反社会的な気持ちでいいことをしよう──負の感情を行動でプラスに変える方法
けんすう氏が個人で配信するライブ番組「けんすうスピーク」の6月25日朝の回。むしゃくしゃした時に湧き上がる「反社会的な気持ち」をどう処理するか、そしてリスナーから寄せられた仕事・健康・お金の悩みまで幅広く語られた回です。その内容をまとめます。
反社会的な気持ちでいいことをするという発想
けんすう氏は、むしゃくしゃした時に湧き上がる「反社会的な気持ち」を抑え込むのではなく、その勢いを別の行動に振り向ける方法を勧めています。本人は嫌なことがあると自傷的な気持ちになるそうですが、その時にやっているのが「めっちゃ寄付をする」こと。金額は5万円ほどで、決して安くはありません。
5万円が一気に減るので、自分を傷つけたいという欲求と似た「お金が減った痛み」を得られる。しかも数日後に寄付先からお礼のメールが届き、振り返るたびに「いいことをしたな」というプラスの記憶として残り続けます。
マイナスの気持ちだからマイナスのことをやったりすると、より マイナスになってしまって抜けられなくなる。その時にいいことをすると上向きになるんです。
暴飲暴食・自傷・浪費・人に当たる → 後から見るたびに後悔が再生され、マイナスが固定化する
寄付・人の機嫌を取りまくる・部屋の片付け → 後から見るとプラスの資産として残り続ける
また「自分の機嫌は自分で取れ」という言説に対しても、けんすう氏は違和感を表明します。みんながそれをやると弱い人から潰れていく社会になるので、自己責任論への反論として、むしゃくしゃしている時こそ「反社会的な行動として人の機嫌を取りまくる」ことを勧めています。はたから見ると優しい行動なので、自分にとってもマイナスにならず、後々プラスとして効いてきます。
会議で意見が言えない人へのフレームワーク
「会議で『どう思う?』と聞かれても『良いと思います』しか言えない」という相談に対し、けんすう氏は「考える時間を稼ぐ手法を持っておくこと」を勧めます。具体的には「メリットは三つあると思います」とまず宣言してしまうテンプレートです。先に「三つ」と言ってしまえば、無理やりにでも捻り出すしかなくなる。デメリットも同じ要領で出していけば、フレームワークとして毎回使える形になります。
さらにけんすう氏が指摘するのは、「どう思う?」を文字通り「自分の感想を言うこと」と解釈しているズレです。仕事の現場では、自分の感想ではなく「会議を前進させる建設的な意見」が求められている、と整理します。
「僕は反対です」って言うと喧嘩になるけど、「僕は賛成なんですけれども、反対派の意見はこういうのが想定されるんですが、皆さんはそれにどう反論しますか?」って言った方が議論が建設的になる。
仕事は自分に合っているのか問題
「今の仕事が自分に合ってる気がしません」という質問に対し、けんすう氏は「判断しなきゃと思ってる時点で、あまり合っていない」という見方を示します。料理に例えるなら、本当に美味しいものは「これ美味しいかな?」と判断軸を探ったりせず、「めっちゃうまい」と即座に出てくるはず、というわけです。
一方で、別の視点として「一年目は成果が出ないが、二年目から良くなって三年目にトップエースになるタイプ」もいる、と補足。経験やスキルが揃った瞬間に開花するパターンを見抜くには、自分一人では難しい。だからこそ、信頼できる先輩やメンターに「自分は合っていないか」を評価してもらうのが現実的です。
三十代から始める健康投資の基本
34歳のサラリーマンから「健康で長生きしたい。三十代の今のうちにやっておくべきことは?」という質問に対し、けんすう氏は具体的な3点を挙げます。
1つ目は 人間ドック専門医による全身検査プログラム。胃カメラ・大腸内視鏡・血液検査・CTなどを組み合わせ、自覚症状のない病気を早期発見することを目的とする。。35歳ぐらいから始めて、特に胃カメラと大腸検査は2〜3年に1回受けておくのが推奨されています。知り合いがこの検査でがんの超初期を見つけ、その場で切除して事なきを得たエピソードも紹介されました。気づかなければ腸を摘出してオストメイト手術によって腹部に排泄のための人工肛門・人工膀胱を造設した人。日常生活で専用の装具が必要となり、トイレ環境も大きく変わる。になる可能性もあった、というケースです。
