共感はあるのに、なぜ行動につながらないのか
前回は照命写真館が生まれるまでのストーリーを掘り下げました。今回はそれをどう多くの人に届けるかを、出演者みんなで一緒に考える回です。
今までがコンテキスト、ストーリーの種の部分だとしたら、この後どのようにして花を咲かせていくのかっていうことをみんなで話していきたい。
片山さんは現状の課題をこう整理します。照命写真館はすでに共感されるブランドにはなっているものの、行動を生むブランドにはまだなっていない、という見立てです。
撮影を受けた人やご家族からの評価はめっちゃ高い。でも今サービスをスタートさせたけれども、まだ存在を知られていない。これが最大の課題かなと思ってます。
髙田さんもこの指摘に同意します。口コミで少しずつ客は増えているものの、日々の業務に忙殺され、マーケティングにはまだ手がつけられていない状態だといいます。
発信そのものが止まっているわけではありません。インスタグラムのアカウントは持っていて、撮影許可をもらえた写真は出しているとのことです。
一方で、撮影された方の満足度はほぼ100%に近いのに、その前段階でつまずいている感覚がある、という話になりました。
アプローチがまずできてない。今までボランティアに近い形でやってたので、それをビジネスとしてやるっていう線引き、割り切らないといけない。そこがちょっと躊躇してるとこでもあります。
ウェブサイトを「共感ドキュメント」として作り直す
片山さんが最初に提案したのは、サービスのウェブサイトの再設計です。サイトを作るプロセス自体が、自分の頭の整理にもなるといいます。
この提案に対し、髙田さんは実はウェブサイト制作のプロジェクトがすでに動いていることを明かします。保呂田さんがサイトを作りたいと言い、髙田さんも一緒に文字を作っている最中だといいます。
片山さんは、機能的な面も感情的な面も、どういう順番で伝えるかが大事だと語ります。そのうえで、ブランドの捉え方を次のように話しました。
ブランドっていうのは、お客さんとのコミュニケーションによってその価値をしっかり最大化させていくもの。だからこそ、今まさにこれをやりたい。
片山さんがサイトの方向性として挙げたのは、サービス説明ではなく、残される家族の心から始める作り方です。
撮影を検討してる人っていうのは、おそらく親が弱ってきているってことに気づいてきている。そろそろ何か残した方がいいのかなって葛藤しているフェーズかなと。それをなかなか大きな声で言いにくいと思うんですよ。
そこで、家族の心に寄り添うキャッチコピーをメインビジュアルに置く案が出ます。焦らせるのではなく、希望を与える文脈で言葉を作っていくという考え方です。
まだ間に合う、あなたの光を残しましょうみたいな。救いの言葉で始めていく。焦らすんじゃなくて、こう希望を与えるみたいな感じの文脈で言葉を作っていったらどうかな。
「まだ間に合う」は一見焦らせる言葉に思えます。しかし片山さんは、優しいビジュアルとともに置けば、受け手には安心感や救いとして届くはずだと説明します。
髙田さんはここでQOLという視点を持ち込みます。写真を撮って綺麗になった人は、外に出かけたくなり、人に会いたくなり、写真を見せたくなる、というのです。
一つのその機会になると思ったんですよ。元気になる一つのきっかけ。家族にとってもいいし、本人にとってもいいし。
片山さんは、この立ち上げの思いや利用者の声もサイトに載せ、サイト自体を「共感ドキュメント」にしていくことを勧めました。商品紹介ではなく、家族を中心に据えたストーリーの紡ぎ方です。
写真というサービス内容や撮影メニューを説明する構成
残される家族の心を中心に、立ち上げの思いや利用者の声をストーリーとして紡ぐ構成
写真ではなく「体験」に値段をつける
話題は価格設定に移ります。髙田さんは、こうした撮影がいくらぐらいかかるものか、素人目線ではわかりにくい世界だと感じているといいます。
片山さんは、最初のアンケートにあった5万円という価格について、正直少し安いと感じていると話します。理由は、提供しているものが写真そのものではないからです。
ムネが提供しているのは写真自体ではない。そこに至るまでのプロセス、家族との絆作り、思い出作りっていうところがサービスそのものだと思うので、写真撮影としてのプライス付けじゃなくても全然いい。
具体策として片山さんが挙げたのは、入り口を低価格にし、オプションで積み上がる料金設計です。子どもの写真を撮る写真館などのプラン表を参考にすればよいといいます。
