらいたいと語ります。
西山さんは「別に国家にコントロールされて困っていない」と返します。大塚さんは、日本人が日本にいて困らないのは裕福な国に生きている証だと答え、それを作ってきた先人への感謝にも触れます。
両替の余りと海外送金の「摩擦」という身近な不便
大塚さんは、日本で裕福に暮らしていても不便を感じる場面はある、と話を具体化します。例に挙げたのが海外旅行での両替です。
3万円分を両替してその国で使い、使い切れずに微妙に余ってしまう。西山さんも、机の上にジャカルタで使ったお金の札束が残っていて邪魔だ、と実感を語ります。
大塚さんは、こうした余りに加えて、両替の時点で手数料としてレートを取られている点も指摘します。国をまたいでお金を動かすと、いろいろな所に摩擦が生じるというわけです。
その原因は、各国ごとに銀行やお金のシステムがあり、全世界共通の仕組みが存在しないことだ、と説明します。だからシステム間で送るたびに摩擦が起き、非効率が生まれます。
ビットコインなら、インターネットのように国をまたいで摩擦なくお金を動かせる、と大塚さんは対比します。西山さんが「銀行じゃダメなのか」と問うと、大塚さんは銀行が摩擦になっていると答えます。
各国ごとにシステムが分かれ、間を銀行が介する。国をまたぐと手数料と時間がかかり、着金したかの反応も返ってこない
インターネットのように国境を越えて動かせる。数分で着金し、手数料も抑えられる
給料をビットコインで送って助かった実体験
ここで西山さんが、ビットコインがあってよかったと実感した体験を語ります。最初に会社を作った時、ハードウェア制作を手伝ってくれた人への給料の振り込みを忘れていた、というエピソードです。
振り込むと言っていた25日の夜8時頃に思い出し、間に合わないと焦ったそうです。そこで相手に「最悪ビットコインでいいなら今すぐ送れる」と持ちかけました。
(相手が)え、ビットコインとか全然嬉しいんですけどみたいな
即座にその場で送れて、手数料もむしろ安かった、と西山さんは振り返ります。神だと思った、というほどの体験だったそうです。
一方でその後、海外送金では別の目に遭ったとも語ります。銀行経由でハードウェアの送金をした際、手数料だけで7000円ほど取られたというのです。
ビットコインなら数百円だった送金が、銀行だと桁違いの手数料になる。この落差に西山さんは強い不満を覚えたと話します。
大塚さんも、法人が国をまたいで送金する場面では手数料も時間もかかり、着金したかの返信すら来ないと同意します。これが既存の金融の仕組みだ、というわけです。
郵送を送るのに郵便局いっぱいですごい作るの遅いじゃないですか。でもEメールで送ったら今すぐ着く
大塚さんは、一度この便利さを知ると元には戻れない、と語ります。多くの人が使うほど価値が増すネットワーク効果にも触れ、西山さんは電話にたとえて理解します。ネットワーク効果 ── 利用者が増えるほど、そのサービス自体の価値や便利さが高まる現象。電話やSNSのように、参加者が多いほど恩恵が大きくなる。
番組でこれから語りたい3つの側面と人間ドラマ
西山さんは、Web3が具体的にどう生活に溶け込むのかはまだイメージが湧かない、とこれからの番組への期待を述べます。大塚さんは、イメージが湧かないのが当たり前だと応じます。
今どこまで実現できていて、どこがまだなのか。それを一つずつ伝えていきたい、と大塚さんは番組の方針を語ります。実現済みの話も、まだの話もあるからです。
大塚さんは、暗号資産に興味がないビジネスパーソンも当事者になり得ると指摘します。ビットコインでなくても、ステーブルコインのようなものが日経新聞にも載り始め、自分のビジネスに関わってくるだろう、というわけです。ステーブルコイン ── 法定通貨などに価格を連動させ、値動きを抑えるよう設計された暗号資産。決済や送金での利用が想定されている。
さらに大塚さんは、これから語りたい話に複数の側面があると整理します。技術の側面、金融の側面、そして法律と一緒に動く点、加えて思想・イデオロギーの側面です。
西山さんは、業界がダイナミックで、無名だった人が急に巨大な存在になる話も聞きたいと注文をつけます。大塚さんは、既存の仕組みへのカウンターカルチャーと、世の中を安定させたい側とのバトルには人間ドラマがある、と応じます。
これはですね、普通に小説というか、どうしてもものすごく面白い話なので、多分僕が興奮しすぎてテンションが上がりすぎちゃってないかぐらいな話
最後に西山さんは、飲み会で見せる大塚さんのゲラゲラ笑う姿を番組でも引き出したい、と冗談めかして締めくくります。大塚さんは、立場と素のバランスを取りながらやっていきたいと応じ、初回は終わります。
まとめ
番組初回は「もうオワコンでは?」という問いから出発し、Web3という言葉のブームは一段落したものの、その土台の基幹技術や制度は前進しているという現在地が示されました。ビットコインの意味は、両替の余りや海外送金の手数料といった身近な「摩擦」の話に落とし込むとわかりやすくなります。
- Web3のブームは落ち着いたが、基幹技術やアメリカの法整備はむしろ前進しているというのが業界内の現在地
- お金の進化は年単位では見えず、貝殻からドル、ビットコインまでの長い流れの中で捉える必要がある
- 通貨が不安定な国では、どの国にも依存しないビットコインが「自由」につながり得る一方、日本ではその実感が持ちにくい
- 海外送金や両替には手数料・時間・着金確認といった「摩擦」があり、ビットコインはそこを滑らかにする可能性がある
- 番組では技術・金融・法律・思想の4側面と、業界の人間ドラマを一つずつ掘り下げていく方針



