バズるための「ネット茶番」と「嗅覚」──ご神託ラジオが語る、コンテンツ過多時代の極意
編集者の箕輪厚介さんと、アル株式会社代表のけんすうさんが、リスナーからの相談に答えながら自由に語り合う箕輪・けんすうのご神託ラジオ。今回は「肯定感の正体」「スキルと経験のバランス」「社内ポッドキャストの成功法」という3つの相談を軸に、ネット時代のコンテンツ作りの本質が浮かび上がります。目的やターゲットを決めることがむしろコンテンツを殺す理由、そして「ネット茶番」を理解できる嗅覚がなぜ必要なのか。その内容をまとめます。
肯定感は戦略か、それとも面白がる能力か
箕輪さんもけんすうさんも、誰と話すときも相手を気持ちよく肯定されていて好きです。この肯定感をどのように体得されたと考えられますか?
彼らの肯定感は、相手を肯定することが自分の利益になるという成功体験の蓄積によって体得されたものです。
AIの回答に対して、二人は「確かに」と一度は頷くものの、「利害損得でやってるみたいで感じが悪い」と苦笑いします。けんすうさんは「いいところを探した方が楽しい、という方が強いかな」と語りますが、箕輪さんは意外な告白をします。
インタビューや対談じゃなかったら、基本否定してますけどね。「こいつ面白くないよ」とか「全然ダメでしょ」みたいな。
箕輪さんによれば、インタビューや対談で肯定するのは、話が広がらないから対談やインタビューで相手を最初から否定すると、そこで議論が終わってしまい、コンテンツとして深まらない。肯定から入ることで、相手の意見を引き出し、その上で反論や別の視点を提示する方が、聞き手にとって面白いコンテンツになる。。政治的に対立する相手でも、まず「確かに、その立場もあるな」と受け止めてから反論する。それがコンテンツを「花開かせる」秘訣だと言います。
けんすうさんは、もう一つの理由を挙げます。知識が増えるにつれて、「そんなに否定できなくなる」と。社会的立場やバックグラウンドが違えば、どんな思想も「確かにそう考えるかもしれない」と思えてしまう。最近読んだ『独裁者の倒し方』独裁者がなぜ恐怖政治に走るのか、その心理と構造を解説した本。多くの独裁者は「根っからの悪人」ではなく、自分や家族を守るために恐怖政治をせざるを得ない状況に追い込まれていく、という視点が示されている。では、独裁者側の恐怖や追い詰められた状況が見えて、「その立場なら自分もそうするかもしれない」と思ったそうです。
結論として、肯定感は「戦略」として始まっても、知識と経験が積み重なることで、自然に相手の立場を理解する力に変わっていくようです。そして、そもそも「この人は否定しなきゃ」と思う相手に出会わなくなる、という環境の変化もあるかもしれません。
スキルは枝葉、幹と根っこを育てるべき理由
将来エンジニアとして稼ぐため、プログラミング学習に力を入れたいのですが、大学受験や部活動も大切だと感じています。高校生は何を優先すべきでしょうか?
高校生としてやるべきことを優先しなさい。プログラミングは趣味の範囲で続ければ十分です。
AIの回答に、二人は即座に同意します。けんすうさんは「研究で、若いうちに一つに集中しちゃうとあんまりいい結果が出ない」というデータがあると紹介。むしろ、いろいろな経験をしている人の方が長期的には成果を出すという話です。
スキル(枝葉)
プログラミング、編集技術、資格など。すぐに役立つが、時代や環境の変化で折れやすい。
幹(世界の見方・考え方)
世の中をどう捉えるか、誰を面白がるか、人とどう話すか。これが太いと、枝はどうにでもなる。
根っこ(人生経験・人間関係)
部活、友達との旅行、飲み会、大学受験。ここが張り巡らされていないと、木全体が倒れる。
箕輪さんは「スキルは枝みたいなもの。太い幹と、土の中に張り巡らされた根っこが大事」と例えます。枝だけ頑張ってもポキッと折れてしまう。根っこと幹がしっかりしていれば、枝はあとからどうにでも育つというわけです。
けんすうさんは、人との出会いで「認知が思いっきり書き換わる」体験の重要性を強調します。箕輪さんにとっての堀江貴文さん実業家・著作家。ライブドア元代表。箕輪さんが編集を手掛けた『多動力』などのベストセラーで知られる。箕輪さんのキャリアに大きな影響を与えた人物の一人。、けんすうさんにとっての小澤さん(エンジェル投資家)のような存在。そうした出会いが、自分の天井を取り払ってくれる。大学受験で「いい大学」に行く意味も、そこに面白い人がいるからだ、と二人は語ります。
小澤さんから「こんなのお前すぐだぞ。お前ら全員すぐなるから」って言われて、実際その場にいた人、みんな車なんて買えるようになっちゃった。
プログラミングだけに集中して、人間関係や高校・大学の経験がないと、それはそれで脆弱だと二人は考えます。普通に大学受験を経て、社会人になってからプログラマーになってすごい人もたくさんいる。「ミスりそうな気がしますね」とけんすうさんは締めくくります。
社内ポッドキャストが失敗する理由──目的設定の罠
エンジニア採用のために、社内エンジニアが技術について語る番組を企画しました。社内レビューで「目的とターゲットが定量的ではない」と指摘され、ボツに。お二人なら、どの粒度まで目的やターゲットを決めますか?
