大阪スタジオで初の2人収録、いきなり「牛丼どこ派?」
今回のポジティブランディングラボは、これまでと違って片山光祐さんと保呂田直行さんが大阪のスタジオで2人だけで収録しています。
いつもは東京と大阪をZoomでつなぎ、それぞれのスタジオで録っていたため、対面で2人だけという状況は初めてだと話されています。
いつもZoomつないで、それぞれのスタジオで、東京と大阪で録ってるからすごい新鮮。
これまで大阪で対面収録するときは、進行役のMCを含めた3人でのゲスト回がほとんどだったといいます。今回からはプロMCなしの2人体制で、4話連続で試していく形になっています。
逆に実験室でやっぱり二人になったらどうなんの?っていうのをちょっと今回から四話連続で。
そんな新しい体制の口火を切ったのが、保呂田さんからの唐突な質問でした。
突然だけど聞いてもいい?牛丼ってどこ派?
吉野家から松屋へ、すき家派——分かれる「牛丼どこ派」
片山さんは、最近まで吉野家をよく利用していたものの、今は松屋に切り替えていると明かします。理由の一つは、家から一番近いという立地でした。
最近まで結構吉野家やってんけど、今は実は松屋。
もう一つの理由として、片山さんは松屋が世界各地の伝統料理や家庭料理をアレンジした「松屋で世界の味シリーズ」を展開していることを挙げ、頑張っていると評価しています。
一方、保呂田さんはすき家派だといいます。片山さんはトリプルチーズ牛丼やネギ牛丼を選ぶタイプだと話しました。
ちなみに俺はすき家派。トリプルチーズ牛丼とか食べちゃうもん。
これに対し保呂田さんは、ネギはわかるがトリプルチーズは受け入れられないと反応します。片山さんは、保呂田さんは出汁の味を重視する正統派で、吉野家に行くタイプだろうと見立てていました。
ネギはわかるけど、トリプルチーズ。それいかん。
片山さんは、こうした牛丼チェーンの選び方そのものが、ブランドへの忠誠心の表れだと指摘します。
そのうえで、この牛丼というカテゴリーや、マクドナルド、バーガーキングといったハンバーガーチェーンのような「コモディティ」にブランドがどう関わるのかを、この回のテーマにしたいと語ります。
アメリカのバーガー事情は激変、王者はインアンドアウトへ
保呂田さんは、この回の構想を持ったうえで、直前にアメリカ人12人の肉のプロと日本ツアーをした際、移動中の雑談で「バーガーチェーンはどこが好きか」をあえて聞いてみたと明かします。
バーガーチェーンどこが好きなの?っていう話、実は聞いてみたの。
片山さんは、カリフォルニアならインアンドアウト、あとはバーガーキングあたりではないかと予想します。2人が過去にアメリカにいた頃は、バーガーキングが定番だったという認識でした。
やっぱカリフォルニアやったらインアンドアウト。あとはバーガーキング。
ところが保呂田さんによると、今はマクドナルドもバーガーキングもウェンディーズも名前が挙がらなかったといいます。
マクドナルドもバーガーキングもウェンディーズも全然出てこない。
代わりに支持を集めていたのが、インアンドアウトや、保呂田さんが挙げたファイブガイズ、ワタバーガー(テキサス系)などのチェーンでした。この10年ほどで、アメリカのファストフードのハンバーガー事情はだいぶ塗り替えられていると片山さんは話します。
マックかマクドか、スタービーにミキリーズ——愛称に宿るブランドへの愛着
話題は、チェーン店の呼び方や愛称へと広がります。片山さんは、大阪では「マクド」、東京では「マック」と呼ぶ論争にも触れました。
今俺大阪に来てるからマクドって言ってみたけど、多分人生でマクドって使ったことないもん。
保呂田さんによると、アメリカ人にマクドナルドの呼び方を尋ねると「ミキリーズ」、スターバックスは「スタービー」といった愛称が返ってくるといいます。
ちょっとスタービー行こうとか、ミキリーズ行こうみたいな。
片山さんは、こうして愛称をつけて呼ぶこと自体が、海外でも日本でも共通するブランドへの愛着の表れだと指摘します。
この流れで、番組自体の愛称も話題になりました。社内では「PBL」と略しているものの、片山さんからは「ポジラボ」という案も出ています。
コウスケ的にはポジラボとか。
片山さんは、日本とアメリカでは略語のつくり方も違うと指摘します。ジェニファー・ロペスを、日本では「ジェニロペ」、アメリカでは「J.Lo」と呼ぶ例を挙げました。
保呂田さんは、キムタクやジェニロペのように、日本では2文字ずつで略したがる傾向があると応じています。
築地の牛丼屋から世界へ、吉野家120年に学ぶ「体験の原点」
