「AIを使うとバカになる」説に根拠はある?
この回の本題は「AI疲れ」です。しぶちょーさんはまず、世間でよく語られる「AIを使いすぎると思考力が下がり、人間がバカになるのではないか」という説を取り上げました。
あわせて、AIで効率が上がったはずなのに、かえって多く働くことになり疲れる、という声もあると紹介されます。かねりんさんも「効率化なんて全然してない」と実感を込めて応じました。
しぶちょーさんは自分の専門分野ではないと断ったうえで、いろいろ調べてきた結論を示します。答えは「玉虫色」で、AIを使うとバカになるという研究らしきものはあるものの、確かな根拠はないというものでした。
SNSで、こういうテストをしてこういう結果が出ました、だからAIを使うと脳がこうなるんですみたいな、いろんな驚きはあるんだけど。
そう、すごいちっちゃい母数なのよ。実験自体が全部。
しぶちょーさんによれば、そうした実験は数十人から数百人規模で、ほかの要因も取り除けていないといいます。かねりんさんは「ゲームやりすぎとかね」と例を挙げ、比較の難しさをかみ砕きました。
そのうえで、今のところは安心してAIを触ってよい、というのがしぶちょーさんの見立てです。ただし長期的にどうなるかはわからず、「悪くならない」と言い切れるわけでもない、という留保も添えられました。
「コーラで骨が溶ける」と同じ直感の罠
しぶちょーさんは、「AIを使うと頭が悪くなる」という説を、子どものころによく聞いた「コーラを飲むと骨が溶ける」という話と同じだと例えます。
コーラは骨溶けないんですか?
溶けないです。
二人とも最近まで溶けると思っていたと笑い合います。シュワシュワしていて体に悪そうな色をしているから、なんとなく溶けそうに思える、というのがこの説の強さです。
冷静に考えれば、コーラが骨と接するタイミングはありません。しぶちょーさんは、それでも直感的に「っぽい」ことが、人に信じさせる力になると指摘します。
AI使ってバカになるも直感的にっぽいんだよすごく。
みんなそちらを信じたくなるけれど、そこにエビデンスがあるわけではない。ここから話は、実際にどんなことが言われているのかを1つずつ確かめる流れに移ります。
天井まで使い切らないと落ち着かない「AI疲れ」の実感
かねりんさんが「脳の使い方は変わりそうだ」と言うと、しぶちょーさんも同意し、それこそがAI疲れではないかと語ります。しぶちょーさん自身も、AIを使うことによる独特の疲れを感じているそうです。
かねりんさんは、しぶちょーさんが四六時中「天井を打たないとダメな人間」になったとからかいます。しぶちょーさんはAIの課金を200ドルのプランに上げたことで、上限まで使い切らないといけない気持ちになっていると認めました。
かねりんさんによれば、Windows 95の開発で知られる中島聡さんも、有料メールマガジンで同じような状態を書いていたそうです。天井を打たないといけない気持ちになる、という内容で、かねりんさんは「こういう人でもなるんだ」と驚いたといいます。
投げとけばなんか仕事してくれるよっていうのってさ、動かしてないともったいないっていう気持ちになるよ。
このあと話は「脳が焼ける」という言葉から、脳みその天ぷら、カニ味噌、エビは虫に見えるかといった脱線へ転がり、虫が苦手なかねりんさんが悲鳴を上げる場面もありました。
ブレインフライ、AIの監督業務で脳が焼ける
本題に戻り、しぶちょーさんが紹介したのがブレインフライ ── 英語で「脳が揚がる・焼ける」という意味合いの表現。AIを多用する働き方で、脳がオーバーヒートしたような疲労感を覚える状態を指す言葉として紹介されましたです。AIを使うと作業そのものは減りますが、代わりにAIを監督する業務が増える、という考え方です。
かねりんさんはこれを「中間管理職」と言い換えました。しぶちょーさんによると、具体的な作業ではなく「この作業が終わったから次はこれを出す」といった管理に、普段とは違うワーキングメモリを使うため、疲れを感じる人が一定数いるといいます。
作業が減る
AIが具体的な作業を引き受ける
監督業務が増える
どのAIに何を指示し、何が終わったかを管理する仕事が生まれる
脳の使い方が変わる
普段と違うワーキングメモリを使い、タスクを頻繁に切り替える
オーバーヒート
並行作業が苦手な人ほど、もう何も考えたくない疲労を感じやすい
管理や並行作業が得意な人はあまり疲れを感じない一方、苦手な人は強い脳の負荷を感じる傾向があるそうです。しぶちょーさん自身は「ブレインフライめっちゃ感じてる」と話しました。
