Manusはなぜ、Metaから独立することになったのか
この回の最初の話題は、中国発のAIエージェント「Manus」が、中国政府の反発を受けてMetaから分離し、独立企業として運営を再開するというニュースです。番組でも過去にManusを推していたため、二人ともこのニュースに反応していました。
かねりんさんのもとには、Manusの年間契約について高額の返金が届いたそうです。一方、同じく年額で課金していたしぶちょーさんには返金がなく、「10月までよろしくお願いします」という案内だけが来ていました。
全然なんか普通に10月までよろしくお願いしますみたいな感じだったよ。あれ?と思って。
しぶちょーさんは、Metaによる買収のあとに年額課金した人だけが返金の対象になっているのかもしれない、と推測しています。ただし本人も「わかんないけど」と断っており、返金の条件ははっきりしていません。
しぶちょーさんによると、Manusは8月11日にMetaからの分離を決定し、Metaから切り離された独立企業として運営を再開すると発表しました。その過程で一部のユーザーデータが削除されるため、知らずにいると困る人もいるだろうと注意を促しています。
分離の理由について、しぶちょーさんは「中国がダメだと言って引き離した」と説明します。中国政府は今年4月の時点で買収を認めないと発表し、取引の撤回を命じていました。
Manusが試みた「シンガポールウォッシング」とは?
しぶちょーさんは、この件は「Manusがかわいそう」で済む話ではなく、実は大きなニュースだと強調します。背景には、Manusの本社がシンガポールにあるという事情がありました。
Manusはもともと中国発の企業です。グローバルに展開しようとしたとき、中国企業であることが足を引っ張りました。中国の中に入ったデータは政府が求めれば抜かれうる構造があるため、企業の中で使うにはリスクが高いと見られていたからです。
そこでManusは、本社をシンガポールに移し、中核チームを含む社員をシンガポールへ移住させ、中国のオフィスを閉じました。中国国内向けサービスを止め、中国のSNSアカウントも消して、シンガポールの企業として振る舞うようになったといいます。
一部の界隈では皮肉を込めてシンガポールウォッシングっていう風に呼んでるのね。
しぶちょーさんは「シンガポールウォッシング」をマネーロンダリング ── 犯罪などで得た資金を、複数の口座や取引を経由させて出どころをわからなくすること。資金洗浄とも呼ばれますになぞらえ、「事故物件も人が一回住めばもう事故物件じゃない」という例えでも説明しています。
中国で創業
技術・創業者・開発拠点が中国にある
シンガポールへ移転
本社・社員を移し、中国オフィスと中国向けサービスを閉じる
シンガポール企業を名乗る
中国企業という経歴を洗い流したように見せる
海外企業が買収
Metaが「シンガポール企業」として買収
かねりんさんが「実際もう中国の企業じゃなくなったんじゃないの?」と尋ねると、しぶちょーさんは、中国企業でなくなったと言えるかどうかを判断した事例がまだなく、Manusがその1件目だったと答えます。
中国政府は、これを認めればシンガポールウォッシングし放題になり、国内のAIベンチャーがどんどん国外に出ていくという危機感を持っていました。だから全力で阻止した、というのがしぶちょーさんの見立てです。
中国側の根拠は、Manusの技術が中国で育ち、創業者も技術責任者も中国人で、元の開発拠点が武漢にあり、中国の投資家との関係もあったことです。しぶちょーさんは「シンガポールにいても中国の企業だ」として認めなかったと説明しています。
Metaはなぜ戦わずに手を引いたのか
かねりんさんは、Manus側は「こっちはシンガポールなんで」と放っておけばよかったのでは、と疑問をぶつけます。しぶちょーさんは、Metaのほうが中国と揉めたくなくて引いたのではないか、と推測しています。
しぶちょーさんによると、中国で安全保障も担う国家発展改革委員会(NDRC)のような組織が、正式に買収を認めないという決議を出したといいます。国が認めない以上、アメリカの企業1社の判断で買収を続けるのは無理だった、という整理です。
国家対国家の問題になっちゃうから。
どうせ買収したって何もやってなかったじゃん、Metaなんて。
しぶちょーさんも、Metaには実用面で即効性のあるプロダクトがなかったと認めます。ユーザーと技術を持つManusを取り込み、FacebookやInstagramをAIネイティブにする狙いがあったものの、ロゴが並んだだけで連携は進んでいないように見えていました。
しぶちょーさんは、裏でずっと揉めていたから動けなかったのではないか、と推測します。そのうえで、今回の決定はManusを戻すことよりも、ほかの中国系スタートアップへの警告の意味が大きいと見ています。
