初のポッドキャスト出演、Pacific Metaはどんな会社か
今回のゲストは、ブロックチェーンの実装型コンサルティングを掲げるPacific Meta代表の岩崎翔太さんです。顔出しでのポッドキャスト出演は初めてだといいます。
岩崎さんが率いるPacific Metaは、ブロックチェーンを活用した戦略コンサルティングとシステム開発を手がける会社です。企画から実装まで一気通貫で支援できる点を特徴としています。
ブロックチェーンの実装型コンサルティングと自称してるんですけども、(の会社の代表をしています)。企画から実装まで一気通貫で支援できることが特徴でございます。
最近はステーブルコインに関する相談が多いといいます。まず米国のUSDCやUSDTがどう使われているかを整理し、収益モデルやビジネスモデル、顧客の生活がどう変わるかまで詰めていく仕事です。
大塚さんは、Pacific Metaを伝統的な金融と暗号資産の世界をつなぐ橋渡し役だと位置づけます。
ステーブルコインになってくると伝統的な金融の方々が参入してくと。ただ、そこの人たちがどうやって参入したらいいだろうっていうのがわからないところを(Pacific Metaが支援してくれる)。
クライアントは中小よりも、金融機関やナショナルクライアントと呼ばれる大手企業が多いとのことです。公表されている例として、ワカシオやJTBの名前が挙がりました。
本当に大きなポテンシャルある事業に張っていきたいって言った会社が対象になってくるので、そうなると自ずとエンタープライズになってくるかなと思ってます。
大学2年でパソコンも触れず、21歳で「終活ねっと」を起業
岩崎さんは会社員経験がなく、学生のまま起業した人物です。大塚さんは、なぜ4年前に全く違う領域からブロックチェーンに入ってきたのかを掘りたいと切り出します。
キャリアの出発点は、大学2年のときに始めたキャンドルという会社でのインターンでした。2つ上の先輩が起業したウェブマーケ・メディアの会社です。
本当にスタートした時はパソコンも触ったことがない状態からスタート(でした)。(コピペの)やり方がわからなくて、一個一個やって怒られるみたいなところから、全部ゼロベースのスタートでしたね。
岩崎さんは、自分をリスクテイカーではなくビビリな性格だと語ります。だからこそ、一番リスクなく起業できるのは学生時代だと考えたといいます。
要は新卒の権利を失うのが一定怖かったんですよね。学生時代に挑戦して、うまくいったら会社を続ければいいし、失敗しても就職活動って道もあるから、人生が終わるわけじゃないと。
大学の学費が無料で、2年間ビハインドしても新卒の権利が残ることを確認し、休学して挑戦に踏み切りました。失敗してもガクチカが手に入るくらいの捉え方だったといいます。
起業のテーマは、市場性・競合性・ケイパビリティの3軸で判断しました。学生でケイパビリティをほぼ持たない自分が、伸びている市場で戦うことを重視した結果、たどり着いたのが終活の領域でした。
AIやセキュリティは伸びるが、テックバックグラウンドが必要でケイパビリティが足りない
高齢化で確実に伸び、キャンドルで積んだウェブのリテラシーで競合に優位に立てる
日本人口が落ちていって高齢化するのであれば、そこは少なくとも伸びるなと思って。(ウェブの)経験を生かせばその領域だと優位に立てるんじゃないかって仮説を持ったのがスタートですと。
こうして21歳のとき、大学3年生で「終活ねっと」を起業します。就活(終わる活動)と読ませる名前で、お葬式やお墓をネット上で手配する、ゼクシィのお葬式版のようなプラットフォームでした。
戦略はシンプルで、ユーザー数の獲得を優先しました。ユーザーが増えれば掲載する葬儀・墓の会社も増えるという仮説のもと、集客にリソースを集中させたといいます。
月間1000万アクセス、23歳でDMMへ売却
仕切りを20歳、スタートを21歳で始めた終活ねっとは、2018年まで、約2年間続きました。大学4年の秋に卒論だけ残して休学し、事業にフルコミットする段階でDMMから声がかかります。
当時は本当にM&Aするとかも全く想像もしてなかったというか、もっと事業もまだまだ伸ばそうと思ってた段階だったんですけど、(DMMから)買いたいと思ってるみたいなお声が来て。
