三現主義ラジオ、渋谷に本屋を開設
番組冒頭、Kazma Kobayashiさんから思いがけない発表がありました。二人で渋谷に本屋を構えることになったのです。
どういうこと?本屋になりました。説明してください。みんなはてなってなってるんで。
正体は、シェア型書店という仕組みです。本屋のスペースにある大きな棚を、ひと区画ごとに個人が家賃を払って借り、自分でセレクトした本を売れるというものです。
本屋のスペースはあって、そこに普通の本屋みたいなでっかい棚がバーってあって、そのひと棚のスペースを家賃払って一般人が借りて、そこで自分の本屋を売れて、いつでも売ってくれるっていう。
神保町や吉祥寺で広がり、渋谷ヒカリエ8階の「渋谷〇〇書店」にも登場したそうです。二人は審査を通過し、綺麗なフロアの中に棚を持つことになりました。
ヒカリエに店開くから俺ら。よろしく。もう渋谷を牛耳ったと思っていいでしょ。
円山町の事務所でラジオを録りながら、駅の反対側のヒカリエには本屋を構える。そんな二人の状況ができあがりました。
「現物」への渇望と、偏愛をテーマにした本棚
番組名の「三現主義」は、現場・現物・現実からきています。ライブや写真は形に残りにくいため、「現物」への渇望があったとKazmaさんは話します。
音楽もライブも物には残らないし、写真も最近はネットのデータ上だし、形に残るもんが少ないから、本に最近ハマって。その現物をもっと場所としても物としても取れるようにしたい。
棚には、このラジオで紹介してきた本を並べる予定です。エピソード内で触れた本が、そこに行けば全部揃って買える場所を作りたかったといいます。
渋谷〇〇書店のテーマは「偏愛」です。棚主それぞれが細かいジャンルを決めていて、ふらっと見ているだけでも面白いと二人は話します。
いろんなものの一巻だけ置いてる棚とか、好きなアイドルに関する本だけ置いてるとか。みんな細かいテーマジャンルを決めてやってるから、ふらっと行って見てるだけでも面白いんだよね。
二人の棚には、アートの定義を扱った本や絵本「メメンとモリ」、そしてbearwearのイベント用に作ったZINEなどを置いたそうです。
リクライニングシートと、アメリカの書店文化
理久さんが気に入ったのは、大きな本棚の中にある人ひとりぶんの隙間でした。
そこにリクライニングシートみたいなのがあって、充電もできて。一時間までにはなっちゃうけど、その本棚にある本を手に取って読める。これめっちゃいいじゃんと思って。
この「買う前に座って読める」文化について、Kazmaさんはアメリカの書店を引き合いに出します。
アメリカの本屋って昔からそうで、中に大体チェーンのスタバみたいなのがあって、みんな本を手に取って買う前に読んだり、床に座って寝転んで読んでるやつとかがめっちゃいて。
目的を持って探すのではなく、テーマ別の棚をふらっと覗く。それが渋谷〇〇書店の面白さだと話されています。
理久さんは、下北沢のアクセサリー版のような店「素今歩」を例に挙げました。高校の頃から通い、そうした個人の表現に触れてきたからこそ、関われることが嬉しいといいます。
あれも偏愛の一つの形だと思って。そういうのに触れてきたから、なんかそれに関われてるの嬉しいなって。
減る本屋、増えるシェア型書店とコミュニティ
本屋は全国で減り続けています。Kazmaさんによれば、アメリカでは主要なチェーン店がほぼ潰れたそうです。一方で、日本では個人が運営するシェア型書店が増えているといいます。
こんなにネットが発達した今、逆にそういうのが増えてんだ。
大型書店のジュンク堂などもシェア型の棚を導入し始めているそうです。目的買いではなく、誰かがおすすめする本に出会う場として広がっていると考えられます。
棚主同士のコミュニティも活発だと話されています。棚には部屋番号のような番号が振られ、二人は「256番」でした。
書店同士の棚を持ってる棚主同士のコミュニティもめっちゃあるらしい。
理久さんは、音楽以外のコミュニティを増やしたいと思っていたと語ります。ここで新しいつながりが生まれることを期待している様子でした。
偏愛は人を救う。ZINEと「貸す」ことの喜び
番組の途中、Kazmaさんは友人から「音楽やカメラと関係ない友達はいるか」と問われた話を持ち出します。考えてみると、金銭が発生しない場で喋れる友達が思い浮かばなかったといいます。
バーの店主とかスナックの女の子と思ったけど、それって全部金銭が発生して喋ってるだけなんだよね。俺が金を落とさない場で仲良く喋れる友達って、音楽とカメラマン以外いない気がする。
話は偏愛の意味へと戻ります。渋谷〇〇書店の管理人が語る「偏愛は発信した方がいいし、人を救うこともある」という言葉に、二人は共感します。
好きなジャンルの本を何十年って読んできた中の一番おすすめの本が置いてあるわけだから。それは自分のプレイリストを作るような、友達の部屋を覗くような感じの。
二人は自分たちのZINE制作にも意欲を見せます。ZINEはかつての同人誌が名前を変えたものだと語り、個人が手作りで発信することへの愛着を共有しました。