しぶちょーさんは、1つの仕事に集中するより、タスクを切り替える場面で疲れると言います。その感覚を、一定ペースの持久走とシャトルランの違いに例えました。
ずっと走ってる、一定のペースでこう走ってハアハアするのはいいんだけど、止まってみたいな。シャトルランみたいなさ。
ただし、ブレインフライは確立した現象ではありません。しぶちょーさんによると、ボストン コンサルティング グループがアメリカの大企業のフルタイム勤務者を対象にアンケートを取った結果、そう感じる人が多いという傾向が見つかった、という段階の話です。
あるアンケート回答者は、脳の中で無数のブラウザのタブが開きっぱなしになっている感覚だと表現したそうです。二人はこの例えに強く共感しました。
最近のそのVSコードでClaude Codeやってるのでも結構あって、同じようなことをやらせてるのが、あ、あっちでやってたわみたいな。
かねりんさんは40タブほど開いたままにしてしまうと明かします。しぶちょーさんは対策として、Claude Codeのタスクが終わるとスマートフォン経由でApple Watchに通知が飛ぶよう設定しているそうです。
さらにしぶちょーさんは、指示を出すまで電気でしびれ続ける仕組みがあれば、意識ではなく反射で次のタスクに移れるのではと冗談めかして語りました。かねりんさんはこれを「決断疲れの上位版」とまとめています。
一方でかねりんさんは、自分の限界を超えている感覚が気持ちいいとも話します。しぶちょーさんは共感しつつも、それに慣れると「もっともっと」となる怖さを「麻薬と一緒」と表現しました。
トークン消費量で社員を評価すると何が起きる?
しぶちょーさんは、トークンを消費すること自体が目的になると本質を見失う、という事例を紹介します。MetaかAmazonのどちらかだったと記憶は曖昧ながら、社員ごとにエージェントがどれだけトークンを消費したかを評価指標にした会社があったそうです。
その結果、無駄にトークンを消費する仕組みが作られてしまったといいます。かねりんさんは「会社に来てるだけでOK」「予算を使い切ったらOK」と同じだと指摘しました。
その測定指標っていうのが人間の行動を変えますよねみたいな理論があって。まさにそれだなっていうふうに思って。
代わりの指標として、しぶちょーさんがどこかのポッドキャストで聞いたのが、プロンプトの指示の量に対してAIが自律的に動いた時間で評価する方法です。少ない指示で長く自律的に動かせる人ほど、優れた指示を出していると考えます。
どれだけAIに仕事をさせたかを測るが、無駄にトークンを使う行動を招き、コストもかさむ
少ない指示で長く自律的に動かせたかを見るが、細かく指示したほうがよいタスクもあり、ものによる
しぶちょーさんは、エージェントの利用量で評価する流れは一時期あったものの、お金がかかりすぎるためやめようという話にもなっていると補足します。
かねりんさんが「成果物で評価すればいいのでは」と聞くと、しぶちょーさんは、エンジニアの仕事はチームの成果物になるため個人の成果物で評価するのは難しいと答えます。これまでの評価も、実際には「上司の気分」だったと言い切りました。
そこから、ある人がシステムプロンプトで「AI上司」を作り、飲み会の場所やプレゼントを相談して決めた話に移ります。本人に「AI上司が言ってたので」と伝えると、上司もとても喜んだそうです。
嫌いだったら、あ、ちょっと作り込みまずかったですねみたいな。もうちょっといろいろ聞かしてくださいよみたいな話もいけるし。
かねりんさんは「ダメでもおいしい」「AIをゴマすりに使う」と笑い、結局は冗談の通じる会社がいい、という話で落ち着きました。
楽した分が返ってくる「認知的負債」の論文
2つ目の負荷として紹介されたのが、AIを使うと思考能力が落ちるという話を扱った論文「Your Brain on ChatGPT」です。
しぶちょーさんによると、18〜39歳の54人を3つのグループに分けて文章を書かせ、そのときの脳波を測定したといいます。
| グループ | 使えた道具 | 紹介された結果 |
|---|---|---|
| 1 | ChatGPT | 脳のネットワークの結びつきが弱く、自分の書いた文章を覚えていない |
| 2 | 検索エンジン | 比較対象として執筆 |
| 3 | 道具なし | 比較対象として執筆 |
ChatGPTを使ったグループは、自分が書いたはずの文章を覚えておらず、引用することもできなかったそうです。しぶちょーさんは、アウトプットしているようで自分の頭で考えていない状態だと説明しました。
