20年ぶりのスノボ再デビューと、冬季五輪への衝撃
冒頭の話題は、冬季オリンピックのスノーボード競技でした。若い日本選手が次々にメダルを取る姿を見て、2人とも自分たちの学生時代とは別競技になったと驚いたと言います。
一番すごいなと思ったスノボーの選手たちの活躍。普通にメダル取ってるのめっちゃ多いな。しかも若い人たちがっていう意味で。
俺もモーグルやってたけど、あんなの無理だよ。回転とかさ、体操選手じゃん。
その五輪に影響を受けたのか、片山さんは社会人になって初めて、3週間前にスノボへ行ったと明かします。20年以上ぶりの再デビューでした。
僕実は社会人になって初めて3週間前にスノボ行きました。20年以上ぶりかな。
行き先は奥伊吹。片山さんの会社のタレントがスキー場のDJブースでお世話になっている縁もあり、現地を見てみたい気持ちもあったそうです。
「安さ重視」の買い物が、ゴーグルだけ崩れた瞬間
20年以上ぶりのため、片山さんは装備をほとんど持っていませんでした。ゴーグルや手袋などレンタルできないものを、京セラドームで開催されていたJSBCスノータウン ── スノーボード用品などを扱う大型の展示販売イベント。ここでは京セラドームで行われた催事を指しています。で買いそろえます。
この時の片山さんの基準は、あくまで「安さ」でした。家族分もまとめて買う必要があり、機能もそこそこで十分だと考えて、適当に選んでいたと言います。
その時正直安いのでええなと思って、家族分のも全員買わなあかんしっていう感じで。機能もそこで十分って思って、適当に選んだ。
ところが最後にゴーグルを選ぶ段になり、陳列棚で「Dragon(ドラゴン)」のロゴを見た瞬間、その基準が一気に崩れます。
陳列棚見てたらドラゴンっていうメーカーのロゴがあって、その瞬間なんか僕めっちゃ胸アツになってもうて。
ゴーグルも適当でいいって思ってたのに、値段も見んと躊躇なくこれやってなって買いました。
安いものでいいと言い続けていた片山さんが、ゴーグルだけは理由もなく即決した。保呂田さんも「珍しくない?」と驚きます。
スイスの高校時代とドラゴンにまつわる記憶
即決の理由は、ロゴを見た瞬間に学生時代がフラッシュバックしたことでした。片山さんは高校時代、スイスの学校に通っており、冬は週2で午後がスノボの授業だったと言います。
高校の時スイスの学校行ってんねんけれども、なんと冬は週2で午後がスノボの授業で。週末2日も行けるから週に4回行けるみたいな環境なのよね。
その環境で片山さんは10人ほどの仲間とつるんでいました。グループには影響力のあるリーダー格がいて、やんちゃなトラブルメーカーながら、顔がとてもかっこよかったそうです。
そのリーダーが「ドラゴン一択やろ」と言っていたことが、片山さんのゴーグル選びの原点になっていました。同じリーダーの一言で、スイスの学校中でGLAYが流行したエピソードも語られます。
そいつがある日GLAYってかっこいいよねって言い出して、ほんだら学校中でみんな好きになって。
保呂田さんも、スキー時代に好きだったゴーグルメーカー「ボレ」の話で応じます。上手い海外の有名選手がつけていたから憧れた、という記憶です。
上手いモーグルの海外の有名な選手が着用してて、そんな感じでつけたいみたいな。
2人の話は、道具そのものの性能ではなく「誰が持っているか」「どんな仲間感があるか」で選ばれていた、という共通点にたどり着きます。
道具にこだわらない片山さんが、ゴーグルだけこだわる理由
片山さんのスノボの腕前も語られます。器械体操を幼稚園から続けていた素地があり、スイスでは縦回転のバックフリップを習得。最終的にはロデオや540まで決められるようになったそうです。
最終できるようになったのは、バックフリップのロデオかな。ファイブフォーティーまではできたかな。
みんなが横回転しかできない中で縦回転ができたことで、片山さんは一目置かれる立ち位置になりました。その記憶もまた、ドラゴンと結びついていると言います。
興味深いのは、片山さんが本来スポーツの道具にほとんどこだわらないタイプだという点です。スキルがあれば道具の性能は乗り越えられる、という考え方を持っています。
これなんかスキルがあれば道具の性能を乗り越えれるって思ってる派なのよ。ボロボロの板でも上手いって思われるのがかっこいいって思ってた。
実際に高校時代はボロボロの板を使っていたそうです。その片山さんが、ゴーグルだけはドラゴンにこだわる。この対比自体が、ロゴの持つ力を物語っています。
ゴーグルではなく「記憶」を買ったという解釈
保呂田さんは、片山さんが好きなものを語るときに生き生きすることに触れ、話をブランドの本題へ戻します。ロゴを見た瞬間にフラッシュバックが起き、購入につながった流れを整理していきます。
片山さんは自分の買い物を、以前番組で扱ったハーレーのバッジの話に近い感覚だと言います。ゴーグルという機能を買ったのではない、という整理です。
ゴーグル買ったんではないんだよ。高校の時の雪山の記憶を買った。友達10人で盛り上がってた空気感を買った。
ジャンプ初めて決めて、うおおってなった時の瞬間の盛り上がりを買った。
ここで重要なのは、体験の強さがロゴの力を決めるという点です。片山さんは、体験が薄ければロゴは何も呼び起こさないと指摘します。
片山さんは、ドラゴンのロゴを見るまでその存在すら忘れていたと言います。だからこそ、ロゴが記憶のスイッチとして働いた瞬間の衝撃が大きかったのです。
