複雑系の時代に必要な知識の在り方 考究流転ラジオ第一回
医師としての経験を経てスタートアップや会社経営を手がけるJIntaroさんが、AI時代における知識の組み合わせ方について考えます。第一回のテーマは「複雑系な世の中での知識のあり方」。専門性よりも、領域を越えて知識を接続する力に焦点が当てられます。
番組の趣旨と自己紹介
番組冒頭では、医学、経済学、AI、ビジネス、哲学など、バラバラな領域の知識を混ぜ合わせる場として番組が紹介されます。
一つの学問だけでは世界は説明できず、視点が交差する瞬間にこそ新しい思考が生まれるという考えが語られます。
この番組は、医学、経済学、AI、ビジネス、哲学などなど、バラバラな領域の知識を混ぜ合わせる場所です。一つの学問だけでは世界は説明できないし、むしろ視点が交差する瞬間にこそ新しい面白い思考が生まれる。
JIntaroさん自身は、大学卒業後に医師として4〜5年働き、その後ヘルステック系のスタートアップを経て、現在は自身の会社で活動しつつ他のスタートアップを手伝うなど、キャリアに一貫性なくブラブラしている人間だと自己紹介されています。
番組では毎回ゆるくテーマを掘り下げ、いろんな視点が繋がっていくプロセスを聴き手と一緒に楽しみたいと話されています。配信頻度は週1ペースを目標にしているそうです。
AI時代に問われるのは「問いの立て方」
話題はAI時代の人間の役割に移ります。目の前の仕事をAIが担うようになり、人間が考えるべきことが変わりつつあるのではないかという問題意識が示されます。
JIntaroさんは、これからの時代は専門性よりも、いろんな領域の知識をうまく組み合わせる技術が重要になると考えていると話されています。
ただし、ここで言う「異なる分野の知識を統合する」は、博識や物知りといった状態とは絶妙に違うと指摘されます。前提が違う論理同士を無理やり合わせて、新しい考え方が生まれるかどうかが大事だという視点です。
知識をただインプットしても意味はなく、引き出しを持つこと以上に「開け方」が問われると話されます。しかも、AIや他の人が思いつかない意味不明な開け方ができるかが鍵だと整理されます。
JIntaroさんは、現代では昨日発表されたばかりの最先端情報や、ごく一部の専門家しかアクセスできない領域を除けば、AIに聞けば概ね80点の答えが返ってくる状態が完成しつつあると見ています。
質問と答えって考えた時に、答えの部分はもう80点ぐらいできてる。まだ質問する側の力量によって出力が左右されてる印象がある。
同じAIを使っても、小学生と東大生では使いこなしに差が出るという例を通じて、アウトプットの差は「問いの差」から生まれると整理されます。
幅広い知識のインプットや、80点の標準的な答えを返すこと
前提の違う知識を意味不明な形で接続し、新しい問いを立てること
ツクシから考える「ラメットとジェネット」の話
ここから話題は一気に脱線し、ビジネスと植物のツクシをつなぐ話に展開します。組み合わせのスケール感を示すための例として、植物生態学の概念が持ち出されます。
ツクシは地面で繋がっており、たくさん生えていても同一個体である場合があります。そこから植物の自家受粉1つの個体の中で受粉が完結する仕組み。遺伝的多様性が生まれにくい一方、繁殖の確実性は高いの話につながっていきます。
遺伝子は多様な方が生存に有利なため、ラメットが多くてもジェネットが少ないと、環境が少し変わっただけで全滅するリスクがあると説明されます。
リクルートDNAから考える「型の共有」のリスク
この植物の話を、JIntaroさんは人間社会に無理やり置き換えていきます。題材になるのは、リクルート出身者にしばしば見られる独特の文化です。
リクルートで働いたことがある人とはよく話す機会があって。なんかこう、独特のDNAというか、「俺、俺リクルート出身っす」みたいな、こう言っちゃうみたいな。馬鹿にしてないんですけど、優秀なんですけど、なんかその独特のDNAあるじゃないですか。
JIntaroさんは、こうした共通の価値観や成功パターンを、まさに「一ジェネット」のようなものだと例えます。
もしリクルート的なマインドが通用しない世の中が来た時、そのルートでキャリアを積んだ人たちが一斉に力尽きるリスクがあるのではないか、という仮説が提示されます。
