AIで全員が「ゴールドクロス」を着る時代とは
この回で片山さんが掲げたテーマは、「AI時代、なぜパーソナルブランディングが生存戦略になるか」というものです。文章もデザインも動画編集も、AIによって誰でもそれなりのクオリティを出せるようになった、という時代認識が出発点になっています。
すごい最高な時代に僕はなったなと思っていて。パソコンができた時と同じぐらいの衝撃を受けてますよ。
片山さんは、この状況を漫画「聖闘士星矢」に例えます。本来は12個しかない最強の防具を、いまや全員が身につけられるようになった、というイメージです。
全員が12個しかない数の最強のゴールドクロスを全員着て着ることができる時代になったって思ってて。
つまり、スキルや装備そのものではもう差がつかない、というのがこの回の前提です。片山さんは、だからこそパーソナルブランディングをみんながやっていったほうがいい、と話します。
なぜ日本でパーソナルブランディングは広がらないのか
パーソナルブランディングは、アメリカでは確立された概念だと片山さんは説明します。「CEOのように喋る方法」を扱うポッドキャストや書籍が山ほどあるといいます。
日本ってさ、なかなかこの文化が合いにくいというか、アメリカとかだったら自己アピール、僕ってこういう人みたいな感じでやるのが正義だけれども、日本ってちょっと違う感じがある気がするな。
では、なぜ日本では広がらないのか。片山さんは理由を2つ挙げます。1つは「出る杭は打たれる」文化による、個人が前に出ることへの抵抗感です。
もう1つは、終身雇用の名残です。会社の看板で生きてきた世代が多く、個人で勝負するという発想自体が少ない社会だと片山さんは指摘します。
ただし、その状況は変わりつつあるとも話します。終身雇用が崩れ、副業が当たり前になり、何よりAI時代に入って肩書きやスキルだけでは差がつかなくなってきた、という流れです。
「できる人」は増えたのに「一緒に仕事したい人」は増えない
資料も文章も動画の台本も、それなりのクオリティなら誰でも作れる。片山さんは、そんな中で起きている違和感を指摘します。
なんかできる人っていうのは確かに増えたけど、一緒に仕事したい人って言うと意外と数は増えてないんじゃないかなと。
この指摘は、オファーを受ける側であるMCの平野さんに強く刺さります。タレント業をしている立場として、一緒に仕事をしたいと思ってもらえなければオファーが来ない、という実感があるからです。
「できる」ではなく「一緒に仕事したい」と思わせる何かが問われる時代になった、というのがこのセクションの核心です。
演出されたブランドが「毒」になるとき
ここから片山さんは、ブランディングの権威とされるデビー・ミルマンさんの指摘を紹介します。パーソナルブランディングは、やり方を間違えると自分を縛る罠になる、という話です。
ミルマンさんが指摘するのは、オーディエンスが求める自分を演じ続けることで、本当の成長が止まったり、固定されたイメージに縛られて新しい挑戦ができなくなったりするリスクです。これを「作り上げられたアイデンティティのリスク」と呼ぶといいます。
保呂田さん自身も、和牛の話をしすぎて「和牛を売っている人」だと思われている、と冗談まじりに例を挙げます。一度こういう人だと思われると、それ以外のことがやりづらくなる、という感覚です。
さらに片山さんは、10年ほど前からSNSの隆盛とともに広がった実践型のパーソナルブランディングにも触れます。朝5時に起きてジムに行き、読書をするといったキラキラした投稿がその典型です。
こういう人を見て、この人と仕事したいって思う?ならないよね。
「金持ちの付き人」として高級ホテルを巡る投稿なども例に挙がりました。すごいとは思っても、一緒に働きたいとは思いにくい、という点で三者の意見は一致します。
本質を正直に構築するとはどういうことか
片山さんは、見せかけを演出する方向に行くと毒になり、本質を正直に構築する方向に行けば武器になる、と整理します。ミルマンさんの言葉として「意味は演劇的に製造するんじゃなくて、正直に構築するもの」だと紹介します。
正直に構築しないとそんな無理は出ますよ。ずっと続けれないもん、そんな。
保呂田さんは、無理をしてキャラを盛った過去があると打ち明けます。個性を出そうとすると、つい盛りたくなるものだ、という共感が広がります。
ミルマンさんはさらに、自分のDNAや周りの人との誠実な関係性の中から、時間をかけて正直に意味を築き上げることが大事だと述べているといいます。
オーディエンスが求める自分を演じ、見せかけを製造する。固定イメージに縛られ、無理が続かない
自分のDNAや誠実な関係性から、時間をかけて正直に意味を築き上げる
「本質がダサかったら」どうするか——弱みを強みに変える
ここで保呂田さんが、この回で最も現実的な問いを投げかけます。本質を正直に出すといっても、その本質がダサかったらどうするのか、という問いです。
本質を正直に出すっていうけど、仮にもし本質がダサかったらどうする?
