Fable 5とMythosの停止騒動は、1週間で何か進んだのか?
この回の最初の話題は、AnthropicのAIモデル「Fable 5」と「Mythos」が、アメリカ政府によって停止された騒動のその後です。前週の配信ではこのニュースだけを取り上げるほどの大きな出来事でした。
しぶちょーさんは、Anthropicが「24時間以内に何か結論を出す」といった趣旨のことを言っていた気がすると振り返ります。ところが1週間たっても、打ち合わせがあった、もうすぐ進展があるといった匂わせの情報が錯綜するだけで、状況は動いていないといいます。
まとめると進展なしっていう感じです。いつ帰ってくるんだ、我らがMithos。
しぶちょーさんは、リスナーは「まだ進展がない」とだけ把握しておけば落ち着けるのではないか、と冗談まじりに話します。かねりんさんが1週間で何も動かないのは珍しいと驚くと、しぶちょーさんは「だいぶ揉めてるんだろうね」と受けています。
Anthropicが政府に目をつけられた理由は根回し不足?
停止の背景について、しぶちょーさんは海外の番組All-In Podcast ── シリコンバレーの投資家や起業家がテクノロジー、政治、経済を語るアメリカの人気Podcast。業界内部の事情に踏み込んだ議論で知られていますがまとめた解説を翻訳して紹介します。この番組によれば、もともとAnthropicとアメリカ政府の関係がかなり悪かったことが今回の騒動につながっているといいます。
関係悪化のきっかけとして二人が思い出すのは、2月ごろのニュースです。軍に対してすべての権利を開放するよう求められたAnthropicがこれを断り、代わりにOpenAIが「使ってください」と応じたことで、サム・アルトマン氏が批判された件でした。
しぶちょーさんが新しく紹介したのは、その裏でAnthropicがさらに政府の不興を買う動きをしていたという話です。最強モデルのMythosプレビューは一般公開せず、防衛などに使ってほしい限られた企業にだけ提供していましたが、その対象の拡大についてホワイトハウスへまったく相談していなかったといいます。
根回し、根回し。(Anthropicは)そういうのが下手くそだったんだ。
問題になったのは、提供先に韓国の大手通信会社SKテレコム ── 韓国最大のシェアを持つ通信キャリア。韓国4大財閥の一つであるSKグループの中核企業で、AIや半導体などの先端事業も手がけていますが含まれていたことです。しぶちょーさんによれば、同社には中国企業とのつながりが疑われているといいます。
かねりんさんは、韓国旅行のSIMカードでお世話になっている会社だと反応しつつ、アメリカとしては「中国に使わせるな」という話だよね、と整理します。国を通さずにこうした企業へMythosを使わせたことで、政府が強い不信感を抱いたのではないか、というのがAll-In Podcastの見立てです。
軍との対立
軍への全面的な権利開放の要求をAnthropicが拒否し、関係が悪化
独断の提供拡大
Mythosの提供先拡大について、ホワイトハウスに相談しなかった
SKテレコムの問題
中国とのつながりが疑われる企業が提供先に含まれ、政府が不信感を強める
Fable 5の公開
Mythos相当の機能にガードレールを付けたFable 5を公開したところ、ジェイルブレイクの報告が入る
二人はこの構図を、日本の出来事に重ねて語ります。かねりんさんが「大人の作法の通じないガキども」と例えると、しぶちょーさんは堀江貴文さんの逮捕に近い構図だと応じ、イケイケすぎて叩かれる状況だと話しています。
Amazonの脆弱性報告は、止めるための口実だったのか?
