フルAIの予告編を出したら、批判がほとんどなかった
先日、CHIMNEYTOWNの最新作と言っていいと思うのですが、そのテスト映像の予告編をSNSで公開しました。
これはフルAIで制作したものなんですけれども、予想を上回る反響をいただきました。
興味深かったのは、その反応の中にAI批判がほとんどなかったこと。いや、マジでなかったんです。
以前はずっと「AIはクリエイターの敵だ」「AIは創作を壊す」という論調があったじゃないですか。それがちょっと風向きが変わってきたなと感じています。
僕らのようにアニメーションをど真ん中で作っているチームが、正面からAI作品を発表したら、一定の摩擦や反発は避けられないと思っていたんです。
ところが実際に寄せられたのは、賛成か反対かを決める前に「一回ちょっと議論しましょうや」という意見が大半でした。
これは本当にいい変化だと思いますし、とても健全な変化だと思います。
AIを触っていない人ほど、AIを過大評価している
公開したことで、たくさんの企業から連絡をいただき、クリエイターの方からも協業の相談をいただきました。
それと同時に、全く利害関係のない方々から率直な意見を集めることができたんです。
その中で、なるほどなと思わされたことがあったので共有させてください。
AIは人間の仕事を奪うとか、AI反対だと強く主張しているクリエイターさんの中には、そもそもAIをほとんど触っていない人が少なくない、ということ。
ChatGPTを一度二度触ったことはあっても、実際にAIでクリエイティブを進めた経験がある人はほとんどいないんです。
もちろん例外はあります。ただ多くの場合、実際に使い込んでいる人よりも、使っていない人の方がAIを過大評価しているんですね。
知らないからこそ「AIは万能だ」という誤解が生まれて、必要以上に恐れてしまう。ここが本質だなと思いました。
現場は、プロンプトを入れれば理想が出てくる世界ではない
最新のAIにプロンプトを入力すれば、理想の映像が出てきて理想の音楽が完成する、というイメージを抱いてしまう人がいます。
でも現場は全くそんな世界じゃないんです。少なくとも、ビジネスになるレベルのクリエイティブの現場ではそんなことは起きていません。
AI映像の制作現場には明確なコストがあります。時間的なコストも、試行錯誤のコストもあります。
演出設計も必要ですし、カット割りや編集も必要です。
何より「何を作るか」を決める創造的な判断が必要ですし、それ以上に「誰が作るか」という、人間なしでは語れない超属人的な価値が求められるんです。
だからAIに触れれば触れるほど、AIが勝手に作品を作ってくれるという幻想は崩れていくんですね。
淘汰されるのは、AIを理解しようとしない創造
CHIMNEYTOWNが現時点でたどり着いている結論は、人間の創造が終わることはない、ということです。ここは言い切っています。
ただし、この言葉には重要な注釈がつきます。AIを道具として理解した人間による創造が終わることはない、ということなんです。
歴史を振り返れば、新しい道具が登場するたびに「人間の仕事はなくなる」と言われてきました。
カメラが登場した時も、パソコンが普及した時も、インターネットが広がった時もそうでした。映像の分野でCGが出てきた時も、今日のような議論があって、めっちゃ炎上したそうです。
でも実際に消えたのは創造ではなく、古い道具だけに依存した仕事だったんですよね。
AIもおそらく同じです。これから淘汰されるのは人間の創造ではなく、AIを理解しようとしない人間の創造の方なんです。
だからこそ繰り返しますが、クリエイターの権利を守りたいのであれば、なおさらAIを触るべきだと思います。
AIの得意領域を知って、人間にしか担えない領域を探る。その境界線を自分の手で確かめた人だけが、次の時代の創作環境を設計できるんじゃないかなと思います。
今、来年発売のCHIMNEYTOWNのカレンダーを描いているのですが、これは鉛筆とボールペンだけで描いています。
このイラストには筆圧があって、ブレがあって、鉛筆を走らせた時間を想像することができる。こういうものこそ人間に残される仕事の一つだなと思うんです。
まとめ
結局のところ、AIを恐れている人ほど、まだAIを触っていない人なのかもしれません。だからまず触ってほしい。そこから見えてくる境界線が、これからの創作を決めていくと今の時点では考えています。
- フルAIの予告編を出したら、AI批判はほとんどなく「まず議論しよう」という反応が大半だった
- AIを使っていない人ほどAIを過大評価し、必要以上に恐れている
- 現場では、演出も判断も「誰が作るか」という属人的な価値も欠かせず、AIが勝手に作品を作ってはくれない
- 淘汰されるのは人間の創造ではなく、AIを理解しようとしない創造。だからこそまず触るべき



