なぜブランドには「赤と青」の対立が多いのか
今回の「ブランディングの種」シリーズのテーマは色です。保呂田さんは、飛行機に乗ったときの体験からこの話を持ち込みました。
この前飛行機に乗ったんですね。ANAに乗ると青い翼じゃないですか。反面、JALに乗ると赤い翼じゃないですか。
なんかやたら赤と青の対立構図って多くない?って思ったんですよ。
保呂田さんは航空会社を例に、赤と青の多さに気づいたと話します。ブリティッシュエアやアメリカン航空には赤、ユナイテッド航空には青が入っているといった具合です。
ナショナルキャリア系って赤多いのかな。中国系とか。で、その他青が多かったり。
この赤と青の対立は、航空会社だけの話ではありません。保呂田さんは政治やスポーツにも同じ構図を見つけます。
民主党と共和党、アメリカですけど、赤と青で確かに戦ってるし、赤を対比で喧嘩をするって言ったら、ボクシングも赤コーナー。
一方で、相撲のように赤と青の対比では説明しにくい例もあり、話は東西対決へと脱線しつつ進みます。対立構造をうまく作りやすいのが青と赤だという点が、この話の起点になっています。
JAL、アメリカン航空、ナショナルキャリア系に多い。ボクシングの赤コーナーなど攻めの印象
ANA、ユナイテッド航空に多い。政治では赤に対抗する側の色として使われる
マクドナルドの赤、カフェの緑に隠れた「設計思想」
赤と青の対立とは別に、色には明確な理由で選ばれているものもあります。保呂田さんが挙げたのはマクドナルドの看板です。
マクドナルドの看板の色、赤、黄色。じゃあそこに関しては明確な理由があると思うんですよ。食欲の色。
一方、カフェに多いのは緑です。保呂田さんは、緑がリラクゼーションを与える色だと説明します。スターバックスがその代表例です。
リラックスをする。人間の心にリラクゼーションを与えるような色。
保呂田さんは、色選びには2つの視点があると整理します。食欲を促進するか減退させるかという色そのものの効果と、お客さんにどんな気持ちになってもらいたいかという設計思想です。
お客さんにどんな気持ちになってもらいたいかっていう設計思想がすごく、自社のブランディングにはとても必要なんじゃないかと。
片山さんも、企業のウェブサイトをプロデュースする際に色を重視すると話します。コーポレートカラーがない企業には、カラー心理学に基づくアンケートを使うそうです。
アンケート用紙を作って、当てはまる当てはまらないみたいなのに丸つけていってもらうんですよ。その結果、例えばこの会社は情熱的だから赤を使っていくとか。
自分が思う「自分の色」と、人から見た色は違う?
話は企業から個人へと移ります。保呂田さんは、自分から見た自分の色と、人から見た自分の色は違うのではないかと問いかけます。
自分から見た自分の色と、人から見た自分の色って違うんじゃないのかなって思ったことがあって。
保呂田さんは、今は黒い服しか着ないものの、心の中の自分の色はオレンジだと話します。ところが片山さんの印象は違いました。
僕が思ってる(保呂田さんの)色は赤。
ここでのやり取りは服の色ではなく、あくまでイメージの話です。中島さんは、陽気な保呂田さんにはオレンジがしっくりくると受け止めます。
保呂田さんは、ブランディング会社のショベリも、サービス提供元の株式会社セイもオレンジだと明かします。セイのオレンジには狙いがあると言います。
うちは元々DJプロダクションとして有名になっていったんで、POP性、エネルギーがテーマだったから、オレンジにした経緯はある。
この流れから、会社だけでなく個人にもブランドカラーが必要ではないかという話になります。保呂田さんはアイドルやゴレンジャーを例に挙げます。
会社が自社のブランディングをするっていう時と、パーソナルな自分のブランドカラーは何色なのかっていうのを持つのもすごい大事なのかなと。
赤はリーダー、ピンクは可愛い、イエローはおちゃらけ役といったキャラ設定は、色による印象の操作でもあります。中島さんはそこにブランディングの本質を見ます。
コカ・コーラとペプシに学ぶ「あえて逆の色」で戦う方法
中島さんは、赤と青の話に戻り、ライバル戦略としての色の使い方を問いかけます。赤い企業に対抗するなら青でいくという発想です。
あの赤い企業のライバルになりたいと思ったら、うちは青でいくかみたいな戦略もありってことですか?