2つ目は「食事・運動・睡眠」の徹底。けんすう氏はブライアン・ジョンソン米国の起業家。「Don't Die」を掲げ、年間200万ドル以上を自身の若返り・健康実験に投じている人物として有名。「Blueprint」と呼ばれるプロトコルを公開している。を引き合いに、年に何十億もかけて若返り研究をする人ですら結論は「食事・運動・睡眠が圧倒的に効果が高い」だと指摘します。高額なサプリや謎の健康法より、この基本3つの影響度が桁違いに大きい、ということです。
3つ目は、デバイスで取った心拍数・睡眠・食事のデータをGoogle ヘルスAndroid向けの健康管理アプリ。Fitbitなどのデバイスと連携し、心拍・睡眠・運動・食事を一元管理できる。AIによるアドバイス機能も提供されている。などのアプリに集めてAIに分析させること。年齢・身長体重に応じて「心拍145の状態を何分続けると良い」といった具体的な指示が出るので、その通りに動けば良いスコアが取れます。
ミドルエイジクライシスに今からできること
「44歳、地方在住。何者にもなれなかった思いが日に日に強くなる」という相談。けんすう氏はこれをミドルエイジクライシス中年期に訪れる自己同一性の危機。「このままで人生が終わるのか」「もっと違う道があったのではないか」という後悔と焦りに襲われる状態。発達心理学では珍しくない現象とされる。と呼びつつ、シンプルに「今からでもやればいい」と答えます。
副業を週5時間だけ始めれば、月20時間、年240時間の経験になる。それだけあればできることが増え、確実に前に進める。趣味も同じで、釣り・小説・映画・ライブ・YouTubeなど、土日に2時間でも何かを始めれば変わります。
「何者にもなれなかった」はだいたいの人がそう。44歳でこじらせてどうしようもない中年男性がネガティブにライブ配信してるとかで、面白がってくれる人が十人できるかもしれない。
けんすう氏が特に問題視するのは「やりゃよかったな」と思いながらまた1年が過ぎ、46歳で「44歳の時に気づいてたのに」とさらに後悔する負のループです。多少の「悪いこと」も、人に迷惑をかけない範囲なら今やればいい、と提案します。
怒りで手が出そうになる人へのアンガーマネジメント
「上司に怒られると感情的になりかけて手が出そうになる」という相談に、けんすう氏は短期と中長期の対策を分けて答えます。
短期施策の代表は箱呼吸(ボックスブリージング)4秒吸う→4秒止める→4秒吐く→4秒止めるを繰り返す呼吸法。米海軍のSEALsも採用していることで知られ、副交感神経を活性化して短時間で落ち着きを取り戻せる。。自律神経が落ち着き、1分ほどで「どうでもいい」状態に戻れます。それでも難しければ「ちょっと頭混乱してるので5分ください」と席を外す。
5分・10分と説教し続ける。反省するまで動いてはいけない。目の前に立たせて怒り続ける。
「タイムアウト」と宣言し、別室で5分クールダウン。戻ってきた時には落ち着いて話せる。
中期施策として推奨されているのが「怒りのログ化」です。どんな言い回しでスイッチが入ったのか、睡眠不足や空腹はどう関係しているのかを記録します。すると「睡眠不足かつ空腹時にめっちゃ怒る」というパターンが見えてくる。そうなれば「上司に怒られる時間を昼食後にずらす」など、構造から手を打てるようになります。
起業の生存率と就職との難易度比較
「生活できるお金を稼ぎ続けるレベルで見た時、起業の10年後生存率は?」という質問に、けんすう氏は「就職と同じぐらい」と答えます。さらに踏み込んで「就職を1とした場合、起業は0.8ぐらいの感覚」と独自の難易度評価を示しました。
「10年持つ会社は少ないから頑張った」という言説についても、「意図的に潰したい気持ちがない限り普通に残る。70〜80%ぐらいは残る」と肌感を語っています。
投資に踏み出せない人のBS脳