M&Aに至ったのは23歳のときでした。大塚さんは、まだ社会人になっていない年齢だと驚きます。
終活の領域は、もともと好きだったわけではなく、課題を解決するうちに好きになっていったといいます。何より市場が伸びていることが明確でした。
(ベンチマークにした)鎌倉新書が売上十数億で時価総額600億とかあったんですよね。それくらい市場から注目されてるんだと思って、そこを狙ったっていうのもあったりもする。
高齢者のインターネット普及率が伸びていたこともあり、終活ねっとのアクセス数は月間1000万を超え、領域最大のアクセス数を誇るまでになりました。それがM&Aにつながります。
DMM退職とコロナ、投資漬けだった空白期間
大塚さんは、ここまでの流れにブロックチェーンが一度も出てこないことに触れ、23歳から現在のPacific Metaまでの空白期間を尋ねます。
岩崎さんは子会社社長を約2年務め、25歳でDMMを退職します。退職した日と同じ日に大学も卒業しました。中退ではなく、卒業歴を残した理由がありました。
将来シンガポールに行く可能性もやや残ってるなと思って。そう思うと卒業歴が大事になってくるので、卒業しようかなと思って。結構それが決め手でした。
DMMと大学を卒業した、まさに同じ月に世の中がコロナ禍に入ります。人生を探索するフェーズで、探索の糸を切られたような状況になりました。
一回会社辞めて、これからじゃあ人生探索していくかっていうフェーズで、そのコロナで探索の糸を切られたみたいな(状況になりました)。
自宅で友人とダラダラ過ごす一方、個人でSEOやメディアの受託を始めます。責任のない身軽さもあり、この時期が一番稼いでいたかもしれないと振り返ります。
この空白期間に、岩崎さんは投資に力を入れました。将来のキャッシュフローが円であることを踏まえ、円のポジションを持たない選択をしたといいます。
リスクを取らないとはポートフォリオを組むことだって気づいて。僕の将来のキャッシュフローは円なので、円のポジションを今持つ必要ないって思ったんですよね。
投資先はエンジェル投資、米国株、暗号資産の3つでした。円安ヘッジとしてS&Pやナスダックのインデックスを買い、頼まれると断れずエンジェル投資は累計60社ほどに及んだといいます。
1社あたりの投資額を抑え、自分が知らない領域にこそ投資して学ぶスタイルでした。現在はほとんど行っていません。自分の会社にエクイティで調達している以上、そこに全面集中するのが使命だと考えているためです。
暗号資産はコインチェック経由でビットコインを購入したのが入り口でした。供給が2100万枚に限られる仕組みを調べ、金のリプレースになると言われる面白さに触れていったといいます。
「エネルギーが止まらない」ブロックチェーンに全ベットするまで
半年ほど身軽に過ごしたある日、岩崎さんは再び起業への衝動が止まらなくなります。余裕のある人生を求めて起業したはずが、いつの間にか脳が書き換わっていたといいます。
ダラダラする選択肢がないなら、ずっとやり続けられるものに長期でコミットしたほうが幸せだという仮説を持ちました。先輩起業家の言葉もそれを後押ししました。
DeNAの南場さんとかも、もう熱中できるものがあることが幸せなんだみたいな。GREEの田中さんも、賭けれるテーマを見つけて全力コミットすることほど楽しいことないぞっておっしゃっていただいて。
岩崎さんはビジネスをスポーツに例え、上限を決めずに上を目指す感覚を語ります。大谷翔平が55本より56本を目指すように、目標のボーダーラインはないという考え方です。
そこで重要になるのが「探索余地」でした。一つの領域に張ったときの市場の上限を決めるのは、グローバルに通用するかと、大きな技術の変革点に張れるかの2点だと整理します。
ソフトバンクとか楽天とかも、同じインターネットってテーマにもう何十年も張り続けてて、それが複利が効いてるから今の地位がある。そういう戦い方したいなと思ったんですよね。
候補にはAIもありました。しかしAIはすでにパークシャなどが先行し、伸びることは分かっていても、後発で入って自分たちのプレゼンスを出しきれないと判断します。遺伝子領域は規制と医療バックグラウンドの壁で見送りました。
最終的にブロックチェーンを選んだ決め手は、市場ポテンシャルに対してプレイヤーが少ないという一点でした。2回目の起業で仲間集めができる見込みがあったため、ケイパビリティをいったん外して市場性と競合性で考えたといいます。
