なぜ専門家は"胸熱"になるのか
番組冒頭、西山さんは大塚さんを「日本の中でも一番熱量を持っている人の一人」と紹介します。10年以上ビットコインに携わってきた大塚さんに、その熱の理由を尋ねるところから対話が始まります。
大塚さん、何がそんなにすごいと思って、こんなにビットコインに張ってるんですか?
大塚さんがまず挙げたのは、お金の出し手が変わったという点です。これまでお金は国だけが発行するものでした。
そもそもお金って国しか出せなかったじゃないですか。日本は日本円を発行しますよみたいな。そういう世界で今まで人類は生きてきたわけですね。
ところがビットコインは、国ではなくテクノロジーの側からお金らしきものが生まれ、それをみんなが「貴重だ」と思うようになった、と大塚さんは説明します。既存のお金の存在が脅かされる時代になってきたという見立てです。
しかもこれが(ビットコインが)テクノロジーから突然生まれてきたっていうのは、結構僕的には胸アツで。
当たり前だった「お金は国が出す」という前提が崩れ、人々の行動が変わっていく。その変化のただ中にいて、しかも自分が事業として関われていることが面白いのだ、と大塚さんは話します。
大塚さんは、この衝撃をインターネットや活版印刷になぞらえます。今までなかった概念が世の中を変えていく点で、同じくらいのインパクトがあるものだと捉えています。
ドル中心の世界を揺るがす、予想外の台頭
西山さんは「地球が生まれてから初めてのこと」と受け止めます。国家が運営していないお金という点についてです。大塚さんは、まず今のお金の体制の成り立ちを整理します。
大塚さんによれば、現在のお金の仕組みは第二次世界大戦以降、ドルを中心に成り立ってきたものです。当初は金とドルを1対1で交換する考え方でしたが、それが破綻し、ニクソンショックで金と交換しなくてもよくなったといいます。
1945年以降、誰もドル中心の体制が変わるとは思っていなかった、と大塚さんは言います。仮に中国のような国が台頭して変わるならまだわかる、というのが本来の想定でした。
全く違う、誰も予想しなかったテクノロジー側からお金らしきものができて、それに台頭するなんて、多分誰も想像できなかった。
その予想外のものが世の中に浸透していったこと自体が、誰も予想しなかったテクノロジー側からお金が生まれたという点ですごいことだ、と大塚さんは評価しています。
詐欺扱いから「隠れキリシタン」だった時代
西山さんが出会った時期を尋ねると、大塚さんは2013年から2014年ごろ、10年以上前だと答えます。当時の空気は今とはまるで違っていたといいます。
当時はみんなビットコインの詐欺だってひたすら言ってたので、僕もこの事業を始めた時は、そんな詐欺の事業に関わるんでやめろとひたすら言われましたから。
カフェでビットコインの話をすれば周囲から警戒され、投資したと言えば親戚に全力で止められる。そんな時代だったと大塚さんは振り返ります。その様子を、大塚さんはある比喩で表現しました。
仕組みを理解して信じ、人前では言わないけれど信仰として持っている。その姿がキリスト教を隠れて信仰する人々に近かった、という意味です。
大塚さんによれば、特に2012年から2013年ごろは、ビットコインの実利よりも思想の面に人々が引き寄せられていました。話題に上ったのが非中央集権という考え方です。
あれですか、非中央集権みたいな。
そうそうそう、そっちの思想にみんな好きな人たちが多かったので。
当時集まっていたのは「政府なんて信じられない」といった思想を持つ人が多く、社会から見ればマイノリティに近い存在だった、と大塚さんは説明します。だからビットコインを持つこと自体が、そうした属性に見られることにつながっていたといいます。
大統領選の争点になるまでのマジョリティ化
大塚さんは、そうした10年前の空気と現在を対比します。ポッドキャストでビットコインという言葉を普通に話せること自体に、育ってきた実感があるといいます。
これだけポッドキャストもできて、ビットコインって言葉も言えるって、僕からするとすごい、ああ、ここまで育ってきたなって感じはありますよね。
さらに大塚さんは、この流れはもう止まらないと見ています。象徴として挙げたのが、2024年のアメリカ大統領選です。
2024年、アメリカの大統領選の争点がビットコインの支持者を受け入れるかどうかみたいなとこまで来てるから、それだけマジョリティに出てきた話なんで。
暗号資産に好意的な人たちの票が、結果として国を動かすところまで来ている。10年やってきた自分からすると胸アツだ、と大塚さんは話します。世の中は止まらない流れになっていく、というのが大塚さんの見立てです。
2100万枚という上限が生む「我先に」の力学
西山さんは「なぜビットコインはこんなに大きくなれたのか」と尋ねます。大塚さんはまず、その仕組みのよくできた点として、発行量の上限を挙げました。
ビットコインってもうルールが決まっていて、もう全体で2100万枚しかないですよってルールになってるんですね。
この2100万枚はゲームのルールのように最初から決まっている、と大塚さんは説明します。そのビットコインを少しずつ見つけていく作業がマイニングです。
大塚さんによれば、マイニングで得られる報酬は4年に一度、半分になるルールになっています。この設計が、保有をめぐる力学を生みます。
最初にそれを持った人の方がすごい価値が出る。後から参入する方がちょっとしか持てない。
後から得ようとすると、高性能なパソコンで計算を解くか、誰かから高く買うしかない。先に持った人ほど有利になるため、みんなが我先にと買う仕組みになっている、と大塚さんは整理します。
発行上限が固定
全体で2100万枚しかないとルールで決まっている