論文ではこれを認知的負債 ── 楽をした分が、あとで借金の利息のように自分に返ってくるという考え方。AIに任せて得たアウトプットが、自分の学びや記憶として残らない状態を指す言葉として紹介されましたと名付けたといいます。借金のように、楽をした分があとで効いてくるというニュアンスです。
この論文はSNSで大きくバズり、「ChatGPTを使うと頭が悪くなる」と受け止められました。しかし対象は54人だけで、研究者自身が「あまり騒がないで」と発信したそうです。
「論文」という言葉の威力と、疑って読む姿勢
かねりんさんは、論文にもグレードがあるのに、一般人は「論文」と聞くだけで確定した事実だと思ってしまう、と問いかけます。しぶちょーさんは、誰でも出せるものもあれば、複数の教授が読んで認める査読 ── 専門家が論文の内容を審査し、掲載や発表に値するかを判断する仕組み。査読を通った論文は、一定の検証を経たものとして扱われます付きのものもあると説明しました。
しぶちょーさんの会社の先輩も博士号を取るために査読付き論文を何本も出す必要があり、とても大変だったそうです。影響力の指標としてインパクトファクター ── 学術誌に載った論文がどれだけ引用されているかをもとにした指標。医療ドラマなどでも、研究者の評価を左右する数字として描かれることがありますがあることにも触れられました。
しぶちょーさんが心配するのは、査読のない研究が出回ると、政策担当者が「ChatGPT禁止」や「教育に使ってはいけない」と極端な判断をしかねないことです。研究者は見出しを盛らないでと発信しても、SNSでは「論文です」とだけ書かれがちだといいます。
論文っていう言葉の威力すごいよな。
しぶちょーさんは大学時代、教授が特定の研究室について「あそこの論文は信用しないで」と言っていた経験も明かします。一方で、最近は論文をAIに翻訳させたところ「査読がついていないのでこのレベルの論文です」と教えてくれたそうです。
話はサンプリングにも及びます。大量にデータを集めても、母集団 ── 調査の対象として想定する集団全体のこと。一部を抜き出して調べるとき、その集団を偏りなく代表できているかが結果の信頼性を左右しますに偏りがあれば意味がないとしぶちょーさんは説明し、この番組のリスナーを対象にしても偏るだろうと例を挙げました。
研究者は、どこに突っ込みどころがあるかという視点でまず論文を読むそうです。しぶちょーさんは、この姿勢こそ落ち着くために必要だと語ります。
驚き屋さんに対してさ、わーすごいって驚かされるんじゃなくて、本当か?おい。あ?っていうさ。
怪しいSNS検索ツールはRaspberry Piで人柱に
しぶちょーさんは、かねりんさんがXでリポストしていた海外製のエージェントスキルを話題にします。TikTokやXなど、あらゆるSNSをまとめて検索できるというツールです。
しぶちょーさんは最初から疑ってかかったといいます。GitHubのREADMEが中国語で、使った人からは「設定がいらなかった」と聞いたためです。
Xアカウント持ってないとさ、ね、検索できないはずなのに、なんでXの中検索できるんだろうと思って。
しぶちょーさんは、何を叩きに行っているかわからないツールは、自分のパソコンではなくRaspberry Pi ── 手のひらサイズの安価な小型コンピューター。本体と切り離した実験環境として使いやすく、万一の被害を限定するための隔離環境にも向いていますなどの隔離環境で試すつもりだと話します。万一情報を抜かれても、被害はそこで止まるからです。
しぶちょーさんはOpenClaw ── 番組内で話題になったAIエージェントツール。しぶちょーさんは自分のパソコンには入れず、Raspberry Pi上で動かしていると話していますも自分のパソコンには入れず、Raspberry Piで動かしているそうです。かねりんさんは、リポストはしぶちょーさんが危なければ止めてくれるだろう、という意味も含めていたと明かしました。
かねりんさんは、取ってきた情報をNotionに入れるとNotionから漏れないかと心配します。しぶちょーさんは、コネクターで接続するページを限定していれば大丈夫だと答えましたが、親ページにまとめてつないでいるかねりんさんの構成には「それは怖いね」と応じました。
かねりんさんは、ツールを触ろうとしたときに手元に参照できるテキストがないことが障壁だと話し、自分用も兼ねてOpenClawの構築体験をnoteにまとめようかと思い立ちます。しぶちょーさんも「助かると思う」と後押ししました。