一番市場ポテンシャルあるけど競合が少ないマーケットに入るべきってなって、いろいろ見た結果、ブロックチェーンだと思ったんですよね。
もう一つの理由は、ファイナンスへの個人的な思い入れでした。田舎生まれで起業という選択肢もなかった自分が、志さえあれば調達できるスタートアップの世界に出会ったことが原体験になっています。
ただし、この結論に至るまでには時間がかかりました。半年のフラフラ期を経て、ブロックチェーンでやると決めたのはさらに1年後です。行動したいのに頭が止める、一番ストレスのかかる時期だったといいます。
ここで登る山を間違えたら今後10年が無駄になるから、この意思決定だけはミスってはいけないと思って。ここで1年かけようが総合的には効率のいい時間の掛け方になると思ってた。
黎明期を生き残るためのToB戦略と王道経営
岩崎さんは、論理的にリスクをヘッジしながら意思決定を重ねてきました。大塚さんは、こうしたスタイルに時代が追いついてきたのではないかと問いかけます。
岩崎さんが掲げるのは「王道経営」です。ハックではなく、世の中のためになることをし続ければ、市場もメンバーも顧客もついてくるという考え方です。
どんな領域だろうと、ハックするんじゃなくて、王道で世の中のためになることをし続ければ、マーケットもついてくるし、メンバーもついてきて、顧客もついてくるんじゃないかなと思っていて。
2022年に起業した当時、ブロックチェーン領域で王道経営を掲げ、本質を言語化できる会社は少なかったといいます。そこで岩崎さんが選んだのが、ToBで起業するという意思決定でした。
黎明期にToCで起業すると、市場が追いつかず先行しすぎてしまう。一方ToBなら、市場を作りたい大企業と足並みをそろえて進み、生き残ることができるという読みです。
ToBでちゃんとキャッシュを獲得しながら、そのマーケットの波が来るまで待とうって思ったんですよね。
参考にしたのは、インターネット黎明期のサイバーエージェントや、AI黎明期のパークシャです。両社とも当初はコンサル・受託が中心で、自社プロダクトを持たない状態で上場していました。
上場することによって、インターネットはサイバーが詳しい、AIはパークシャが詳しいみたいな形で案件がどんどん増えていって、黎明期でも信頼されて案件がやってくる状態を作れてた。
想定より早く来た社会実装と、大塚さんへのリスペクト
岩崎さんは、社会実装が自分の想像より早かったと語ります。もう少し黎明期が続くと見ていたところに、米国でのステーブルコイン法案やハイパーリキッドの登場で市場が来てしまいました。
マーケットシェアをもう少しじわじわ取っていって、波が来たタイミングで勝負っていう戦略だったんですけど、マーケットシェアをもっと取りたかったなって思ったりもしますね。
岩崎さんは、マーケットシェアと不確実性はトレードオフだと整理します。不確実な時期ほどシェアを取れる一方、確実になるほど他社の参入も早まり、先行して張り続けたメリットが薄まるという見方です。
その視点から、ド黎明期の2012年ごろから張ってきた大塚さんへのリスペクトが語られます。
俺らがやってた時は10年後とかにビットコインとか流行ればいいかなっていうのを2012年ぐらいに言ってて、そこの不確実性を取ったから、最初のマーケットシェアをグワっと取れた。
大塚さんは、暗号資産が長く「詐欺」と呼ばれていた時代を振り返ります。前職を辞めるとき、上司に触らないでくださいと言って去ってきたといいます。
前職辞める時も、何の事業やるのって言われて、ビットコインとかそういうのでって言ったら「おお、なるよな」って。まして解像度が低い人からしたら、触らないで大丈夫ですって言って辞めてきた。
赤川さん、コムロック、AI経済圏との合流
Pacific Metaは、ブロックチェーン領域の起業家を積極的にグループに迎え入れてきました。この領域は起業家の数が少なく採用も難しいため、M&A的な側面が強いといいます。
赤川さんのチームは、もともとToCの事業からToBにピボットしたタイミングでした。バスケをする仲で人柄を信用していたこともあり、熱烈オファーで合流に至ります。
我々のチームと赤川のチームで、持ってる強みが全然違ったので、合わさった方が上を目指せるんじゃないかというところで、熱烈オファーをして。
