「決める」を今日のテーマに選んだ理由
初回テーマとして河原さんが選んだのは「決める」というキーワードです。人は生きているだけで無数の意思決定をしていると河原さんは話します。
朝ごはんを何にするか、どうやって会社に行くか、この番組を聴くかどうか。小さな選択も含めれば、私たちは日々ほぼ無限の「決める」を繰り返しています。
人間って生きているだけで、いろいろな意思決定をしている生き物だと思いますし、皆さん自身もこの瞬間、何かを決めていると思うんです。
独立して一番困ったのは「自分の値段を決める」ことだった
河原さんは2020年3月に会社員を辞めて独立し、翌2021年1月に法人を登記しました。そのとき最も困ったのが「決める」ことだったと振り返ります。
会社員時代は見積もりを立てる際も、上司に「この金額どう思います?」と相談して最終判断を仰いでいました。ところが事業主になると、自分で自分の値段を決めなければなりません。
自分が事業主になると、まあ当たり前っちゃ当たり前なんですけど、自分で自分の値段を決めなきゃなんない。これがね、めちゃくちゃ僕悩んだんですよ。
大口のコンサル案件が取れそうになったとき、河原さんは金額設定に激しく悩みました。「川原あずさ個人」としての妥当な金額がわからず、最終的にはビジネスに詳しくない友達に相談したそうです。
もうなんかそういうビジネスとかよくわかんない友達に聞きましたね、もう。「ごめん、君にしか聞けないんだ」って言って聞いて。でも今考えると相手も答えようがなかったと思うんですよね。
それほど「決める」ことにためらいがあったと河原さんは語ります。社長になれば決める数は増え、最後に受け取るのは自分だけ。相談できない領域も必ず存在します。
生成AIが作業を肩代わりする時代、人間には「決める」が残る
河原さんは、この「決める力」がビジネススキルとして今まさに問われていると指摘します。理由は生成AI文章や画像などを自動的に生み出すAI技術。ChatGPTなどが代表例で、雛形作成やアイデア出しを人間に代わって行えるの登場です。
生成AIは作業を肩代わりし、複数のバリエーションを簡単に作ってくれます。しかしその成果物を眺めて「これでいいんだっけ?」と最終判断するのは、依然として人間の仕事です。
生成AIの時代になって、そういう成果物はもうAIが作っちゃいますよみたいな感じになって、ポンって提示してくれるようになりました。ってなった時に、やっぱ眺めてみて思いますよね。これでいいんだっけ?ってなりますよね。
作業をこなしていた時代は、決めるストレスは相対的に少なかったと河原さんは言います。AIが成果物を提示してくれるようになった今、何をどう仕上げて世に出すかという「決める仕事」が人間に残されました。
作業に没頭して手を動かすことが価値。決める負荷は少なかった
AIが成果物を提示するため、最終的に何を決めるかが価値の源泉になる
会社員には「上司」がいるが、事業主には誰もいない
河原さんは、会社員であれば迷ったときに上司へ相談できると話します。中間管理職も部長も執行役員も、上に聞けば誰かが決めてくれる構造があります。
一方で事業主は自分がトップです。上がいないため、最終的に決めるのは自分自身。この違いが「決める」の重さを大きく変えます。
事業主になると、やっぱり自分がトップなので、上がいない、誰にも聞けない、そういう状態になってしまいます。
独立していない人にとっても他人事ではないと河原さんは補足します。家庭運営でもパートナーや子供に相談することはあっても、最終的に決めるのは自分たちだからです。
個々の決断の前に「大枠の方針」を持つ
一つひとつの選択に迷わないためには、大きな方針を先に持つことが重要だと河原さんは語ります。単価を上げたいのか、余白の時間を大事にしたいのか、家族との時間を優先したいのか。
この大枠が定まらないと、目の前の意思決定で何を基準に選ぶかがわからなくなってしまいます。
人はつい「よりリーズナブルな方」──英語のreasonable、つまり理由がある方、決めやすい方に流されがちです。しかしそれが本当に自分のゴールに沿っているかを問う必要があると河原さんは指摘します。
一個一個決めているようで、実はあなたがしている決断というのは、大きな大きなゴールに向かう、自分の流れみたいなのを見た時に、その意思決定というものがより適切かどうかを測るっていうことなんじゃないかな
大枠の方針を決める
単価・時間・家族など、何を大事にしたいかを先に定める
個々の選択と照らす
目の前の決断が方針に沿っているかを測る
自分で決める
誰かに委ねず、最終判断は自分が引き受ける
「決める」を鍛える日常のEQトレーニング
決めることは難しいからこそ、日頃から慣れておくことが大事だと河原さんは話します。ここで紹介されるのが、EQEmotional Intelligence Quotient、感情知性。自分や他者の感情を理解し扱う力を指す指標で、リーダーシップや対人関係の分野で重視されるの師匠である高山直さんから聞いたトレーニングです。
高山さんによれば、飲食店に入ってメニューをすぐに決められるかどうかがEQトレーニングになるといいます。河原さん自身は悩むタイプで「本当かよ」と思ったそうですが、その意味を次のように解釈しています。
そういう準備を自分の中に常にしておいて、何か決めなきゃいけない時に、まずは自分の判断で決める訓練をする。そしてその結果どうなったか。その後の流れは自分で受け入れながら、ちゃんと状況を肯定しながら動いていく。
感情のノイズで状況判断するのではなく、自分の状態をセンサーで捉え、感情をニュートラルに戻したうえで意思決定する。それがEQトレーニングとしての「決める」の効能だと河原さんはまとめます。
まとめ
生成AIが作業を肩代わりする時代に、人間に残る最重要な仕事は「決める」ことです。河原あずささんは自身の独立体験を通じて、決断の難しさと、それを鍛える日常のEQトレーニングを語りました。
- 生成AIが成果物を提示する時代、人間の価値は「何を決めるか」に移った
- 会社員には上司がいるが、事業主やリーダーには最終判断を委ねる相手がいない
- 一つひとつの決断の前に、単価・時間・家族などの大枠の方針を先に持つ
- 決めやすい方に流されず、大きなゴールに沿っているかを測ることが重要
- 飲食店で即メニューを決めるなど、日常の小さな決断がEQトレーニングになる