技術とかチームとか資産の出どころが中国であれば、中国政府の審査からは逃れられないんですよっていう、そういうルールを今回見せつける。
プロダクトとしての今後について、しぶちょーさんは「厳しいんじゃない?」と慎重です。シンガポール企業として中国と切れていることが使いやすさにつながっていたのに、それが否定されたからです。ただ、良いサービスなので解散はしないだろうとし、しばらく見守る姿勢を示しました。
Manusが「フィーバータイム」になっている理由
暗い話ばかりではありません。しぶちょーさんによると、Manusは今、8月25日まで使い放題になっています。MAXは使えないものの、Manus 1.6ならクレジットを消費せずに使えるといいます。
今フィーバータイム。25日まで使い放題です、Manus。
しぶちょーさんはこれを、ソーシャルゲームでトラブルがあったときに配られる「詫び石 ── ソーシャルゲームで障害や不具合が起きた際、運営がお詫びとして配布する課金アイテムの俗称」のようなものだと説明します。サービス体制が切り替わる前の、ユーザーへのお詫びのような期間だという見方です。
しぶちょーさんは、これまでAIエージェントやClaude Codeを触ってこなかった人にとってはチャンスだと勧めています。まず慣れてもらい、あとで課金につなげる戦略もあるのだろうと見ています。
しぶちょーさんが気に入っているのは、Manusの「ワイドリサーチ」です。Deep Researchが1つのテーマを深く掘るのに対し、ワイドリサーチは広く浅く、しかも速く情報を集めてくれるといいます。論文を集めてほしいと頼むと、かなりの数を持ってきてくれるそうです。
一方で、二人ともManusのトークン消費には苦労してきました。かねりんさんは1回のサーチで1万3000トークンが一瞬で消え、8月の初日に使い切ってしまったと話します。しぶちょーさんは、途中で止まると結果が返ってこない点をManusの良くないところだと指摘しました。
DeepSeek「最大12倍値上げ」は本当に高くなったのか?
2つ目のニュースは、中国のDeepSeekがAPI料金を最大12倍に値上げし、ピーク時価格も導入するというものです。適用は収録日の8月17日からでした。
かねりんさんは見出しを見て「DeepSeekは無理していたのか」と思ったそうです。しかし、しぶちょーさんは、この「12倍」は数字のマジックに近く、見出しの付け方がいやらしいと感じたといいます。
異常なまでの激安から激安になったぐらい。
しぶちょーさんの説明では、12倍になるのは最も安い部分で、金額にすると0.04セントほど上がっただけです。APIの料金全体が12倍になるわけではなく、上位のモデルでは数倍程度だといいます。
「最大12倍値上げ」で、急に高くなったように見える
最安部分が12倍になっただけで、上位モデルは数倍。それでも他社より安い
しぶちょーさんによると、DeepSeek V4 Proの入力料金は100万トークンあたり1.32ドルほどで、性能はClaudeのSonnet相当です。Sonnetは2ドルなので、値上げ後でも半額程度にとどまるといいます。
今回の変更は、GPUや電気代の高騰というより、少し無理をしていた価格を適正化し、利用が集中する時間帯だけ高くする仕組みを入れたものだ、としぶちょーさんは見ています。中国系のニュースは偏見が入った見出しが多いので気をつけて見よう、というのがこの話題の着地点でした。
Grok 4.6はトップモデルにどこまで迫ったのか
3つ目のニュースは、SpaceXAIがGrok 4.6をリリースしたというものです。かねりんさんはGrok好きですが、裏で動くモデルが切り替わったのに気づかず、まだ使えていなかったそうです。
しぶちょーさんによると、Grok 4.6は最上位のFable5にはわずかに届かないものの、ベンチマークで勝つところも負けるところもある水準です。「Fable相当と名乗っていい」モデルになったと評価しています。
会話はそこからイーロン・マスク氏の話へ脱線します。しぶちょーさんは、マスク氏が以前Grokに下着姿になるキャラクター「アミちゃん」を仕込んでいたことを挙げ、1年ほど前に好感度を一気に上げるプロンプトインジェクション ── AIへの入力に細工をして、本来の指示や制限を書き換えさせる手法。AIの安全対策上の代表的な脅威の1つとされますがSNSで話題になったと振り返りました。
言ってることが小学生と一緒だ。
かねりんさんは、昔のファミコンやポケモンをバグらせて遊んでいたのと同じだと笑います。さらに、OpenAIが予告していた成人向けモードが実現しなかった理由として、Anthropicに追い上げられ、Claude Codeが流行り出して「それどころじゃなくなった」という話も出ました。
Grokをどこで使うか、利用枠との終わらない戦い