輸出管理の面で危ういと見られていたところへ、AnthropicはMythos相当の機能にガードレールを付けたFable 5を公開しました。そこへ「ガードレールが甘く、ジェイルブレイクできてしまう」という報告が政府に届いたことが、停止の直接のきっかけとされています。
しぶちょーさんによれば、All-In PodcastではAmazonが重大な脆弱性を発見し政府に通報したとだけ語られています。一方で、前週の配信で触れたように、政府に聞かれてAmazonが答えたという説もあり、どちらが正しいかはわからないとしています。
そのうえでしぶちょーさんは、流れからすれば政府はFable 5を止めたかったのではないかと推測します。ただし「あくまでも俺の予想」と断っています。
もう潔白な人間なんて存在しないんですよ。
元刑事のかねりんさんは、狙われたら立ち小便でも軽犯罪法違反で捕まるような世界だと話します。しぶちょーさんも、普段は問題にされないことでも、本気を出されればどうにでもなるという構図に近いと応じます。
Anthropicは「ジェイルブレイクはOpenAIのChatGPTでも同じようにできる」と主張し、なぜ自分たちだけがと反発していました。しぶちょーさんは、まさにそれこそが目をつけられていた部分なのではないかと見ています。
かねりんさんが、他のAI企業にとっては隠れて動くチャンスではないかと言うと、しぶちょーさんは「隠れてシュシューですよ」と同意します。実際にこの1週間は「Fable相当」「Fable超え」をうたうモデルがいくつも公開され、かねりんさんは「マーケティング用語になった」と表現しています。
Sakana AIの「Fugu」は基盤モデルではなかった
そうした「Fable相当」の流れの中で出てきたのが、日本のSakana AIが公開した「Fugu Ultra」です。Fable 5およびMythosの性能に匹敵し、しかも輸出規制のリスクがないモデルとして発表されました。
Sakana AIは、Transformer ── 現在の大規模言語モデルの土台になっているニューラルネットワークの構造。2017年の論文「Attention Is All You Need」で提案されましたの有名な論文を書いた一人が参加する、日本で国産LLMに取り組むAIベンチャーです。かねりんさんは、以前番組で「AI研究者集団」と紹介された会社だと思い出します。
「日本すごい」と一人で盛り上がったというかねりんさんに対し、しぶちょーさんは冷静に、しかし結論としては「すごくいいと思う」「驚いていいと思います」と評価します。そのうえで、勘違いしてほしくない点があると付け加えます。
その、ミトスみたいなAIのモデルを、そのファンデーションモデル、いわゆるその基盤モデルみたいなやつをボンって開発したんだっていう感じではない。
しぶちょーさんによれば、Fuguは「インチキ」ではなく、違う方法を編み出したものです。その方法が、複数のAIに指示を出して仕事を振り分ける「オーケストレーター」という仕組みです。
マルチエージェント ── 複数のAIエージェントに役割分担させ、並列で作業させる仕組み。全体を取りまとめて指示を出す役を置くことが多いですでは、下で働くエージェントに指示を出す上司役がいます。Fuguはこのオーケストレーター部分をうまく作ったものだ、というのがしぶちょーさんの説明です。
名前について、しぶちょーさんは「ちょっとダサいけどね」と笑いつつ、日本っぽくていいのではないかと話します。技術の詳細は英語で4ページほどのテクニカルレポートが公開されており、ClaudeやChatGPTに要約させると読みやすいと勧めています。
Sakana AIの狙いについて、しぶちょーさんは、モデルを大きくしたりデータ量を増やしたりする以外の「スケーリング軸」を求めたものだと説明します。既存のモデルをうまく組み合わせて性能を伸ばせないか、という考え方です。かねりんさんはこれを「お金じゃなくて頭で勝負してきた感じ」と表現しています。
先に話題になったOpenRouterの「Fusion API」とは?
しぶちょーさんは、同じ発想のサービスが他にもあると話をいったん広げます。Fuguの1週間ほど前に、OpenRouterというサービスが「Fusion API」を出し、こちらもMythos相当だと騒がれていたといいます。
OpenRouterはAIを開発する会社というより、ChatGPTやClaude、Gemini、DeepSeekなどのモデルを呼び出すAPI ── プログラムから別のサービスの機能を呼び出すための窓口。AIの場合、プログラムからモデルに質問を送り、回答を受け取る入口になりますの窓口を1か所にまとめたサービスです。本来は各社ごとに別々の作法でAPIを用意する必要がありますが、OpenRouterに課金しておけば、多くのモデルをまとめて使えます。