ロゴにお金をかけたくない、という現場の悩み
話題は2人の仕事の現場へ移ります。ブランディングをやりたいと言いながら、ロゴにはお金をかけたくないという経営者が少なくない、という悩みです。
ブランディングやりたいんですよねって言ってるけど、ロゴっていくらぐらいでできます?みたいなところから。
保呂田さんは、ビジネスのパートナーとして並走する制作側として、そうした声を聞くと悲しい気持ちになると率直に話します。
片山さんは、ブランドは前回の話にも出た「連想のネットワーク」だと説明します。ロゴ単体では何者でもないかもしれないが、バラバラに保存された記憶をネットワークの入り口へ導く役割を持つ、という整理です。
ロゴ自体は単体では何者でもないかもしれないけれども、人の記憶にバラバラに保存されているものをギュッと、ネットワークの入り口に持っていってくれる。
保呂田さんはこれを、パソコンのフォルダにたとえます。ロゴを見た瞬間に、そのフォルダが一気に開いてしまうイメージです。今回はドラゴンのフォルダが開いた、というわけです。
強烈な体験
スイスの高校時代、仲間とジャンプを決めて盛り上がった記憶
記憶の保存
その体験がドラゴンというロゴに結びついて蓄積される
ロゴとの再会
陳列棚でドラゴンのロゴを見た瞬間に記憶が呼び起こされる
即決の購入
値段も見ずにゴーグルを購入する
無意識を動かす「プライミング効果」とは
保呂田さんは、価格を比較して決める通常の購買から、価格比較ではないところで買ってもらう状態を作るために、この現象が大切だと指摘します。
片山さんは、この現象をプライミング効果 ── 先に受けた刺激が、その後の判断や行動に無意識のうちに影響を与える心理現象。関連する記憶や感情が自動的に引き出されます。だと説明します。刺激を受けた瞬間に、関連する記憶や感情が自動的に引き出される現象です。
値段とか見ずに即決したのは、意志の力じゃなくて、プライミングっていう現象が起きてるからで、無意識に動かされてしまう。
保呂田さんが例に挙げたのが、マクドナルドのサウンドロゴでした。音を聞いた瞬間に記憶が呼び起こされ、自分の体験が想起される、というわけです。
ただし片山さんは、プライミングは強烈な体験があるほど強く効くと補足します。逆に言えば、体験の裏付けがないロゴには同じ効果は生まれません。
適当にロゴを変えただけでは意味がないのか?
片山さんの整理では、しっかり体験を作った上でロゴを定着させて初めて、ロゴが記憶の連鎖に組み込まれます。ロゴだけを新しくしても、呼び起こす記憶がなければ効果は生まれない、ということです。
「デザイナーにブランドを作らせるな」という問い
片山さんは、アメリカのポッドキャスト「Just Branding」で聞いた言葉を紹介します。ゲストのケビン・フィンさんが、デザイナー的には受け入れづらいかもしれないと前置きした上で語った一節です。
「Designers don't make brands on their own」って言ってて。デザイナーがブランドを作るんじゃないよっていう。
保呂田さんはこれを、デザイナーにブランドを作らせるな、と言い換えます。ロゴを作るのはデザイナーでも、ブランドそのものを作るのは経営者だ、という主張です。
片山さんは、ロゴは最後に来るものだと整理します。思想があって、体験があって、記憶があって、その結晶がロゴという順番であり、これを間違えれば、ただのデザインになってしまいます。
その上で片山さんは、リスナーへの問いを投げかけます。自分のロゴが、顧客のどんな記憶を呼び起こしているのかを考えてほしい、という問いです。
あなたのロゴっていうのはお客さんのどんな記憶を呼び起こしていますか?価格ですか?社名ですか?それとも人生のワンシーンですか?
20年間買っていなくても、記憶さえ残っていれば人はまた戻ってくる。片山さんの体験は、時間を超えて効くブランドの強さを示しています。
20年ぶりでも滑れた、最高の再デビュー
最後は再びスノボ体験の話に戻ります。片山さんはこれだけスノボの話をしながら、実は家族に滑る姿を見せていないと明かします。2歳の子供がいるため、順番に面倒を見て一人で滑っていたそうです。
僕スノボの話結構してるけれども、未だに見たことないからなって妻には言われる。
20年ぶりの滑りはどうだったのか。片山さんは、意外と滑れたと振り返ります。リフトで一番上まで登り、そこから普通に滑り降りられたと言います。
一番上までリフトで登って、そこからシャーって普通に滑れたんで、意外とできんねやって思った。最高やったよ。
保呂田さんも「行きたくなってきた」と応じ、回は締めくくられます。ゴーグルという道具ではなく、スイス時代から続く時間そのものを買ったという解釈が、今回の話全体を象徴していました。
まとめ
20年ぶりのスノボで、片山さんがゴーグルのロゴを見た瞬間に即決した体験は、ロゴが単なる図案ではなく記憶のスイッチであることを示しました。強烈な体験に裏打ちされて初めて、ロゴはブランドとして機能します。
- ロゴを見た瞬間に記憶と感情が呼び起こされる現象が、プライミング効果
- ロゴが力を持つのは、その裏に強烈な体験と記憶があるとき
- 体験の裏付けがないロゴを新しくしても、呼び起こす記憶がなければ効果は生まれない
- ブランドは思想・体験・記憶の結晶であり、ロゴはその最後に来るもの
- ロゴを作るのはデザイナーでも、ブランドを作るのは経営者自身