疲れたら走る、HPの上限を上げたがる癖
この収録日、しぶちょーさんは日曜の夜11時に夜行バスに乗り、朝6時に東京駅に着いてそのまま出社し、夜9時までイベント、夜11時から収録という強行日程でした。収録時点で深夜2時を過ぎていたそうです。
しぶちょーさんは疲れていても喋り出せば普段の調子になるものの、反応がワンテンポ遅れたりフィラーが増えたりすると自己分析します。一方で、疲労感や人間らしさが聞き味になるという話もあると付け加えました。
久しぶりに夜の予定がない日も、しぶちょーさんは「もったいないお化け」が出て、寝るよりジムに行きたくなるといいます。
なんかだから回復させるんじゃなくて、HPの上限を上げなければならないみたいな。
妻からも「寝なよ」と言われるそうですが、運動するとドーパミンが出て一瞬疲れが吹き飛ぶため、上限が上がったと勘違いしてしまうそうです。しぶちょーさんはこれを、AIのプランに再課金すると使用量がリセットされる感覚に重ねました。
座ると寝てしまうときにスタンディングデスクで立って作業を続けていたことも、本来の使い方ではないと反省したといいます。しぶちょーさんは、AIがやれることを増やしている分、これがAI時代の一番良くないことかもしれないと話しました。
「速くなった」は錯覚だった?生産性2割ダウンの調査
かねりんさんから「AIで生産性は上がったのか」と聞かれ、しぶちょーさんは3つ目の負荷を紹介します。体感では上がったと思っていても、実は上がっていないという調査結果です。
しぶちょーさんによると、2025年ごろ、経営者たちはAIに投資しているのに、社員が「生産性が上がった」と言うほど費用対効果が表れていないと感じていたそうです。そこで実際に計測した結果が示されました。
AIを使うと2割ぐらい早くなった実感がある、と答えていた
実際に計測すると、作業時間は2割ぐらい伸びていた
結局その確認作業にすごく時間がかかる。自分で書いてたら確認しなくていいところまでAIのアウトプットを確認しなければいけないっていうことで、その結局工数が伸びると。
コーディングの時間は減っても確認の時間が大きく増え、トータルでは自分で一から書いたほうが短かった、というのが調査の中身です。かねりんさんは「虚しいね」と応じました。
AIの文章は「寒い」、ブログを全部書き直す理由
しぶちょーさんは、エンジニアに限らず、ブログをAIに書かせても結局全部書き直すため、一から書いたほうが早かったと思うことがあると明かします。理由は、AIの文章がつまらないからです。
まさかのここで伏線回収ですみたいな。ノリツッコミみたいなやつ書いてきて。寒いのよ。
しぶちょーさんによれば、AIは変に保険をかけたり説明的になったりし、ユーモアを出せと指示すると的外れなギャグを入れてくるそうです。AIの文章に自分なりのユーモアを後から入れようとしても文脈が合わず、結局書き直すことになるといいます。
かねりんさんが「情報を伝えるだけなら説明書のような文章で成り立つのでは」と問うと、しぶちょーさんは、自分の発信の目的は一貫して行動変容だと答えました。
俺の文章を読んだことで、その人がなんかやる気になったりとか、ちょっとこれやってみようかなみたいに思ってくれるってことが基本的にはゴールとして設定しているから。
そのためにしぶちょーさんが必要だと考えるのは、読者が自分事として捉えられることと、書き手のパッションです。冒頭でペルソナに合わせた例え話や自分の失敗談を入れ、「これは俺の話だ」と思わせるところにユーモアを使っているそうです。
しぶちょーさんは、AIのユーモアを「クラスに1人はいる、元気でいいやつだけど、いつもワンテンポずれている人」に例えました。英語なら違うのか、日本語に強いSakana AI ── 日本発のAI企業。日本語や国産モデルの開発に取り組んでおり、番組内では日本語のユーモアを捉えられるかの候補として挙がりましたならどうか、今後試してみたいと話しています。
AIに頼るほど自信がなくなる悪循環
かねりんさんが「効率は落ちているのに自己高揚感だけ上がる」とまとめると、しぶちょーさんは逆に自信が下がる人もいると4つ目の負荷を紹介します。アウトプットのベースをAIに任せることで、自分の個性を認識できなくなる人がいるそうです。
AIに頼る
自分なりのものを発揮する機会をAIに代替される
実感が減る
自分で問題を解決したという経験が減る