費用は若干割増しになるものの、支払いを一本化できて管理が楽なため人気だといいます。かねりんさんも最近、Claude Codeで文字起こしの要約を走らせる際にAPIを使い始め、費用は数十円程度だったと話します。しぶちょーさんは、自分の用途なら大きな額にはならないが、外部に公開するサービスにすると使われた分だけ費用がかさむので上限設定が必要だと補足しています。
Fusion APIは、OpenRouter経由で使える多様なモデルの上にオーケストレーターを置き、タスクごとに得意なモデルへ任せる仕組みです。Geminiが苦手なところはClaudeにやらせる、といった「いいとこ取り」で、モデルを新しく作らなくても高い性能を出そうとしています。
でもMitosより頭の悪いオーケストレーターにオーケストレーションをやらせてもあんまり意味がないと思うけど。
しぶちょーさんによれば、Fusion API側は控えめに「とあるベンチマークでMythosを超えた」と言っていた程度でした。それが切り取られ、海外だけでなく日本の「驚き屋さん」まで「Mythos相当でコストは5分の1」と騒いでいた、と振り返ります。
Sakana AIが「全部自前」で作った意味
かねりんさんは「Sakana AIは何も開発していないのか」「Fusion APIを使っているのか」と混乱します。しぶちょーさんは、Sakana AIはFusion APIを使っておらず、同じようなオーケストレーションの仕組みを自分たちで作ったのだと整理し直します。
しぶちょーさんの理解では、Fusion APIは入力に対して全部のモデルに作業させ、そこからかいつまむような動きをします。一方のSakana AIは、どのモデルにどう作業させるかを選ぶオーケストレーターをきちんと訓練し、効率よく振り分けている点が洗練されているといいます。ただし、しぶちょーさん自身もレポートをまだ読み込めていないと断っています。
さらに大きな違いは、下で動くモデルです。Sakana AIは自分たちで学習させた、日本語に特化したLLMを組み合わせています。個々のモデルはMythosほどの性能ではないものの、得意分野を掛け合わせることでMythos相当のベンチマークを出しているといいます。
海外のサービス。OpenRouter経由のGemini、Claude、ChatGPTなど他社モデルを組み合わせ、オーケストレーターが振り分ける
日本のSakana AIが開発。独自に学習したモデルを、訓練したオーケストレーターが振り分ける。そのため輸出規制のリスクがないとしている
自前のやつプラス指揮者も自前。全部自前じゃん。
かねりんさんは、LLM単体で勝てなくても、みんなで寄せ集めて勝つなら結果として問題ない、とこのやり方を評価します。オーケストレーションの考え方自体はもともとある概念で真似されうるものの、オーケストレーターをどう学習させるかは独自のものだろう、とこのやり取りで確認しています。
「超えた」ではなく「肩を並べる」。Sakana AIのスピード感
しぶちょーさんは、「Mythos相当」「Fable 5相当」という言葉にはブランディングの面もあり、あくまでベンチマーク上での話だと念を押します。そのうえで、この表現は驚き屋さんが盛ったものではなく、Sakana AIの公式発表だと説明します。
しぶちょーさんが注目したのは、公式発表が「超えた」とは書かず、Fable 5やMythos 5 Previewと「肩を並べます」と表現している点です。しかも輸出規制のリスクを負うことなく、フロンティアレベルの実力を発揮するとうたっています。
かねりんさんが「日本一人勝ちいけるじゃん」と盛り上がると、しぶちょーさんは一人勝ちかどうかはわからないとしつつ、何より「早い」と感心します。かねりんさんが「日本も輸出規制をかけるのでは」と冗談を言うと、しぶちょーさんは、日本のために作っているので国内で使えればよく、技術として確保できる基盤があるだけで非常にいいと答えます。
二人とも、Sakana AIにはマイペースな研究者集団というイメージを持っていました。しぶちょーさんは、この1週間を好機と見てすぐに技術を出してきたスピード感について、次のように話しています。
しぶちょーさんによれば、「AIが輸出規制で使えなくなるから日本でやっていこう」というストーリーは、もともとSakana AIにあったものです。かねりんさんは、日本人が好きそうな物語なので、もっとうまく見せてほしいと期待を語っています。
Fugu Ultraを実際に使ってみた感想は?