保呂田さんは、仕事をせずにTikTokばかり見ている自分を例に挙げます。それは正直な姿だが、そのままインスタに出したいとは思わない、という本音です。
これに対して片山さんは、本質そのものより、それをどう価値変換するかが大事だと答えます。TikTokをよく見ているなら、引き出しが多い、さまざまなジャンルの動画を分析できる、といった強みに言い換えられる、という発想です。
物は言いようだな。
保呂田さんは具体例も挙げます。人と話すのが苦手な知り合いは、そのぶん文章で丁寧に伝える力が育った、と気づいたといいます。コンプレックスがそのまま強みになった例です。
保呂田さんは、東大法学部を出たものの就職がなかなか決まらなかった知人の話も紹介します。模擬面接で「勉強しかできません」と正直に言ったところ、そのギャップが刺さって内定が決まったといいます。
AIで変わる採用——スキルより「情緒的判断」へ
話題は採用の変化に移ります。片山さんは、局アナの採用選考でも、最初からZoomでの顔合わせを試し始めているところがある、と紹介します。
従来はエントリーシートによる書類選考から始まるのが一般的でした。それをやめる理由はシンプルで、エントリーシートだけでは判断できなくなってきたからだといいます。
書類選考から入らなくなったのは、エントリーシートだけでは判断できなくなってきたから。これはなぜだと思うか。
片山光祐 さんからの質問
応募者がAIでエントリーシートを作れるようになり、誰でもそれなりに良い内容を書けてしまうためです。書類だけでは差がわからなくなった、というのが理由として挙げられました。
そこで、まず一緒に話してみて、声のトーンや間に触れ、この人と現場に立てるかを早く見たい、という流れになってきているといいます。成果やスペックではなく、情緒的な判断に軸足が移ってきた、という見立てです。
将来単純にアナウンス力が高いアナウンサーよりも、エモいアナウンサーの方が売れる時代が来るかもしれない。
AI時代にたどり着いた答えは「人間力」
三者は、結局のところ差が出るのは人間力だ、という結論に至ります。片山さんは、これは昔に戻ったともいえる、と話します。
逆に言うと昔に戻った。1周2周回って。
保呂田さんは、AIが来たからこそ、生身の人間の力があらためて浮き彫りになった、と表現します。
何から始める?パーソナルブランディング実践3ステップ
では具体的に何から始めればいいのか。片山さん自身も、自分が何者かがわからず1年半ほど悩んだといいます。
片山さんは、コテンラジオのプロデューサーである樋口聖典さんのセミナーで印象に残った言葉を紹介します。自分らしさは「ついついしてしまうこと」に出る、というものです。
自分らしさって、ついついしてしまうことに出ますよ。
片山さんの場合、ついついやってしまうのは、どんな人でも会社でも良いところを見つけて広めてしまうことだといいます。テレビの情報番組の制作現場で、店の特徴を3つ見つける訓練を毎日受けてきたことが背景にある、と振り返ります。
その「ついつい」を踏まえて、片山さんはパーソナルブランディングの実践ステップを3つ挙げます。
ここで大事なのは、盛らないことだと片山さんは強調します。盛ると情緒的な価値がむしろ下がっていくからです。
信頼は「積み重ね」でしか作れない
平野さんは、「凄そうより信頼できそう」という点は、自分が普段話すうえで最も大事にしていることだと共感します。聞き手に信頼してもらえなければ、何を言っても届かないからです。
明日の天気一つも、この人は普段から何言ってかわからへんから、急に雪ですって言われても(信じてもらえない)。
片山さんは、ミルマンさんが数百回のインタビューから学んだこととして、2つのポイントを紹介します。忍耐力と、長期的な評判です。
真に価値のある仕事や評価は一朝一夕には生まれない。目先の流行に惑わされず本質を追求し続ける力
評判は広告や自己PRではなく、日々の行動や仕事の質の積み重ねで形成される
保呂田さんは、これは道徳の教科書に出てくるような話だと笑いつつ、番外編で触れた自身の経験と結びつけます。中東で日本人が尊敬されているのは、昔の人たちが積み重ねを続けてきた結果ではないか、という見方です。
AI時代の生存戦略としてのパーソナルブランディング
平野さんは、この回の入り口をあらためて確認します。AI時代に、知識やスキルだけでは差がつきにくくなった、という点です。
目立つためじゃなくて、この人と一緒に仕事をしたいかっていう感情を生むための設計をやっていく。見せかけを演出するんじゃなくて、本質を正直に構築すること。
片山さんは、パーソナルブランディングは日本ではまだ馴染みが薄いが、これから確実に必要になる考え方だと締めくくります。会社の看板ではなく、個人としてどう信頼されていくか。それがAI時代の生存戦略だ、という結論です。
平野さんも、AIが近くに浸透し始めたからこそ、あらためて気づく人の魅力があると応じ、回を終えます。
まとめ
AIによって文章もデザインも動画も誰でもそれなりに作れるようになり、スキルや肩書きでは差がつきにくくなりました。この回は、そんな時代にこそ「この人と一緒に仕事をしたい」と思わせる人間力が問われる、というパーソナルブランディング論でした。
- AIでスキルが平準化し、「できる人」より「一緒に仕事したい人」が価値を持つ時代になった
- 演出されたブランドは毒になる。本質を正直に構築することが武器になる
- 弱みやダサいと思う本質こそ、見え方を変えれば自分だけの強みになりうる
- 採用も発注も、スキルより「情緒的判断」へ軸足が移りつつある
- 「凄そう」より「信頼できそう」。信頼は日々の行動の積み重ねでしか作れない