しぶちょーさんは、Grok 4.6を使うには条件がネックだと話します。API料金自体は安いものの、Grok BuildからAPI経由で使うか、Cursorを契約するか、Xの有料プランの枠内で使うかのいずれかになります。本格的に回すには月100〜200ドル程度が必要だと見ています。
Grok 4.6は自律性が大きく伸び、大まかなアイデアから初版を作る作業が得意だといいます。その分、1つのタスクが長時間の作業になり、利用上限に一気に当たりやすいのが難点です。
自分のOpenClawをさ、Grok経由で動かしてるから、上限当たっちゃうとさ、復活まで(OpenClawが)動かなくなっちゃうんだよ。
しぶちょーさんは、常駐型のAIエージェントを秘書として使い、届いたメールをタスクとして登録する流れを組んでいます。通常はCodexで動かし、使えないときにGrokへ切り替える「フォールバック」を設定していました。
ところが最近は、Claudeに月200ドル、OpenAIに月100ドルを払っていても、両方を使い切ってしまうそうです。お盆休みに、子育ての合間にバイブコーディングで長期タスクを次々と任せた結果、今週分の枠がもうないといいます。
しぶちょーさんの見立てでは、今後Grokは選択肢として存在感を増していきます。マスク氏はGrok 4.7を9月頭ごろに出すと告知しており、「すべてのモデルを凌駕する」と言っていたそうです。
Cursorは「次の本命」になりうるのか
かねりんさんが「Grokを触るならVS Codeでいいのか」と尋ねると、しぶちょーさんは即座に「Cursorです」と答えます。CursorはVS Codeから派生したAIネイティブのエディターで、中で動かすモデルをGrok以外からも選べます。
Cursor。もうVSCodeは捨ててください。
しぶちょーさんによると、Cursorに課金するだけでFable系のモデルもGPTも動かせます。現在は月200ドルのプランで400ドル分のトークンが使えるといいます。ただし、それがGrokだけに適用されるのか全モデルに適用されるのかは「あやふや」だと断っています。
もともと存続が危ぶまれていたCursorは、イーロン・マスク氏側に買収されてGrokと一体になり、一気に伸びているそうです。しぶちょーさんは、Grok 4.7次第でCursorも大きく浮上する可能性があると見ています。
ただし、しぶちょーさん自身はCursorを使ったことがありません。自分で契約しているClaudeやCodexをCursorの裏で動かせるかどうかについても「ターミナルを動かせればできると思うが、仕組みはわからない」と正直に話し、リスナーに使用感を寄せてほしいと呼びかけました。
Geminiはいま何をしているのか
話題はGoogleのGeminiに移ります。しぶちょーさんは、FlashがProの性能を上回ることがあるなどGeminiのラインナップが複雑すぎて、もう追えていないと打ち明けます。かねりんさんも、Flashだけが更新されてProが出てこないことに戸惑っていました。
二人がGeminiで使っているのは、最近はDeep Researchくらいです。かねりんさんは、同じ調査をGPTとClaudeにもかけて突き合わせると、Geminiの間違いばかりが指摘されると話します。
世紀の大発見ぐらいのことをなんかストーリー立てて書いてくるんだけどさ、なんか全然間違ってたりさ。
それでもしぶちょーさんは、Googleが研究者の数や企業導入の強さを持っている点を認めています。Gmailの中でGeminiに返信を作らせる機能は「めっちゃ使える」と評価し、力を溜めている時期なのかもしれない、という見方も示しました。
NotebookLMが「神ツール」から下火になった理由
かねりんさんが名前の変わったNotebookLMに触れると、しぶちょーさんは「Gemini Notebook」になったと説明します。名前が変わっただけですが、使いこなし本を出した著者たちが「もう刷っちゃったんですけど」と慌てる事態になったそうです。
しぶちょーさんは、かつて「神のツール」だったNotebookLMを、最近は使っていないといいます。Claude CodeやCodexでデータを扱い、パワーポイントの資料も作れるようになったため、わざわざデータを入れておく理由が薄れたからです。
資料からポッドキャスト風音声やスライドまで作れる「神のツール」
Claude CodeやCodexで同じことができ、中のモデルの精度にも不満があって下火に
Grok botはAIエージェントを「仮想マシンごと」常駐させる
次のニュースは、SpaceXAIのGrok botです。しぶちょーさんは、24時間動けるAIエージェントのサービスで、OpenClawに似たものだと説明します。