しぶちょーさんは実際にFuguに課金して試しています。チャット画面でClaudeのように使う形ではなく、Codexなどから呼び出して連携させる使い方で、しぶちょーさんはターミナル上のCodexから動かしたそうです。
新しいモデルが出るたびに試している「1000番ゲーム」を作らせる恒例のテストでは、Claude Opus 4.8より良いか同等以上という手応えだったといいます。一方で、以前Fable 5で作ったものと見比べると「さすがに見劣りはする」とのことで、かねりんさんは「間ぐらい」とまとめています。
問題はコストでした。Fuguはサブスクリプションで3つのプランがあり、しぶちょーさんの記憶では月30ドル、月100ドル、月200ドルと、Claudeとまったく同じ価格帯です。制限も5時間制限と1週間制限があり、Claudeの利用者を意識した設計だといいます。
千番のゲームを作ったらですね、一発で制限当たりましたね。
しぶちょーさんは一番安いプランに入りました(20ドルだったか30ドルだったかは忘れたとしています)。同じタスクならClaude Opus 4.8では数パーセント程度の消費で済む感覚だといい、Fuguは「多分割高だとは思う」と話します。処理時間は、エージェントを動かしているくらいの普通の感覚だったそうです。
しぶちょーさんの結論は、個人で使うのは結構難しく、企業向けという見方です。最安プランは「本当にお試しぐらい」で、APIで使う場合もトークン単価は他のサービスより高いといいます。
ただし今入ると7月分が1か月無料になるそうで、しぶちょーさんは「日本を応援するという意味で課金してもいい」と勧めます。日本語で学習しているぶん日本語は通じやすいはずですが、このレベルのベンチマークは日本の知識よりもエージェントとしてどれだけタスクをこなせるかを測るものだ、とも補足しています。
かねりんさんからは、日本刀で戦うゲームなど日本的な題材を作らせたら解像度が高いかもしれない、というアイデアも出ました。3Dモデルの作成も試したかったものの、最安プランの制限では難しく、200ドルのプランが必要だと考えて見送ったそうです。
「Fugu Ultra」という命名と、日本国内でお金が回るループ
しぶちょーさんは名前にも一言あります。最上位が「Fugu Ultra」というのはわかりやすいものの、せっかくなら高級なフグの名前を付けて、魚にこだわってほしかったと話します。
もっとも、しぶちょーさんはすぐに、ユーザーにどちらが上かを考えさせない「わかりやすさ」を取ったのは正解だと認めています。かねりんさんも、モデル名は特徴的でもグレードは普通の言葉にするClaudeと似ていると指摘します。
一応動かしましたよっていうの、これ一個二十ドル払って。
しぶちょーさんが課金したのは、使わずに語ると説得力がなくなると考えたからです。かねりんさんが「我が国ですから」と応じると、しぶちょーさんは「我が国の技術にお金を払いました、私は」と胸を張ります。
この話は、日本のお金が海外に流れ続ける問題につながります。しぶちょーさんは、AWSやAzureといったパブリッククラウドの時点で、日本でいくらサービスを作ってもアメリカに吸い取られていると話します。
しぶちょーさんが期待するのは、企業が安全性を考えてSakana AIのモデルを選ぶ流れです。そうなれば、日本の中でAI技術にお金が払われる健全なループができると考えています。
クラウドやAIの利用料が、AWSやAzure、海外のAI企業を通じてアメリカへ流れていく
企業が安全性を理由にSakana AIのモデルを選び、日本国内でAI技術にお金が回る
Midjourneyは画像生成からなぜ医療へ?
次のニュースは、画像生成AIのMidjourneyが医療分野に参入したという話題です。しぶちょーさんによれば、Midjourneyは6月17日に新事業「Midjourney Medical」を立ち上げ、その第一弾として体内を全身3Dスキャンする「Midjourney Scanner」を発表しました。
かねりんさんは「まだいたの?」と驚き、Discordで画像を作るサービスが一時期流行ったことを懐かしみます。しぶちょーさんは、Midjourneyのサービス自体はまだあるとしたうえで、事業を大きく切り替えていると説明します。
しぶちょーさんは、以前番組で取り上げたStable Diffusionの話と重ねます。Stable Diffusionはハリウッドの映画制作などメディア分野のプロ向けツールとして入り込み、そちらで収益を上げていました。