コムロックとの合流も同様です。代表の野々村さんはAI経済圏に張っており、岩崎さんもブロックチェーンやステーブルコインがAI経済圏のインフラになると考えていたため、ビジョンが一致しました。
彼らはAI経済圏に張ってたんですよね。僕もブロックチェーンやステーブルコインがAI経済圏のインフラになると思ったので、ビジョンが一致したんですよね。
岩崎さんは、この領域で一緒に経営をやっていける相手にはなかなか出会えないため、出会いを大事にして頼み込んでいると語ります。同世代の若手ブロックチェーン起業家のハブになっている存在です。
ステーブルコインの99%は資産運用に使われている
ステーブルコインと聞くと、まず決済のユースケースが想像されます。しかし岩崎さんによれば、実態は大きく異なります。
Pacific Metaがチェーンを分析したところ、ドル建てステーブルコインであるUSDCのトランザクションは、その99%が資産運用目的で、決済は1%程度だといいます。
銀行に法定通貨を預けるように、ステーブルコインをレンディングサービスに預けると、毎日、毎秒単位で金利が付与される体験が生まれます。この使われ方が主流だと岩崎さんは説明します。
大企業のステーブルコイン担当者もそれ(資産運用が主流であること)を知らないみたいな。実はもう資産運用ユースケースがあって、資産運用しながら決済することができるんですよって話をして。
岩崎さんは、ステーブルコインが普及するには、ステーブルコインベースで生きる人が増える必要があると考えています。そのためには、常時資産運用できるような法定通貨にはない体験が鍵になります。
AIが自律的にお金を動かす、ウォレットという仕組み
もう一つ、ステーブルコインとAI経済圏を結ぶ論点が、AIが自律的にお金を動かせる点です。現状、AIが自律的にお金を動かせるインフラはステーブルコインしかないと岩崎さんは言います。
AIはまだ銀行口座やクレジットカードを自分で動かせません。課金には最後に人間が関わり、口座を複数作ることも現実的ではありません。
(AIに)「課金しといて」みたいな言われて、「わかった」って言ってサイトに行って課金してますもんね。
これがステーブルコインとAIの組み合わせなら簡単に実現できます。ウォレットを作り、そこにステーブルコインを入れ、AIに秘密鍵を渡すという仕組みです。
暴走を防ぐため、ウォレットの動きはスマートコントラクトで縛ることができます。取引相手のアドレスを限定したり、送金時に人間の承認を必須にしたりといった設定が可能です。
岩崎さんは、これを大企業が部署ごとに予算を割り振る仕組みに近いと説明します。銀行口座と違い、ウォレットは理論上いくらでも作れるため、AIごとに役割と予算を持たせることができます。
システムでそもそもお金の使い方を絞ることができる。ウォレットであれば理論上無数に作ることができて、それぞれに役割を持たせて、暴走しないように設計することもできますね。
西山さんは、かつて大塚さんが語ったビタリク・ブテリンのスマートコントラクト構想が、今ステーブルコインで実現されているのではと問います。岩崎さんは「もうできている」と答えました。
無人の銀行DeFiと、次世代の金利モデル
話は、ステーブルコインの用途がどこから広がるかへ移ります。岩崎さんの仮説は、ステーブルコインにリスクフリーで2〜3%の金利がついたときがゲームチェンジになるというものです。
その鍵を握るのがDeFiです。岩崎さんは代表例のAAVEを、お金を預けて貸し借りする「無人の銀行」のようなものだと説明します。
AAVEでは現在、ドル建てステーブルコインの預入金利が約3.2%、借入金利が約4%です。その差であるスプレッドは0.8%程度と極めて狭いのが特徴です。
預入金利はほぼゼロ、借入は2〜3%。差の大半がスプレッドになり、預金者に金利が返らない
預入約3.2%、借入約4%。スプレッドは0.8%程度で狭く、預金者に金利が返る
なぜスプレッドを狭くできるのか。岩崎さんによれば、AAVEは11兆円もの預かり金額を100人以下の従業員で回しているといいます。
AAVEは11兆円の預かり金額を100人以下の従業員で回してるんですよ。地銀クラスの預かり金額を100人以下で回せる。
