AI薬歴で作業時間2割削減というニュース
今回たいぞーさんが取り上げたのは、ある大手薬局でAIによる薬歴の自動生成機能を使ったところ、薬歴作成の作業時間が2割削減されたというニュースです。
たいぞーさん自身も最近このAI自動生成機能を使うようになったこともあり、その体感を交えて話が進みます。
AIによる薬歴の自動生成は、いまや多くの薬歴システムのベンダーが機能として打ち出しているといいます。
どのメーカーもAI薬歴機能で時間短縮みたいなことが打ち出されているなというのを、学会の機器展示なんかを見て回っていても見かけます。
「2割」という数字をどう読むか
2割削減という数字について、たいぞーさんは「確かに絶妙な時間だ」と話します。自身の体感ともおおむね一致するといいます。
一方で、そもそも薬歴の記載にどれくらい時間がかかっているのかを考えると、せいぜい2〜3分、かかっても5分ほどだと言います。
そこから2割削減すると、1人あたり減るのは1分ないし2分かどうか、という計算になります。
ただし、その積み重ねは無視できません。1日30人の患者に接すれば、まとまった時間になると考えられます。
たいぞーさんは、月20日の労働で換算すれば10時間分にあたり、経済的にも労働力としても大きな短縮と捉えられるかもしれない、と話します。
しかし、現場での体感は別です。薬剤師にとっては「作業効率が上がったかな」という程度で、患者にとっても合間の1〜2分は、ほとんど感じるか感じないかの差にとどまると指摘します。
効率化に着目しすぎるとAI薬歴は物足りない
AI薬歴機能を効率化の道具としてだけ見ると、あまり成果を実感できないものになってしまう、とたいぞーさんは考えます。
作業効率を上げるというところに着目しすぎると、正直あんまり成果を実感できないような代物になるんじゃないかなと思っています。
では意味がないのかというと、そうは思わないと言います。使いこなすには、薬剤師のこれまでの働き方そのものを変えることをセットで考える必要がある、というのがその主張です。
たいぞーさんはこれを「DX」という言葉で表現します。単なる効率化ではなく、業務の構造そのものを変革するツールとして捉えると有用だと話します。
AIに任せると「書きながら気づく」機会が失われる
たいぞーさんは、薬剤師が薬歴を書くプロセスそのものに価値があると指摘します。
患者と接しながら薬や処方内容を考えるのは日常的に行っています。しかし、後から記録を書く作業の中で、情報を整理しながら「そうだった」「もしかして」と気づくこともある、と自身の経験を語ります。
ところがAIが薬歴を自動生成すると、その出力の部分を肩代わりしてしまいます。書きながら考えてハッとする機会が減ってしまうのです。
普通に使うと、なんなら業務の質まで下がってしまうかもしれないというリスクすら孕んでいるんだろうなと思います。
だからこそ、業務効率ではなく業務の質を上げるために使おうとするなら、「考える」という思考プロセスをいかに前に持ってくるかが鍵になる、とたいぞーさんは話します。
思考を前倒しにすると何が変わるか
考える時間を前に持ってくると、どんな変化が生まれるのか。たいぞーさんは具体的な流れを描きます。
まず「この患者さん、この薬を飲んでてどうだったか」と振り返り、予想を立てます。空いた1〜2分をこの振り返りに充てるイメージです。
そのうえで患者と対応するとき、「何を聞けば予想を確認できるか」を考え、聞き取った内容を踏まえて、また予想に立ち返る。往復運動のように考えを深めていくといいます。
薬歴を振り返る
この患者はこの薬を飲んでどうだったかを考え、予想を立てる
聞くことを設計する
予想を確認するために何を聞けばよいかを考える
やりとりで確認する
聞き取った内容を踏まえ、予想にたどり着けているか往復して考える
薬学的に評価する
薬物治療を評価し、この人にとって最適な治療を考える
こうしたプロセスを踏むと、「この薬、怪しいかもしれない」と患者とのやりとりの中で気づけるかもしれません。
さらに、もう少し情報が欲しい患者に経過を教えてほしいと伝えるフォローアップの対象を、薬学的な知見に基づいて抽出することにもつながります。
医師へ服薬情報提供書で「これは共有しておいた方がいい」と気づくきっかけにもなる、とたいぞーさんは話します。
質の向上が薬剤師のやりがいにつながる
業務プロセス全体が変わることで、薬局のサービスの質、患者の治療の質が向上することが期待できる、とたいぞーさんはまとめます。
治療の質の向上は、患者にとって自分の体で起こるプラスの変化です。だからこそ成果として実感しやすい、と指摘します。
そして薬剤師自身にとっても、「薬剤師として関わってよかった」「この仕事はやりがいがある、面白い」と、仕事への価値観を変えることにつながると話します。
その意味で、AIによる自動生成は未来に期待が持てる新システムだと語ります。「時間が減りました」という業務効率の話でとどまってしまうのは非常にもったいない、というのがたいぞーさんの結論です。
なお、たいぞーさんはこのニュースの見出ししか見ていないと断ったうえで、記事の中身では質への問いかけや考察がされているのかもしれない、とも付け加えています。
まとめ
AI薬歴の「作業2割削減」というニュースを、たいぞーさんは効率化の数字にとどめず、薬剤師の業務の質を高める変革のきっかけとして捉え直しました。考える時間を前倒しにすることで、患者の治療の質も薬剤師のやりがいも高まると語ります。
- AI薬歴による作業時間2割削減は、患者1人あたり1〜2分ほどの短縮にあたる。
- 効率化だけに着目すると、AI薬歴は成果を実感しにくい道具になりかねない。
- AIが薬歴を自動生成することで、書きながら気づく機会が失われ、業務の質が下がるリスクもある。
- 「考える」思考プロセスを前に持ってくることが、AI薬歴を価値あるものにする鍵。
- 治療の質の向上は患者に実感されやすく、薬剤師自身のやりがいにもつながる。
