そもそも、なぜ映画祭でAI映像を発表したのか
今回のテスト映像は、長編映画を作る前提で「まずはティザーを」という感じで作ったものではないんです。
これからAI時代を生きることになる、すべてのクリエイターさんへの問題提起として作らせていただきました。
こういうものが今、AIで作れてしまう時代に、僕たちクリエイターは何を作るのか。どこに時間を割いていくのか。そういう問いを投げかけたかった訳です。
だからあえて映画祭のセレモニーで発表しました。
クリエイターがいて、プロデューサーがいて、お金を出す人もいる。関係者が山ほど集まる場所なので、この問いを出すにはいちばんふさわしいなと思ったんです。
作ってみて、まずわかった2つのこと
あのレベルのAI制作の現場に入ってみて、わかったことがあります。
1つは、演出の仕事はなくならないということ。これははっきりしています。
2つ目は、カメラマンの仕事が変わるということです。
ここが大事なところで、カメラマンという仕事自体がなくなるわけではなくて、あくまで仕事の中身が変わるということなんですね。似ているようで、非なるものだと思っています。
カメラマンの中には「2人の演出家」がいる
カメラマンの仕事を分解すると、そこには2つの役割があります。
1つは構図を決めるという演出家としての仕事。もう1つは撮影をするという技術者としての仕事です。
絵を決める人と、シャッターを押す人。この2つの人格が、カメラマンの中に同居している訳です。
監督が全体の演出家だとするなら、カメラマンは絵作りに特化した演出家だと言えます。
もちろんカメラマン出身の監督さんは両方を兼ねていたりしますが、多くの場合これは分業なんですね。
その上で今後は、撮影をする技術屋としての仕事よりも、構図を決める演出家としての仕事の割合が増えてくると見ています。
技術屋としての部分、つまり撮影はAIが担うことになりそうだ、というのが自分たちの見立てです。
カメラマンが自分の腕に指示を出すのではなくて、AIに指示を出すようになる。そんな世界線ですね。
長編を作るなら、誰を入れたい?満場一致で出た答え
ショートショートフィルムフェスティバル&アジアの打ち上げで、いろんな監督さんやプロデューサーさんに「これ、長編作っちゃった方が良くないですか」とめちゃくちゃ言われたんです。
自分もその気になってきて、チームもその気になり始めていました。
じゃあ仮にここから、AIで長編作品を作るとなったら、自分たちのチームに入れたいのは誰だ、という話になったんです。
答えは満場一致でした。カメラマンだったんです。
面白いでしょう。AIの台頭でカメラマンの仕事はなくなる、という結論じゃなかったんですね。
むしろ、カメラマンは絶対に必要だ、というほうの結論だったんです。
この職業のこの部分の能力は引き続き必要だよね、というのが、今回作ってみていろいろ見えてきました。
まとめ
AIで作ってみたら仕事が消えるという話になると思いきや、逆に「この人の、この力はやっぱり要る」という発見のほうが多かったんです。明らかにここが歴史の転換期じゃないかなと、いまは感じています。
- 今回のAI映像は、クリエイターへの問題提起として作った
- 演出の仕事はなくならず、カメラマンの仕事は「なくなる」のではなく「変わる」
- カメラマンは構図を決める演出家と撮影する技術者の2役を兼ねていて、技術部分はAIが担いそう
- AIで長編を作るなら誰を入れたいか、という問いに、チームは満場一致で「カメラマン」と答えた