支店やATM、債権回収、余剰資金の確保といったコストがなく、すべてデジタルで管理できるためです。少人数で大量の資金を扱えるからこそ、狭いスプレッドでも運営が成り立ちます。
岩崎さんは、これが将来的に日本円でも達成されると見ています。借入金利を3%と仮定すれば、預入金利は2%程度が実現できるという試算です。
法定通貨で持てば金利はほとんどなく、利子は半年に一度、送金手数料も220円かかる。一方ステーブルコインなら年2%の金利が毎日付与され、送金手数料も安い。どちらを選ぶかは明らかだと岩崎さんは語ります。
仮説を裏付けるデータもあります。SBI新生銀行が預金金利を0.42%に設定したところ預金が大きく伸びた例や、PayPayポイント運用が毎日お金が増える体験でユーザー数2000万人に達した例です。
Coinbaseがメインバンクになる世界と、金利の源泉
岩崎さんは、米国ではすでにその兆候があると指摘します。Coinbaseにお金を預けると、ドル建てで3.5%の金利が固定で出るといいます。
インフレに負ける法定通貨のドルを銀行に持つより、Coinbaseでステーブルコインを預けたほうが経済的に合理的だという考え方です。
岩崎さん自身もこの生き方をしています。将来のキャッシュフローが円である前提でドルを持ち、MorphoやAAVEに預けて運用しているといいます。
ドル建てで、リスク少ない時は3とか、高い時は8とかで資産が運用されていってるので、そうやって生きてるんですよね。
この金利がどこから出るのか、という問いに岩崎さんは答えます。3.5%以上で借りたい人がいるからです。
Coinbaseのような集中型では運用の内訳が明確ではないものの、3.5%で借りてS&Pやナスダックで運用したい人はいくらでもいます。DeFiのAAVEなら、4%で借りたい人が多いため3.2%の預入金利が成立します。
金利よりも高い金利で借りたい人がいれば成立する。なぜかその中間コストがなくなるから、法定通貨より預入金利が高くなる。
貸し倒れが起きない仕組みと、24時間動く市場
西山さんは、銀行の窓口が担ってきた与信審査を、DeFiではどう代替しているのかを尋ねます。岩崎さんは、そもそも貸し倒れが起きない仕組みだと説明します。
AAVEでは、価値10の担保を預けると8を借りられます。担保となるイーサリアムの価値が変動すると、担保と借入の比率が10対8を保つよう自動的に調整されます。
たとえば担保が9対8まで下がると、その瞬間に清算が自動的に起き、比率が保たれます。この動的な清算は、暗号資産の市場が24時間365日動いているからこそ可能です。
既存の金融のマーケットって金曜日に閉まって月曜日に開くじゃないですか。暗号資産のマーケットは常に動いてるので、清算が自動的に起きる仕組みをスマートコントラクトに組むことができる。
貸し倒れが仕組みとして起きなければ、DDも債権回収も必要ありません。この一連の仕組みこそがDeFiの本質だと岩崎さんは語ります。
なぜ広がらないのか、日本のステーブルコインの現状
これほど合理的な仕組みが、なぜ日本で広がらないのか。岩崎さんは、日本円ステーブルコインの機能面の課題を挙げます。
現在リリースされているのはJPYCとJPYSCです。JPYCは資金移動業型で、100万円の送金上限があります。この上限が資産運用のユースケースを難しくしていると岩崎さんは言います。
日本円を資産運用するときに100万とかよりは数千万とか一気に資産運用したい人が多いので、100万円の送金上限がネックになってる。
SBIが出すJPYSCは信託型ですが、まだパブリックチェーンに載せられない問題があります。規制と見合っている最中と見られ、いずれ出てくるとされます。
信託型のステーブルコインがパブリックチェーンに乗るか、JPYCのような100万円の送金上限を突破するかなどしてくると、普及してくるかなと思っています。
さらに、金利計算のわかりにくさや、英語での操作への不安も普及の壁です。ただ大塚さんは、そこを乗り越えれば大きな市場になりうると見ます。
岩崎さんは、この壁をAIが突破すると考えています。JPYCの取引の95%がすでにAIによるものだといいます。
450兆円の取引所ハイパーリキッドと、AIが運用する未来
