AI薬歴を活かす鍵は「思考を前に持っていく」こと
この回のテーマは、AI薬歴を活用するための業務プロセスの見直しです。
たいぞーさんはまず、AI薬歴を使うなら、患者について予測し考えるタイミングを、できるだけ前の工程に持っていくことが大切だと話します。
情報を集めきってから薬歴を書く材料をもとに考える、という流れをつい取りがちだといいます。ですが、その思考のタイミングを前倒しすることで、AI薬歴が薬歴の記載内容を出力する機能を十分に活かせると考えられています。
具体的には、患者を呼ぶ前、そして患者とやり取りをしながら、その場で情報を処理していく。これができるかどうかがAI薬歴活用の大きな鍵になると述べています。
従来の業務プロセスと「連続性」
では、思考を前に持っていくことは、今までの業務プロセスのままで実行できるのでしょうか。たいぞーさんは「できないことはない」としながらも、頭の中でシミュレーションすると、思考がどうしても後ろにずれてしまうのではないかと指摘します。
一般的な薬局の業務プロセスは、受付をして処方箋の内容をコンピューターに入力し、その情報を調剤機器の端末に送信するところから始まります。
受付・入力
処方箋の内容をコンピューターに入力する
調剤
情報を調剤機器と連動させ、薬を揃える
鑑査
薬が正しく揃っているかを確認する
服薬指導
患者を呼び、情報収集と服薬指導を行う
薬の交付
適切な薬剤だと判断し、薬を渡す
支援機器を活用しながら薬を棚から取ったり、分包したりして効率よく揃えていきます。そしてすべてが揃った状態で患者を呼び、服薬指導と情報収集を行った上で薬を渡す、という流れです。
たいぞーさんが勤める店舗でも、同様の動きをしているといいます。
後ろに凝縮された患者対応の時間
この流れだと、患者との対応の時間はだいぶ後ろの方にぎゅっと凝縮される形になります。たいぞーさんは、ここに問題を感じています。
凝縮された時間の中で考えを巡らせてから患者を呼ぶとなると、呼ぶまでにさらに時間がかかり、患者を今まで以上に待たせることになってしまうといいます。
お待たせすること自体が悪いわけではない、と前置きした上で、必要以上に待たせることの影響を次のように説明します。
必要以上に患者さんをお待たせすると、薬剤師とやり取りをするための精神的、体力的な余力を患者さんの方から奪ってしまうことにもなる
その結果、患者とのやり取りがうまくいかなくなるケースが出てくるのではないか、と考えられています。
薬を揃えながら、患者対応を同時並行で
では、思考のタイミングを前に持っていくには、どうすればよいのでしょうか。たいぞーさんが挙げる解決策は、服薬指導のタイミングをもう少し前にずらせないか、という視点です。
コンピューターへの処方内容の入力までは、患者情報や薬歴を引き出すためにも必要なので同じです。変えるのはその後です。
調剤機器と連動して薬を揃えていく作業の間に、患者とのやり取りをスタートさせてしまう。つまり、薬を揃える作業と患者対応を同時並行で進めるという提案です。
調剤して薬が揃ってから患者を呼ぶ。患者対応が後ろに凝縮される
薬を揃える作業と患者対応を同時並行で進め、対応を前に持っていく
これによって、患者対応の時間を前に持っていくことができるようになると考えられています。
「業務の連続性」を健全に疑う
調剤をして物が揃ってから患者を呼ぶという業務の連続性は、効率を考えたときに確かに重要な視点かもしれない、とたいぞーさんは認めます。
ただし、AI薬歴のような新しいテクノロジーが導入されていく中では、今までのやり方が本当に最適なのかを問い直す必要があると話します。
新たなテクノロジーが進歩して導入されるようになっていく中で、本当に今までのやり方が最適な方法なのかということは、健全に疑って見直していくということが必要になる
同時並行で動く調剤プロセスは、AI薬歴をうまく活用でき、患者の負担も薬剤師の負担も軽減し、結果的に薬をより効率的に届け、患者への対応の質を上げることにつながる一手になるのではないか、と述べています。
新しいテクノロジーを導入する上では、業務のあり方を再設計するという視点が、変化の時代にはとても大事になると締めくくっています。
まとめ
AI薬歴を活かすには、思考のタイミングを前に持っていくことが鍵になります。そのために、調剤と服薬指導の「連続性」という当たり前を健全に疑い、業務プロセスを再設計することが提案されました。
- AI薬歴を活かすには、患者を予測し考えるタイミングを前の工程に持っていくことが鍵になる
- 従来の流れでは、患者対応の時間が後ろに凝縮され、待ち時間や患者の余力に影響が出やすい
- 薬を揃える作業と患者対応を同時並行で進めることで、対応の時間を前倒しできる
- 新しいテクノロジー導入時には、業務の連続性という当たり前を健全に疑い、あり方を再設計する視点が大切