自信が下がる
[[自己効力感::自分ならできる、自分の力を発揮できているという感覚のこと。心理学の概念で、行動を起こす意欲に関わるとされます]]が下がる
もっと頼る
自分で判断できなくなり、さらにAIに頼る
しぶちょーさんによると、こうした悪循環は2本の論文で構造的に確認されているそうです。ただし2025年の論文で、真偽には注意が必要だとも念を押しました。
かねりんさんは、仕事がAIに代替されて自信を失い、山奥で自給自足を考える人や、精神的に病んでしまう人も増えるのではと懸念します。しぶちょーさんは、それこそが今日の落としどころとして考えていた結論に近いと応じました。
4つの負荷を振り返ると、残るのは「線引き」
しぶちょーさんは、脱線しながらも今日は4つの負荷を紹介したかったのだと振り返ります。途中で認知的負債の説明をど忘れする場面もありましたが、改めて整理されました。
| 負荷 | 中身 | 根拠の位置づけ |
|---|---|---|
| ブレインフライ | 監督業務とマルチタスクで脳がオーバーヒートする | コンサル企業のアンケートで見つかった傾向 |
| 認知的負債 | 楽をした分、書いた内容を覚えておらず学びが残らない | 54人を対象にした査読前の論文 |
| 自信の喪失 | 頼るほど自己効力感が下がり、さらに頼る | 2025年の論文2本 |
| 生産性の錯覚 | 早くなった実感に反し、確認作業で作業時間が伸びる | エンジニアを対象にした計測 |
かねりんさんが「今後モデルの性能が上がれば減っていくのでは」と聞くと、しぶちょーさんは、品質が上がってもそのまま出せるタスクと出せないタスクがあり、結局そこがAI疲れの核心だと答えます。
AIに渡す仕事と自分の手元に残す仕事って多分境界線を引かなきゃいけないわけで。
何でもAIに丸投げすると、今日紹介したことがすべて起こる。だからこそ、どこに線を引くかを自分の中で明確にし、AIの進化に合わせてその線をブラッシュアップしていく能力が必要だ、というのがしぶちょーさんの結論です。
背骨だけは握っておく、しぶちょーさんのブログの書き方
かねりんさんは、何を渡してよく、何を渡してはいけないのか、その基準を尋ねます。しぶちょーさんは自身のブログを例に、渡しているのは細かい言葉尻などのディテールで、骨子は自分で書いていると答えました。
章立て、各章の内容の箇条書き、つながり、どこでおちゃらけるか
骨子とファクト情報をもとにした文章化。言葉尻や順番は後から直す
AIにこういう文章書いてバーンって出して、それを修正するんじゃなくて、背骨は握っておくっていうのはやってるかな。そこに線を引いてる。
しぶちょーさんは、軸を持っていないと「全部AI丸投げ人間」になると話します。作りたいものや実現したいことがあるかないかが、線引きの分かれ目だという見方です。
AIがAIを回す全自動の仕事に意味はあるか
軸がないとどうなるかの例として挙がったのが、AIショート動画です。流行をAIに調べさせ、似た動画をAIで生成して投稿し、エンゲージメントを稼ぐルーティンは、頑張れば全自動で作れます。
二人の話の中では、それはお金を稼ぐ仕組みにはなっても、何を生み出しているのかわからないという問題が指摘されます。誰がやっても同じ形になり、オリジナリティもなく、社会が良くなるとも思えないという見方です。
AIがAIを回す。
人から時間とお金を奪うシステムを作るって感じだよね。
Xで自動返信を繰り返して他のアカウントにこびりつき、炎上に乗ってエンゲージメントを稼ぐ運用も、ロジカルには成り立つがその価値は何なのか、という問いに話は進んでいきます。
何を作ったかより、誰を幸せにしたかを語りたい
ここで語られたのは、機械設計からAIに転向したエンジニアとしての、ものづくりの判断基準です。自分が生み出したもので誰がどれだけ幸せになるか、それが指標だといいます。
幸せには「幅」と「深さ」があり、多くの人を少しずつ幸せにするのか、少ない人を深く幸せにするのか、その両方を大きくすることが大事だと語られます。尊敬する技術者として挙がったのは本田宗一郎で、バイクから始まった開発で多くの人の生活を豊かにした点が理由です。
そして出てきたのが、死ぬ前に「こんなものを作ってきた」と語るより、「誰をどう幸せにしてきたか」を語りたい、という言葉でした。すごい技術や成し遂げたことではなく、チープなものでも、喜んでくれた人のことをいかに多く語れるかが大事だといいます。