片山さんは、ライトなコースで一度入ってもらえば、スマホの性能が上がった今でもプロの技術の差は伝わり、次の価値創出につながると話します。カメラマンとして食べていける形にもなります。
片山さんはさらに、前回の話にあった「習慣にしてほしい」という髙田さんの思いにも触れます。一度きりの儀式ではなく、続けてもらう発想です。
一生に一回の儀式で遺影を撮りたいのよじゃもったいない。家族と一緒におじいちゃん、おばあちゃんが生きてる証を照らすっていう部分を共感してもらえる人がいたら、コミュニティのようになってきたら、また価値が違う。
写真館・カフェ・介護をつなぐ中長期の構想
話は髙田さんが描く中長期の構想へと広がります。写真館と名乗っている以上、最終的には建物としての写真館を作りたいといいます。
カフェ兼写真館なんですけど、そこで人が集って、自由にコミュニケーションを取ってもらえる。その中でヒアリングしたことを自分史として残したい。それは写真と、あと言葉と。
スタッフには介護経験のある人を想定し、カメラマンも介護職の人に副業として担ってもらう構想です。その人たちの収入にもなり、写真という新しい体験にもなると考えています。
いろんな部分で総合的にいいことが、ケミストリーが発生するんじゃないかな。
誰に、どう届けるか。ターゲットとメッセージの設計
平野さんは、最も大事なのは「誰にどう届けるか」だと切り出します。片山さんは、決断するのは撮らせたい家族、多くは40代から60代の娘や息子だと整理します。
家族の中で決断する人、多くは40代から60代の娘さんなり息子さん。お母さんの笑顔を残したい、お父さんの笑顔を残したいと思ってる人の心を動かす設計をやっていかないといけない。
片山さんは具体的な人物像も描きます。たとえば55歳の娘、母親は78歳で最近足腰が弱ってきた。写真を撮りたいが遺影みたいで縁起が悪いかなと迷っている人です。
そろそろ写真をって思いながらも、遺影みたいで縁起が悪いかなって迷ってます。そんな人に「今撮ることは今を祝うことです」って伝える。
ここで、「まだ間に合う」と「今を祝う」はどちらも後悔防止のワードだという整理が生まれます。「もっと早くすればよかった」とならないための言葉です。
平野さんが現場での実感を尋ねると、髙田さんは施設での撮影の難しさに触れます。認知症が進んだ状態で撮ることになり、後悔が残る場合があるといいます。
施設とかで撮影すると、認知症入っちゃってる方が多いんで、ちゃんとコミュニケーションが取れる状態で撮っておけばよかったっていう思いはあるんじゃないかなと。
片山さんは、照命写真館は後悔を防ぐサービスであり、今を祝うサービスでもある、その両方を使えるのが強みだとまとめます。
髙田さんは、家族という言葉は口に出したくない思いがあったこと、そして「後悔を防ぐ」「今を祝う」という言い方をまだ言葉として成文化できていなかったことに気づいたといいます。
なくはなかったけど、言葉としてちゃんと成文化できてなかった。すごいありがたいですね。ちょっとイメージができてきました。
年内にサイトを形に。宿題と、アウトプットから始まる話
保呂田さんは、ブランドの中心に何を置くか、つまり柱をどう立てるかという話だと補足します。これから頑張りたい中小企業やフリーランスにも参考になる事例だと語ります。
そして保呂田さんは髙田さんに宿題を出します。次の1カ月、年内にウェブサイトを形にしよう、という提案です。
鉄は熱いうちに叩かなきゃ、これは男じゃないよ、ムネくん。
平野さんは、最後に軽く振って時間を置いてから経過を聞く展開を想像していたと明かします。しかし1カ月で詰める流れになり、驚いた様子でした。髙田さんは叩き台でもいいから形にしたいと応じます。
片山さんは、このサービスはフランチャイズ化もできるのではないかと可能性にも触れました。
最後に髙田さんは、考えているだけでなくアウトプットすることの意味を語ります。文章にして人にアピールすると、アドバイスや人の紹介が生まれるといいます。
まとめ
共感は生まれているのに行動に届いていない照命写真館を、事業として育てるための具体策を話し合った後編でした。サイト・価格・メッセージ設計を通じて、写真を家族の時間を整える体験として定義し直す視点が中心です。
- 最大の課題は満足度ではなく、まだ存在を知られていないこと
- ウェブサイトは商品紹介ではなく、家族を中心にした共感ドキュメントにする
- 価格は写真そのものではなく体験に対して付け、入り口を低くしてオプションで積み上げる
- ターゲットは撮らせたい家族、多くは40〜60代の子ども世代
- 「まだ間に合う」「今を祝う」はどちらも後悔を防ぐメッセージになる