岩崎さんは、AIが自律的に動かせるクリプトの規模を、具体的な数字で示します。ハイパーリキッドという取引所は2023年設立で、2025年の取引高が年間450兆円にのぼります。
参考として東証プライムの取引高は1600兆円です。ハイパーリキッドは2年で、その4分の1強の規模まで成長したことになります。その取引高の4〜6割がAIだといいます。
個人のお金をAIが運用する世界になれば、ステーブルコインで2〜3%の利回りが出るなら、AIが面倒な手続きなしに勝手にやってくれます。最終的にユーザーのインターフェースはAIになると岩崎さんは見ます。
みんながAIトレーダーを持ってて、そこにお金をチャリンとつけると、AIが合点承知って言って勝手に運用してくれるみたいな。
AIにはリスク許容度を伝えられ、行動を制限するプログラムで「ビットコインの売り買いだけ」といった指定もできます。さらに、NVIDIAなど米国株をトークン化して買うことも可能になっています。
証券口座のラインナップとトークンの世界のラインナップが近づき、グローバルにどこからでもアクセスできるようになる。AIに「株だけ買って」と伝えれば、株をトークン化したものだけで取引する世界も来ると岩崎さんは語ります。
AIトレーダーが人間に勝つ理由
西山さんは、みんなが上手に資産運用できるなら儲からなくなるのではと問います。岩崎さんは、人間のトランザクションはなくならないとしたうえで、AIと人間のトレード成績の比較になると答えます。
将来的には、複利的な成長とビッグデータの蓄積により、AIのほうが勝つと岩崎さんは見ています。特にファンドとして考えると、その差は大きくなります。
トレーダーの人って給料めっちゃ高くて何億とか平気でいる。そんな超人ですら夜寝ないといけない。寝てる間にマーケットが落ちて買い時があっても見過ごすだけ。ただAIだとそれがない。
寝ない、休まない、そして安い。この3点で、AIのトレード成績が人間を上回る世界が来るというのが岩崎さんの見立てです。人しかアクセスできない情報にアルファが残る余地は認めつつ、全体としてはAIが成長していくと考えています。
なぜ若手起業家とVCがブロックチェーンに来ないのか
大塚さんは、これだけチャンスがあるのに、なぜ若手起業家がブロックチェーンで起業しないのかを問います。岩崎さんの答えは、ベンチャーキャピタルにあるというものでした。
ブロックチェーンに張るVCは、海外に比べて日本では明確に少ないといいます。日本のVC市場には、他のVCが高く評価するかを基準にするネットワーク効果があるためです。
そこのゼロイチの着手がまだブロックチェーンはできてなくて、木下さんとかすごく頑張っていたと思うので、そこはすごいなと思う。
VCが加熱しなければ、起業家側も最初の資金がなく、システム開発の経験も得にくい。この第一関門が突破できていないと岩崎さんは分析します。
ただし、最近はVCからブロックチェーンの話を聞かせてほしいというインバウンドが増えてきたといいます。日本初のユニコーンも、近年最も利益を出した会社であるコインチェックも、ブロックチェーンの会社です。
日本初のユニコーンもブロックチェーンだし、最近利益出した会社もブロックチェーンじゃないですか。全然張ろうって思ってもおかしくないと思うんですけど、そうならないように願ってて。
オンチェーンという言葉と、次の兆し
大塚さんは、この状況をオンチェーンの時代の兆しではないかと捉えます。ビットコイン、ブロックチェーン、Web3と言葉を変えて盛り上がりが来たように、次はオンチェーンだという見立てです。
VCの人も興味を持ちだして、その人たちにインプットが入っていくと、徐々に若手起業家にお金とタレが流れて、次の世代がっていう、こういうのは兆しのひとつなんじゃないかな。
岩崎さんは、日本のシーンを一番変えるのは大塚さんがクリプトファンドを始めることかもしれないと投げかけます。ネットワーク効果の観点から、大塚さんが張らないと未来を信用できない人が多いという理由です。
大塚さんがやるじゃないと、みんな多分ブロックチェーンの未来信用できないと思うんで。
大塚さんは、Coinbaseの共同創業者が最先端にいたからこそイーサリアムなどに投資して成功したパラダイムを引き合いに、成功体験のある自分たちの世代がもう一度やる必要があると語りました。
