前半のおさらいと後半3ステップの位置づけ
番組は「薬学で患者を語る」をテーマに、現場での気づきや薬剤師の仕事の面白さを共有する配信です。今回は前後編の後編にあたります。
たいぞーさんはまず、患者への関わりには6つのポイントがあると振り返ります。前半の3つは、目的を捉えること、患者の現状を主観的・客観的に把握すること、患者が描く理想像を言葉の奥にある思いも含めて認識することでした。
後半の3つは、現状とあるべき姿のギャップから課題を見つけ、その課題に薬がどう影響しているかという原因を考え、対策を立てることです。たいぞーさんはふだん語っている内容の多くが、この後半3つにあたると話します。
現状と理想像のギャップから課題を見つける
後半の出発点は、患者の課題を見つけ出すことです。現状をきちんと捉え、患者の理想像を捉えられていれば、その2つを見比べたときに課題が見えてくると説明されます。
課題には大きく2通りの見つけ方があるといいます。状態が悪いところから、より良い状態へ持っていく見つけ方です。
もう1つは、患者が「現状で十分満足」と言いながら、本当はもっとたどり着きたい未来がある場合です。その未来を改めて描き直し、より高い理想像を描いていく関わり方です。
いずれにしても、現状と理想像の間にあるギャップを問題として捉えると、課題を発見しやすくなると話します。たいぞーさんは、患者と一緒に「課題って何だろう」と考えていくことを大切にしています。
ここは後半戦のスタート地点としてとても大事な要素になるので、患者さんときちんと話をしていく。僕はそのための服薬指導という関わりの時間なのかなと思っています。
なお、患者が現状維持で本当に十分だと感じている場合は、その状態を維持させている薬物治療に、本当に薬が寄与しているのかどうかを見極める視点も必要だと補足されます。
課題に薬がどう影響しているかを見極める
課題を発見できたら、次はそれに薬がどう影響しているかを見極めます。薬が作用しているか、効果や副作用が出ているかを確認する段階です。
その判断には薬理学薬が体にどのように作用して効果や副作用を生むかを扱う学問。や薬物動態学薬が体内でどう吸収・分布・代謝・排泄されるかを扱う学問。、製剤学など、基礎薬学の知識を使うと説明されます。
薬物治療が悪さをしておらず、むしろプラスの効果を発揮していて治療上問題ないなら、そのまま継続していきましょうという対策になります。
逆に問題があれば、どうしていったらいいのかを、医師や患者と共有しながら対応策を考えていくことになります。
薬以外の要因は適した専門職につなぐ
たいぞーさんは、薬剤師が薬を見るのは切り離せない大事な要素だとしつつ、薬だけを見ていても患者の問題は解決できないと話します。
薬剤師は薬学を学んでいるものの、栄養学や病気に関する知識は、それぞれの専門職に比べると乏しくなります。だからこそ、他領域はある程度目星を立てつつ、解決に適した専門職につなぐことが役割になると説明されます。
薬学を見極めていくからこそ、パスの出しどころがわかる。そういったプロとしての働き方が、僕は理想の薬剤師の働き方、薬学で患者を語るということじゃないかなと思っています。
薬以外の影響は大きく2つに分けられるといいます。1つは病気の影響、もう1つは病気以外の影響です。
薬の影響を見極める
薬理学などの知識で薬が課題にどう関わるかを判断する
薬以外か切り分ける
薬でないと判断したら要因の目星を立てる
専門職につなぐ
病気は医師、生活は関連職などへパスを出す
病気以外の影響として、食事、運動、生活習慣のほか、身体的・精神的な面、家庭環境や生活環境など、さまざまな要素が絡むと挙げられます。これらは自分たちの範疇を超えるため、表面的な関わりしかできず、きちんとプロにつなぐことが大事だとされます。
患者自身も「自分のプロ」として関わる
たいぞーさんは、つなぐ相手である「プロ」の中に患者自身も含まれると考えています。患者は自分の生活のすべてをわかっている、自分自身のプロだという捉え方です。
そう捉えると、患者にどこで関わってもらうのがよいかが見えやすくなるといいます。その関わりどころが生活改善です。
食事指導などは他の職種が行えても、最終的に実行するのは患者本人です。家族がサポートすることもありますが、本人がやると決めないと、家族の支えも効果的になりにくいと話します。
だからこそ、患者が自分自身の課題をどうしていくかを解決していく、その手助けを薬剤師がする。そんな位置づけが関わりどころとして大切だとされます。
病気への関わりとOTC販売後の責任
病気の部分については、医師につなぐことが大前提です。ただし軽症で緊急度が低いものについては、OTC医薬品処方箋がなくても薬局などで買える市販薬のこと。を販売することも関わりの1つになると説明されます。
一方で、軽症・重症度が低いと判断して販売した後に、状態が悪化することはあり得ます。そのため販売後も、悩みや体調が本当に改善したかを追いかけ、必要なら医師につなぐところまで責任を担うべきだと話します。
業務の時間的にもなかなか厳しいなとか、いろいろあるかもしれませんし、僕自身も実際やろうと思ったら本当にできるんかなと、ちょっと思うようなところもあります。
そのうえで、実際にやっていくために、薬剤師の仕事とは何かを見つめ直し、薬剤師でなくてもできる仕事を手放していく必要があると語ります。テクノロジーの活用やタスクシフトなど、さまざまな手段で、本来やるべきことを達成できる体制を考えることが大事だとされます。
理想像があるからこそ課題が見えてくる
こうした関わりを通して、患者が描いていた理想に少しでも近づくサポートをしていくこと。それが薬剤師の「薬学で患者を語る」関わりだと、たいぞーさんは考えています。
この働き方は薬剤師の専門性を活かせるうえ、患者が良くなっていくことを一緒に喜び合う関わりにもつながると話します。
ただし、これはあくまで理想であり、たいぞーさん自身も手探りで模索しながら実践している段階で、完璧にできているわけではないと率直に語ります。
最後に、リスナー自身が思う薬剤師としての理想像を考えてみてほしいと呼びかけ、コメントで理想像を寄せてもらえれば、同じ思いで働く仲間がいることを心の支えにしたいと締めくくりました。
まとめ
「薬学で患者を語る」後半は、現状と理想像のギャップから課題を見つけ、薬の影響を見極め、対策を立てる3ステップが軸になります。薬を見極めるからこそ適切な専門職へパスを出せる、というたいぞーさんの理想の働き方が語られました。
- 後半3ステップは「課題の発見→原因(薬の影響)の見極め→対策」で構成される
- 現状と理想像のギャップを問題として捉えると課題を発見しやすい
- 薬以外の要因は目星を立てつつ、適した専門職につなぐのが薬剤師の役割
- 患者自身も「自分のプロ」として、生活改善の実行主体になる
- OTC販売は軽症時の関わりだが、販売後の経過まで追う責任がある