保呂田さんは、コモディティになって誰もが知るブランドの現在のブランディングよりも、その始まりを深掘りするほうが、中小企業にとって学びがあるのではないかと提案します。
例に挙げたのが吉野家です。吉野家は築地の場外で、1軒の牛丼屋からスタートしていると保呂田さんは説明します。
吉野家って築地の場外で、一軒の牛丼屋さんからスタートしてるでしょ。
その1軒に来ていたのは、魚河岸で働く魚のプロたちでした。魚を扱う人ほど肉を食べたくなるという傾向があるといいます。
保呂田さんは、自分たちのように普段肉を扱う仕事だと、逆に魚や寿司を食べたくなると重ねて、ラーメン屋の子がラーメンを食べたくならないのと同じだと説明します。
重要なのは、彼らが食のプロだったという点です。頭多め、ネギだく、つゆだくといった細かい注文は、その当時から食のプロの客によって生まれていたと保呂田さんは話します。
大将、俺は頭多めでネギ抜きつゆだくな。いつもの覚えてるだろみたいな感じで。あいよっつってそれが提供される。早くて安くてうまい。
保呂田さんは、この「早くて安くてうまい」という要素は、どんな職業にも求められる普遍的なものかもしれないと語ります。
吉野家は1899年、明治時代からある店だといいます。片山さんは、ニューヨークの吉野家の壁にも、その創業ストーリーが大きく書かれていたことを思い出していました。
僕もあのニューヨークで吉野家行ってた時に壁にそのでっかいの書いてた。
さらに保呂田さんは、ロサンゼルスの吉野家では、牛丼が丼ではなくお重のようなランチプレートで、うどんやハバネロソースが添えられていたと、現地での変化ぶりを紹介します。
築地の魚河岸から始まった牛丼屋が、今や世界に出て、現地の人が自分たちのブランドと感じるほどになっていると片山さんは語りました。
コモディティ化した市場ほど、ブランドは強く機能する
ここで片山さんが「コモディティ」という言葉を整理します。コモディティとは、機能・品質・価格がほぼ同じになってしまった商品カテゴリーのことだと説明します。
コモディティっていうのは機能と品質と価格がほぼ同じになってしまった商品カテゴリーのこと。
牛丼、ガソリン、家電などがその例で、性能での差別化が難しくなった状態をコモディティ化と呼ぶと片山さんは述べます。
片山さんは、コモディティ化すると「早い・安い・うまい」のうち「安い」、つまり価格が重要になり、価格を下げるか量を増やすかしかなくなってくると指摘します。
そして、このコモディティ化は高級食材である日本の和牛にも起きていると保呂田さんは言います。品質改良が進み、どこで育ててもよいものが出てくるようになった結果、和牛もコモディティに近づいているという見方です。
A5なんて実は日本国内で育てられてる本当の和牛だったら七割八割A5になっちゃうんじゃないのかなって言われてるぐらい。
そのうえで片山さんは、むしろコモディティ化した市場ほどブランドが最も機能すると整理します。保呂田さんもこれに同意しました。
商品が同じなら、人は機能ではなく、自分のアイデンティティや感情、そのブランドが自分に合っているかどうかで選ぶようになる、と片山さんは説明します。
品質や価格に差がないと、比較軸は「より安いか」「より量が多いか」だけになり、価格競争に陥る
自分に合っているか、どんな記憶や愛着があるかで選ぶ。ブランドへのロイヤリティが決め手になる
ケラーのCBBEモデル、ブランドは「連想のネットワーク」
片山さんは、前回の収録でも触れたケビン・ケラーのCBBEモデルを引き合いに、ブランドは「連想のネットワーク」だと説明します。
つまり、吉野家のロゴを見たときに、その人の頭の中に何が浮かぶかが勝負になる、というのが片山さんの整理です。
吉野家のロゴを見た時に、人の頭の中に何が浮かぶかっていうのが勝負ですよね。
片山さんは、牛丼論争のように人がブランドについて語り合えば語り合うほど、そのブランドへのロイヤリティが上がり、コミュニティになっていくと補足します。
塾帰りの牛丼、異国の孤独——感情的連想が価格競争から抜け出す鍵
片山さんは、自身の吉野家にまつわる具体的なエピソードを語り始めます。中学時代、塾の帰りに食べた牛丼の記憶です。
詰め込み型の勉強めっちゃしてて、この吉野家の牛丼を食べた時の、これがもうちょっと至福のひととき。
保呂田さんも、塾帰りの牛丼は鉄板だったと共感します。
さらに片山さんは、ニューヨークで独り身で孤独だった時期の話を続けます。お金がなくてもうまいものが食べたくなった週末、電車に乗ってタイムズスクエアの吉野家に通った記憶だといいます。