彼らもう画像生成では食っていけないっていうことなのよ、つまり。
背景にあるのは、一般の画像生成ならChatGPTやNano Banana Pro ── Googleが提供する画像生成・編集モデル。自然な文章の指示で高品質な画像を作れることで話題になりましたで十分になったという変化です。残るのは、人物をよりリアルに細かく調整したいといったマニアックな需要だけで、市場がスケールしないことは明らかだと、しぶちょーさんは見ています。
どれだけの事業比率を医療に割くのかはわからないとしつつ、蓄積した技術や資産をもとに医療へ向かうのが彼らの戦略のようだ、というのがしぶちょーさんの整理です。
水に入るだけでCT級のスキャン。Midjourney Scannerの構想
しぶちょーさんは発表動画を見て、中身がとても面白かったと話します。人が輪のような装置に入ると、振動する水と一緒に輪が上がってきて、体と水が触れたときの振動をもとに体内や表面を3Dスキャンする仕組みだといいます。
原理は、イルカが水中で声を出してやりとりするエコーロケーション ── 音を発し、その反響から周囲の物の位置や形を知る方法。イルカやコウモリが使うことで知られますのような技術だそうです。数十秒でスキャンでき、しかもかなり鮮明に撮れるといいます。
高価で大がかりな装置が回転し、専用の部屋と技師が必要。金属の持ち込みにも注意が要る
水に入るだけで数十秒でスキャンできるとされる。スパなどに置き、体のデータを取る構想
しぶちょーさんが面白いと感じたのは、医療のためだけに使わない点です。スパのような場所に置き、スキャンを副産物にして、利用者がほとんど意識しないうちに体のデータが溜まっていく形を目指しているといいます。
かねりんさんは、こっそりスキャンして悪用する人が出そうだと懸念し、しぶちょーさんも同じことを考えたと応じます。ただ、医療データの扱いはとてもセンシティブなので、漏洩はよほどないだろうとも話しています。
しぶちょーさんの予想では、価格は最初は本物のCTと同じくらい、数億円になるかもしれません。一方でMidjourneyは2031年までに5万台を作ると言っており、研究用のスパのような施設も建てる構想だといいます。
スマホアプリと連携して体のデータを定期的に管理し、人間ドックに行かなくても異常に気づけるようになるかもしれない、としぶちょーさんは想像を広げます。記事を読む限り投資家はおらず自己資金で運営しているとのことで、好きなように開発できるのは大きいと話しています。
サウナの水風呂でスキャン?片頭痛と東京のサウナ事情
日本に導入するならどこか、という話から、二人はサウナに行き着きます。かねりんさんが、水風呂なら1分入らないとデータが取れないという仕組みにすればいい、と冗談を言うと、しぶちょーさんも「一石二鳥だよね」と乗っています。
ただ、しぶちょーさん自身はサウナに入るたびに体調を崩すといいます。片頭痛持ちで、首の血管の収縮や膨張が原因になるため、急に冷やすと頭痛が出やすく、水風呂には入らず外気で冷ます「空冷」で過ごしているそうです。
それでもしぶちょーさんがサウナに行くのは、汗をかきたいときや、アイデアを出したいときです。Podcastの原稿でアイデアが出ないときに、脳をバグらせる感覚で行くこともあるといいます。
もうなんかいきなり入り口ガチャって開けたらいきなり更衣室みたいな。
東京で2か所行ったサウナは、どちらもサウナ以外の場所が狭かったそうです。土地が余っている愛知県のほうが大きな施設が多い、としぶちょーさんは比べています。かねりんさんは、サウナ好きの経営者が周りに多いことや、知人がサウナの協会まで作っていることを話しています。
SpaceXはなぜCursorを約9兆6000億円で買ったのか?
ニュースの最後は、SpaceXがAIコーディングツールのCursorを約9兆6000億円で買収することに合意したという話題です。しぶちょーさんによれば、買収は第3四半期に完了する予定で、6月12日にナスダックへ上場したSpaceXにとって上場後初の大型買収になります。
Cursorは、MicrosoftのオープンソースのエディターVS Code ── Microsoftが開発する無料のコードエディター。ソースコードが公開されており、拡張機能を追加して機能を広げられますをフォーク(コピーして派生させること)して作られた、AIネイティブの開発環境です。GoogleのAntigravityも同じくVS Codeをフォークして作られているといいます。