大塚さんは、オンチェーンという言葉が暗号資産やWeb3ほど怪しさを帯びず、受け入れられている感覚があると指摘します。銀行などに実装されることで、世の中に浸透していくと見ています。
市場は巨大だが、何社も生き残る市場ではない
一方で岩崎さんは、この市場が何社も生き残るようなマーケットではないかもしれないと釘を刺します。ライセンス産業であり、スタートアップが自分たちだけでできることが少ないためです。
業界経験が数年ないと大企業との協業を作ることができない。そこは参入障壁になってる気もします。ただ、マーケット自体は確実にでかくて寡占になる。
岩崎さんは、独立系VCから調達するピュアスタートアップより、どこかとがっつり組んでライセンスを使い、手が届いていないところをやるスタイルのほうがポテンシャルがあると助言します。
大塚さんは、前回ゲストのアルパカを例に挙げます。海外で4〜5年やりきってライセンスを取り、最初は調達に苦労した気概を紹介しました。岩崎さんは、成否を分けるのは待てる胆力だとまとめます。
待つことはマーケットシェアを上げるチャンスであり、長期でやると決めている岩崎さんの目的と一致します。米国やナイジェリアをインプットすれば、市場がほぼ確実に来るという確信が、その胆力を支えています。
VisaとMastercardを超えた取引高と、RWAの爆発的成長
岩崎さんは、市場が確実に来ると考える根拠を数字で示します。ステーブルコインの取引高は2025年で33兆ドルに達し、Visaの16兆ドルとMastercardの10兆ドルの合計をすでに上回っています。
さらにハイパーリキッドの取引高上位を見ると、ビットコインやハイパーリキッドのトークン、ETHに続くのは、オイルやS&Pトークン、NVIDIAトークンといったリアルワールドアセットだといいます。
450兆の取引高のうち、上位はもういわゆる暗号資産って言われてるものじゃなくて、リアルワールドアセットと呼ばれるもの。上位30のうち15から20はそういったもの。
つまり、多くの人がブロックチェーンを使って株をトレードしているのが現状です。ハイパーリキッド上で証券のトークン化されたものが取引され始めたのは2025年10月と、ごく最近の出来事です。
海外の動きも明確です。A16ZやYコンビネーター、ニューヨークの起業家たちが、AI×クリプト、AI×ステーブルコインを次に張るべきテーマとして挙げていると岩崎さんは語ります。
日本が海外に先行した希少な事例
日本のスタートアップシーンがAI一色に見える中で、岩崎さんは他社の空気をあまり気にしないタイプだと語ります。ブロックチェーンに張る会社の数が増えていないことを、むしろシェアを伸ばせる機会と捉えています。
大塚さんは、暗号資産の取引高で当時世界一だったコインチェックを、何かの産業で海外に先行した近年では希少な事例だと振り返ります。クラウドもSNSもスマホも海外発でした。
クラウドもSNSもスマホも全部海外じゃないですか。クリプト(は)当時1位だったんで。
岩崎さんは、この回を通してブロックチェーン業界の面白さと希望を繰り返し語りました。西山さんもワクワクしたと締めくくり、二人のような当事者が増えることを願って収録を終えました。
まとめ
21歳で終活ねっとを起業しDMMへ売却した岩崎さんは、市場性・競合性・ケイパビリティの3軸で領域を選び、AIではなくブロックチェーンに全ベットしました。ステーブルコインは決済ではなく資産運用が主流であり、DeFiによる高金利とAIによる自律的な運用が、金融のあり方を変えつつあることが語られた回です。
- 岩崎さんは学生時代を最もリスクの低い起業のタイミングと捉え、市場性・競合性・ケイパビリティの3軸で終活ねっとを起業し、23歳でDMMへ売却した
- AIは市場が大きい分競合も多く、市場ポテンシャルに対してプレイヤーが少ないブロックチェーンを選び、黎明期を生き残るためToB戦略と王道経営を掲げた
- ドル建てステーブルコインのトランザクションの99%は資産運用目的で、決済は1%程度にすぎない
- DeFiのAAVEは11兆円を100人以下で運用し、支店やDDのコストがないため狭いスプレッドと高い預入金利を成立させている
- ステーブルコインの取引高はVisaとMastercardの合計を超え、AIによる自律運用とリアルワールドアセットの取引が急拡大している