ただし、リクルート自身は社内に複数のジェネットを抱えていそうなので、実際にはそう単純ではないだろうとも補足されています。
そこから導かれるのは、優秀な大学を出てリクルートで鍛えられて独立するような、よく聞く成功パターン以外の人がもっと増えた方がいい、という主張です。
大学卒業後、焚き火しかしてなかったけど成功しましたみたいな、意味がわかんない人とかがもっといっぱい増えた方がいい。
Connecting the Dotsと伏線回収
植物と社会をつなぐような話の楽しさを語りつつ、話題はスティーブ・ジョブズのConnecting the Dotsスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学卒業式で語った有名なスピーチの一節。過去の経験は後から振り返って初めて線として繋がるという考え方に展開します。
JIntaroさんの中では、Connecting the Dotsは「英語の教科書に載っていたもの」というイメージが強いと、半分冗談めかしながら語られます。
未来を見据えて布石を打てるのはごく一部の才能ある人で、一般人にはハードルが高いと整理されます。そのため、後から振り返って繋がるという感覚の方が腹落ちしやすいと話されます。
引き出しを持つこと自体には価値がなくなりつつあるけれど、後から繋げる作業をした時に「あのインプットには価値があった」と振り返れるのではないか、という考えが示されます。
未来の展開を決めてから伏線を仕込む。人生で漫画を描けている稀な人
何のためのカットか分からないまま読み、最後に意味が分かる。多くの人はこちら側
JIntaroさん自身は、どちらかというと読者側として、いろんな引き出しを持って「いつか繋がれ」と願いながら生きていると語られます。
医者時代のプログラミング学習が今につながった話
続いて、自身の経験を例にした「後から繋がった」話が紹介されます。舞台は2022〜2023年頃、ChatGPTが世に出始めたかどうかという時期です。
当時まだ医師だったJIntaroさんは、必要もないのにPythonなどのプログラミングを勉強していたそうです。今となってはAIがコードを書くため、当時覚えたコードの書き方そのものはほぼ意味がないと振り返っています。
しかしその経験が、現在AIやDX関連の仕事を受ける際に話題の種になったり、エンジニアと話す時の距離感を変えてくれていると話されます。
エンジニアと喋る時に、ゼロ点の人と話すのと10点の人と話すのだと、エンジニア側の気持ちが多分楽だと思うんですよね。専門用語使っても完全素人だと全然わかんない、合ってる言語自体が違うみたいな感じですけど。
英語に例えれば、ハローやアポーが分かる程度の片言でもコミュニケーションの質が大きく変わる、という比喩で説明されます。過去の「無意味に見えた経験」が回り回って繋がったという実感が共有されます。
とりあえず全部やってみる時代
最後の話題は、領域横断的に動くためのハードルの低下についてです。
かつては新しいことを始めるハードルが高く、諦めることも多かった一方、最近は精神的にも技術的にも「とりあえずやってみる」コストがアホみたいに下がっていると指摘されます。
とりあえずもうやりたいこととりあえず一旦全部やっとくかな、みたいなマインドには最近なってますね。
歳をとった時、「あの時ポッドキャストを始めたから今こうなっている」と振り返れるかもしれないし、黒歴史として封印するかもしれないが、それでも「何が自分にできないのか」が分かるという意味で意味があると話されます。
まとめ
第一回では、AI時代の知識の在り方として「持っている知識量」ではなく「意味不明な組み合わせを生み出す問いの立て方」が重要だと語られました。植物のラメット・ジェネットの話を社会に重ね、画一的な成功パターンに依存することのリスクや、後から繋がる経験の価値が、JIntaroさん自身の体験とともに整理されています。
- AIが80点の答えを返す時代、価値は問いの立て方に移っている
- 知識を持つことより、引き出しを意味不明に開ける力が問われる
- 画一的な成功パターンの共有は、環境が変わった時の脆さを生む
- 未来から逆算するより、後から振り返って繋がる経験を積み重ねる
- とりあえずやってみるハードルが下がった今こそ、領域を超えて動く好機
