新シリーズ「ブランディングの種」、なぜ最初のテーマが音なのか
番組は「ブランディングって結局なんなん?」を難しくせずに解きほぐす実験室として進んでいます。今回から、MCの中島静香さんの持ち込みで新シリーズ「ブランディングの種」が始まりました。
提案したのは保呂田直行さんです。中小企業がブランディングをやりたいと思っても、何から手をつければいいか分からず、とりあえずロゴや壁の色から考えがち、という現状意識が出発点になっています。
何から考えていったらいいの?っていうものの中にこんなのもありますよっていうのを、ちょっとセグメントを狭くして、今日はご提案をしたかった。
その第1弾のテーマが「音のブランディング」です。シリーズは今後も続いていく実践編と位置づけつつ、まずは概念を理解してもらうところから始めると保呂田さんは説明します。
コンビニの入店音とサウンドロゴ、その多くが「音」だった
保呂田さんはいくつかの音を実際に流していきます。ファミリーマートの入店音を聞くと、中島さんはすぐにどのコンビニか思い浮かべてしまいます。
でもどこのコンビニかみんなわかってます。
続いて別のメロディーを流すと、中島さんはセブン-イレブンのCMだと言い当てます。松源やロピアといったスーパーのテーマソングも、店内で聞くうちに子どもが口ずさむほど浸透していると話が広がります。
でもでもほら、これって全部音なんですよ。
身近な例をたどると、私たちの生活にはすでに音のブランディングが深く入り込んでいることが分かります。しかし「あなたの会社の音は何ですか?」と問われると、答えを持っている人はほとんどいません。
目に見える音、目に見えない音というプロの仕事
保呂田さんは、音のブランディングには「目に見える音」と「目に見えない音」があると整理します。作曲やメロディーは前者ですが、収録現場での調整のような後者もまた音のプロの領域だと語ります。
具体例として挙げるのが、収録前のマイクや音の調整です。エンジニアがイコライザーで周波数帯ごとに空間や環境に合わせて整えている、その一つ一つが目に見えない音の仕事だと説明します。
話はコンピューターにも及びます。Intelの起動音のように、メーカーごとのメロディーが人間の深層心理に入り込んでいる例が挙げられました。
独裁者も使った「聞こえない音」の力
保呂田さんは、音が心理に働きかけた歴史的な例として、ある独裁者の演説を紹介します。演説の説得力を増すために、人の耳には聞こえない重低音を巨大なスピーカーで流していたという話です。
これって人の耳に聞こえないけど、人間の声と一緒に増幅して説得力だったりとか、まあちょっと若干洗脳に近いところはあるけれど、サブリミナル的な効果があるとされていて。
保呂田さんは、こうした仕組みを悪いことに使うか、いいことに使うかが分かれ道だと話します。ブランディングとして正しく使いたい、そのためにロジックを理解して使おうという姿勢を示しました。
サウンドロゴは「かっこいい」で作ってはいけない
片山光祐さんは、身近な仕事として企業の映像制作の話を持ち出します。オープニングやエンディングにロゴを入れる際、一緒にサウンドロゴを作るケースが多いといいます。
保呂田さんによれば、日産やトヨタ、三菱、海外メーカーまで、自動車メーカーにはそれぞれ違うサウンドロゴが存在します。中島さんはマツダの音を思い出し、意識していなくても耳に残っていることに気づきます。
人は1日の生活だけで2万回以上の広告にさらされると言われます。その繰り返しがブランドへの愛着を育て、似た商品のどちらを選ぶかという場面で、なんとなくの決め手になっていると保呂田さんは説明します。
だからこそ、サウンドロゴは計算して作る必要があります。作り手の「これかっこいい」という感覚だけで作ると独りよがりになり、ブランドに馴染む音にはならないと片山さんはまとめます。
ちゃんと馴染む感じに作っていかないとあかんってことやね。
ジョーズ、ゴジラ、BPM――音が感情と行動を動かす仕組み
音がどれほど人の心をとらえているかの例として、映画『ジョーズ』が挙げられます。名前を言われただけで、あの旋律が頭に浮かぶという反応が出演者から出ました。
やばいよね。それ(ジョーズの音)言われただけで浮かぶ。すごいよね。
保呂田さんは、音には安定性と不安定性があり、不安定な音は人を不安にさせると説明します。『ジョーズ』や『ゴジラ』の音は恐怖の雰囲気を持ち、警告のように人が真っ先に感知するといいます。
リズムも感情や行動に影響します。BPMが60〜70程度は人間の心拍に近く安定を与える一方、90ほどに上げると心臓がバクバクするような状態になり、食べる速度まで早くなるといいます。
身近な例として、子どもに運動会の音楽をかけると片付けが早くなるという話が出ました。ポイントは「早くしなさい」と言葉で急かすのではなく、環境音として自然に流すことだと保呂田さんは強調します。
自然に人をコントロールするためには、この自然に音をかけてあげたりとか、それが大事なことなんですよ。
中小企業でも音のブランディングは始められるのか
中島さんは、シリーズ第1回が音であることに驚きつつ、中小企業がいきなりサウンドロゴを作るのは難しいのではと問いかけます。
中小企業の皆さんが、まずサウンドロゴを作るというプロセスに入るのは難しいのでは?