その店で、見知らぬ人から「You set me up(お前が俺をはめたな)」と怒鳴り込まれ、直後に警察官2人に連れて行かれるという出来事もあったと振り返ります。海外ドラマのような体験まで含めて、吉野家の記憶になっていると話しました。
保呂田さんは、松屋派だと語っていた片山さんが、実は吉野家を心底好きだと気づきます。片山さんは、吉野家のロゴを見ると、こうした記憶がフラッシュバックすると語ります。
吉野家のロゴを見ると、そういうことがバーってこうフラッシュバックするわけですよ。
片山さんは、これこそケラーの言う、機能価値を超えた「感情的連想」だと整理します。
感情でブランドに忠誠心を持つ状態、いわゆる感情的ブランドロイヤリティがある人は、値段が上がっても乗り換えない、と片山さんは説明します。
吉野家もチーズを投入、王者は追随ライバルにどう動いたか
保呂田さんは、こうした感情的連想が強い吉野家に対し、後発のすき家がチーズ牛丼やねぎだく牛丼といった差別化商品を投入するしかなかったと指摘します。
ところが、その吉野家も今ではチーズのトッピングができるようになっていると保呂田さんは驚きを語ります。
今吉野家でチーズトッピングできるですからね。
最近吉野家に行くと、チーズもねぎだくもあり、「どうした吉野家さん」と感じたといいます。片山さんは、これによって定着していたロイヤルカスタマーが離れたのか、また戻ってきたのかはわからないとしつつ、すき家などにある程度顧客を取られていたのではないかと推測します。
そのうえで片山さんは、新しい商品を出してくるライバルに対し、最初の王者である吉野家がどう動いたかは、これからブランドをつくる中小企業にとって学びになるのではないかと問いかけます。
明日からの第一歩、「誰にどんな体験を作るか」を決める
片山さんは、中小企業が実践すべき第一歩として、まず自分のビジネスがお客さんにとってコモディティ化していないかを問うことだと述べます。
同業他社と比べたとき、機能・価格・品質しか語れなければ、それはすでにコモディティ化だと片山さんは指摘します。
同業他社と比べた時に、機能、価格、品質しか語れなかったら、もうそれはコモディティ化ですよね。
そのうえで、お客さんの頭の中で自社が何を連想させているか、感情的連想がどう積み重なっているかがコモディティ化した市場での勝負になると整理します。マクドナルドのQSC(クオリティ・サービス・コスト)と、吉野家の「早い・うまい・安い」が同じ構造だという話も出ています。
片山さんは、吉野家が1899年から、マクドナルドも昔から続いていることを挙げ、こうしたブランドは一朝一夕でできたものではない点を、中小企業がまず理解すべきだと語ります。
片山さんは、レイヤーのように少しずつ重なって歴史が裏付けとなったブランドだからこそ、最初の一歩は「誰のためにどんな経験・体験を作るか」を考えることが原点になると述べます。
最初の一歩っていうのは、誰のためにどんな経験、体験を作るかっていうのを考えるっていうことが原点なんちゃうかな。
保呂田さんは、ブランドをつくってすぐに広告を打ったり、ロゴを変えたりするだけでは、積み上がっていくものが薄っぺらくなると指摘します。
片山さんは、吉野家がいいかすき家がいいかという話ではなく、自分のビジネスがお客さんにとってどちらを目指しているかを知っているかが大事だとまとめます。
片山さんは締めくくりとして、リスナーのビジネスパーソンも、自分の会社を最初の吉野家1軒だと思って、どんな価値や体験を提供できるかを見つめ直してはどうかと提案しました。
自分の会社をこの一番最初の吉野家一件だと思って、どういう価値とか、どういう経験を提供できるか。
まとめ
牛丼やバーガーの派閥論争は、機能や価格で差がつかないコモディティ化した市場で、ブランドがどう機能するかを映し出しています。塾帰りの牛丼や異国での孤独を癒やした記憶のような「感情的連想」こそが、価格競争から抜け出す鍵であり、それは誰にどんな体験を作るかという原点から、時間をかけて積み上げられていくものだと語られました。
- 機能・品質・価格に差がなくなったコモディティ市場では、ブランドは価格ではなく感情やアイデンティティで選ばれる
- ケラーのCBBEモデルでは、ブランドは顧客の頭の中の「連想のネットワーク」であり、ロゴを見て何が浮かぶかが勝負になる
- 塾帰りや異国での体験のような「感情的連想」が強いブランドは、値段が上がっても乗り換えられにくい
- 吉野家やマクドナルドのブランドは一朝一夕ではなく、体験の積み重ねという歴史の上に成り立っている
- 中小企業の第一歩は、自社がコモディティ化していないかを問い、誰のためにどんな体験を作るかを決めること