その代表例が、コカ・コーラの赤とペプシの青です。あえて対立の色をぶつけることで、自社を伸ばしていく戦い方だと保呂田さんは説明します。
あえて対立としてぶつけたことによって自社を伸ばしていく。
JALとANAも同じ構図です。乗客側もJAL派かANA派かという感覚で見ており、色による対立が浸透していると2人は話します。なお正しくは「エーエヌエー」ではなく「ANA」と呼ぶべきだとも触れられました。
何色の翼かはとても大事な要素で。
一方で、赤や青以外の色で差別化する例もあります。維新の会の緑や、参政党のオレンジなど、他と違う色を掲げて戦う方法です。カラーをつけてどう戦うかという視点が、色の戦略の核になっています。
ティファニーブルーは、なぜ色だけでブランドを思い出させるのか
色だけでブランドを思い出させる象徴的な例として、ティファニーブルーが挙がります。保呂田さんは、青い箱がプレゼントの代名詞になっていると話します。
女の子がプレゼント何が欲しいかって言ったら、もう青い箱のさあって言われちゃうぐらい。
このエピソードには元ネタがありました。片山さんが20年ほど前にニューヨークで女性にインタビューした際、青い箱のものが欲しいと語られたそうです。時代性を感じさせる話ではありますが、ティファニーブルーという色自体は今も浸透しているという点で3人の見方は一致します。
ティファニーブルーには色の番号もあります。片山さんが調べてきたのは「1837ブルー」です。パントーンなどの工業的な色規格に基づく番号だと言います。
さらにティファニーブルーは色彩商標として登録されています。つまり、他社が同じ色をブランドカラーとして使うことはできないという、色そのものを守る仕組みが成立しているのです。
世界的な色見本の規格。番号で色を指定でき、媒体が変わっても同じ色を再現できる
日本のインク会社が定める色見本。印刷などで色を統一する基準になる
色そのものをブランドの識別として登録する制度。ティファニーブルーはこれに登録されている
ネクタイの色が選べない社長へ——パーソナルカラーの原点
個人の色の話として、パーソナルカラー診断が取り上げられます。保呂田さんの会社はパーソナルカラー診断サロン「カラクル」を東京で運営しています。
今は女性がメイクを選ぶ基準としてイエベ・ブルベが知られていますが、保呂田さんによれば、これは元々おじさんのためにあったものだと言います。
企業の経営者って、ネクタイの色選べないじゃないですか。色のセンスがないから。おじさんだから。
そこでプロのカラー診断士が、髪や目、肌の色に合ったネクタイの色を提案する。これがカラー診断という仕事のルーツだと保呂田さんは説明します。
色が合っていないと、前回の音編で触れた不協和音のように、違和感のある印象を与えてしまいます。会社の顔として人前に出る立場なら、こうした色もブランディングの対象になります。
自社の色を決める「棚卸し」と、バラバラを揃える一歩
最後は、明日から予算をかけずにできる一歩の話です。片山さんは、主役となる一色を決めるために棚卸しが必要だと話します。
主役の一色を決めていくために、いろんなことを棚卸していくっていうことがすごい大事かなと思っていて。
保呂田さんは、決めた色を社内に浸透させる方法として、オフィスの壁の色を塗ることを挙げます。これはインナーブランディングの実践です。
インナーブランディングを実践している会社は、ほんとこれちゃんとやってる。会議室のアクセントカラーをオレンジで来週塗っといてください。
色を決めたら、ホームページ、SNSのプロフィール、名刺、営業資料、看板など、あらゆる接点で統一していきます。保呂田さんは、特にズレが起きやすい箇所を指摘します。
特に多いのが、パワポの資料とサイトの色のちぐはぐっていうのは結構あると思うんよね。
色がバラバラになる背景には、画面と紙で色の成り立ちが違うという事情があります。画面はRGB、印刷はCMYKで、混色の仕組みそのものが異なります。
保呂田さんは、まず画面上でサイトとパワポの色を揃え、さらに印刷物でも同じ色を再現できるようにすることを勧めます。名刺、封筒、請求書のロゴまで含めて統一するのが理想です。
こうした統一ができていない中小企業は多いと保呂田さんは見ています。長く愛していく色を決めるのは重要な仕事であり、プロと相談しながら進めた方がよいと締めくくります。
まとめ
色は会社をきれいに見せるためだけのものではなく、お客さんにどんな気持ちになってもらいたいかという設計思想を目に見える形にしたものです。赤と青の対立からティファニーブルーまで、身近な色の裏にあるロジックを知ることで、選ばれる側から選ばせる側へと視点を切り替えられます。
- 色選びには、色そのものの効果と「どう思われたいか」という設計思想の2つの視点がある
- コカ・コーラとペプシのように、あえて逆の色をぶつけて戦う戦略もある
- ティファニーブルーは色彩商標として登録され、色だけでブランドを想起させている
- 明日からの一歩は、主役の一色を棚卸しで決め、サイト・資料・名刺の色を揃えること
- 画面のRGBと印刷のCMYKの両方で自社の色を指定できる状態が理想



