40代で「やりたいこと」から「務めを全うする」に変わった
昨日の舞台挨拶でも話したことなんですけど、20代30代の頃の僕は、とにかくやりたいことをやってたんですよ。
白黒のペンで絵を描いて、誰にも評価されてなかったけど、原画を抱えてニューヨークに飛んだりね。半ば強引に「俺はこれがやりたいんだ」って飛び出していったなと思います。
でも40歳あたりから考え方が変わりました。やりたいことをやるというより、務めを全うするという方にシフトしたんです。
僕は神様なんて全然信じてないんですけど、仮にそういうものがいたとして「お前これやれ、お前がやらないと誰がやるんだよ」と言われたことを、そのままやると決めた。それが40代になってすごく強くなったんですね。
自分の手の内を明かすのは、自分のためじゃない
わかりやすい例が、お金の教育です。日本って小中高大とまともにお金の教育をしないでしょう。
このまま子供たちが社会に出たら絶対苦労するのはわかっているのに、誰も表立って話さない。話したら「金に汚い」って叩かれるからですね。
でも僕はエンタメを作っていて、子供たちに近い距離にいる。しかもクラウドファンディングやECサイトの走りで、自分でお金を作ることもやり始めていた。
お金のプロがどれだけ大声で言っても子供たちには届かないけど、エンタメを作ってる人間が「実は裏でこういうお金の作り方があるんだよ」って話せば届くじゃないですか。これをやれるのは西野しかいないと思ったんです。
正直、自分のことだけ考えたら手の内なんて明かさない方がいいに決まってるんですよ。オンラインサロンも無料公開もクラウドファンディングも、共有して僕が個人で得することなんてないですから。
でも、自分のことだけ考えて生きてどうするんだ、と。これが僕にとっての「務めを全うする」ということなんです。
公開初日、スタッフの空気がおかしかった
じゃあ今回の映画にはどんな務めがあるんだろう、と考えたんですけど、最初は特に見当たらなかったんですよ。
前作はコロナのど真ん中で、みんなが負けかけている中で「まだいける」と気を吐く務めがあった。でも今作は良くも悪くも順調で、これで俺は誰を助けるんだろう、と思いながら公開日を迎えたんです。
3月27日、劇場入りしたら、なんとなくスタッフの空気が良くなかった。もしかして客入り悪いか、とうっすら気づいてました。
その夜、プロデューサーから「実は西野さん、申し訳ないです」と。初日の数字が思うところに全然行っていないと、すごく悔しそうにされてたんですね。
映画は初動が全てだとずっと言われる世界です。最初の3日間の数字かける3くらいで最終着地が読めてしまう。だから「もうダメだ」という空気になっちゃったんですよ。
「ここが今回の務めだ」と気づいた
その空気の中で、「あ、ここか」と思ったんです。今回の務めはここなんだ、と。
こういう結果が出たら「俺たちダメじゃん」となって終わっていく。この流れが映画業界で何年も続いてきて、みんなこれで負けてきたわけですよ。
そこに対して僕に求められた道は2択でした。「無理だったな」と引き下がるか、めちゃくちゃ粘り強くどぶ板営業を続けて、諦めない姿を見せるか。今回は後者だと決めました。
一回目、第一打席で空振りしたのは事実です。でもまだ終わってない。俺の勝負も、負けそうになってるあなたの勝負も、まだ終わってない。それを見せるのが今回の務めなんだと思ったんです。
2ヶ月で170ステージ、足で回った
そこからは、途中から数えてないですけど、2ヶ月で映画館を170か所くらい回りました。
2ヶ月って60日ですよ。数が合わないでしょう。「嘘でしょ、持ってるでしょ」って思うかもしれないけど、持ってないんですよ。僕、一日に7か所とか8か所とか行ってたから。
自分にやれることがそれしかなかった。裏技なんてなかったんです。
逆に、やっちゃいけないこともわかってました。こういう局面でインフルエンサーに宣伝してもらうことです。それをやると、応援しろが全部なくなるなと思ったんですよ。
市井の人はインフルエンサーと繋がってないでしょう。近所のお蕎麦屋さんのおばあちゃんが「西野さんも頑張ってるから私も頑張ろう」と思ってくれてるのに、その西野がインフルエンサーと絡んで数字を増やしたら、応援する理由がなくなるじゃないですか。
そうじゃなくて、「西野さんの方が私より足を使ってる、私より恥ずかしいことをやってる」と思ってもらう。バカにされながら一番やり抜く。少なくともこの2、3ヶ月、世界中の映画屋さんの中で俺が一番足を使ったと言い切れます。
初週4位を「爆死」と受け入れるまで
初週は4位か5位くらいでした。それで「爆死」と言われたんですね。
正直、初登場4位で爆死って言われる世界線は何なんだ、と思いましたよ。うちはほぼ個人事務所みたいなチムニータウンで、テレ朝でもディズニーでもハリウッドでもない。だいぶ頑張ってる方じゃないか、と。
でも、そこで止まっちゃダメだと思ったんです。自分たちが狙ってた目標には届いていない、これは事実だ。「4位で頑張ってるじゃん」も全部言い訳だなと。
だから受け入れました。俺たちの第一打席は負けたんだ、空振りなんだ、と。悔しいけど、これは負けたんだと。
でも、まだ終わってない。一回スタッフを不安にさせて、ファンを不安にさせて、近くのスタッフが僕になんて声をかけたらいいかわからない空気にしてしまった。それは全部僕の責任です。だから、ここから巻き返してやろうと思ったんです。
一生やると決めた。だからサブスク配信はしない
この映画に関しては、もう一生やると決めました。一生やる仕組みを作るんです。
まず決めたのは、サブスク配信はしないということです。配信してしまうと、一生やるという選択肢がなくなってしまうから。
だから今、いろんな場所で上映イベントがずっと続いていて、9月まで決まっている。先に言っておきますけど、来年もやってますからね。これは一生やるんです。
初日に数字が伸びないとわかった瞬間、僕はすぐ家に帰って、これから先のプランをブワーッと立てました。毎日配信して、毎日地方を回る。海外に行く用事があっても、戻ってきたらすぐプペルです。
そうしたら渋谷HUMAXシネマさんから「もう一回やりませんか」とお話をいただいて、昨日、復活上映がスタートしました。うちの子にステージを与えてくれて、本当にありがたいです。
熱量、落ちてません
今日この後、渋谷HUMAXシネマで朝9時から上映です。9時ってお客さんが集まりにくい時間だとわかってます。でも、僕は行く。
来てくださった方一人ひとりと握手して、グッズを買ってくださった方と写真を撮ってサインをする。選挙活動みたいなものです。この姿を見せなきゃいけないんですよ。
もう皆さんお気づきでしょうけど、3月27日に公開して今日は6月20日、西野、熱量落ちてません。公開直後かというくらいの熱量で喋ってますよね。
子供を守り抜く、スタッフを守り抜く。スタッフがかけてくれた4年5年の時間も、応援してくれるお客さんの時間も、絶対に無駄にしない。
まとめ
今ちょっと負けそうになっている人がいたら、この話を聞いて少しでも元気をもらってもらえたら嬉しいです。負けないって決めたら、負けないんですよ。あとは決めるだけなんで、お互い頑張っていきましょう。
- 40代からは「やりたいこと」より「与えられた務めを全うする」を選ぶようになった
- 初動で負けた今回の映画の務めは「どんな状況でも諦めない姿を見せる」ことだと気づいた
- インフルエンサーに頼らず、2ヶ月で170ステージを自分の足で回りきった
- サブスク配信をしないと決め、一生上映し続ける仕組みを作った



