日焼け止めから始まった雑談と、ラッシュガードの話
本編前の雑談では、夏の美容の話題から始まりました。戸部さんが、周りの男性で化粧水や日焼け止めをする人が増えていると振ると、樋口さんは自分は無頓着だと打ち明けます。
外でランニングをするため日焼け止めすら塗らず、どんどん肌が黒くなっていくのだそうです。クライアントとの打ち合わせで「黒くなりましたね」と言われて恥ずかしいと話していました。
一方で、世間の潮流に負けてやり方を変えたことがあると樋口さんは切り出します。それがラッシュガードでした。
ゴールドウィンが6月23日に出した調査を引き合いに、樋口さんは男性の意識の変化を紹介します。海水浴場や川、屋外プールなどを訪れた10代から50代の男性501人が対象の調査です。
男性の80.8パーセントが上半身の露出に抵抗があると回答して、ラッシュガードやTシャツを着ると回答した人の割合は62.8パーセントに上ったんですよ。
樋口さんは、子どもと磯遊びをするような場面で周りを見ると、確かにみんな着ていると気づいたそうです。着ていないのは「やんちゃ系」の人ぐらいだったと振り返ります。
なんか周りが文明に目覚めて服を着始めて、自分が裸なことを恥ずかしくなるみたいな。そんなのをやらされて憤ってます。昭和平成で許されていたことがどんどん許されなくなってるのを感じてますね。
肌を露出したくない理由としては、日焼けを防ぎたいからが57.8パーセント、体型のラインを見せたくないからが53.1パーセントだったと紹介し、最終的に樋口さんは1980円ほどのラッシュガードをAmazonで買ったと明かしました。
そもそも「積送在庫」とは何か
本題は、売上総利益を大きく左右する積送在庫管理の重要性です。積送在庫は、店舗間や倉庫間で商品を移動させている最中に、まだ目的地に届いていない在庫を指します。
樋口さんによると、ストアレコードでこれを管理できないかという相談を受けることが多いものの、オペレーションを整えないと管理できず、困っている会社が多いといいます。
似た概念に、仕入れとして計上したものの、まだ輸送中で届いていない在庫があります。財務会計上は未着品と呼ばれ、洋上在庫や海上在庫とも言われるそうです。
ただし今回はこの未着品は扱わず、すでに仕入れが済んだ在庫が、店舗間や倉庫間を移動する中で宙に浮くケースに絞って話が進みます。
積送在庫が発生する具体的なパターン
積送在庫が発生するパターンとして、樋口さんはいくつかの例を挙げます。まず一番わかりやすいのが、共通倉庫から各店舗へ在庫を補充するケースです。
複数の実店舗を持つ会社では、共通倉庫に店舗用とEC用の在庫をまとめて置き、各店舗には最低限の在庫だけを置いて、売れ行きに応じて補充することが多いといいます。
この補充のとき、倉庫からは在庫が落ち、店舗にはまだ入っていないため、その期間だけ積送在庫として浮いてしまいます。
二つ目は、店舗間の転換移動で商品を補充するケースです。ある店舗では売れず別の店舗で売れている商品を移す際に、発送から到着までの間が積送在庫になります。
渋谷店では全然売れてないけれども、新宿店では結構売れてるみたいな商品があった時に、渋谷店から新宿店に在庫を移動させる。その渋谷店から発送して新宿店に着くまでの間、積送在庫になっちゃうんですよね。
三つ目は、倉庫間で在庫を移動するケースです。関東はA倉庫、関西はB倉庫といった大規模な会社で、倉庫間を移動させるときに在庫が浮きます。
さらに樋口さんは、ZOZOやAmazonに在庫を預けて運営する会社も多いため、自社倉庫からそれらの倉庫へ移す際にも同じことが起きると指摘します。
共通倉庫に在庫あり
店舗用とEC用の在庫がまとまって計上されている
店舗へ発送
倉庫の在庫からは落ちる
移動中
どちらの拠点にも計上されず積送在庫として浮く
店舗に到着
店舗の在庫として計上される
もう一つ、樋口さんはモール連携の例も挙げます。Magaseekやショップリストのように、自社在庫を連携して販売するモールや、預けずに自社倉庫の在庫を連携するFBAのケースです。
この場合、お客様への発送タイミングでモール側では売上が計上されますが、自社倉庫からは在庫が落ちているのに、まだお客様に届いていないと売上が立たない状態になります。
そうなると、売上がないのに在庫だけがなくなり、利益がマイナスに見えてしまうそうです。樋口さん自身も前職で利益がおかしいと感じたとき、この積送在庫の漏れが原因だったと振り返ります。
なぜ積送在庫の管理が利益にとって重要なのか