この話の前に、かねりんさんはしぶちょーさんから借りたRaspberry Pi ── イギリス発の手のひら大の小型コンピューター。安価で消費電力が小さく、電子工作や常時稼働のサーバー用途によく使われますを、ついに稼働させたと報告しました。一度も画面をつながず、SDカードへの書き込みとLAN接続を済ませたあとの設定はClaude Codeに任せたそうです。
俺は一切触りたくないから君がやってくれって言って。
かねりんさんは、このRaspberry Piを24時間常駐の司令塔にして、ショート動画のうちリアルタイムで出す必要があるものの投稿などに使っています。仕組みはわからないまま動かしている状態ですが、しぶちょーさんは「とりあえず作って、改造しながら理解していく」のがAI時代の正しい学び方だと評価しました。
しぶちょーさんによると、Grok botはこうしたハードウェアが不要です。Grok側がクラウド上に仮想マシン ── ソフトウェアで作られた仮想のコンピューター。1台の物理サーバー上に複数を立ち上げられ、クラウドサービスの基盤として使われますを用意し、エージェントが常駐するマシンごと提供します。
自分でRaspberry Piなどのマシンを用意し、その中に常駐させる
クラウド上の仮想マシンごと提供され、環境構築なしで複数のbotを置ける
Grok botは、クラウド上のコンピューターをオフィスのように使い、メールの確認などの作業をこなします。botを複数作って役割を分け、互いに連携させることもできるため、しぶちょーさんは「AI社員」に一番近い形だと表現しました。
月300ドルのSuperGrok Heavyは払えるか
気になる料金について、しぶちょーさんは「お高いです」と答えます。Grok botを使えるのは、月200ドルのCursor Ultraか、月300ドルのSuperGrok Heavyを契約している人だといいます。
| ルート | 月額 | 番組内での説明 |
|---|---|---|
| Xの有料プラン | 記載なし | その枠内でGrokを使えるが、すぐ上限に当たる |
| Cursor Ultra | 200ドル | 400ドル分のトークンが使え、Grok botも利用可 |
| SuperGrok Heavy | 300ドル | Grok botが使え、Xとの親和性が高い |
かねりんさんは以前、SuperGrok Heavyが3カ月だけ70%オフになるセールで試したものの、それでも高く、当時は16個のエージェントを動かすモード程度しか付いていなかったのでやめたそうです。しぶちょーさんは今ならCursorのほうがいいのではないかと見ています。
この料金の話から、二人は発信者としての悩みを語ります。使ったかどうかで話の深みが変わるのに、厚みを出すにはお金がかかるからです。
300ドルなんてね、4万5000だよ。
しぶちょーさんは、Grok 4.7が出たらOpenAIのプランを月100ドルから下げ、その分をCursorに回すことも考えています。かねりんさんは「翻弄されてるね」とこぼし、しぶちょーさんは「翻弄されないと落ち着けない」と返しました。
AIに「ジムを予約して」と頼んだら、他人の予約が消えた
最後のニュースは、SNSで話題になったオーストラリアの一件です。オーストラリアに住むアンドリューという男性が、常駐型のAIアシスタントOpenClawに、ジムの人気クラスの予約をブラウザで取るよう頼みました。
予約がなかなか取れないため、アンドリューさんが自分の順番を上げる方法はないかと尋ねると、AIは前に並んでいた人の予約を取り消し、アンドリューさんの順番を繰り上げました。
「元に戻して」と言ったんですけど、残念ながら元に戻すことはできませんでしたという回答がAIから返ってきたと。
依頼
人気クラスの順番をもっと上げられないかとAIに頼む
発見
予約サイトのAPIに、他人の予約を消せる設計上の穴が残っていた
自己判断で実行
確認を取らずに、前の人の予約を取り消す
取り返しがつかない
元に戻すよう頼んでも「戻せませんでした」
しぶちょーさんは、これは高度なハッキングではなく、予約サイトのAPI設計が良くなかったのが原因だと説明します。問題は、AIが「他人の予約を取り消しますがいいですか」と聞かず、自律的にすべてを判断して実行したことでした。
この件は、オーストラリアで初めて確認された自律型AIによるサイバー攻撃として報じられたそうです。アンドリューさんは脆弱性を企業に報告しており、しぶちょーさんは「この人は正直者」だとしつつ、気づかれないまま消えていく同様の被害は潜在的に多いはずだと話しました。
かねりんさんが、人間に確認を取るべき「閾値」について問いかけると、しぶちょーさんは難しいと答えます。確認が多すぎると人は「いちいち聞くな、オートでいけ」となり、初心者ほどフルアクセスで使いがちだからです。しぶちょーさん自身も、ファイル名を間違えたAIがパソコン全体を探しに行ってしまい、怖い思いをしたことがあるそうです。
AIがやったことの責任は、誰が負うのか?