レビュアーの指摘に付き合う必要はない。目的を決めてから始めるという発想自体が、ポッドキャストに向いていない。
AIの回答に、二人は即座に「確かに」と応じます。箕輪さんは「当たりそうとか儲かりそうから逆算すると、似ちゃって熱が生まれにくい」と指摘。意識的に「何も考えない」方がいいと言います。
けんすうさんは、相談者が設定した「目的:エンジニアチームの認知度向上」「ターゲット:ポッドキャストで技術についてキャッチアップしているエンジニア」という設定に警鐘を鳴らします。
箕輪さんは、自分のメンバーシップで飲み会の運営担当者が「密着動画を作りませんか」と提案してきた話を例に出します。「知らんおっさんが飲み会の準備してる動画、誰が見るの?」。真面目な人ほど、こういうプロセスエコノミーけんすうさんが提唱した概念。完成品だけでなく、その制作過程(プロセス)にも価値があり、ファンはそれを楽しむ、という考え方。ただし、プロセスを公開すればいいのではなく、プロセス自体を面白いコンテンツにする必要がある。の勘違いをしてしまうと言います。
プロセスエコノミーを勘違いしてる人は、プロセス公開すればいいと思ってるんですけど、プロセス自体も面白いコンテンツにしないと、もう差がつかない。
今やTwitter(X)では誰もがプロセスを公開しています。リアルバリューと令和の虎どちらもYouTubeで人気のビジネス系コンテンツ。リアルバリューはビジネスプレゼン番組、令和の虎は志願者が虎(投資家)に事業プレゼンをする番組。出演者間のトラブルや裏側の情報が頻繁にSNSで流れ、「プロセス中毒」と呼ばれるほど内幕話が多い。の出禁騒動のようなキャスティングの内幕話も、もはや「プロセスすぎて知らんがな」という状態。ひ弱なプロセスを出しても誰も見ません。
けんすうさんは、成功パターンとして「勝手に個人で、社内のエンジニアと匿名でやって、超熱い技術の話をして盛り上がってきたら、会社にお金を出してもらう」という流れを提案します。箕輪さんも「盛り上がってすごい聞かれてるとなったら、初めて会社側が『これって採用に使えるんじゃないか』って言って、それでも『いや、そういうことで始めたんじゃないんです』っていうぐらいのものがいい」と応じます。
熱量を持って話さないと、ポッドキャストはどうにもならない。そして、目的やターゲットを決めちゃうと、みんなと似通ってしまう。エンジニア採用したい会社はたくさんあるから、同じ発想をする人も多い。結果として、誰も聞かないコンテンツができあがるのです。
ネット民の嗅覚──真面目すぎると滑る時代
話題は、コンテンツが多すぎる時代の厳しさへと移ります。箕輪さんは「今、コンテンツが多すぎる」と語ります。自分も毎日YouTubeで案件動画を投稿しているが、けんすうさんと西野さんのコンテンツを追うだけでも時間が足りない。全員が自分の人生をコンテンツにしている今、ライバルが多すぎるというわけです。
そんな中で、令和の虎志願者が虎(投資家)に事業プレゼンをするYouTube番組。出演者同士のトラブルや裏側の情報が頻繁にSNSで流れ、「プロセス中毒」と呼ばれるほど内幕話が多い。リアルバリューとの出禁騒動など、キャスティングの内幕話も話題になる。やリアルバリュービジネスプレゼン番組。令和の虎と同様、YouTubeで人気だが、出演者間のトラブルや裏側の情報が頻繁にSNSで流れる。の知り合いがポッドキャストやYouTubeを始めて滑るのはまだいい。問題は、IVSやBダッシュなどで見ていた普通の人が、いきなり始めて滑っているのを見る辛さだと箕輪さんは言います。
弟兄弟とか親友が、なんかダンスさせられてるのを見る時の、そんな目しないでいいのに、っていう辛さみたいな。
けんすうさんは、その原因を「次はポッドキャストやYouTubeらしいぞで、ビジネス的にやんなきゃでやってる感と、ポッドキャストの相性の悪さ」と分析します。Xでも、ためになることを言わなきゃ、と真面目に構えすぎて滑る人が多い。
そして、二人が例に挙げるのが川辺健太郎さんZホールディングス(旧ヤフー)社長。ネット業界の第一線で活躍し、SNSでの発信やコミュニケーションにも長けている。箕輪さん、けんすうさんとも親交がある。です。川辺さんは「ネット民」で、嗅覚があり、「これレスした方がいいみたいなの毎回聞いてます」とけんすうさん。根本的に何をやれば受けるかを分かりきっている。亀山敬司さんDMM.com会長。インターネットビジネス界の重鎮で、独特の存在感とユーモアでも知られる。箕輪さんとも親交がある。も、「あけましておめでとう」のリプに「それは遠慮しとくわ」と返すなど、ネット茶番を理解している。