VS Code系のエディターは拡張ツールの生態系が強く、それをそのまま使えるのが利点です。VS Code自体はAI機能を拡張として追加する形ですが、CursorにはAI機能が最初から付いており、Cursorに課金すれば各社のAIを使える点が違うと、しぶちょーさんは説明します。
しぶちょーさん自身は、Cursorが出た当初に使ったものの、別のツールとVS Codeの組み合わせのほうが良いと感じて乗り換え、今はVS Code一本だそうです。今後は、イーロン・マスク氏のAIであるGrokとの連携を深めていくのではないか、と予想しています。
VSCodeのやつパクってさ、他のAIAPIでつなげてただけでしょ。
かねりんさんの率直な疑問に、しぶちょーさんは「極端に言うとそういう感じ」と認めつつ、「Cursorしか勝たん」という熱心な利用者もいると答えます。バージョン2.0で使い勝手が急に変わるなど経営が迷走し、潰れそうになった時期もあったといい、そこからの巨額買収には夢がある、と話しています。
Grokの使い道と、月300ドルのSuperGrok Heavy
Grokの話題では、かねりんさんがVS CodeでGrokを使っていると明かします。合言葉を決めておくと、GrokとCodexが裏で呼び出されてクロスチェックをする仕組みを作ったそうです。
あの、法律関係のタスクやらせたんだけど。なんか意外に性能いいので使いもんになりますってなって。
かねりんさんによれば、組み込む前にClaudeと相談した際、Grokはコーディング向けの1つ前のモデルしか使えないのであまり期待できないと言われたそうです。ところが試してみると意外に使える、という合格判定になりました。
一方のしぶちょーさんは、タイムラインで一瞬見かけた成人向けの動画を探すためにGrokを使った体験を語ります。Grokは該当の動画を見つけたうえで「すぐ削除されるので保存しておくといい」と答えたそうで、しぶちょーさんはX本体のポリシーとは違う倫理観を持っていることに驚いたといいます。
かねりんさんは、以前のようにディープリサーチを使えなくなったとGrokの変化を嘆きます。しぶちょーさんが、検索モードにある専門家チームの「Heavy」なら使えるのではと調べると、それは上位プランの「SuperGrok Heavy」が必要な機能でした。
SuperGrok Heavyは定価で月300ドルで、3か月だけ割引されて99ドルになっていました。年払いだと3000ドルになり、Claudeの最上位プランより高いと二人は驚きます。かねりんさんは、割引期間が終わるのを忘れて解約し損ねそうだと警戒しています。
日本からCursorのような会社が出ないのはなぜか?
Cursorの話から、かねりんさんは「誰でも真似できて、発想もあったはずなのに、日本人は誰もやらなかった」と疑問を投げかけます。しぶちょーさんはSakana AIがいると答えますが、Sakana AIも日本人以外のメンバーが多く関わっている会社だと補足しています。
しぶちょーさんは、以前訪れたStation Aiのようなイノベーション施設が、日本の今後を担う場所になるはずだと話します。かねりんさんは、チームを作って資金調達し、プロダクトを作るのは青春のようで楽しそうだと語ります。
しぶちょーさんは、スタートアップはよく「崖から落ちながら飛行機を組み立てるようなもの」と言われると紹介します。かねりんさんは、飛行機を組み立てるのが楽しければ落ちていようが関係ない、と返します。
ただ、あのね、楽しく飛行機組み立ててても地面にぶつかる時間があるから、そこまでに組み立てきれて飛び立たなきゃいけないっていうところがやっぱ大変というかね。
二人は、危機感や切迫感がガツガツ動く原動力になるという点で一致します。しぶちょーさんは、刑事という公務員を辞めて独立したかねりんさんは、まさに今崖から落ちている最中だと指摘し、Podcastの活動もそういうことだと続けます。
ただしかねりんさんは、Podcastはチームでも、成功して数兆円になるスタートアップとは違うと話します。しぶちょーさんも、成功しても数兆円にはならず、失敗しても何かが大きく失われるわけでもない、と応じています。
AIで誰でも作れる時代に、ソフトを作る意味はあるのか?