後発ほど得にくい
報酬は4年ごとに半減し、後から参入すると少ししか持てない
我先にと買う
先に持つほど有利なため、早く手に入れようとする動きが生まれる
需要が価格を押し上げる
限られたものを欲しがる人が増えるほど価格が上がる
西山さんは、資産として機能する設計に加えて、みんなが先に持った方が有利だからこそ人が流れ込んだ、と理解を示します。ただし大塚さんは、そこには難しさもあると付け加えました。
「非中央集権」というブランディングが普及の起点だった
大塚さんは、そもそも誰も使っていないものには価値が生まれない、という根本的な問題を指摘します。早い者勝ちだと言っても、誰も使わなければ意味がないからです。
とはいえでも最初さ、誰も使ってないものに価値なんか見出さないじゃん。
ここで大塚さんが「うまい」と感じたのが、初期のブランディングです。仕組み上の特性を、ある打ち出し方に結びつけたといいます。
大塚さんによれば、この非中央集権という打ち出しは最初からあったわけではなく、特性を見た人が普及のために使い始めたものでした。掲示板でその魅力が語られ、政府に依らないお金を求める人たちが集まっていったといいます。
え、2chとかで書き込んでいったんですかね。これがいいんだぞって。
その一時期その掲示板があった。そこの中でそういうブランディングしたら、それだったら欲しいって人がどんどん現れて、だんだんそこから普及していった。
その結果、初期の保有者ほど非中央集権の思想に深く傾倒した人が多かった、と大塚さんは言います。今はかなり普及し、儲かるといった実利で持つ人が増えていったと変遷を語ります。
西山さんが「健全な感じになって」とまとめると、大塚さんは何が正解かはわからないと慎重な姿勢を見せつつ、こうした時代の移り変わり自体を面白がっていました。
口座も残高も公開される、透明なお金の世界
西山さんは、2100万枚を全員で交換し合っている状態なのか、と尋ねます。大塚さんは、誰が持っているかまではわからないものの、口座にあたるアドレスと残高はすべて公開されている、と答えます。
どのアドレス、ここに口座がありますよっていうのがもう全部公開されているので、国ごとのアドレスもわかるんで、アメリカはこのぐらい持ってます、中国はこのぐらい持ってますと。
大塚さんは具体例として、ベネズエラが攻撃され、多くのビットコインを持っていたとされる話に触れます。アメリカが今後それを抑えるのではないか、という観測です。
さらに大塚さんは、アメリカが国として保有するビットコインを売らないと大統領令で宣言していることにも言及します。そうした動きまで公開情報として追えるのが面白い点だといいます。
どのアドレスを誰が管理しているかは、ある程度特定されている。そのため、大塚さんたちのように資金の動きを常にウォッチしている人たちもいます。どこにお金が動いているかを見れば、今後の展開も分かりやすい、というのが大塚さんの見方です。
個人から企業、そして国家へ広がる保有の輪
西山さんは、ビットコインが今後も資産として定着していくのか、その未来を尋ねます。大塚さんは、未来の話であり投資判断の材料にはしないでほしいと前置きしたうえで、これまでの流れを整理しました。
大塚さんによれば、保有者は思想を信じる一部の個人から始まり、価格が上がったことで普通の人へ広がりました。次の段階が企業です。円やドルやユーロを持つより価格が上がるとして、財務戦略の一環でビットコインを持つ時代になったといいます。
さらに近年は、事業ではなくビットコイン保有を目的にする企業まで現れた、と大塚さんは説明します。株式を発行して市場から資金を調達し、そのお金でビットコインを買うという動きです。
上場してる会社が事業やらずに、自社の株式を追加で発行して、株式市場からお金を調達して、そのお金を使ってビットコインを買って、そうすると株価が上がって。
なんだそれ。
そして今度は国家です。金を持つよりビットコインを持った方がいいのではないか、という考えで保有を始める動きが出てきた、と大塚さんは言います。アメリカやエルサルバドルといった例を挙げました。
一部の個人
非中央集権の思想を信じる人たちが保有していた
普通の個人
価格が上がり、実利を求める人も持つようになった
企業
財務戦略として保有し、保有を目的に資金調達する会社も現れた
国家
金の代わりに保有する国が出てきた
大きなお金が2100万枚しかないものを買い始めれば、基本的には価格が上がっていく。ただし、この先どうなるかはわからない、と大塚さんは慎重に締めくくります。
西山さんが、金や債券と並んでビットコインも比較対象になっているのかと確認すると、大塚さんは肯定します。機関投資家がポートフォリオにリスク資産として暗号資産を一部持つことが、コンセンサスとして成り立ってきたといいます。そうした保有ができる環境も、この2、3年で整ってきたと話します。
まとめ
この回は、10年以上ビットコインに関わってきた大塚さんが、国ではなくテクノロジーから生まれたお金の衝撃を語る内容でした。詐欺扱いされ「隠れキリシタン」に例えられた時代から、大統領選の争点になり、企業や国家が持つまでの変化がたどられています。
- 大塚さんはビットコインを、インターネットや活版印刷に並ぶ50年に一度の革命と捉えている
- 現在のドル中心の通貨体制を、予想外のテクノロジー側から揺るがした点にインパクトがある
- 2100万枚という発行上限と4年ごとの報酬半減が、我先にと買う力学を生んでいる
- 非中央集権という初期のブランディングが、思想を求める人々を集め普及の起点になった
- 保有の主体は個人から企業、国家へと広がり、金や債券と並ぶリスク資産として扱われ始めている