「資産の100分の1の金額でも投資に踏み出せない」という相談に、けんすう氏は「投資と消費が頭の中でバグっている」と分析します。1万円を投資すると「1万円減った」と感じてしまうが、実際にはお金は消えておらず、ポートフォリオ内で移動しているだけ。この感覚を得るにはBS脳バランスシート(貸借対照表)の考え方を日常に当てはめる発想。お金が「減る/増える」ではなく「どこに置かれているか」で捉える視点で、資産形成の基本となる。が必要だ、というわけです。
金融資本の内訳例として、現金10%・残り90%を債券・株式・オルタナティブ株や債券以外の投資先の総称。不動産、コモディティ、ヘッジファンド、プライベートエクイティなどが含まれ、伝統的資産との相関が低いことから分散投資に使われる。・金に振り分ける、というイメージが示されました。組み替えるだけなので、お金は減っていない、と捉えられるようになります。
さらに実践的なTipsとして、給与から自動的に投資口座へ移す仕組みを作っておくこと。けんすう氏自身、月に何万円かをGMO証券GMOインターネットグループのGMOクリック証券のこと。自動積立サービスやNISA口座も提供している。に自動投資する設定にしており、銀行口座を見るタイミングでは既に減った後なので、「お金が減った」と認知する瞬間がないのだそうです。
これからのデザイナーに発信は必要か
「尊敬するデザイナーは作品で語り、SNS発信していない。でも語りや動画でのビハインドザシーン発信も大事なのでは?」という相談。けんすう氏は「これからのデザイナーには発信が来る」と断言します。
背景にあるのは、シリコンバレーや中国で起きている流れ。経営者ですら、まずインフルエンサーにならないとプロダクトを触ってもらえない状況になりつつあります。LINEヤフーの川邊健太郎LINEヤフー株式会社の代表取締役会長。Yahoo! JAPANを率いてきた経営者で、2024年以降はYouTubeでの発信にも積極的に取り組んでいる。氏がYouTubeを始める時代だ、と例も挙げました。
けんすう氏が特に強調するのは「AIによってデザイナー全体のクオリティと制作スピードが上がる」ことの副作用です。品質が均一化すれば、結局は「有名な人」に仕事が集中していく。クオリティが高くても見つけてもらえないと意味がない、ということです。
まとめ
今回のけんすうスピークの軸は「感情そのものを変えるのではなく、感情から出る行動を変える」という一貫した思想でした。むしゃくしゃした時の寄付、怒りそうな時の箱呼吸、お金を減らせない時のBS脳。どれも「感情を抑えよう」とせず、行動レベルでデザインし直す発想で繋がっています。
会議の意見出しもアンガーマネジメントも、性格や能力ではなく「フレームワークと訓練の問題」だと捉え直す。投資への踏み出せなさも「自動化の仕組み」で解消する。中年期のクライシスも「今から始める」ことで答えにする。一貫しているのは、悩みを精神論で片付けず、構造と仕組みで解く視点でした。
- むしゃくしゃした時は「反社会的な気持ちでいいこと」をする。寄付や人の機嫌取りは、後からプラスとして残り続ける
- 会議の「どう思う?」は感想ではなく建設的意見を求められている。「メリット三つ、デメリット一つ」のフレームを持つと考える時間が稼げる
- 仕事が合っているかは「判断に迷う時点で微妙」。信頼できる先輩のいない職場はそれ自体がリスク
- 三十代からは人間ドック、特に胃カメラと大腸検査を2〜3年に1回。健康の基本は食事・運動・睡眠の3つに尽きる
- 「何者にもなれなかった」は大半の人がそう。今から副業や趣味を週5時間始めれば、1年で240時間の経験になる
- 怒りは性格ではなく訓練の問題。箱呼吸や怒りのログ化で、構造的に対処できる
- 起業の生存率は70〜80%。就職を1とすれば起業は0.8の難易度感で、ピボットや人選の自由度が高い
- 投資に踏み出せないのは「投資と消費の混同」。BS脳とポートフォリオの概念、そして自動積立の仕組み化で解消できる
- これからのデザイナーは作品だけでなく発信も武器になる。AIで品質が均一化するほど「見つけてもらう力」が重要になる