しぶちょーさんも、AI系の自分の事業をやりたい気持ちはあると明かします。今は商品レビューや執筆、個人のPodcastのスポンサー、広報大使などが事業になっていますが、自分のプロダクトがないのが正直なところだといいます。
一方でしぶちょーさんは、ソフトウェアを作ること自体に意味があるのか迷っています。AIのおかげで、それぞれが自分専用のツールを作る流れのほうが強いのではないかと考えているからです。
今ってもうその自分自身が必要なものをジャストで作れるから、それ以上のオーダーメイドみたいなものってないよね。
しぶちょーさんによれば、これまでのツールは誰でも使えるよう汎用的でなければ成り立ちませんでした。いまは素人に毛が生えた程度の人が中途半端な便利ツールを作って課金しても持続しにくく、1年もすれば作り直しが必要になるといいます。
そこで二人がたどり着いたのは、「レイヤーを上げる」という考え方です。かねりんさんが、Podcastでいえば1つの番組を作り込むより、レーベルを作ることにあたると言うと、しぶちょーさんは「まさにそういうところ」と同意します。
かねりんさんも、埋もれている面白い話を掘り起こすには、自分一人ではなく同じ思想のレーベルを作ってスケールさせる必要があると話します。人と人が対話して面白い話が生まれる営みはAIが流行っても残るはずだとしつつ、それが数兆円になるかはわからない、とマネタイズの難しさも認めています。
二人は最後に、小金を稼ぐより思想で尖って突き抜けたい、と意気投合します。しぶちょーさんは「ニッチ、そして尖り」、そして何度ダメでも「またやってんのかこいつは」と言われるしつこさが大事だと話しています。
細木数子の生き方から、先が見える人生への違和感へ
かねりんさんは最近、Netflixで戸田恵梨香さんが主演する細木数子さんのドラマを見たといいます。お金になることに貪欲に、住む場所を移しながら生きた人生として描かれていて、たくましいと感じたそうです。
しぶちょーさんは、細木さんといえば、テレビ番組中にレイザーラモンに激怒した放送事故のような場面を中学生のころにリアルタイムで見た記憶があると話します。かねりんさんは、自分なりの芯を持ち、最後まで最大火力で生きる生き方に憧れると語っています。
かねりんさんから「芯は何か」と聞かれたしぶちょーさんは、「どうなりたい」はないと答えます。この飛行機を組み立てたらどう飛ぶのかというワクワク感の中で生きたく、先が見えた瞬間にやる気がなくなるといいます。
このあとの二人のキャリア観のやり取りは、書き起こしの話者表記が内容と合わない箇所があるため、話の中身に沿って整理します。会社員として働く立場からは、企業の中では自分のキャリアが予想できてしまい、その不満から始めたのがこの活動だという話が出ます。
その話の中で紹介されたのが計画的偶発性理論 ── キャリアの多くは予期しない偶然の出来事で決まるため、偶然を活かせるよう好奇心を持って行動し続けることが大切だとする考え方。スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱しましたです。会社で「10年後どうなっていたいか」を逆算させる研修に対し、10年後なんて知らない、決めるのもおこがましい、と感じていたという話も語られます。
刑事を辞めた経験を持つ側からは、最速の出世ルートも決まっていて、上の世代を見れば自分の将来がわかってしまうのがつまらなかった、という話が出ます。その「答え合わせ」を拒む感覚は、Web3やNFTに早くから飛び込み、人が追随してくるころには次の初めてのことを探しに行く姿勢にもつながっているといいます。
出世ルートや10年後の姿が予想でき、「答え合わせ」のように感じてワクワクしない
Podcastや発信を続けるうちに予想外の人や企業から声がかかり、どう転ぶかわからないのが楽しい
Podcastについては、毎回の収録が常にゼロイチに近く、好きな人と好きな会話をしているようなものだから、やめる理由がないという話になります。二人はこの流れで、夜中に散歩して見つけたおしゃれな公園で、また野外収録をしようと約束しています。
リスナーからの質問、「LLM Wiki」はRAGと何が違う?
番組の公式ツール「おちつきAI RAG」の目安箱には、今回1件の質問が届きました。二人ともLLM Wikiという言葉は初めて聞いたといい、調べた内容をもとに解説が進みます。
LLM Wikiについて。昔のWikiとどう違うのか、RAGとの使い分けなどをご教示ください。
番組の説明によれば、LLM Wikiは今年の4月ごろから「RAGの次」として語られている考え方です。提唱したのは、「バイブコーディング」という言葉を生み出したことで知られるアンドレイ・カーパシー氏です。
二人はクイズ形式でこの人物を思い出そうとし、「バ」から始まる言葉を「バケーション」と答えるやり取りで笑いが起きています。正解はバイブコーディングで、番組でも何度か名前が出てきた人物だと確認されました。
RAG ── 検索拡張生成。質問を受けるたびに、登録済みの文書から関連部分を検索して取り出し、それをもとにAIが回答を作る仕組みは、文字起こしを細切れにして登録し、質問のたびに検索して回答します。回答が終わればその内容は忘れ、毎回ゼロから読み直す方式だと説明されます。
