薬局で受ける「実は飲んでいない」という告白
日々の患者対応の中で、薬剤師は患者から思わぬ告白を受けることがあります。
代表的なもののひとつが、「実は薬を飲んでいない」という打ち明け話だと、たいぞーさんは話します。
飲んでいない理由もさまざまです。ついつい飲み忘れてしまうケースもあれば、薬は体にとって毒だからできる限り飲まないようにしている、と自分でデメリットを考えて判断しているケースもあります。
薬というのはもう体にとって毒なので、できる限り飲まないようにしてるんです。
たとえば、血圧の薬を飲み忘れたという話には、次のような判断がついてくることもあります。
今朝薬を飲んでくるのを忘れててね。けど病院で血圧測ってみたら血圧しっかり下がってたから、もうこれ薬飲まんでも案外いけるんちゃうかな。
中には、このままこっそり薬をやめてしまおうと考える人もいると言います。
なぜそうした判断が生まれるのか
たいぞーさんは、こうした判断の背景に共通する要因があると指摘します。
それは、薬が体の中でどうなっているのかを正しく知らないことです。だからこそ、そういった視点や思考に至ってしまうのではないか、と考えられています。
そしてここに、薬剤師の専門性の生かしどころが見えてくると話します。
薬剤師は、薬が体の中でどのくらいの時間働き続け、どのくらいで働きを失うのかを判断するための専門知識を学んでいるからです。
血圧の薬が「飲まなくても大丈夫」に見える理由
たいぞーさんは、飲み忘れても血圧が安定していた例を取り上げます。
血圧が落ち着いていたのは、薬が効いていなくても大丈夫という証ではありません。その薬が比較的長時間働くもので、一回飲み忘れた程度では大きく働きを失わないからだと説明します。
つまり、今日も血圧が維持されていたのは、薬がまだ体の中で働いていた結果である可能性が十分あるということです。
だからこそ、そこで「もう飲まなくていい」とやめてしまうと、薬が体から抜け、血圧が再び上昇し、疾患のリスクが上がることにつながりかねません。
効果が持続しない薬を飛ばすとどうなるか
一方で、たいぞーさんは注意が必要なケースも挙げます。
「毒だから飲んでいない」という人でも、効果が持続する薬で、採血結果などで薬効が確認できているなら、医師と情報共有した上で、そうした飲み方も百歩譲ってありえるかもしれないと話します。
ただし、薬の中には効果が全く持続しないものもあります。
たとえば1日3回飲む薬の昼分だけを飛ばすと、朝飲んだ薬は昼前にはほぼ抜けてしまい、次の夕方まで薬がほとんど働いていない時間ができてしまうこともあると言います。
一回の飲み忘れでは体内で大きく働きを失わず、効果が維持されやすい
一回飛ばすと次の服用まで薬がほとんど働かない時間ができる
自覚症状のないリスクを見える化する
問題は、薬が抜けている間に自覚症状が出るとは限らないことです。
体の変化が大きい薬なら「飲まないと」と思えますが、飲まなくても自覚症状が変わらない薬も往々にしてあると、たいぞーさんは言います。
その場合、薬が抜けている時間は疾患のリスクだけがグンと上がり、自覚症状がないためにそのリスクを抱え続けることになりかねません。
多くの患者は、疾患リスクを下げたいという思いから受診し、治療を受けています。
だからこそ、自分の判断が目的と逆の行動につながっていると知るだけで、行動を変えられる人もいます。
薬が体の中で起こす見えない変化を捉えられていないからそう判断してしまうだけだ、と患者が知ることができるように、きちんと見立ててフィードバックすることが薬剤師の重要な役割だと話します。
患者の体の中で起きていること、患者自身には見えない状況をプロの目線で見極め、それを伝えていく。それが薬剤師にできるプロの仕事だとまとめます。
まとめ
「実は薬を飲んでいない」という告白は、薬剤師の専門性が活きる場面です。薬が体の中でどう働くかを見立て、患者に見えないリスクを伝えることで、治療をより良い方向に近づけられると語られました。
- 「薬を飲んでいない」という判断の背景には、薬が体でどう働くかを知らないことがある
- 飲み忘れても血圧が安定していたのは、薬がまだ働いている証拠であることが多い
- 薬には長時間働くものと、飛ばすと効果が途切れるものがある
- 自覚症状がなくても疾患リスクだけが上がっている時間が生まれうる
- 患者に見えないものをプロの目で見せ、フィードバックすることが薬剤師の役割