戸部さんは、数日ずれるだけで何がそんなに問題なのか、以前は疑問だったと率直に語ります。樋口さんは、正確な利益を把握するために必要だと答えます。
売上原価は、期首在庫に仕入れを足し、期末在庫を引いて計算されます。期首在庫と期末在庫が正しく計上されないと、正しい利益は把握できません。
逆に、積送在庫を多めに計上すると期末在庫の金額が増え、原価が少なくなって利益が増えてしまいます。在庫金額の大小で利益は大きく変わるのです。
在庫金額の大小で結構企業の利益って大きく変わってしまって、操作したくなる項目であったりするんですよね。在庫本当はないけどあることにしちゃおうみたいな形で、粉飾の温床になりやすいので。
そのため、M&A時の調査でも積送在庫がどこにあるか、在庫の内訳やSKUごとの利益率が安定しているかが厳しく見られるといいます。しっかり管理しなければならない項目だと樋口さんは強調します。
管理を難しくする二つの壁
戸部さんは、何とかすれば管理できそうにも思えるのに、なぜ難しいのかと問いかけます。樋口さんはまず、そもそも管理しようとするまでにタイムラグがあると答えます。
在庫の金額がおかしい、利益率が変だと気づかなければ、そもそも取り組み始めません。それが一つ目のハードルだといいます。
気づいて取り組もうとしても大変で、一つ目の理由は管理のためのオペレーションが必要になることです。どの商品をいくつ、どこからどこへ移動させたかを記録する必要があります。
記録した上で、到着したらフラグを立てて積送在庫から落とす処理も要ります。スマレジやロジレスなど同じシステム内なら、入庫出庫機能などで対応できる場合もあります。
しかし、これを現場に落とし込むのが難しいと樋口さんは指摘します。転換移動で出庫したら登録し、届いた側は段ボールを開けてバーコードで検品し、入庫処理を完了させる流れを回さねばなりません。
二つ目の壁は、システムをまたいでしまうケースです。スマレジやロジレスのように別々のシステムを行き来すると、そこをつなぐ仕組みがなく管理できなくなります。
スマレジ間だといい、ロジレス間も倉庫同士の連携みたいな形で、A倉庫からB倉庫に行く時に出庫処理、届いたら入庫処理っていうのをすればシステム内で完結する。けれども、スマレジ、ロジレスみたいにまたいじゃうと全然できなくなってしまっていて。
樋口さんによると、かつてERPで統一されたシステムを使っていた頃は、POSもWMSもOMSも同じシステムで動くため、この問題は起きにくかったそうです。
ところがこの10年でクラウド型のSaaS業務システムが進化し、システムをまたぐのが当たり前になりました。APIでつなぐ発想が広がった結果、その間で在庫が浮いてしまうというのです。
どこから何をいくつ移したか記録し、到着時に入庫・検品処理を回す運用を現場に定着させる難しさ
POSとOMSなど異なるシステムをまたぐと、移動を管理する仕組みが存在せず連携できない難しさ
ストアレコードが目指すハブの役割
樋口さんは、この領域を面白いと感じ、ストアレコードで解決に取り組もうとしていると話します。相談も受けているためです。
POSはスマレジ、OMSはロジレスやNextEngineなどと連携しているため、店舗から倉庫、倉庫から店舗への管理を読み込んでみたところ、できそうだったといいます。
開発費用は個別のアプリとして受け取る形になりそうだとしつつ、実装を進める方向だと語りました。
目指すのは、各小売企業がERPで縛られず、POSはスマレジ、OMSはNextEngineやロジレスといった具合に好きなシステムを選べる世界です。
そのうえで、積送在庫の管理や、システムが連携されていないことによる難しさを、ストアレコードがハブとなって間を取り持ち、スムーズにしていきたいと樋口さんは締めくくりました。
まとめ
今回は、店舗間や倉庫間の移動中に宙に浮く積送在庫がテーマでした。見えにくい在庫ですが、期末在庫の金額を通じて利益を大きく左右する重要な項目だと語られました。
- 積送在庫は、店舗間や倉庫間の移動中でまだ届いていない在庫を指す
- 共通倉庫からの補充、店舗間の転換移動、倉庫間移動、モール連携など複数のパターンで発生する
- 期末在庫の金額がずれると原価と利益が動くため、正確な利益把握と粉飾防止の観点から管理が欠かせない
- 管理の難しさは、現場のオペレーション定着と、システムをまたぐことによるデータ連携の二つの壁にある
- ストアレコードは複数システムのハブとなり、積送在庫管理を含む連携をスムーズにすることを目指している
