現場でよく聞かれる「この薬、飲まない方がいい?」
たいぞーさんは、現場で患者さんに関わっていると、薬を使って調子が悪くなったという話にちょこちょこ遭遇すると話します。
そのときによく聞かれるのが、次のような質問だといいます。
その薬は飲まない方がいいんやろうか。
この薬、実は飲んだらこんなことがあって、これもう一回飲んでも大丈夫ですか。
もちろん、体質に合わない薬は飲まない方がいいと判断することも必要です。
ただ、たいぞーさんはそこで立ち止まります。飲んで調子が悪くなった、イコール薬が悪い、と単純に結びつけないことが大事だといいます。
なぜ「飲める薬を残す」ことが大切なのか
たいぞーさんが強調するのは、本当に薬が悪いのかを見極めて、飲める薬は飲めるようにしておくことの大切さです。
もし不調が見られた薬を、そのまま「飲めない薬」として扱ってしまうとどうなるか。その先にあるデメリットを次のように説明します。
患者さんがいざ治療を行うとき、選択肢が大幅に狭まってしまうというのです。
だからこそ判断は慎重に行う必要があります。ここでたいぞーさんは、慎重さの向きが一方向ではないことを指摘します。
飲めないという判断だけでなく、飲めるという判断も含めて、両方を慎重に行いながら考えていく必要があると話します。
体質に合わない薬を見極めて、無理に飲ませない
不調が本当に薬のせいか見極めて、飲める薬を残す
医師に丸投げする薬剤師は「中継地点」になってしまう
判断は薬剤師だけで行うのではなく、医師の判断も交えながら対応していくとたいぞーさんは言います。ただし、その前提として大切にしていることがあります。
薬剤師がきちんと見立てた上で医師の判断を仰ぐという順番です。
何でもかんでも「先生に聞いてみましょう」と医師に判断を丸投げしてしまうと、薬剤師の役割は変わってしまうと指摘します。
そうであれば、薬剤師が間に入る必要性はどこまであるのか。その疑問が投げかけられることにもなるのではないか、とたいぞーさんは考えます。
「フラフラする」から作用機序をたどる薬学的な見立て
では、薬剤師にできることは何か。たいぞーさんは、薬の特性を踏まえた薬学的な判断として、その不調が本当に薬の副作用によるものかを見立てて意見を述べることだといいます。
具体例として挙げるのが、「この薬を飲んだらフラフラして調子が悪くなった」というケースです。
フラフラするという症状から、たいぞーさんの頭にはすぐ2つの可能性が浮かぶといいます。
1つは中枢神経への影響、もう1つは体を支える筋肉への影響です。
そこから、その薬の作用機序に、筋肉や中枢神経に作用する働きがあるのかを考えていきます。
さらに、薬が体を巡る中で脳に一定量届く特徴があるのか、それとも脳に届きにくいのか。筋肉にどの程度影響を及ぼす可能性があるのか。そうした特徴も考え合わせます。
加えて、症状がいつ出て、いつ頃落ち着いてきたのかという時間経過も伺っていきます。
こうした要素を重ねていくと、断定まではできないものの、薬が影響している可能性の大小は大きく判断できると話します。
見立てを共有すると、医師の判断はどう変わるか
薬剤師がこうして見立てた情報を医師に共有すると、何が起きるのか。
医師はその情報を踏まえながら、薬剤師の判断の妥当性を、自分自身の医学的な視点で検討できるとたいぞーさんは説明します。
その結果、いくつもの判断が生まれてくるといいます。
- 副作用の可能性が高いから、この薬はやめておこう
- 治療上の必要性が高いから、副作用かもしれないが飲んでもらおう
- 副作用ではないと判断できるから、安全なので飲んでもらおう
医師も限られた時間の中で患者を診て、診断や判断を行っています。全く情報がないまま一から考えると、時間内に考えきるのが難しい場面も現実にはあるといいます。
そこで薬剤師が考えるべきことを考え、判断を医師に伝える。それによって、医師がより医師として判断すべきことに注力できるとたいぞーさんは話します。
その積み重ねが、より良い治療を患者さんに届けることにつながると考えられます。
数字に騙されない。薬剤師の副作用アセスメントとは
こうした見立てのときには、添付文書の情報などを参考にすると、たいぞーさんは言います。
ただし、そこに出ている数字の大小だけで見るのではない、と注意を促します。
理論的な薬学的な専門知識も用いながら、その数字の情報が何を意味するのかをきちんと考える。数字に騙されず、患者さんのことを捉えながら見ていく。
これこそが、薬剤師にできる副作用アセスメントだとたいぞーさんは締めくくります。
まとめ
「薬が悪い」と決めつけるのでも、医師に丸投げするのでもなく、薬剤師が薬学的に見立てて医師の判断につなげる。たいぞーさんは、その一連の実践を副作用アセスメントとして語りました。
- 飲んで調子が悪くなった、イコール薬が悪い、と単純に結びつけない
- 不調の薬を安易に「飲めない薬」にすると、いざという時の治療の選択肢が狭まる
- 飲めない判断も飲める判断も、両方を慎重に行う
- 症状から作用機序・体内動態・時間経過をたどり、副作用の可能性の大小を見立てる
- 添付文書の数字の大小だけで判断せず、その意味を薬学的に考える