LLM Wikiはその逆の発想で、生のドキュメントを読み直す代わりに、AIに永続的なWiki形式の知識ベースを作り続けさせます。自分専用のWikipediaのように、知識同士がリンクでつながった形に整理し、人間も読めるし、AIがそこを検索することもできるといいます。
文字起こしを細切れに登録し、質問のたびに検索して回答する。体系化されておらず、人間からは中身が見えにくい。マニュアルや社内知識の検索に向く
AIが知識をWiki形式に整理し続け、知識同士をリンクでつなぐ。人間も読める。雑談の多いPodcastのような素材で面白くなりうる
構造は、メモ同士をリンクでつなぐObsidian ── Markdownで書いたメモを相互にリンクでつなぎ、知識のネットワークとして管理できるノートアプリのようなイメージだと説明されます。作り方はいろいろな人が検討中で、GitHubなどでやり方が共有されているそうです。
使い分けについては、すでに体系化されたマニュアルや社内の独自知識を検索したいならRAGが向いており、雑談が中心のおちつきAIのような番組ならWiki形式も面白いかもしれない、という整理でした。
番組にとっての利点も語られます。おちつきAI RAGの弱点は、GoogleのようなWeb検索に中身が引っかからないことです。Wikiにしてインターネットで公開できれば、そこから番組に来てもらえるかもしれないと考え、「おちつきAI Wiki」を作る方向で深掘りしていくことになりました。
お便り紹介と、評価100件突破、スポンサー募集のお知らせ
番組の最後には、溜まっていたお便りの中から古いものが読まれました。1通目は3月24日に届いたものです。
長いと言われてるってよく発言してるけど全然問題ないけど。朝の支度、通勤、掃除、料理、散歩、単純作業、etc. ずっとながら聞きしてるから長いと活動が捗るし、もちろんテレビないし、動画見るけど疲れるし、NetflixもアマプラもTVerもほぼ見てない。たまに見てるレベル。音声コンテンツの方が楽しみやすいです。
読み上げたしぶちょーさんは「もっと長くしろ」ということだと受け止め、かねりんさんはこの要望に応えて今回も1時間40分話していると笑います。2通目は、番組に届いた一番最初のコメントで、2月3日のものです。
オープニングの「はっ」とエンディングの毎回ぴったり揃う「さようなら」が癖になります。このチャンネルの出会いはPodcast「終わりかけのレディオ」、今夜も最終回でオススメしていたのがきっかけで全部聞いてます。変にカッコつけない自然なトークが気持ちよく、内容ももちろん面白いです。
二人は、紹介してくれた番組を聴いてみたいと感謝を伝えています。6月12日以降に届いたお便りもまだ6通溜まっており、順次読んでいくとのことです。
リスナーへの感謝として、Spotifyの評価数が100件を超えたことも報告されました。フォロワーが1万人近い番組でも評価が100件に届かないことは多いといい、次は200件が目標です。Apple Podcastのテクノロジーランキングでは13〜15位あたりにいることが多く、1桁を目指したいと話しています。
しぶちょーさんからは、フィジカルAI系の学生コンペ「Challenge ATOM」の審査員を務めるというお知らせもありました。鉄腕アトムのロゴが使われている大会で、関連してStation Aiの代表や、ロボット制御を開発するトロン株式会社を訪ねたインタビュー動画も公開される予定です。
番組はスポンサーも募集しています。AI企業に番組冒頭で名前を紹介するほか、タイアップも考えられるとし、メニューはこれから用意するとのことです。ショート動画も毎日2〜3本公開されており、Claude Codeと対話を重ねて一から作り込んでいると明かされました。
まとめ
今回の速報回は、Fable 5とMythosの停止が長引く背景に、Anthropicと政府の関係悪化があるという見立てから始まり、その隙に出てきたSakana AIの「Fugu」を、しぶちょーさんが実際に使って確かめる流れで進みました。「Mythos相当」は新しい巨大モデルではなく、自前のモデルと指揮役のAIを組み合わせた成果であり、性能は高いがコストも高い、というのが番組の落ち着いた評価です。
- Fable 5とMythosの停止は1週間たっても進展がなく、All-In Podcastは提供先拡大の根回し不足やSKテレコムの件が政府の不信を招いたと見ている
- Sakana AIのFuguは基盤モデルではなく、独自に学習したモデルをオーケストレーターが振り分ける仕組みで、公式には「肩を並べる」と表現されている
- しぶちょーさんの試用では、Fugu UltraはClaude Opus 4.8より良いがFable 5には見劣りし、トークン消費が大きく個人には割高
- MidjourneyやCursorのニュースから、画像生成の市場の変化や、AI時代にどのレイヤーで何を作るかという話へ広がった
- リスナーの質問をきっかけに、RAGとLLM Wikiの違いを整理し、「おちつきAI Wiki」を作る構想が生まれた