真面目な人ほど、「リプ全部返した方がいい」というアドバイスを真に受けて、マジのキチガイネットスラング。ここでは、理不尽な絡み方をしてくるユーザーを指す。こうした相手には、あえて返信しない方が賢明な場合が多い。にまで返してしまう。箕輪さんやけんすうさんのようなTwitter中毒者は、「こいつは絡まない方がいいやつ」と瞬時に判断できますが、初心者はそれができない。結果として「痛い痛い恥ずかしい」という状態になってしまうのです。
けんすうさんは、高木晋平さん起業家、投資家。INSIDEVISION などポッドキャスト番組も運営。リスナーからの相談に答える形式の番組で、けんすうさんも過去に出演したことがある。のポッドキャスト「INSIDEVISION」を例に挙げます。以前は「相談受けます」という形式で頑張っていたが、箕輪さんは「あれはきつい」と指摘。毎回斬新な答えを求められるのはしんどい。三浦崇宏さんや高木さんのような立場だと、ソリューションを求められがちだが、それは修羅の道だと言います。
このご神託ラジオの楽さ、すさまじく楽。部屋に入って一分後から始めて、一分で終わったら一分で出れる。
ご神託ラジオは、AIの答えをネタに自由に語るだけ。相談は終わっているのに、時間を埋めるために「内容のなさ」を喋り続けている、と自虐的に笑う二人。しかし、この「何も決めない」姿勢こそが、コンテンツとして成立する秘訣なのかもしれません。
箕輪さんは、今後を予測します。「一億総社長インフルエンサー化」は、AKBやゆるキャラブームと同じ。みんなが始めると、ほぼ全部が滑り、市場全体が飽きられる。ねばる君ゆるキャラブームの中で登場した、茨城県発のキャラクター。多くのゆるキャラが消えていく中、「ねばり強く」活動を続け、一定の知名度を維持している。のような例外はあるものの、ほとんどは忘れられる。アイドルも同じだった。それが、今のポッドキャストやYouTubeで起きている、というわけです。
けんすうさんは、古典ラジオが受けた理由を振り返ります。「これ話したい」という熱量があり、ユーザーの希望なんて聞く気がない。自分たちが興味あるところを深掘る姿勢。それが受けた。もし「人気のがいいよね」と言われて、それをやろうとしたら、つまらなくなる。箕輪さんは「自分がやりたいことがあるって、ほんと強いっすよね」と応じます。
そして最後、箕輪さんは唐突に「釣りを始めます」と宣言します。自分がやりたいことを探している証です。そしてもう一つ、「曼荼羅を描く」とも。AIで曼荼羅なんて一瞬で生成できる時代に、手で描く意味はあるのか。二人は、自分のTwitterの全ツイートや、編集した本の内容をAIに入れて曼荼羅にする、という壮大な構想を語り始めます。
箕輪さんの今まで編集した本全部ぶち込んで、一枚の絵にしてみたい。
AIが一番向いてるのは曼荼羅かもしれない。この世の全てを一枚の曼荼羅にしてくださいみたいな。
二人の会話は、Xの全データをダウンロードして曼荼羅にする方法論へと逸れていきます。けんすうさんは「Wordに貼らなくて大丈夫」と説明しますが、箕輪さんは「俺Wordしか使えない」と返します。この何気ないやりとりに、二人の自然体が表れています。
まとめ
最後に、二人は2月19日に新宿ロフトプラスワンで開催される公開収録オフ会を告知します。リスナーとの直接交流を楽しみにしている様子でした。
今回のエピソードは、一見バラバラに見える相談に、実は共通するテーマが流れていました。それは、**目的や戦略から入ると、コンテンツは死ぬ**ということ。肯定感も、スキル習得も、ポッドキャスト企画も、すべて「やりたいからやる」という熱量が原点にあるべきです。
そして、コンテンツが溢れる時代だからこそ、ネット民の嗅覚──何が受けて、何が滑るのかを察知する感覚──が重要になります。真面目すぎると、かえって痛々しく見える。川辺さんや亀山さんのように、ネット茶番を理解し、自然体で楽しむ姿勢が、結果的に人を惹きつけるのかもしれません。
- 肯定感は、戦略から始まっても、知識と経験によって相手の立場を理解する力に変わる
- スキル(枝)より、世界の見方や人生経験(幹・根)を育てることが重要
- ポッドキャストは目的やターゲットを決めると失敗する。「やりたいからやる」熱量が必要
- プロセスエコノミーは、プロセス自体を面白いコンテンツにしなければ意味がない
- コンテンツ過多の時代、ネット茶番を理解する嗅覚と自然体な姿勢が勝負を分ける
