対人業務は本当に「新しい仕事」なのか
薬局が処方箋を受け付けて保険調剤を行う医薬分業が始まって、日本ではおよそ40〜50年が経とうとしています。
いま薬局を取り巻く環境として、対人業務に積極的に取り組むべきだと言われるようになって、すでに10年が経とうとしているとたいぞーさんは話します。
患者に関わって薬物治療を最適化していく、専門性を活かした関わり。これが対人業務として、この10年取り組まれてきた課題です。
ただし、こうした関わりは今始まった特別な仕事ではないと、たいぞーさんは指摘します。医薬分業が言われた時代から、ずっと期待されてきたことなのではないかと振り返ります。
医薬分業はなぜ始まったのか
そもそも医薬分業が始まったのは40〜50年ほど前。当時はスモンやサリドマイドといった、薬の副作用による薬害が問題になっていた時期でした。
薬害の解消に加え、患者が多くの薬を服用するポリファーマシーの状態も、日本の医療の課題として挙げられていました。
その解消の手立ての一つとして、薬剤師が介入する医薬分業という施策がとられた。たいぞーさんは、これを大学で学んだ記憶があると語ります。
薬剤師がそこに介入することで、こういった薬害の防止につながったり、ポリファーマシーの解消につながっていくんじゃないか。そう期待されて始まったのが医薬分業だったと、大学の頃に学んだ覚えがあります。
当初の狙いは、なぜすぐに実現しなかったのか
では、医薬分業によって薬害が完全になくなり、ポリファーマシーが一気に解消したのかというと、そうではないとたいぞーさんは言います。
解決は着実に進んでいると現場で感じる一方、すっきりと解決するところまではたどり着けていない。取り組みたくても、薬局を取り巻く環境の事情で着手が難しかった面もあると話します。
その理由は、医薬分業のスタート時点にあります。まずは保険調剤を引き受ける薬局が、社会のインフラとして存在しなければ制度は機能しません。
そのため、最優先課題は「場所を作ること」でした。まずは処方箋を受け取れる薬局を増やしていくことが、初期に行われたと振り返ります。
医療安全と、がん治療がもたらした課題
薬局の数が増え、受け入れ体制が整ってきたところで、次に発達したのが医療安全でした。
処方箋どおりの調剤で間違った薬を届けてしまえば、薬物治療の初手でつまずいてしまう。だからこそ、いかに安全に薬を渡すかが重視されたと説明します。
この時期、薬剤師の学会発表も医療安全の対策が中心になっていたと、たいぞーさんは大学で教わった記憶を語ります。
そして平成に入る頃、日本人の死亡原因にがんが挙がるようになってきました。平成元年生まれのたいぞーさんは、当時のドラマで白血病やがんで亡くなる物語をよく見かけた記憶があると振り返ります。
がん治療に関わる薬は飲み合わせが多く、適切な組み合わせで使わないと重篤な副作用を引き起こします。安全に薬を届けるだけでなく、薬物治療を精査し、安全な組み合わせで治療を行う視点が必要になった。それが平成初期の状況でした。
オペレーションの整備を経て、本丸へ
相互作用を含めて薬物治療が適切な組み合わせになっているかを注視する。平成初期のこの段階を経て、システムを活用して安全に薬を届けられるようになっていきます。
同時に現れたのが、保険調剤の件数が急増したことによる課題でした。増える件数にどう対応するかという、オペレーションの問題です。
そのオペレーションも整い、患者に無理なく薬を届ける薬局の仕組みや体制、そして安全に薬物治療を届ける仕組みが整っていきます。
2010年代に入り、機械化が進み、安全対策の仕組みができ、システム上のチェック機能もしっかり働くようになりました。
そうしてようやく、当初の課題だった副作用の防止やポリファーマシーの解消という本丸に切り込む仕事が、薬剤師にできるようになったのではないかと、たいぞーさんは考えています。
先人の積み重ねの上に立つ、いまの業務
たいぞーさんが薬剤師になったのが、ちょうどこの時代でした。それが薬剤師の仕事なのだと認識しながら働いてきたといいます。
なぜ今までそれができていなかったのかが気になり、歴史を調べてみた。すると、それぞれの時代で薬局が果たすべき役割を先人たちが果たしてきた結果として、いまの環境が整っていることが見えてきたと語ります。
薬物治療の個別最適化に注力できる今の状況は、その積み重ねの上にある。だからこそ、今やるべきことを見据えて業務を行うことがいかに大切かを、歴史を紐解く中で改めて感じたと締めくくります。
まとめ
医薬分業の40〜50年をたどると、対人業務は決して新しい仕事ではなく、当初から期待されていた役割だったことが見えてきます。場所づくり、医療安全、がん治療への対応、オペレーション整備という段階を経て、ようやく本丸に取り組める環境が整いました。
- 医薬分業は薬害やポリファーマシー解消への期待から、40〜50年前に始まった
- 当初の狙いはすぐには実現せず、まず薬局を増やす場所づくりが最優先だった
- 医療安全、がん治療での相互作用対応、オペレーション整備と課題は移り変わってきた
- 2010年代に機械化やシステムが整い、対人業務という本丸に切り込めるようになった
- 今の業務は先人の積み重ねの上にあり、今やるべきことを見据える姿勢が大切だと語られた