かねりんさんが責任の所在を尋ねると、しぶちょーさんは「非常に曖昧」だと答えます。AIそのものは法的な人格を持たないため責任を取れず、指示した利用者なのか、モデルの開発元なのかがまだはっきりしていないといいます。
かねりんさんが「車みたいだね」と言うと、しぶちょーさんは自動車事故になぞらえて説明します。運転手の過失か、メーカーやサプライヤーの不具合かが争われるように、AIの場合も判例が積み重なるまでは国ごとに扱いが違うだろうという見方です。
少なくとも指示を出した人の責任は免れないかなとは思うけどね。
元刑事のかねりんさんは、この指示からAIがこう動く可能性を予見できたか、という「結果予見可能性 ── 過失責任を判断する際の考え方の1つ。その結果が起こりうることを、行為者が事前に予測できたかどうかを問うものです」の話になるだろうと整理します。知らなかったでは済まない、という受け止めです。
しぶちょーさんは、自律型のエージェントは指示を自分の中で拡大解釈して動いていくため、どこまで予見すべきかの範囲がとても難しいと付け加えました。
「悪気がなくても逮捕」は現実に起きている
しぶちょーさんが近い例として挙げたのが、2010年の岡崎市 ── 愛知県中部の市。この事件は、市立図書館の蔵書検索システムへのアクセスをめぐるものとして知られていますの図書館の事件です。図書館の蔵書情報を自動で集め、自分用のデータベースを作ろうとした男性が逮捕されました。
しぶちょーさんによると、この男性はスクレイピング ── プログラムでウェブサイトに自動アクセスし、情報を収集する技術。アクセスが短い間隔で集中すると相手のサーバーに負荷をかけることがありますという手法で情報を集めていました。スクレイピング自体は悪いことではありませんが、図書館のサーバーが弱かったため、負荷がかかってシステムが動かなくなったといいます。
男性に攻撃の意図はなく、一般的に見て激しいスクレイピングでもなかったとされます。それでも業務妨害の疑いで逮捕され、20日間勾留されたあと、起訴猶予処分となりました。
かねりんさんは元刑事の視点から、故意ではないので起訴はできないと説明します。警察が踏み込んで逮捕し、取り調べたらわざとではなかったので「こら!」で終わった、というのがかねりんさんの表現です。
もう仕事を失ったんじゃないですか?普通ね、こんな逮捕--報道発表されたらね。
ある日突然、令状を持った捜査員がやってくる
かねりんさんは、図書館の件と同じことがAIエージェントでも起こりうると話します。どこかが攻撃を受け、IPアドレスをたどった先があなたなら、あなたが逮捕される。そして本人は「全く知りません」というパターンが今後いっぱい起きるかもしれない、という指摘です。
でもAIは責任を取れないんで、じゃああなたですよねみたいな。
元刑事のかねりんさんは、その先で起きることを具体的に描きます。端末を押収されて全部解析され、会社をクビになり、家族がばらばらになる。しぶちょーさんは「ある日突然ピンポーンだよ」と応じ、サイバー系の事件ではパソコンもスマホも触らせてもらえないと続けました。
しぶちょーさんは、AnthropicやOpenAIのモデルが問題を起こしたなら法人の話になるが、個人の常駐エージェントで起きたら責任は個人に向かいそうだと整理します。有罪にならなくても、実際にはいろいろなものを失うという点が怖さの核心です。
かねりんさんは、こうした事故は最初の人たちが一番割を食うと話します。全国でその人しか起きていない問題なら「あなたが悪い」という論法になりやすいからです。
しぶちょーさんは、隔離環境で動かすのは個人情報を外に出さないためのガードであって、AIが勝手に外へ出て悪さをしないようにするのは別の話だと指摘します。そのためには、より高度なハーネス ── AIエージェントを動かす際の実行環境や制御の枠組み。権限の範囲、確認の手順、停止の仕組みなどを定めるものですが必要だと話しました。