話題は「誰かにおすすめする喜び」へ広がります。Kazmaさんはミックステープやプレイリスト作りが好きで、理久さんもJAMで出会った女の子にシューゲイザーのプレイリストを頼まれた話を披露しました。
プレイリスト作って送ってくださいよって言われるの、もうマジで俺、嬉しすぎて数十時間かけて作っちゃう。
好きな子に漫画を一巻ずつ貸して、渡すためだけの時間を作った青春の思い出も語られ、「現物を手渡す」ことの温度が伝わってきます。
光のヒカリエと闇の円山町。渋谷の二層
この日、二人は昼から6時間ほど渋谷を歩き回りました。ハンターハンターの記念展示を探しながら、綺麗なヒカリエと、いつもの円山町を対比して味わったといいます。
この円山町に踏み込んだ瞬間の帰ってきた感。このゲロゲロのアスファルトに染みついたゲロと、ラブホに入っていく男女を見ながら安心するわ、ほんと。
渋谷〇〇書店の運営者は、この街を「令和の闇市にしたい」と語っているそうです。戦後の渋谷は個人が何でも売る混沌とした闇市の街だったという背景が紹介されました。
面白かったのが、米軍にラブレターを送りたいけど英語書けない人の代わりに代筆をする闇市の店舗。だからそういうサービス提供とか物提供とか、みんな個人が闇市やってて。
若者が離れ、再開発でビジネス街になりつつある渋谷。それでも個人の面白い店が残っていることを、Kazmaさんは理久さんに見せたかったといいます。
久しぶりと言われる店を巡る、誕生日の渋谷散歩
理久さんの27歳の誕生日を祝って、二人は「入ると久しぶりと言ってもらえる店」を巡りました。最初に訪れたのは、ICE GRILL$がやるハードコアとポップパンク特化のレコード屋「NERDS」です。
大学の最初、バンド組む前にNERDSに行ってCD買ったりして。そしたら顔を覚えてくれて、ICE GRILL$の来日公演でbearwearを出してくれたりとか。足を運ぶって大事。
続いて訪れたのは、DJのTOMMYさんがやる古着屋「BOY」です。古着とともに、TOMMYさんが気に入ったアーティストのCDやZINEが置かれています。
見たことないような、普通の服屋で売ってないような服と、音楽現場でいろんなフェスやイベントにDJで出てるトミーさんが見ていいと思ったアーティストのCDが置いてあるから、もう偏愛の極みよな。
店では渋谷の歴史も聞けたそうです。長年この街に店を構える人の「昔は全然違った」という話に、二人は強く興味を惹かれていました。
渋谷のバーとか行って、もうずっとやってる人に聞くと、昔はこの辺とか怖くて歩けなかった、売春と暴力の街でしたよ、丸山町はって。
夕食は、TOMMYさんおすすめの「しゃぶ禅」でした。映画「ロスト・イン・トランスレーション」のロケ地でもある店で、二人は吐く寸前まで肉を堪能したといいます。
いい肉って腹溜まるんだなって。
Kazmaさんは、いい店を探すには食べログよりも、その街に長くいる人に聞くのが一番だと語ります。友達が多いことの価値が、ここで再確認されました。
人生初のクラブ体験と、まだ知らない音楽の現場
この回の少し前、二人は深夜のclub asiaに行きました。理久さんにとって人生初のクラブ体験です。バンド関係者が多く出入りする水曜の定期イベント「EXODUS」でした。
Kazmaさんは、クラブ未経験の人にはいつもasiaをすすめると話します。普段はバンド用のイベントもやる場所なので、踏み込みやすく、クラブ文化も知れるからです。
上でUNDERWORLD聞いた後に下降りたらRAMONES流れてるみたいな。asiaはすごいジャンルミックスしてくれるから。
理久さんは大いに踊り、その帰りに明大前でゲロを吐いたと明かします。それでも「ハマっちゃう理由がわかる」と、初体験を楽しんだ様子でした。
ぶつかられたりして「うわ、やばい」とか思うんだけど「あ、すいません」みたいな。「いや、優しいんかい」みたいなのばっかで。
音楽の現場で働く理久さんでさえ、まだ知らない音楽の現場があった。その事実に、二人は素直に面白さを感じていました。
光と闇、綺麗さと汚さがこの規模でぶつかり合う渋谷は、二人にとって特別な街として語られました。
欲しかったよね、現場・現物主義で俺らやってんじゃん。まあ音楽もライブも形に残らないから、本にね、最近ハマって。
まとめ
シェア型書店への出店をきっかけに、二人は「偏愛を形にして手渡すこと」「現物や現場に足を運ぶこと」の面白さを語り合いました。綺麗なヒカリエと深夜の円山町という渋谷の二層を歩いた一日が、その実感を後押ししています。
- 渋谷ヒカリエ8階の「渋谷〇〇書店」に、番組の棚「三現主義書店」を出店。番号は256番
- テーマは「偏愛」。ラジオで紹介した本を、Amazonより安く買える場所を作りたかった
- 本屋は減る一方で、個人が運営するシェア型書店は増加中。ジュンク堂など大型書店も導入し始めている
- いい店を探すには食べログより、その街に長くいる人に聞くのが一番だと再確認
- 人生初のクラブ体験など、音楽の現場で働く理久さんにも「まだ知らない現場」があった