この考えは、29歳から30歳にかけてキャリアを見つめ直し、ノーベル賞のような評価を求めているのかと自問したときに、違うと気づいて生まれたそうです。ブログにも何度も書いてきた、ずっと言っている言葉だと語られました。
ポッドキャストもものづくりの1つで、目指す行動変容はまさにこの考えにつながります。知識を得るだけではなかなか幸せにならず、行動を変えないとリアルは変わらないという話で、二人の意見は重なりました。
AIブームの「陸の孤島」としてのポッドキャスト
何のために発信するのかという根っこがないと、インプレッションが取れればOKになってしまう。二人は、Xが仕組み上インプレッション目的になりやすい一方、ポッドキャストは生の声で労力がかかり、自動化しにくいから健全だと話します。
NotebookLMで作った自動ポッドキャストも一時期見られましたが、しぶちょーさんは「誰も聞きゃせん」と言い切ります。AI VTuberも、ファンがお金を投げているのはAIではなく開発者や文化のほうではないか、という見方でした。
人間の必要性がめっちゃ出るのがこのポッドキャストだなあって。
しぶちょーさんは、この番組をAIブームの影響を受けない「陸の孤島」と表現します。AIを話題として扱い、文字起こしなどで補助的に使いつつ、人間性で喋っていることが、ポッドキャストとして正しいずらし方かもしれないと二人は語り合いました。
リアルタイム会話AIはまだ弱い?
しぶちょーさんは、GPT Realtime 2でChatGPTと会話を試した経験から、リアルタイム会話ではまだ回答がトロいと話します。
結局人間は予想してるじゃん、相手の出方というか。AIは喋りきるまでさ、多分そのターンテーキングをどこで切るかみたいなやつってなかなか判断難しいよね。
人間は発言の終わりを言葉だけでなく、表情や息遣いでも判断しています。音声を文字起こししながら区切りを認識するだけのAIには難しく、カメラ認識などの仕組みが必要だろうとしぶちょーさんは見ています。日本語はさらに難しく、Sakana AIのような日本語モデルの活躍に期待したいとも話しました。
Sakana AIのモデルについては、アメリカ政府の輸出規制などの影響を受けない国産モデルを持つこと自体に意味がある、という話に広がりました。
「効率が上がったふり」ではない番組づくり
締めくくりに、しぶちょーさんはこの番組の収録方法も徐々に改善され、効率が上がったふりではなく実際に上がっていると話します。新しくやれることが増えており、ゼロから50になったような変化だといいます。
かねりんさんは、しぶちょーさんがかつて言った「月3万円のプラン分をペイできないなら、発想がボトルネックだ」という言葉を持ち出し、自分にも言い聞かせていると明かしました。
番組はSpotifyで119件の評価が付いたこと、Appleでもビデオポッドキャストとして見られるよう手続き中であることにも触れ、ショート動画機能を作っている最中だという話で本編を締めました。
アフタートーク、Grokを推す理由
アフタートークでは、かねりんさんがGrok Buildの上限に達してAPIに切り替えた話をします。Grokは他のAIと並べて検証させると、毎回鋭い指摘を返してくるそうです。
Grokが非常に鋭い査読を返してきました。結論を変えますみたいな。Grok強いよ。
かねりんさんはClaude、Codex、Grokに同じタスクを投げて比べており、APIは1回5円や10円程度で安く、利用額に上限もかけられるので安全だと話しました。しぶちょーさんも入れてみると応じています。
まとめ
「AIを使うとバカになる」説には確かな根拠がないものの、ブレインフライ、認知的負債、自信の喪失、生産性の錯覚という4つの負荷は研究や調査で示されつつあります。その対処として、しぶちょーさんはAIに渡す仕事と手元に残す仕事の線引きを挙げ、背骨だけは自分で握る大切さを語りました。
- 「AIを使うとバカになる」は、コーラで骨が溶けるのと同じく直感的にそれっぽいだけで、今のところ確かな根拠はない
- AIは作業を減らす代わりに監督業務を増やし、タスクの切り替えで脳がオーバーヒートするブレインフライを招くことがある
- AIで2割早くなったと感じていた人が、確認作業のせいで実際には2割遅くなっていたという計測がある
- 「論文」という言葉だけで信じず、査読の有無や母集団の偏りを疑って読むことが、落ち着くための視点になる
- 骨子や章立てなどの背骨は自分で握り、ディテールだけをAIに渡すという線引きを、AIの進化に合わせて更新していく