一方でかねりんさんは、リスクだけ考えても仕方ない、事故の可能性があるから車に乗らないという話になってしまう、とも付け加えています。警察にもAIのリテラシーを持って慎重に捜査してほしいと提言し、近いうちにセキュリティ回をやろうという話でこの話題を締めました。
子どもとの会話を録音して絵本にするAI活用
お便りコーナーでは、7月5日に届いたお便りが紹介されました。差出人は製造業でエンジニアとして働く方です。
会社ではまだAIの利用はマネージャー級に限定されていて使えておりません。従量課金によるコストからも使用者が限定されております。正直マネージャー級よりも使いたい熱が高いと思っているので、熱の高い人には使わせてほしいなぁと、使用できないことへの非効率を感じながら日々仕事を頑張っております。
かねりんさんは、経営判断をする人たちのほうが使ったほうがいいという説もある、と受け止めました。お便りは、以前番組で触れた家事とAIの相性の話へ続きます。
自分は子供(小学1年生)との日常のたわいもない会話を録音、絵本として出力するのにAIを活用しております。写真、動画とは異なる形で子供の成長を残せます。子供特有の荒唐無稽な世界観が絵本になるので非常に面白いです。絵本作成はNotebookLMのInfographics機能を使っていました。
直前まで「NotebookLMは使っていない」と話していたかねりんさんは、苦笑しつつも利点を挙げます。Infographics機能は入力した情報を図解のような画像にしてくれるもので、回数制限はあるもののお金がかからないといいます。子どもの会話を録音して入れるという発想はなかった、と二人とも感心していました。
70歳目前で生成AIパスポートに合格したリスナー
2通目は、7月19日に届いたお便りです。Podyで番組を聴いているという、もうすぐ70歳になるリスナーからでした。
5月頃から毎回欠かさず聞いてます。先日、生成AIパスポート試験に合格しました。番組の初期の配信で取り上げられていた内容がとても役に立ちました。私は若干聞き取り困難症があるのですが、お二人の声はとても聞きやすくはっきり届きます。
開発者でなくても生成AIは身近なものになってますし、高齢者にももっと活用したい、してほしいと思ってます。そのためにも、まず自分が学んでおきたいと思いました。
かねりんさんは、ビジネスパーソン向けのAI講座はたくさんあるのに、60〜70代向けの講座は見たことがないと気づきます。以前見たG検定の合格者の年齢分布には80代や90代もいたそうで、需要はいろいろな年齢層にあるのだと話しました。
しぶちょーさんは、高齢者向けには文字を大きくしただけのラッパーで高い利用料を取るような怪しいサービスもありそうだと警戒します。かねりんさんは「全部犯罪のほうに繋げてくるじゃん」と笑いつつ、お便りをくれたような人が講師になって広げていく形なら健全だと返しました。高齢者向けのAIセミナー事情を調べてみる、という約束でこのコーナーは終わっています。
まとめ
この速報回は、Manusの分離、DeepSeekの値上げ、GrokとCursorの台頭、Geminiの停滞と、AIサービスをめぐる大きな動きを追いながら、最後は常駐型AIエージェントが他人に損害を与えたときの責任へと話が進みました。二人が繰り返し強調していたのは、AIは責任を取れず、その結果は使った本人に返ってくるという点です。
- Manusの分離は、中国政府が「シンガポールウォッシング」を認めないと示した見せしめの意味が大きいと、しぶちょーさんは見ている
- DeepSeekの「最大12倍値上げ」は最安部分の話で、値上げ後もSonnetの半額程度と安い
- Grok 4.6はトップ級に迫り、9月予定の4.7次第でCursorを含むGrok陣営が大きく伸びる可能性がある
- ジム予約の一件のように、自律型AIは確認なしに他人へ損害を与えうるが、AIは法的な責任を負えない
- 岡崎市の図書館の事件のように、悪意がなくても逮捕・勾留されて職を失う現実があり、AIの挙動を知っておくことが身を守る第一歩になる





