ポスター販売の本当の狙いは「想起の設計」
本日よりCHIMNEYCOFFEEの渋谷本店と渋谷BOOKANDBED店で、それぞれの店舗限定オリジナルポスターの販売が始まったそうです。
デザインは、ルビッチが少し不機嫌そうにミニモフを抱えているイラストで、西野さん自身が描いたものです。
現場でお店を育てている後輩たちを応援したいという思いから始まった取り組みですが、経営視点での目的はポスターの売り上げそのものではないと話されています。
本当に狙っているのは「想起の設計」だと言います。人は忘れる生き物であり、どれだけ満足度の高い体験を提供しても、思い出してもらえなければ次の来店にはつながらないからです。
どれだけ満足度の高い体験を提供できたとしても、思い出してもらわなかったら、次の来店にはつながらないでしょ?お店って。サービスって。商品って。
なぜタピオカ屋は行かなくなったのか
リピーターを増やすには、まず「また行こう」と思い出してもらう接点を、日常の中に持つことが欠かせないと言います。
例として挙げられるのが、一気に流行したタピオカ屋です。最近は誰もあまり行かなくなってしまったのは、日常生活の中で「タピオカ屋に行こう」と思い出すきっかけが一つもないからだと話されています。
タピオカ屋さんとかがさ、すげえバッて流行ったけど、最近誰もあんま行かなくなっちゃったのって、タピオカ屋に行こうって思い出すきっかけが一個もないじゃないですか、日常生活の中で。
だからこそ、思い出してもらう想起の接点を、お客様の日常の中にデザインすることが欠かせないという結論になります。
ポスターが部屋の廊下やトイレに飾られれば、視界に入るたびにCHIMNEYCOFFEEを思い出してもらえます。その積み重ねが「久しぶりに行こうかな」という行動を生むと考えられています。
SNSの宣伝アカウントは見られているのか
この「想起のデザイン」は、CHIMNEYTOWNがカレンダーでも実践している基本戦略だと言います。
しかし、お客さんの家の中に広告を打つという想起の仕掛けをしている会社は、意外と少ないそうです。多くは商品やサービスを出すたびに、その時だけSNSを頑張る傾向があると指摘します。
西野さんは、イベントや映画のたびに専用のSNSアカウントを作る手法にも疑問を投げかけます。明らかな宣伝アカウントは、あまり見られていないのではないかというのです。
もう見なくないですか?そのもう明らか宣伝垢じゃないですか。じゃあやっぱ日常的に思い出してもらう、そういう仕掛けを作った方が良くないですか?
エコーチェンバーと言われる時代に、SNSだけでお客さんに情報を届けるのは大変だというのが、この回の問題意識です。
これからは「人の流れがある地面」の取り合い
これからの時代は、オフラインの地面の取り合いになると西野さんは見ています。ポイントは、人の流れがある地面をどれだけ取るかです。
主に該当するのは観光地です。CHIMNEYTOWNとしては、ここ最近は観光地に全張りしていると言います。
ただし、人の流れがある一等地はなかなか空きません。取れたとしても時間がかかります。河口湖でいい場所を取るなら、地域のコミュニティに入り、交流を重ねて任せてもらう必要があるからです。
河口湖でいい場所を取ろうと思ったら、河口湖コミュニティに入って、たくさんたくさん交流を重ねて、「もういいよ、ここは西野くんに任せよ」って言ってもらわないと、一等地なんか取れないわけですよね。
そこで浮かび上がるのが、まだ空いている地面です。それが、お客さんの家の中の床や壁だと話されています。
人の流れは多いが空きが少なく、コミュニティに入って信頼を得るまで時間がかかる
廊下・トイレ・冷蔵庫などがまだ空いており、生活動線として毎日視界に入る
玄関・トイレ・冷蔵庫という「一等地」
家の中の壁や床は、まだ空いていて取りに行きやすい地面だと言います。しかも生活動線なので、接触回数が多いのが特徴です。
玄関は毎日、往復で少なくとも二回は通ります。年間で数百回はポスターが目に入る計算になると話されています。
玄関は一等地だから。トイレ一等地だから。一番人の流れがあるところなんだから。しかもそれ年間何回目に入るのよっていう。
ここを取りに行かず、リピーター獲得のためにSNSを頑張るのは、優先順位が違うのではないかというのが主張です。
そして最も強調されるのが、ほとんどの人がお客さんの家の床や壁を「人の流れがある地面」として捉えていないという点です。
マグネットで冷蔵庫を取りに行く発想
最近CHIMNEYTOWNのスタッフと話しているのがマグネットだそうです。マグネット単体の利益は、正直たかが知れていると認めます。
それでも作る理由は、マグネットなら冷蔵庫に貼ってもらえるからです。冷蔵庫は一日に何度も開け閉めするため、そのたびに思い出してもらえます。
マグネット販売したところで、マグネットの利益なんてぶっちゃけたかが知れてるんですよ。ね、マグネットさえ作れば冷蔵庫にペタって貼ってもらえるわけじゃん。
例として、映画『えんとつ町のプペル~約束の時計台~』に登場するナギというキャラクターのイラストを挙げます。
このナギのマグネットを音楽と森の美術館で販売すれば、冷蔵庫に貼ってもらうことで美術館を思い出し、久しぶりに行こうと思ってもらえます。仮にそうならなくても、お客様の生活空間が彩られるので、みんながWINだと話されています。
まとめ
この回は、CHIMNEYCOFFEEのポスター販売を入り口に、リピーターを生む「想起の設計」という考え方が語られました。売っているのは商品そのものではなく、思い出してもらうきっかけであり、そのためにお客さんの家の中こそ「人の流れがある地面」だと捉える発想が中心です。
- どれだけ良い体験でも、思い出してもらえなければ次の来店にはつながらない
- SNSの一時的な宣伝より、日常の中で思い出してもらう接点を作ることが重要
- 観光地の一等地は取りにくいが、家の壁や床はまだ空いている
- 玄関・トイレ・冷蔵庫は接触回数が多く、想起を生む「一等地」になる
- マグネットは利益より、冷蔵庫という一等地を取るための想起の仕掛けとして機能する