中島静香 さんからの質問
保呂田さんは、ロゴやホームページ、ブランディング動画に挑戦する会社は多くても、音から考えてみようという会社はほとんどない、と逆の視点を返します。だからこそ見落とされている入り口だといいます。
保呂田さんは、会社のサービスや物を、お客さんの心理をどう動かしたいかという観点で考えるとき、色と同じくらい音が重要だと語ります。それでいて、最も見逃されやすいのが音だと指摘します。
とてもみんなが見逃しやすいもの、それが音なんじゃないかなと。
例として、鹿威しの「カコーン」という音が一発で和の雰囲気を作ることや、人の声も音であり「この人の声は落ち着く」と感じさせる要素があることが挙げられました。空間や雰囲気を司るのが音だという話です。
商談の場も動画のBGMも、音から逆算して選ぶ
耳から入るブランディングを意識すると、商談の場づくりも変わってきます。中島さんは、お客さんを招いたとき工場の音がしている方がいいのか、静かな場所で話すべきかで整え方が変わると指摘します。
作っている音が聞こえた方がリアリティが伝わる場合もあれば、この状況では話せないという場合もあります。目的に応じて環境音をどう扱うかを考える必要がある、という気づきです。
保呂田さんが実践としてまず挙げたのは、動画のBGMの選び方です。映像制作やSNS投稿がどの企業でも当たり前になった今、どのBGMを選ぶかをちゃんと考えるべきだといいます。
なんとなく自分好きなやつ選ぶとかじゃなくて、そのシーンに合ったやつちゃんとはめるみたいなことが、企業ブランディングっていう観点からすると大事かもね。
音の力を実感する方法として、真面目な映像に新喜劇の音を当ててみるという例が挙げられました。合わない音を乗せると印象が一変することが、一度試すとよく分かるといいます。
演者の声色まで――音を追求する面白さ
最後の「ナカジマノート」で、中島さんは声の仕事をしてきた自分でも、耳から染み込むイメージという観点を見逃していたと振り返ります。ブランディングを考える人も、この視点を見落としてはいけないと語ります。
保呂田さんは、演者であればこそ、声色や声の表情まで含めて調整できると応じます。エンジニアと組んで、どうつなぎ、どう調整するかを突き詰めることで、さらにプロの技になっていくといいます。
一方で保呂田さんは、この回で語れたのは音の話のほんの一部だと付け加えます。周波数帯の話まで踏み込むと一般のリスナーには分かりにくくなるため、あえて入り口にとどめたと明かしました。
シリーズ「ブランディングの種」の次回テーマは「色」です。一度気づくと目に入るものが変わりそうだと期待を語り、第1回「音」の回は締めくくられました。
まとめ
新シリーズ「ブランディングの種」第1回は、ロゴや色に隠れて見落とされがちな「音」がテーマでした。入店音やサウンドロゴから、音がいかに記憶と感情、行動を動かすかを身近な例で確認し、音から逆算して「どう感じてもらいたいか」を考える大切さが語られました。
- コンビニの入店音やサウンドロゴのように、音は無意識のうちにブランドの記憶を作っている
- 音には安定・不安定があり、BPMなどのリズムは人の感情や行動の速度にまで影響する
- サウンドロゴは「かっこいい」ではなく、ブランドに馴染むよう計算して作る必要がある
- 商談の環境音や動画のBGMも、なんとなくではなくシーンに合わせて選ぶことが大切
- 音から考えてみる会社は少ないからこそ、音は見落とされたブランディングの入り口になる






